“Agharta” (Feb.1.1975) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, organ)
Pete Cosey (guitar, percussion, synthesizer) Reggie Lucas (guitar) 
Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (congas, percussion, rhythm box, water drum)
Sonny Fortune (alto, soprano sax, flute)
 
アガルタ
マイルス・デイビス




 Miles Davis、“Dark Magus”(Mar.1974)からサックスが交代した大阪公演、昼のステージを収録したライブアルバム。
 オムニバスアルバム“Big Fun” (Nov.1969-Jun.1972) がApl.1974に、“Get Up with It”(May.1970-Oct.1974) がNov.1974にリリースされた直後。
 ”Dark Magus”、“Pangaea”ともにしばらくお蔵入りしていたとのことで、世界的には休養前の最後の作品はこのアルバム。
 ”Dark Magus”のような疾走するファンクビートでのハードなインプロビゼーションミュージックだけではなく、別のスタイルが加わったステージ。
 激しい演奏ですが、突っ走っているのは、昼の部“Agharta”、夜の部“Pangaea” (Feb.1.1975)のともに一部で、ゆったりとして落ち着いた時間もかなりあります。
 また、本作、昼の部は粘って跳ねるファンキーな色合いが強く、さらに、一部、二部共に終盤にポップというか俗というか、そんな色合いが混ざってきているように思います。
 Milesが次にやろうとしていたことのヒントはこのステージの中にあるのでしょうか?
 うーん?
 とにもかくにも、激烈疾走ファンクのようでそれだけではないライブ。
 激しくてファンキー、しかもポップな色合いもいくらか。
 少々の謎を残しつつ、1970年代Miles Davisはこの作品で終了します。

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 CD一枚目、ステージはゆったりとしたファンクビートで幕を開けます。
 鳴り続けるハイハット、ベビーなベース、ワウを掛けたファンキーなギターのカッティング、
 ワウを掛けたMilesもまずは抑え気味、続くSonny Fortuneもあいさつ代わりのスムースかつハイテンションなソロ、さらにはズルズルグチョグチョギターの激烈ソロが続きます。
 時折のブレーク、無音の空間、あるいはそこに響くオルガン、ホーンが緊張感を高めます。
 次第にベースが激しく動き出し、音量、テンションが上がり、激情状態に突入。
 ブチ切れたようなズルズル激烈ギターで締めた概ね16:30から、リズムパターンが変わります。
 抑え気味に始まりますが、粘っこく跳ねるビート。
 次第にベースが動き出して、ファンキー度大幅アップ。
 トランペットソロに続いて、22:00前後には短いながら"Turnaround"(?)のテーマの二管アンサンブルからサックスソロ。
 これはオシャレ・・・とは言いませんが、ソフィスティケイトされたソウルのような時間。
 これは何かの予見かと思っていると・・・
 以降、ズルズルギターが続きますが、その後、32:30頃から唐突に始まるのがボッサAORな”Maysha”。
 鬼のようなバンド、鬼のようなカッティングが続いたギターが優しく音を出し、これまた鬼のようなSonny Fortuneが奏でる優しいフルート。
 “Get Up with It”収録のオリジナルに忠実に、後のStuff、Gordon Edwards的なグルーヴに、情け容赦のないズルズルグショグショギターのソロ。
 ドカーンと盛り上がって、最後に御大の優しいトランペット。
 約10分間の天使と悪魔の時間が終わり、その流れの明るいグルーヴで第一部は幕。
 出だしもいいのですが、私はリズムが跳ね始めファンキー度アップの中盤から終盤がお気に入りです。

 CD二枚目、昼のコンサートの二部は冒頭からハイテンション。
 “Jack Johnson" (Feb.18,1970)からSly and the Family Stone的な例のどカッコいいリフからスタート。
 オリジナルよりも高速なビートにSonny Fortuneのスムースかつ激烈、超高速サックスが乗ってきます。
 続くはロックギターが唸るヘビーなファンクから、シャッフルビートの”Right Off”、さらにフルートが映える妖しいバラード風演奏に遷移。
 一旦ビートが落ち、“Ife”のテーマから入るMilesの再登場とともに徐々にテンポと音量が上がり、ドラムはサザンソウルのようなタンタンタンタンとスネアが揃うビート。
 エスニックなビートの妖し気な混沌を経て、終盤からはベビーなバラードに激烈な泣きのギターソロ、二編。
 Santanaっぽい定番的泣きの激烈版と、ズルズルグチョグチョ絶叫激烈版。
 Miles的な展開だとは思わないけども、これは凄い。
 最後は御大が静かに登場。
 そのまま、淡々としたビート感のまま、さまざまに表情を変えながら幕。
 不思議で妖しいエンディング。
 夜の部への期待と不安を残したまま、昼のステージは終了、“Pangaea” へと続きます。




posted by H.A.