Mr. Gone (1978) Weather Report

Joe Zawinul (electric piano, piano, synthesizers, percussions, melodica, voice) Wayne Shorter (Tenor, alto, soprano sax, voice) Jaco Pastorius (Bass, drums, voice) Peter Erskine (Drums, voice)
Tony Williams, Steve Gadd (Drums) Manolo Badrena, Jon Lucien, Deniece Williams, Maurice White (Voice)
 
ミスター・ゴーン
ウェザー・リポート
SMJ



 Weather Report、大人気作“Heavy Weather” (1977)、“8:30” (1978,1979)の間の作品。
 両大名作に挟まれて浮かばれないといったこともあるのかもしれませんが、少しムードが異なります。
 楽園ムードに貢献していたドラム、パーカッションのAlex Acuñaが脱退、Peter Erskineが途中から参加、大御所Tony Williams, Steve Gaddと楽曲を分け合っています。
 さらにはEarth, Wind & Fire のMaurice Whiteが参加した ソウル~AOR風ボーカル曲もあり。
 名演、大ヒットになりそうなのに地味な印象なのはなぜ?
 後にファンクフュージョンの集大成的な“8:30” (1978,1979)があるのでわかりにくくなっているように思いますが、“Tale Spinnin'” (1975)以来のポップなファンクフュージョンから音を変えようとしていたように感じます。
 リズムマシンは使っていないのだと思いますが、人工的、プラスチックな感じのビート感、さらに4ビートの再導入、変わった音階のメロディとベースラインの対比、電子的なSE、あるいはかつての”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のような、違うような幻想的で宇宙的なムード・・・
 などなど、新旧の諸々な要素を織り交ぜながら、さらにJaco Pastoriusを絡めて何がどこまで出来そうか試していたようにも感じます。
 タイトル曲、超絶ベースが映える超高速4ビートのMilesナンバー"Pinocchio"、Jaco流ファンクの“River People”、”Punk Jazz”などがそんな感じ。
 あるいは、“Young and Fine”などはとても明るくてオシャレ、かつ、ベース、サックス、キーボードのカッコいいインプロビゼーションがギュッと詰まった最高にカッコいい演奏、ボーカル曲“And Then”もヒットチャートに載ってもおかしくない質感で、ファンクフュージョン、ポップテイストの導入も放棄したわけではなさそうです。
 が、全体を眺めれば実験色、あるいはミステリアスな印象が強い感じ。
 その分ちょっと気難し気で一般受けはしないのかもしれないけども、実験的といってもそれぞれが完成されていて、意味不明ではない音作り。
 私は“Night Passage” (1980)と並んで大好きな作品です。
 次は少し時間の針を逆に回したようなファンクフュージョンの集大成ライブ“8:30” (1978,1979)。
 ライブの部分は以前からのポップなファンクフュージョンですが、そのスタジオ録音、新曲部分、さらに“Night Passage” (1980)に本作の流れが続いていると思います。




posted by H.A.