“Thrust” (Aug.1974) Herbie Hancock

Herbie Hancock (Fender Rhodes electric piano, Hohner D6 clavinet, ARP Odyssey, ARP Soloist, ARP 2600, ARP String Ensemble)
Paul Jackson (electric bass) Mike Clark (drums)
Bennie Maupin (tenor/soprano sax, saxello, bass clarinet, alto flute) 
Bill Summers (percussion)

Thrust
HERBIE HANCOCK
COLUM
ハービー ハンコック



 Herbie Hancock、前作“Head Hunters” (Sep.1973)の路線継続、ポップなファンクフュージョン。
 ポップといっても、まだまだ全四曲、十分を超える長尺なインプロビゼーションも含む構成、“Head Hunters”とは兄弟のようなアルバム。
 人気曲の"Butterfly"も収録されていますが、白眉は名曲"Actual Proof"。
 意外なところでカバーされているアーティスト好みの曲なのでしょう。
 近年では全く遠い所のようなECM、"Spark of Life” (2014) Marcin Wasilewski でカバーされていました。
 オリジナルの本作は、高速ファンクに強烈な疾走感のインプロビゼーションが映える大名演。
 後のライブアルバム“Flood” (1975)での同曲は、恐ろしいぐらいカッコいいベースラインとアコースティックピアノでの凄まじいソロの大名演。
 本作でもそれに勝るとも劣らない大名演。
 あるいは“Head Hunters”の大名演”Sly”に勝るとも劣らない大名演。
 これにはMilesもビックリしたであろう(知りませんが)、ファンキーでぶっ飛んだ演奏。
 しかも端正。
 このベースは何と表現したらよいのでしょう?
 後のJaco Pastriousもびっくりのしなやかさ。
 弾みまくり、動きまくるベース。
 Paul Jackson、なかなか名前が上がってきませんが、この演奏はエレクトリックベースの名演ベスト10に入るであろう大名演。
 フルートのサポートが入り、エレクトリックピアノですが、インプロビゼーションの部分は事実上ピアノトリオ。
 ベースとエレピの凄まじいまでのチェイスとバトル、それを激しく煽るドラム。
 凄まじい演奏。
 ピアノトリオでここまで凄い演奏は、古今東西、現代の超絶技巧の若者の演奏を含めて、なかなかないでしょう。
 この曲、このインプロビゼーションだけで名アルバムでしょう。
 この作品がどの程度ヒットしたのかはわかりませんが、ポップでファンクな曲、アレンジに対して、インプロビゼーション自体はかつてのジャズ時代のムード、エキサイティング系。
 激烈、混沌に突っ込むことはない、どう演奏してもクールで端正に仕上がるHerbie Hancockの演奏。
 それでも超弩級にエキサイティング。
 次作は一曲一曲を少しコンパクトに、さらにポップにソウルっぽく仕上げた、“Man-Child” (1974-75)へと続きます。 




posted by H.A.