“On The Corner” (Jun.1972) Miles Davis
Miles Davis (electric trumpet)
Chick Corea (electric piano) Herbie Hancock (electric piano, synthesizer) Harold I. Williams (organ, synthesizer)
David Creamer, John McLaughlin (electric guitar) Collin Walcott, Khalil Balakrishna (electric sitar)
Michael Henderson (electric bass) Jack DeJohnette (drums) Jabali Billy Hart (drums, bongos) Badal Roy (tabla) James "Mtume" Foreman, Don Alias (percussion)
Dave Liebman (soprano sax) Carlos Garnett (soprano, tenor sax) Bennie Maupin (bass clarinet) Paul Buckmaster (cello)

ON THE CORNER
Miles Davis
COLUM
マイルス デイビス


 Miles Davis、これまた問題作、不思議感爆発の新展開。
 ここまでの作品、その後の作品とも全くムードが異なります。
 音源が多いこともあってか、Milesの変化は概ねアナログ的で、徐々に変わっていくのですが、突然変異にも見える作品がいくつか。その一つ。
 ここまででは、“In a Silent Way” (Feb.1969)、“Jack Johnson"(Feb.18,Apl.7,1970)と本作。
 下のように並べてみると、これらの三作も繋がってはいるのですが、直前の作品とは質感が全く異なります。
 クラシック~ポップス畑のPaul Buckmasterが実質的なディレクターだったから、といった話もありますが、それだけでもなさそうです。
 Milesの中では常に次の音が鳴っていて、その一部は前の作品で試行済み。
 それを大胆に強調した結果なのでしょう。 
 本作も前作”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)の一部で示されていた、混沌と調性が同時に混在するポリリズミックなビートを強調し、具現化した結果とも思えます。

 “Nefertiti” (Jun.Jul.1967)        ジャズ
 “Miles in the Sky” (Jan.May.1968)   電化ジャズ
 “Filles de Kilimanjaro” (Jun.Sep.1968) ファンクジャズ+電化ジャズ
●”In a Silent Way” (Feb.1969)      ファンクジャズ+電化ジャズ
 “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)    ファンクジャズ+電化ジャズ
 “Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)   ファンクジャズ+電化ジャズ+フリージャズ
●”Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)   ファンク
 “Live Evil” (Dec.16-19,1970)       ファンクジャズ+電化ジャズ+フリージャズ+ポリリズム 
●”On The Corner” (Jun.1972)       ポリリズミックファンク
 “In Concert” (Sep.1972)         ポリリズミックファンク+疾走ファンク
 “Dark Magus” (Mar.1974)       疾走ファンク

 LP一枚、4曲に分かれていますが、概ね二つのリズムパターンで乗り切ってしまいます。
 ここまでの諸作と同様に、自由にセッションを繰り広げ、それを編集して出来上がった作品なのでしょう。
 おまけに、ホーン陣の音量のレベルが低く抑えられています。特に二曲目以降。
 タイトルは「俺は隅にいるから(勝手にしてくれ)」といった意味?
 リズム隊だけでなく、ホーン陣を含めて作り上げる複雑なビート・・・の感じを強調したかったのでしょうね?
 これをジャズと強弁する人はいないと思いますが、どのジャンルから見ても特異な音。
 ジャズ的なインプロビゼーションを期待すると拍子抜け、ファンクとしてもビートはさておき、その上に載ってくる音が混沌としていてなんのことやら・・・
 どのジャンルから見ても取っつきにくそうですが、このビートの妙、カッコよさに気付いてしまうと病み付きになってしまって・・・
 聞き流してしまうと単調にも聞こえてしまいそうなひたすら続くビートパターンが陶酔感を誘う、そんな音。
 ジャズなオヤジには受けなくとも、ゲームミュージック、ミニマルミュージック?を聞いて育った現代の若い世代に受けたのも分かるような気がします。

