Weather Report (Feb-Mar.1971) Weather Report
Joe Zawinul (Electric, acoustic piano) Wayne Shorter (Soprano sax) Miroslav Vitous (Electric, acoustic bass) Alphonse Mouzon (Drums, voice) Airto Moreira (Percussion)
Barbara Burton, Don Alias (Percussion)
ジャズ・フュージョン最高峰のデビュー作。
フュージョンバンドは星の数ほどあれど、このバンドが最高であると考える人は少なくないでしょう。私もその一人。
冒頭の”Milky Way”からぶっ飛んでいます。
シンセサイザーのようなスペーシーな音。
コードが移り変わっていくだけの二分強。
何だこりゃ?の世界ですが、時折のパーカッションが空間の妖しさを増した1:35ぐらい。
ほんの一瞬のサックスの音。
んー、これはちょっと凄い。
んー、これはちょっと凄い。
怖いぐらいにアーティスティックな二分間。
天の川の静かな動きと、一瞬の流星。
短からず長からずの素晴らしい幕開け。
白い壁の部屋でこれをループにするだけで現代美術の展示会になりそうなスタイリッシュな音。
もうこれで十分でしょ・・・ってな人はごくわずかかもしれませんが、ビートが入ると“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisに近い音になります。
ヒタヒタと迫ってくるビートに、ファンクなベースの“Bitches Brew”に対して、ゴリゴリのアバンギャルド系ジャズベースが唸り、エレピが作るフワフワとした空間をサックスが漂い、時に切り裂くイメージ。
さらには、宇宙的なエレピの音に導かれる漂うようなバラード”Orange Lady”。
MilesがJoe Zawinul 抜きで録音(<Nov.19.1969>、“Big Fun”収録)していますが、同じく幻想的なムードながら、こちらはスッキリ系、“In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davisのタイトル曲の牧歌的な世界。
以降も幻想的な音、激しい音が交錯します。
強烈なグルーヴ、時折の混沌を交えながら、誰かがフロントに出るといった感じでもなく、サックス、エレピ、ベースが絡み合うインタープレー中心の展開。
そこは“Bitches Brew”的でもあるのですが、後のMilesバンドとの大きな違いは、4ビート、ジャズの空気感が色濃く残っている事でしょうか。
ウッドベース中心であることも大きいけど、後のJacoの時代に至るまで、要所に4ビートが組み込まれていて、それが心地よさに繋がっているようにも感じます。
気難しい感じもあるこの期のWeather Reportですが、本作でも後半、LPレコードB面では、淡いムードの優しい展開。
エレピの美しく穏やかながら幻想的な音を背景にした、フワフワと漂うようなサックスとウッドベースの絡み合い。
心地よいことこの上なし。”Waterfall”なんて最高です。
“In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davisのタイトル曲から何歩も進んだ新しい音。
さらに最後の4ビート曲のカッコいいこと。
スーパーなバンドのスーパーな、まずはデビュー作。
モダンジャズの人からすれば、何だこりゃ?かもしれません。
苦手な人はLPレコードB面、CDでは4、5、6あたりから聞いて慣れたらA面に行きましょう。
何度か聞いていると、こりゃ凄いや、あるいは気持ちいいなあ、に変わるはず。
たぶん。
posted by H.A.