“Miles Davis At Fillmore(公式版)” (Jun.1970) Miles Davis
Miles Davis (trumpet) 
Chick Corea (electric piano) Keith Jarrett (organ, tambourine) Dave Holland (bass) Jack DeJohnette (drums) Airto Moreira (percussion, flute, vocal)
Steve Grossman (tenor sax, soprano sax)
 
マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア
マイルス・デイビス
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
2005-10-19


 Miles Davis、Bitches Brew期のライブ、唯一の公式アルバム。
 未発表音源系の公式盤が出るまではこれが一番好きなMiles。
 諸々聞いてみて、今は“Live At The Fillmore East - It's About That Time”(Mar.1970)が一番かもしれません。
 ステージの全貌が見えるし、Wayne Shorterがいるから。
 こちらの狂気のキーボード二名の絡み合いもカッコいいのですが、いろんな曲の断片が飛び交う編集で、焦点が見えづらいこともあり・・・
 どこにいるのかわからなくなったり、同じところをグルグル回っているような不思議感があったのは、制作方法が見えてしまえば当たり前のことで、元の個々の楽曲ではなく、・・・・day Milesという「新しい」 曲を聞けということなのでしょうが・・・ 
 その迷宮感がいいのか・・・

 ともあれ、冒頭から最後まで凄まじいトランペットと狂気のキーボード二名の絡み合い。
 バンド全体でも“Bitches Brew” (Aug19-21,1969)本体と比べても激しいし、しばしば訪れる混沌の時間、その混沌と調性のバランスがカッコいい。
 これをジャズと思って聞いていなかったと思うのだけども、後のLive Evil” (Dec.16-19,1970)などと比べると、まだジャズの香りが残っているように思います。
 Dave Holland の存在が大きかったのかあと思ったり、この後からJack DeJohnetteはロックっぽく叩きだしたのかなあ、と思ったり。
 後に“Black Beauty” (Apl.1970) を聞いて、あれれ?と思い、
 そのずーっと後に”The Isle of Wight”の映像を見て、何となく全貌が見えた気になり、
 さらにずーっと後に“1969Miles” (Jul.25,1969)を聞いてぶっ飛び、
 “Live At The Fillmore East - It's About That Time” (Mar.1970)で何度目かの驚愕、
 近年の"Miles At Fillmore(完全版)”(Jun.1970)を聞いてやっと整理がついたかなあ・・・
・・・といった状況。

 ブートレッグや映像作品を追いかけておけば、あるいは関連書籍でも読んでおけば早々に整理はついたのかもしれませんが、断片的、断続的にではあるものの、いったい足掛け何年この作品と付き合っているのだろう・・・?
 諸々の演奏が収められていますが、4日間、各一時間の演奏で、楽曲としては以下の8曲しかなく、それをどう紡いで作品にするか、といったイメージで制作されたという、当たり前のこと気付いたのは、”Miles At Fillmore(完全版)”を聞いた後。
 1."Directions"
 2."The Mask" 
 3."It's About That Time"
 4."I Fall in Love Too Easily"
 5."Sanctuary"
 6."Bitches Brew"
 7."Willie Nelson"
 8."Spanish Key

 “Directions”のカッコいいテーマのブレークを入れていないのは、印税云々はさておいても、4日ともキッチリとキメ切れていないからか・・・
 “Bitches Brew”で一番キャッチーな”Spanish Key”が入っていないのは、実は演奏したのは4日で一回だけだったから?それがカッコいいので入れればよかったのに・・・?
 また、アンコールは全日あったんじゃないの?・・・
 上記の流れでベストテイク並べてちょっと直せば、ほぼLP二枚分のカッコいい作品になりそうなのに?・・・ 
 などなど、何度も聞きましたが、編集の意図のようなものが見えたり見えなかったり、その他諸々、勝手に思うところ多数。
 いずれにしても単独の作品として凄まじく素晴らしいものであるとともに、周辺の音源含めて諸々の想像力、興味関心をかきたてる音楽であることには間違いありません。
 一作で何度も何通りにも楽しめる稀有な作品です。

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(楽曲への分解はwikiより)