 この作品のMVPは”Live Evil”に引き続き、またまたドラマーJack DeJohnette(+Billy Hart)のように思います。
 さまざまなパーカッションが出てきますが、このポリリズム感を出せるのは、複雑でカッコいいビートを作り出し、叩き続けることのできるドラムだからこそ。
 Jack DeJohnetteとの共演はこの作品までですが、後続の作品を聞くとなおさら・・・
 次作“In Concert”(Sep.1972)はこのアルバムの感じを出そうとして出し切れていません。
 その後もこれに類する作品は無いと思います。
 そのくらい不思議で特別な音楽。
 この作品でやろうとしていたことを、この後紆余曲折を経ながら発展させ完成した音が、“Get Up with It”収録の"Calypso Frelimo"<Sep. 1973> の凄まじい演奏。
 休養前のMiles Davisの音楽のたどり着いた先のように思います。

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 冒頭から複雑なファンクビート。
 この曲のみJohn McLaughlin、Dave Liebmanが参加しています。
 淡々としながらも複雑なビートを刻むドラム、ベース。
 その上に違ったビート感でリズムを刻むギター。
 それらに絡むタブラとパーカッション。
 さらにキーボードも加わり、時折パターンを変えながらも淡々進む複雑なビート。
 それらを背景にして、次々と現れては消えるサックス、ギター、キーボードのソロ。
 続くこと約7分。
 やっと登場するワウを掛けたトランペット。
 が、前面に出るイメージではなく、カウンターをあてるギター、キーボード、リズム隊の中にの中に溶け込んでいるイメージ。
 トランペットが去ってもフロントに立つ楽器が入れ代わり立ち代わりしながら、同じビートパターンで延々と20分続きます。
 淡々としているようで、打楽器陣だけでなく、またリズム隊だけでなく、フロント陣の音も含めて複雑なビートが作られ、次々と変化していくようなイメージ。
 これは今まで無かったであろう新しさ。
 しかもカッコいい。

 二曲目で違うビートのパターンに変わりますが、ここから最後まで基本的には同じパターンが続きます。
 これこそまさに、古今東西、世界最高のビート・・・
 ・・・は大げさかですが、そんなリズム。 
 二台のドラム、Jack DeJohnette、Billy Hartの二人が叩いているのだと思います。
 ”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)に近いパターンがあり、Jack DeJohnetteが主だと思うのですが、実際どうだったのかはわかりません。
 軽快な16ビートがベースですが、粘りとタメ、微妙にズレたところにビシッと入るアクセントがカッコいいビート。
 極めてシンプルながら、さまざまに表情を変えていくベース。
 軽快ながら、粘って跳ねる、不思議でファンキーなグルーヴ。
 ドラムとベースを意識して聞いているとクラクラしてくるような陶酔感を誘うビート。
 これは最高。
 さらにタブラやらパーカッションやらが絡みさらに複雑化。
 ドラムとベースは強烈ですが、ホーン、ギター、キーボードは音量が抑えられている感じで不思議なバランス。
 バスクラ、ソプラノサックスのソロ、インタープレーが続いているのですが、誰かがフロントに立つといったイメージではなく、打楽器はもちろん、全ての楽器の音がビートに溶け込んで、ビートが複雑に表情を変えていきます。

 LPレコードB面に移ると、同じパターンながら、ビートが強くなります。
 絞った音量が不思議なバスクラのソロから始まり、トランペット~サックスソロでバンド全体の音量が上がってきて、普通に盛り上がるかな?と思っていると、続く遠くで鳴っているようなギターで期待は裏切られます。
 あくまでビート中心です。
 LPレコード片面、ずーっと同じリズムパターン、クラクラしてくるような音であるがゆえに、トリップミュージックにもなりそうな感じ。 
 終盤にビートを落として、パーカッション、タブラ、シタールが妖しく絡み合う時間。
 その後、また複雑なファンクビートに戻りまずが、さまざまな楽器が現れては消え、絡み合いながら、ビートも表情を変えながら静かにエンディング。
 やはり普通のジャズ、あるいはファンクを聞く感覚で聞いてしまうと、とらえどころのない問題作だろうなあ・・・ 
 言い換えればとてもクリエイティブ。
 とてもカッコいい音楽、凄いアルバムです。




posted by H.A.