”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davis

<Session A. Feb.1970>
Miles Davis (trumpet)
Joe Zawinul, Chick Corea (electric piano) John McLaughlin (electric guitar) Dave Holland (acoustic bass) Billy Cobham, Jack DeJohnette (drums) Airto Moreira (percussion)
Wayne Shorter (soprano sax) Khalil Balakrishna (electric sitar)

<Session B. Jun.1970>
Miles Davis (trumpet)
Herbie Hancock, Chick Corea (electric piano) Keith Jarrett (organ) Ron Carter (acoustic bass) Jack DeJohnette (drums) Airto Moreira (percussion)
Steve Grossman (soprano sax) Hermeto Pascoal (drums, vocals, electric piano)

<Session C. Dec.19,1970> 
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar) Keith Jarrett (electric piano, organ) Michael Henderson (electric bass) Jack DeJohnette (drums) Airto Moreira (percussion)
Gary Bartz (soprano sax, flute) Conrad Roberts (vocal narration, poem)
 
Live-evil
Miles Davis
Colum
マイルス・デイビス


 Miles Davis、新たなスタート。
 激烈ファンクを中心にした一作。 
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969)の延長線上にはあるのですが、”Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)の色が混ざり、さらに次の試みもなされているように思います。
 “Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970)から半年しか経っていませんし、演奏される楽曲も1/3は同じなのですが、雰囲気は異なります。
 ここまでと違った感がするのは、ベースがDave HollandからMichael Henderson へ交代したことが大きいのでしょう。
 結果、ジャズ度がより薄くなっています。
 なお、後にJack DeJohnetteが抜けるとさらにジャズが遠くなるのですが・・・
 本作、いくつかのセッションから構成されていますが、メインは<Dec.19,1970>のライブ。
 Dave HollandがMichael Hendersonに、Steve GrossmanがGary Bartzに、Chick Coreaが抜けて代わりにJohn McLaughlinが参加。
 “Jack Johnson" (Apl.7,1970)に近い布陣、ファンク、ロックな布陣が出来ました。
 Jack DeJohnetteもロックなビートを叩き始めたように思います。
 Keith Jarrettも引き続き狂気の面持ち。
 Milesもワウワウを使用したサウンドがメインに。
 などなど合わせて、このあたりの作品からはモダンジャズファンはなかなかついて行くのがしんどくなってくるのだと思いますが、激烈なインプロビゼーションにジャズ的なものはまだまだ残っています。
 特にCD二枚目中盤から、LPではD面に凄まじい「ジャズ」な演奏が収められています。
 ここでのMilesのソロはベストパフォーマンスの一つだと思います。
 また、ブラジリアンHermeto Pascoal、さらにシタールを導入し、Chick Corea, Joe Zawinul, Ron Carterを含むセッションも含まれています。
 Airto Moreiraとバンドを組んでいた人。
 Milesに、曲が書ける面白いヤツ連れてこい、言われて紹介したのでしょうかね。
 バンドに入るか、一作でも作れば面白いモノになったように思いますが、この一度のみのセッション。
 このアルバムに収めるのが適当だったかどうかは微妙ですが、ポジティブに捉えれば、激烈な演奏の中でのチェンジオブペース。
 前に進むMilesの試行はまだまだ続いています。
 なお、本作のMVP(除くMiles)はKeith Jarrettではなく、ジャズでもロックでもないポリリズムの「ような」ビートの土台を叩きだすJack DeJohnette。
 さらにそれに絡みつくようなMichael Hendersonに準MVPを。
 エレクトリックマイルスで一括りにされてしまうことが多いのでしょうが、“Bitches Brew” (Aug19-21,1969)系の諸作とは違います。
 ファンク色が強いのですが“Jack Johnson" (Apl.7,1970)とも違います。
 単にジャズから脱してファンク云々、だけではなく、新しい試み。
 特に後半、“Bitches Brew”のライブ諸作のように、混沌と調性の時間が分かれているのではなく、それらが同時に混在している時間が長いように思います。
 混沌と調性が交錯する“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) 、ファンクな“Jack Johnson" (Apl.7,1970)を混ぜ合わせて、ポリリズミックな“On The Corner”(Jun.1972)に繋ぐ架け橋といったとらえ方もできるのかもしれません。
 モダンジャズやハードバップなどは眼中になし、フリージャズもファンクももう古い・・・
 これらからは混沌と調性がミックスされ常時流れるポリリズムだぜ・・・
 なんてMilesはこのステージで思ったのかもしれません。
 本当にそうだとしても、あまりにも展開が早いなあ。

