“Zawinul” (Aug.6-12.1970) Joe Zawinul

Joe Zawinul (acoustic, electric piano)
Herbie Hancock (electric piano) Miroslav Vitous, Walter Booker (bass) Billy Hart, David Lee, Joe Chambers (percussion) Jack DeJohnette (melodica, percussion)
George Davis, Hubert Laws (flute) Woody Shaw, Jimmy Owens (trumpet) Earl Turbinton, Wayne Shorter (soprano sax)

Zawinul
Joe Zawinul
Imports
ジョー・ザヴィヌル


 Joe Zawinul、もうひとつの”Weather Report” (Feb-Mar.1971)。
 あるいは、もうひとつの”In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davis。
 はたまた、もうひとつの“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis。
 Miles Davisとの共演は“Big Fun”収録の"Recollections"<Feb.6.1970>が最後だったのでしょうか?
 本作はその後の録音。 
 ”In a Silent Way”、“Bitches Brew”さらに、その後のMilesとのセッションの記録を聞くと、その当時のMilesの音楽の妖しいムードを作っていたのはJoe Zawinulのようにも思えます。
 クレジットはさておき、”In a Silent Way”、“Bitches Brew”の曲の多くは事実上Joe Zawinulが云々・・・の話もチラホラ。
 そのリベンジでもないのでしょうが、似たようなメンバーを集めて近いムードの音楽。
 “Bitches Brew”には参加していないHerbie Hancockを呼んでいるのも興味深いところ。
  Jack DeJohnetteはまだMilesバンドで活動中ですが、Wayne Shorter は“Live At The Fillmore East - It's About That Time”(Mar.1970)を最後にMilesバンドを抜けた時期。
 ”Weather Report” (Feb-Mar.1971)の半年前、その主力メンバーが揃っていますので、ちょうど”In a Silent Way”、”Bitches Brew”、”Weather Report”を混ぜ合わせたような音。
 メロディもさることながら、アレンジ、エレピの絡み合い、ビートの作り方等々、それらのアルバムでのJoe Zawinulの存在がどれほど大きかったのか推察される内容。
 冒頭はゆったりとしたテンポで始まり、徐々にハイテンションなインプロビゼーションへ。
 背後では妖しいエレピの絡み合い、ヒタヒタと迫ってくるようなビート、徐々にテンションを上げて混沌の一歩手間まで・・・
 まんま、”In a Silent Way”、”Bitches Brew”、エレピが一台になれば”Weather Report”ですね。
 激しい演奏もありますが、全体を通じた穏やかなムードは”In a Silent Way”にも近い感じ。
 ホーン陣は端正ながらハイテンションなインプロビゼーション、Miroslav Vitousはいつもながらのシリアスなムードの激烈系、Herbie Hancockも激しくも端正なソロ。
 もし、彼らが”Bitches Brew”に参加していたらこんな感じになったのかなあ、と想わせる場面もしばしば。
 全編妖し気なジャズファンクフュージョン。
 それでも4ビートな場面がしばしば登場するのは、初期Weather Report的でもあるし、Miroslav Vitous的でもあるし。
 気難し気な雰囲気と牧歌的で穏やかなムードが交錯するJoe Zawinulの世界。
 カラッと明るい部分もあるMiles諸作よりもダークで深刻な質感は、この期のこの人の色合いでしょう。
 他にも同じ時期、近いメンバー、似たテイストの作品として“Infinite Search” (Nov.1969) Miroslav Vitous、“Super Nova” (Aug.Sep.1969) Wayne Shorter、あるいは“Mwandishi” (Dec.1970) Herbie Hancockなんてアルバムもあります。
 さて総本山“Bitches Brew”も含めてどれが一番カッコいいか?
 似ているようでそれぞれ特徴があって全く違う質感。
 聞いてみましょう。

 

posted by H.A.