“In Concert” (Sep.1972) Miles Davis
Miles Davis (electric trumpet with wah-wah)
Cedric Lawson (electric piano, synthesizer) Reggie Lucas (electric guitar) Khalil Balakrishna (electric sitar) 
Michael Henderson (electric bass) Al Foster (drums) Badal Roy (tablas) James Mtume (percussion)
Carlos Garnett (soprano, tenor sax)

イン・コンサート
マイルス・デイビス
SMJ
2014-10-22


 Miles Davis、“On The Corner”(Jun.1972)直後のライブ録音。
 スタジオ録音から三か月後、本格的な“On The Corner”ライブツアー初旬の公演、その後、Milesの怪我でツアーは中止、との情報もあります。
 ここまでの主力メンバーが、以降しばらく共演するメンバーに交代しています。
 John McLaughlin が抜けReggie Lucasが参加。
 さらにここまでの中核メンバーJack DeJohnetteが、後々まで共演するAl Fosterに交代。
 残ったMichael Henderson、Mtumeとのコンビネーションは休養まで続きます。
 “On The Corner”はまだ世に出ていない時期ですが、その音楽をライブでやろうとしているとともに、新たな布陣で次のことを試そうとしていたようにも聞こえます。
 “Dark Magus”(Mar.1974)、“Agharta”、“Pangaea”(Feb.1.1975)への布石にも見えます。
 楽曲もポリリズミックな“On The Corner”的なモノに加えて、素直なファンクの”Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)系、”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)系が半分を占めます。
 ポリリズムとその前までのファンクとは違う疾走ファンクの融合がどこまでできるのか確かめようとしていた様にも聞こえます。
 その実相はわかりませんが、結論からすれば、一部は“On The Corner”的ですが、その複雑なビートを作り出すことは出来ず、“Dark Magus”(Mar.1974)的な疾走ファンクの色合いの方が強い作品。
 それらの要素が融合することなく混在している状況。 
 Al Fosterとなぜかインド楽器陣が定常ビートの疾走ファンクで、他の楽器はポリリズミックなアプローチ。
 Al Fosterには別の可能性を感じていたのでしょうが、インド楽器陣がここまでになったのもわかるような気がします。

 なお、“On The Corner”の次の日のセッション(“Big Fun”収録、但しツインドラム)、あるいは、三か月後、“Get Up with It”(May.1970-Oct.1974)収録のDec.1972のセッションでは、Al Fosterのドラム、同じメンバーでカッコいいポリリズミックファンクが出来上がっています。
 メンバーのバランス、役割分担の最適化にもう少し調整が必要だったのでしょうかね? 

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Disc 1 (first set):
 1.Rated X 12:16
 2.Honky Tonk 9:18
 3.Theme from Jack Johnson 10:12
 4.Black Satin/The Theme 14:14

 冒頭曲は“On The Corner”の世界。
 さまざまな楽器が複雑に絡み合うリズム隊と、Milesも含めてフロント陣が現れては消えながら、バンド全体でビートを作り出す構成。
 “On The Corner”のような粘りには欠け、Al Foster的疾走感の方が強いのですが、ポリリズミックなビート、調性の取れた混沌がまずまず出来ているように思います。
 このままテンションを上げていくのかと思いきや、二曲目以降から様相が異なってきます。
 引き続き、ファンク曲をさまざまな楽器の絡み合いで“On The Corner”の世界へ近づけようとしていたようにも聞こえます。
 が、肝心のドラムがいかにも素直なビート。
  “On The Corner”にも収められていた“Black Satin”のドラムの違いを比べると明らか。
 16ビートの軽快感、粘りとタメ、キメがカッコよくファンキーなビートではなく、シンプル。
 出だしは悪くない感じですが、アクセントがいいところに入らず、あの粘って跳ねる感じが出ていません。 
 さらに終盤はタンタンタンタン・・・といかにもシンプル。
 また、左チャンネルのダブラとシタール (ギター?)が、ドラムと同じビートをジャッカジャッカジャッカジャッカ・・・
 平板で均等なシャッフルを刻み続け、お祭り(阿波踊り?)的ノリの場面がしばしば・・・
 右チャンネルのキーボード、パーカッションは複雑に絡み合うようなビート感を出しているように思いますが、全体としては素直なビート感が前面に出ます。
 そんな中でMiles他のフロント陣のソロは悪くありません。
 結果からすれば“On The Corner”の世界とは別物、ちょっと変わった色合いも混じったファンク。
 ドラムが勘所だったように思います。

Disc 2 (second set): 
 1.Ife 27:53
 2.Right Off/The Theme 10:30

 後半はミディアムテンポのファンクでスタート。
 こちらも前半の二曲目以降と同様の印象。
 ドラムはシンプルですが、他の楽器が彩りを加えていくことで複雑なビート感を作ろうとしているのだろうなと想像はできます。
 前半と同じく、右チャンネルのキーボード、パーカッションは頑張っていますが、左チャンネルの楽器群がベースと同じパターンを続けていたり、その他諸々、素直なファンクチューンに聞こえてしまいます。
 “Big Fun”収録<Jun.12.1972>の同曲のセッションではカッコいいポリリズムが出来上がっていますが、ライブ、あるいはドラム一台ではちょっと勝手が違うようです。  
 中盤からスピードが上がるとますますその感が強くなりますが、逆に、突っ走るように叩きまくるドラムが心地いい時間。
 さらに再びミディアムビートにテンポを落としたところは、粘りのあるビートにMilesのトランペット。
 そこがカッコいいのですが、長い時間ではないのが残念、スローバラードに続きます。
 最後はアップテンポなシャッフルビート。
 ノリノリですが、こちらも左チャンネルからお祭りビートが聞こえてきます。
 各人のソロはカッコいいし、右チャンネルのパーカッション、キーボードは混沌な感じがカッコいいんだけども・・・
 そんな感じで、ポリリズミックではなく、あくまで素直でノリのいいビートでドカーンと盛り上がって締め。
 もし“On The Corner”を聞いていなかったら、インド楽器で変わった色付けがされた突っ走るファンク・・・でよかったのかもしれませんが、なんとも複雑な気持ち・・・

 以下、勝手な想像に過ぎませんが・・・
  ・Al Fosterのドラムの疾走感をバンドに取り入れたかった
  ・“On The Corner”的なファンキーでポリリズミックなグルーヴと疾走感を融合したかった
  ・Al Fosterのドラムでも、他の楽器との融合でポリリズミックになると考えていた
  ・実際“Big Fun”収録の"Ife"<Jun.12.1972>のセッションではできていた(ツインドラムだが)
  ・が、ライブでは目論み通りにはならず、シンプルなビート中心となった
 ってな感じ、と推察します。
 そんな疾走するファンク、激烈な"Dark Magus”(Mar.1974)へと続きます。

 


posted by H.A.