“Pangaea” (Feb.1.1975) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, organ)
Pete Cosey (guitar, percussion, synthesizer) Reggie Lucas (guitar) 
Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (congas, percussion, rhythm box, water drum)
Sonny Fortune (alto, soprano sax, flute)

パンゲア
マイルス・デイビス




 Miles Davis、“Dark Magus”(Mar.1974)からサックスが交代した大阪公演、夜のステージ。
 第一部は疾走するファンクビートでの超弩級にハードなインプロビゼーションミュージックですが、第二部は異なります。
 ラテンロック、フュージョン、4ビートジャズが入り混じる不思議な質感。
 本作“Pangaea”は日本以外ではしばらくお蔵入りしていたようで、“Dark Magus”と同様にMilesのイメージする音とは既にズレていたのかもしれません。
 頭の中では次の音が鳴っていたのでしょうか?
 それは本シリーズで提示されているようなファンキーな16ビートなのか、AORなのか、ファンクフュージョンの延長線なのか、まさかの4ビート、あるいはラテンロック、はたまた電子混じりのアバンギャルドなのか? 
 既に世に出ていた“Get Up with It”(May.1970-Oct.1974)から推察すると、ファンキーで、ポリリズミックで、疾走する音楽のようにも思いますが 、このステージでその種の演奏はありません。
 さて・・・?
 
 その真相はこの後の長期離脱で謎に包まれたまま。 
 それが余白になっているのも、ファンを惹きつける魅力なのでしょう。
 いろんな意味で先が読めない、スリルの塊のようなバンドでした。
 おっと、かつてのバンドからいつもそうでしたね。

 いずれにしても、エレクトリックマイルス第一弾(第二弾?第三弾?第四弾?)はこれで小休止。
 この時にどんな音が鳴っていて、どんなメンバーが頭にあったのかは謎ですが、この後、長期離脱し、次の作品は“The Man with the Horn” (1980,1981)。
 そこに繋がるようにも思えるような、思えないような・・・

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 CD一枚目、第一部は疾走するファンクでスタートします。
 これでなければこのバンドはねえ・・・と思う人も多いのでしょうか?
 ハイハットがシャンシャンシャンシャン・・・と鳴り続け、アクセント、スネアがパターンを変えながら、均等に同じポジションに入るドラム。
 言葉で書くと退屈っぽいのですが、他のドラマーとは全く違う強烈な疾走感。
 ドドドドドドドドド・・・とこれまた動き続けるベースとの組み合わせがいいんでしょうね。
 さらにワウを掛けたギターのカッティングがうねりを加えて、このバンド独特の超弩級に疾走するビート。
 粘って跳ねる印象も強い“Agharta” (Feb.1.1975)的なものとどちらがよいかはお好みでしょう。
 凄まじいまでの疾走感と激烈なインプロビゼーション。
 ワウを掛けたトランペットに続く、サックス、ギターと眩暈がしそうな激烈さ。
 突然のビートの停止~カデンツアor 空白~次のパターンへの展開もバッチリ。
 あたかも譜面があるように、一斉に方向を変えるバンド。
 突っ走るパターン、粘るパターン、ヘビーなパターン、静かなパターン・・・・
 この展開方法は一年前の“Dark Magus”(Mar.1974)よりも徹底されてきているのでしょう。
 これどこかで聞いたよなあ・・・と思いながら激烈なインプロビゼーションに唖然としていると、早々に次の展開へ・・・
 終盤34:00頃にMichael Hendersonが“On The Corner”(Jun.1972) “Black Satin”のパターンを出すも、誰も反応しないで別のパターンに流れるのもご愛敬。
 最後は熱を落としてパーカッションのソロ+αとvoiceで幻想的に締め。
 さて一休みして次も激烈疾走ファンクか・・・と思っていると・・・

 CD二枚目、夜の第二部は意外にもゆったりとした幻想的なムードから始まります。
 ラテンなパーカッションとオルガン、ワウを掛けたギターがSantanaを想い起こすようなムードと穏やかなフルート。
 と思ったのはわずかな時間、音量が上がるにつれ、全く別の質感の軽快で穏やかなロック・フュージョンへ展開。
 さすがにここではズルズルギターで暴れることはできず、カリンバで応戦。
 これまた穏やかながら妖しいムード。
 “Ife”のテーマからMilesが入ると徐々に音量を上げ、山場を作るバンド。
 引き継いだディストーションを外したギターがしおらしく音を出すのは少々の時間のみ。
 オルガンの合図でヘビーなバラードへ展開。
 こうなるとズルズルギターの本領発揮。
 テンポと音量を上げながら弾きたい放題の激烈ロックバラード。
 例によってビートの停止~空白の次のパターンもヘビーなロック。
 その中でMilesが吹くのはもの悲しいメロディ。
 コードは制約されましたが、4ビートで行くか、シャッフルで行くか、ロックで行くか、数分間探り合うバンド。
 結論は4ビート。
 しばらく続く4ビートを崩すのは誰か?と緊張していると、そのまま音量を上げて、最後はアバンギャルドな電子音、SE的な音で幕。
 二部は強烈な疾走の場面はないまま。
 Milesの休養前の活動は謎を孕みつつ、拍手もなく終了します。





