“Mwandishi” (Dec.1970) Herbie Hancock

Herbie Hancock (Fender Rhodes piano)
Buster Williams (Bass) Billy Hart (Drums) 
Eddie Henderson (Trumpet, flugelhorn) Bennie Maupin (Bass clarinet, alto flute, piccolo) Julian Priester (tenor trombone, bass trombone)
Ronnie Montrose (Guitar) Leon "Ndugu" Chancler (drums, percussion) José "Chepito" Areas (congas, Timbales)
 
エムワンディシ
ハービー・ハンコック
ワーナーミュージック・ジャパン
2012-08-08


 Herbie Hancockが作ったもう一つの“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis。
 話題にならない作品?なのかもしれませんが、カッコいいエレピが映える、妖し気でカッコいいジャズファンク。
 Milesとの共演は“In a Silent Way” (Feb.1969)、“Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)とあるのですが、その間の”Bitches Brew”には参加していません。
 その憂さ晴らしかどうかは分かりませんが、Herbie Hancockとしての端正かつ妖し気なジャズファンクフュージョン。
 あくまで私見ですが、Herbie Hancockのピアノはキレイすぎて、”Bitches Brew”に呼ばれなかった、もしくは参加を断ったように思いますし、もし参加していたら違ったムードの作品になっていたようにも思います。
 ”Bitches Brew”はまだしも、後の“Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970) Miles DavisなどのChick Corea, Keith Jarrettの狂気のエレピを聞くと、端正さが勝るHerbie Hancockがそれらと代わるのは少々無理があるようにも思います。
 結果から見る限りですが、当時のMilesが求めていたのは、激しさ、狂気だったようにも思います。
 近い時期に“Zawinul” (Aug.6-12.1970) Joe Zawinulがありますが、そちらに近いムード、前作“The Prisoner” (Apl.1969)にも近いイメージもあり、やはりHerbie Hancock独自の音でしょう。
 とても美しいエレクトリックピアノと、こちらは”Bitches Brew”に参加していたBennie Maupinの妖しいバスクラリネットの響きからスタートします。
 パーカションが効いたアフロ混じりのポリリズミックなビート。
 なおドラマーは、後にMilesバンド、Weater Report、Santanaに参加するLeon "Ndugu" Chancler。この人脈、なぜかどこかで繋がっています。
 一つのリフのモーダルな演奏。
 トラペットソロからバンドのテンションは徐々に上がり、エキサイティングなエレピの長尺なインプロビゼーション~妖しさ全開のバスクラリネットへと続きます。
 端正でスッキリした”Bitches Brew”といった面持ち。
二曲目以降はパーカッションが抜けて、“Speak Like a Child” (Mar.1968)、“The Prisoner” (Apl.1969)的でもある柔らかで幻想的な世界。
 とても穏やかでフワフワとした心地よい音。
 フリューゲルホーンとフルートの柔らかな音色のソロに続くエレピの時間は極楽タイム。
 穏やかながら定まらないビート、フリーな音の空間をフワフワとエレピの音が漂います。
 LPレコードB面は長尺な一曲。
 スローで穏やかなフリーテンポからの始まりは、“In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davisにも似た世界。
 そこから左右のチャンネルに揺れ動くエレピとホーンのアンサンブル。
 これまた素晴らしい心地よさ。
 漂うビート感とこれまた漂うようなエレピが作るフワフワとした空間の中を管楽器のインプロビゼーションが泳ぎます。
 が、次第にテンションとビートを上げながら、気が付けば激しいフリーインプロビゼーション的な音へ移行。
とても激しいのですが、なぜかサラリとしたクールな質感。
 エレピが激烈を煽るのではなく、拡散していくバンドを定常に戻すように促しているようにも聞こえます。
 これもHerbie Hancockならではの色合いなのでしょう。
 最後はまた、端正なアンサンブル~穏やかに漂うような音に戻って締め。
 幻想的なムードは共通ですが、“Bitches Brew”的な演奏は一部のみ。
 あくまで上品なホーンアンサンブルとフワフワしたピアノ、漂うようなこの期のHerbie Hancockの世界観。
 メロディが曖昧、抑制された演奏なので地味なのかもしれませんが、逆に左右に揺れ続けるエレクトリックピアノの美しい音が最高に映える音。
 エレピの音の心地よさは“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Coreaと同等。
 エコーとエフェクティングがしっかり効いている分、こちらの方が心地いかも。
 そんな隠れたエレピの名作品。




posted by H.A.