“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Corea
Chick Corea (electric piano, Fender Rhodes)
Stanley Clarke (acoustic, electric bass) Airto Moreira (drums, percussion)
Joe Farrell (soprano saxophone, flute) Flora Purim (vocals, percussion)

Return to Forever
Chick Corea
Ecm Records
チック・コリア


 Chick Coreaの言わずと知れた大ヒット作にて大名作。
 MilesバンドからAirto Moreiraを引き連れ、その他気鋭のメンバーで作った清廉なジャズフュージョンミュージック。
 スパニッシュテイスト、ブラジルテイストが隠し味。
 Milesバンドにいたのは”The Isle of Wight Festival (Bitches Brew Live)”(Aug.29,1970)までだったのでしょう?
 この作品の後の“On The Corner” (Jun.1972) Miles Davisには参加、セッションも断続的にはあったのでしょうが、いずれにしてもMilesの下を離れ、ECMでの"A.R.C." (Jan.1971)、"Piano Improvisations vol.1.,2." (Apl.1971)など、諸作の後の制作。
 Milesのバンド、リーダー作では激烈な演奏が目立ち、近作の"Piano Improvisations vol.1.,2."も半分はメロディアスですが、半分はフリー。
 本作でようやく1960年代激烈フリージャズから脱したようです。
 強烈なグルーヴ、推進力はありますが、混沌、抽象にはならず、メロディアスな楽曲、美しいエレクトリックピアノに徹しています。
 Airto MoreiraもちょうどMilesバンドでのセッション、ライブ、”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のセッションが終了したところ。
 パーカッションではなく、うるさくないカッコいいドラマーぶりです。

 冒頭からちょっと怖い感じのメロディに、妖しいスキャット、美しさと妖しさが混ざり合う幻想的な音。
 ビートが入ると一気にグルーヴ全開。
 ベースの音量が高めにミキシングされている感じで、全体のサウンドを牽引するのはベース。
 それに追随するようにも聞こえるドラムとエレピ。
 疾走するフルート、クライマックスでの叫び声・・・
 全編通じてChick Coreaのエレピはむしろ抑えめで、全体のサウンド作りに徹しているような印象もあります。
 ど真ん中を突っ走るようなベースとそれを含めて空間全体を包み込むようなエレピの残響音。
 アコースティックピアノでは全く違ったものになったのでしょう。
 さらには幻想的なバラードから、熱を冷まし現実に引き戻すような少々ポップで前向きなメロディ。
 LPレコードA面は、少々アバンギャルドなムードもありますが、あくまで清廉な空気感。
 Return to Foreverの名前にふさわしい、美しい迷宮のような不思議な音。

 LPレコードB面は長尺な一曲”Sometime Ago/La Fiesta”。
 当時のジャズ喫茶での人気はこちらだったのでしょうかね?
 静かなフリービートでのインタープレーが続くこと数分。
 ビートが定まり唐突に始まるFlora Purimの歌にはみんなドキッとしたんでしょうねえ。
 長尺なインプロビゼーションの中に置かれた歌が最高のアクセント。
 ビートが落ちて、エレピのソロを経て、さらにビートが上がって”La Fiesta”開始。
 この立ち上がる瞬間のカッコいいこと。
 さらにそこから最後まで徐々にテンションを上げながらの興奮と陶酔。
 これまたそれを牽引するのはベース。
 ぐんぐん前に進むベースと、決してうるさくはならないヒタヒタと迫るドラム、
 強烈に疾走するバンド、空間全体を包み込むようなエレピ。
 決してドカーンと来るわけではないし、大きな音を出すわけでなないのだけども、心ならずも引き込まれる自然な陶酔感。
 ラテンテイスト、スパニッシュテイストのなせる業なのでしょうかね?
 アバンギャルドなようで激しいようで、実際は上品で前向き、おまけにメロディアスな名曲揃いでわかりやすい。
 いやはやなんとも素晴らしい演奏です。

 なお、同じくMilesの門下生Herbie Hancockは、“Sextant” (1972)あたり、”Head Hunters” (Sep.1973)までもう少し。
 直近までMilesに帯同していたKeith Jarrett は“Facing You” (Nov.1971)、“Expectations” (Apl.1972)あたり。
 Weather Reportはセカンドアルバム”I Sing the Body Electric” (1971,1972)を制作中。
 Mahavishnu Orchestra はデビュー作"The Inner Mounting Flame" (1971)をリリースしたあたり。
 ズラリ揃った稀代のスタイリストたち、そろって助走から離陸中。
 この期ではWeather Report、Chic Coreaが一歩リードといったところでしょうか。
 メロディアスで親しみやすい曲作りといった観点では、Chic Coreaが何歩もリード。
 Milesのバンドに欠けていたのもがあるとすれば、それだったようにも思います。
 それが硬派でカッコいいんでしょ、と言われればその通りなのですが・・・

 さて、ECMでエレクリックピアノがここまでフィーチャーされた作品は他にあったでしょうか?
 “Trance” (1974) Steve Kuhn、“Lookout Farm” (Oct.1973)、“Drum Ode” (May.1974) Dave LiebmanのRichie Beirachぐらい?
 “Azimuth” (Mar.1977)はシンセサイザー、かオルガンですね。1980年代以降、現在でも少数・・・?
 んー?思い出せない・・・
 Manfred Eicherさんはエレピが嫌いなんでしょうかね・・・と勝手に思っています。
 だから第二作“Light as a Feather” (Oct.1972)は別レーベルになったのかも、と思ったり・・・


 

posted by H.A.