 Miles、1960年代からの変遷。
 突然変異的な作品がいくつかありますが、概ねグラデーションをもって変化しているように思います。
 どれが一番いいんだろ?
 好みは激烈ジャズの“Live At The Fillmore East - It's About That Time”だけど、凄みは“Live Evil”、“On The Corner” に感じるなあ。
 “In a Silent Way” もぶっ飛んでいるけど。
 もちろん"Kind of Blue"、“Bitches Brew”が金字塔、聖典なのであることに異論はありません。 


◆モダンジャズ、ハードバップ
(1959)      "Kind of Blue"
(Mar.1961)    "Someday My Prince Will Come"
(Apl.1961)    "In Person Friday and Saturday Nights at the Blackhawk"
(May.1961)    "Miles Davis at Carnegie Hall"
(1962)      “Quiet Nights”  
(Apl.May.1963)   “Seven Steps to Heaven” 

◆モーダル新主流派ジャズ
(Jul.1963)     “Miles Davis in Europe” 
(Feb.1964)     “Four & More”、“My Funny Valentine” 
(Jul.1964)     “Miles in Tokyo” 
(Sep.1964)     “Miles in Berlin” 
(Jan.1965)     “E.S.P.” 
(Jul.1965)     “(Highlights From) Plugged Nickel” 
(Oct.1966)     “Miles Smiles
(May.1967,1962)  “Sorcerer
(Jun.Jul.1967)   “Nefertiti” 
(Oct,Nov.1967)  “Live in Europe 1967: Best of the Bootleg, Vol. 1"

◆電化ジャズ、ファンクジャズ
(Jan.May.1968)    “Miles in the Sky” 
(Jun.Sep.1968)    “Filles de Kilimanjaro” 
(Jun.1967,Nov.1968)  “Water Babies” 

◆電化ジャズ、ファンクジャズ、フリージャズ
(Feb.1969)      “In a Silent Way” 
(Jul.5,1969)      ”Bitches Brew Live” /一部 
(Jul.25,1969)     ”1969Miles - Festiva De Juan Pins” 
(Jul.26,1969)     “at Festival Mondial du Jazz d’Antibes, La Pinede, Juan-les-Pins, France” 
(Aug.19-21,1969)   “Bitches Brew” 
(Oct.27,Nov.4,1969)  “Live in Copenhagen & Rome 1969” <DVD>
          “Live at the Tivoli Konsertsal, Copenhagen, Denmark” <DVD>
(Nov.5,1969)     “at Folkets Hus, Stockholm"
(Nov.7,1969)     “Berliner Jazztage in the Berlin Philharmonie" <DVD>
(Mar.1970)     “Live At The Fillmore East - It's About That Time” 
(Feb.18,Apl.7,1970)  “Jack Johnson
(Apl.10.1970)    “Black Beauty / Miles Davis At Fillmore West” 
(Apl.11.1970)    “Miles At Fillmore(完全版)”/一部
(Feb.Jun.1970)   “Live Evil” /一部 
(Jun.1970)      “Miles Davis At Fillmore(公式版)”、”Miles At Fillmore(完全版)” 
(Aug.18,1970)    “Live at the Berkshire Music Center, Tanglewood, MA
(Aug.29,1970)    ”Bitches Brew Live /一部” (at the Isle of Wight Festival)
(Dec.16-19,1970)   “Live Evil”、“The Cellar Door Sessions1970”、 
(Nov.6.1971)     “The 1971 Berlin Concert” <DVD>

◆ボリリズミックファンク
(Jun.1972)      “On The Corner” 
(Sep.1972)      “In Concert” 

◆疾走ファンク
(Oct.27,1973)    “Live in Stockholm 1973” <DVD>
(Nov.3,1973)     “Stadthalle, Vienna 1973” <DVD>
(Mar.1974)      “Dark Magus” 
(May.1970-Oct.1974) “Get Up with It” (未発表録音+新録。ボリリズミックファンク寄り。) 
(Feb.1.1975)     “Agharta”、“Pangaea

◆未発表録音集
(Nov.1969-Jun.1972) “Big Fun”  (ファンクジャズ+ボリリズミックファンク。) 
(Oct.27.1995-Jan.27.1970) “Circle in the Round”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)
(1960-1970)    “Directions”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)

posted by H.A.