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 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969)などと同様にテープ編集で仕上げられていますが、近年は元ネタの整理が進んでいて、元の楽曲が見えやすくなっています。
 そんなこと気にせずに感じろ・・・との意見もありそうですが、わかりやすくなるので、wikiから拝借して・・・

1."Sivad" (15:13) ・・・Session C.
 (Recorded December 19, 1970 at The Cellar Door, Washington, DC 
  & May 19, 1970 at Columbia Studio B, New York, NY)
 00:00-03:24 "Directions" + "Honky Tonk" 
 03:25-04:14 "Honky Tonk" (studio, May 19, 1970) 
 04:15-15:12 "Honky Tonk" 
2."Little Church" (3:14)  ・・・Session B.
3."Medley: Gemini/Double Image" (5:53) ・・・Session A.

 LP_A面、CD一枚目はヘビーなベースと歪んだギターが主導するファンクで始まります。
 Milesもワウを掛けたトランペットとは思えない音でスタート。
 中盤からはテンポを落とした粘っこいファンク。
 ワウからオープンなトランペットへ変わってドカーンと盛り上がり、Airto?の雄叫び。
 さらに神経質な音使いのギター、激しいエレピのソロへと続きます。
 その十数分間ベースはずーっと同じパターン。
 だからファンクなんだ、と言われればその通りなのですが、Bitches Brewバンドでのフロントに立つ楽器とエレピ、あるいはギターとの激しいインタープレーはあまり目立ちません。
 やはり新しいMilesバンドです。
 なぜか中途半端にフェイドアウトすると、続くはHermeto Pascoalを迎えたスタジオでのブラジリアンセッション"Little Church"。
 いかにもブラジルな郷愁感が漂ういい感じの演奏なのですが、わずか三分。
 もっと長ければ違ったのかもしれませんが、なぜこれがここにあるのか、やはり謎です。
 LP_A面の最後は歪んだギターとゆらゆらと定まらないバンドとの不思議なコンビネーションのスローなナンバー。
 シタール入りのセッションですが、あまり目立ちません。
 方向感が定まらないままにLP_A面は終わります。


4."What I Say" (21:09) ・・・Session C.
 (Recorded December 19, 1970 at The Cellar Door, Washington, DC)
 00:00-20:50 "What I Say"
 20:51-21:09 "Sanctuary"
5."Nem Um Talvez" (4:03) ・・・Session B.

 LP_B面に入ってバンドは大きく動き出します。
 ドラムは叩きまくり、ベースが動きまくり、キーボードが激しく弾き倒すジャンピーなファンクナンバー。
 8ビートでのカッコいいKeith Jarrett全開。
 パーカッションの妖し気な絡み具合が後のKeith Jarrettアメリカンカルテットを想い起させます。
 Milesもワウなし、オープンで吹きまくり。
 Gary Bartzもやっと登場。
 激しくもスムースな凄いソプラノサックス。
 好みはさておき、Wayne Shorter、Steve Grossmanだとここまでスッキリした感じにはなかったでしょう。
 やはりすごいサックス奏者です。
 さらにはグシャグシャとしたロックのJohn McLaughlin・・・
 これまた長尺、ひとつのリズムパターンのみですが、退屈なしのカッコいい演奏。
 続くはブラジアリアンセッションからの一曲。
 これまた穏やかで幻想的、とても素敵な演奏です。
 でも、何故ここに?はわかりません?
 謎です。
 そのままLP_C面、CD二枚目へと続きます。