Wednesday Miles (June 17, 1970)
 "Directions" (2:29)
 "Bitches Brew" (0:53)
 "The Mask" (1:35)
 "It's About That Time" (8:12)
 "Bitches Brew/The Theme" (10:55)

 ステージはこの期のオープニングの定番"Directions"からスタート。
 “1969Miles”(Jul.25,1969)などのこの曲の凄まじい演奏を知ってしまった立場としては、途中で編集されているのがなんとも残念ですが、ハイテンションな演奏が続きます。
 張り詰めたトランペットのソロとキーボードとのバトル。
 キーボードが主導する短い混沌のインタールドを経て、アップテンポなジャズナンバー、この期のメインチューンのひとつ"It's About That Time"へ続きます。
 静かに始まり、徐々にテンションを上げるバンド。
 終始ハイテンションに吹きまくるトランペットと狂気混じりエレピのカウンターとAirtoの雄叫び。
 続くサックスも凄まじいソロ。
 それに合わせてエレピ陣のテンションはさらに上がり、やがて二人の壮絶なバトル~激烈な混沌へ・・・
 キーボード二台、このメンバーが揃っているこの時期だけの凄まじい演奏が続きます。
 トランペットが戻って落ち着くのもつかの間、新たな混沌"Bitches Brew"が始まります。
 極めてハイテンションな演奏ですが、まだまだ序の口、Thursdayへと続きます。


Thursday Miles (June 18, 1970)
 "Directions" (5:35)
 "The Mask" (9:50)
 "It's About That Time" (11:22)

 Thursdayも"Directions"から立ち上がります。
 尺もしっかりとられて、端正なトランペット、二台のキーボードの激烈なバトルが展開されます。
 が、例のカッコいいテーマのブレークはカットされていて出てきません。
 それに続くのは狂気のオルガンが繰り広げる混沌。
 さらにはダルなムードの妖しいジャズナンバー~狂気のキーボード二台が繰り広げるバトル。
 この折々にはさまれる混沌がこのバンドのライブでの大きな特徴でしょう。
 完全にどこかに行ってしまっているようなキーボード二台とそれに呼応するベースとドラム。
 凄まじい演奏です。
 そしてそれを制するように動く御大Miles。
 激情を発する局面も多々ありますが、端正で悠々としたトランペット。
 混沌の中からそれに導かれるように静かに迫ってくるように始まるアップテンポなビート。
 トランペットのこれまた悠々とした音。
 次第に音量を上げるバンドとそれに続く激情のサックス、切れてしまったキーボード陣。
 凄まじい演奏が続きます。


Friday Miles (June 19, 1970)
 "It's About That Time" (9:01)
 "I Fall in Love Too Easily" (2:00)
 "Sanctuary" (3:44)
 "Bitches Brew/The Theme" (13:09)

 Fridayはヒタヒタと迫ってくるようなJack DeJohnetteしか叩けない独特のビートからスタート。
 クールでハードボイルドなトランペットソロから徐々に音量とテンションを上げながら突っ走るアップテンポなナンバー。
 Steve Grossmanも“Black Beauty”(Apl.10,1970)から何段階もレベルアップしたような凄まじいソロ。
 その興奮の後、静かに立ち上がるバラードのカッコよさ。
 が、その安らぎもつかの間に、激情に遷移するバンド。
 そして激情の中から始まるヘビーな混沌、"Bitches Brew "。
 凄まじい演奏です。
 この面、Friday Milesが諸々のバランスで最高でしょう。


Saturday Miles (June 20, 1970)
 "It's About That Time" (3:43)
 "I Fall in Love Too Easily" (0:54)
 "Sanctuary" (2:49)
 "Bitches Brew" (6:57)
 "Willie Nelson/The Theme" (7:57)

 最後の面Saturdayは短い混沌から始まります。
 その混沌の中から立ち上がる静謐なバラード~激情。
 そしてヘビーな"Bitches Brew"の激情と混沌。
 ここまでの流れはFriday Milesと同じですが、少しムードは異なり、スッキリ系かもしれません。
 最後にジャズへの完全な決別を告げるようなファンクナンバー。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969)なんてもう古い、これからは“Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)のようなファンク・・・
 なんてMilesからのメッセージなのかもしれません。


※これはブートレッグからでしょう・・・?


posted by H.A.