6."Selim" (2:12) ・・・Session B.
7."Funky Tonk" (23:26) ・・・Session C.
 (Recorded December 19, 1970 at The Cellar Door, Washington, DC)
 00:00-16:50 "Directions" 
 16:51-23:23 "Funky Tonk"

 LP_C面、CD二枚目はブラジリアンセッションからの短い引用に導かれ、強烈なファンクが始まります。
 ここまでシンプルだったビートが一気に複雑になり、バンドのメンバーも複雑に絡み合い出します。
 Milesはワウを駆使して、何かしら新しいフレージングを模索しているようにも聞こえる激しいソロ。
 ギター、キーボードのカウンターも激しくなり、Bitches BrewバンドChick Corea、Keith Jarrettの狂気のエレピコンビほどではないにせよ、サックスソロ、ギターソロとともに混沌〜フリー、狂気のキーボードソロへ・・・
 かつて(といってもわずか半年前ですが・・・)の激烈ジャズなムードが戻ってきました。
 と思っていたら、あの"Directions"なのかあ・・・なるほど。妙に納得。
 終盤はKeith Jarrettの世界。
 アコースティックピアノにすると例のピアノソロの世界になるかも?といった場面もいくらか。
 なお、端正なソロピアノ“Facing You” (Nov.1971) Keith Jarrettは約一年後。遠い未来ではありません。
 ミディアムビートのファンクに戻って、LPでは次面に続きます。


8."Inamorata and Narration by Conrad Roberts" (26:29) ・・・Session C.
 (Recorded December 19, 1970 at The Cellar Door, Washington, DC)
 00:00-16:34 "Funky Tonk"
 16:35-16:47 "Sanctuary"
 16:47-26:08 "It's About That Time"
 26:08-26:28 "Sanctuary"

 LP_D面はC面の続きのファンクから。
 ここからが本当に凄まじい。
 複雑に絡み合うリズム隊と、ワウのトランペットで二分弱。
 そこからワウを外して血の出るようなトランペットソロが始まります。
 これは凄い。
 1:45~3:30。
 この二分弱だけでもこのアルバムは名作。
 ミストーンとかバンドのよれがどうのとかは些末な話。 
 凄まじい激情トランペット。
 サックスソロになるとさらにバンドは動き出します。
 カウンターの激しい攻撃は止んでいますが、代わりに定常なようで複雑なビート感~混沌の世界へ。
 でも、Bitches Brewバンドのようにどこか行ってしまうのではなく、ギリギリのところで踏み止まる微妙なバランス感覚。
 ブチ切れたようなギターソロになっても、ドラムがビートを出すだけでなくソロ状態で叩きまくっていても、そのバランスは保たれます。
 フロント陣もさることながら凄まじいドラム。
 激しいソロとフリーにはならない複雑なビートの饗宴。
 この辺りの音作りが“On The Corner”(Jun.1972)へ繋がっていくのかもしれません。
 中盤、一瞬の"Sanctuary"でのインタールードから、あのBitches Brewバンドのハイライト曲のひとつ"It's About That Time"が始まります。
 が、かつてのアップテンポで軽快なビート感ではなく、粘りのあるビート感。
 ここにも“On The Corner”(Jun.1972)のビートの原型が見え隠れする時間が・・・
 粘るビートと一体化したトランペット、凄まじいサックスのソロ。
 こちらも混沌に行きそうでいかない一歩手前で踏み止まるのギリギリの演奏。
 最後は“Jack Johnson" (Apl.7,1970)のようなナレーションとワウを掛けたトランペットの咆哮で幕。
 聞いている方がぐったり。
 凄いバンド、凄い演奏です。




posted by H.A.