“Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970) Miles Davis

(Feb.18,1970)
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin, Sonny Sharrock (electric guitar) Chick Corea (electric piano) Dave Holland (electric bass) Jack DeJohnette (drums)
Bennie Maupin (bass clarinet)

(Apl 7,1970)
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar) Herbie Hancock (organ) Michael Henderson (electric bass) Billy Cobham (drums)
Steve Grossman (soprano saxophone)

A TRIBUTE TO JACK JOHNSON
MILES DAVIS
COLUM
マイルス デイビス


 Miles Davisのファンクロックアルバム。
 二つのセッション、バンドで構成されていて、縁のある人々が入れ替わって参加していますが、全体は一貫性のある質感。
 LP片面各一曲、 “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)と同様に、セッションをテープ編集して仕上げたスタイル。
 以下のようなスケジュールのようで、激烈ジャズのBitches Brewライブシリーズの合間に録音したことになります。

(Feb.18,1970) “Jack Johnson"
(Mar.7,1970)  “Live At The Fillmore East - It's About That Time
(Apl.7,1970)  “Jack Johnson"
(Apl.10.1970) “Black Beauty / Miles Davis At Fillmore West

 前半のセッションは“Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)とほぼ同じメンバーですが、後半のセッションはベースもドラマーも交代、そちらが本作のメインのバンド。
 全編8ビート。
 ドラマーは後に交代しますが、Michael Hendersonを軸にしたファンクへの布陣が固まり、方向は定まりました。 
 ビートを変え、シンプルなリフを繰り返すファンク~ソウル風に背景を作って、自由にインプロビゼーションを乗せてみる・・・
 “Bitches Brew”と同じ手法ではあるのですが、もっともっとファンク寄り、というかファンクそのもの。
 Milesのトランペットは絶好調。
 ロックだろうが何だろうが吹いている印象は変わりません。
 まさにやんちゃなボクサーっぽいMiles Davis。
 この後、このままの路線ではなく、この作品の要素を消化吸収し、次のステップ”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)、さらには”On The Corner” (Jun.1972)、 ”Agharta”、“Pangaea” (Feb.1.1975)に変化していくMilesバンド。
  “Miles in the Sky” (Jan.May.1968)が端緒なのでしょうが、このアルバムの前後のライブまではジャズなムードも残っていました。 
 が、このアルバムには、少なくともジャズ的なビートはありません。 
 激烈ジャズの“Bitches Brew”バンドのライブは続きますが、メンバーはさておき、Milesの意識の中からはアコースティック4ビートは過去のものになってしまったのでしょう。 

 ・・・この作品を聞くとそう思ってしまうのですが、実際にはこの後も“Black Beauty / Miles Davis At Fillmore West” (Apl.10.1970)、“Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970)などのフリージャズ混じりのファンクジャズ路線、あるいは、この少し前には“Big Fun”収録、インド楽器を交えた"Great Expectations/Orange Lady" (Nov.19.1969)、Joe Zawinulを交えた"Recollections"<Feb.6.1970>、"Lonely Fire" <Jan.27.1970>などの妖しいジャズの吹込みは多々。 
 本作“Jack Johnson"にしても、それらの試行、そのいくつか、あくまでセッションの記録をプロデューサーがサントラ、アルバムに仕上げたものでしかなかったのでしょう。
 次は“Miles Davis At Fillmore”、さらにここまでの諸作の要素全てをブッ込んだような“Live Evil”(Dec.16-19,1970) へと続きます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 冒頭は“Blow by Blow” (1975) Jeff Beck の“Freeway Jam”はここから引用したのかな?と思うベースライン、シャッフルビートから始まります。
 ギターもちょっと似ていますかね・・・?
 これはまがうことなくロックです。
 ミディアムの8ビート、そのリズムパターン、リフがほぼLP片面全編で続きます。
 心地よくバウンドするファンクなビート、カッコいいロックなカッティングのギターを背景にして、Miles Davisのトランペットは何も変わりません。
 悠々堂々と端正な音で長尺なソロ。
 聞いている方もそうだけど、吹いている方も心地よさそうな音。
 爽やかですらあります。
 この三日後にFillmore West~Eastへ帯同するSteve Grossmanのソプラノもちょっと沈んだムードながら、それが妖し気でいい感じ。
 Herbie Hancockのオルガンが少しだけ登場し、ファンクな色付けになっていますが、らしくはありません。
 途中ビートを落とす局面はありますが、基本的には同じビートとリフ。
 このままか・・・と思っている18分過ぎ(下の映像では7:30ぐらい~)、唐突にビートが変わって、後に”Theme from Jack Johnson”と題される例のどカッコイイギターのリフ、ひたすらの約二分間。
 Sly and the Family Stoneの”Sing a Simple Song”?のパクリとの話はありますが、カッコいいのでまあよろしいのでは。
 また元のビートに戻ってやっと登場、凶暴なロックギターソロのJohn McLaughlin。
 A面のMVPはMichael Hendersonのベースでしょう。それともJohn McLaughlinかな?

 B面に移ってスローなファンクからスタート。
 B面も一曲、3~4のパターンで構成されていますが、それらもどこかで聞いたような気がするけども、思い出せません。
 Milesは変わらず悠々とした吹きっぷり。
 途中から雰囲気が変わって“In a Silent Way” (Feb.1969) っぽいムード、と思ったら“Bitches Brew”バンドのメンバーでした・・・
 さらにビートが変わって、またまた一つのリフをひたすら繰り返すファンク。
 最後はもの悲しく幻想的なバラードとナレーションで締め・・・
 シンプルなファンクでありロックなのですが、なぜか不思議な質感。
 なんだかんだでトランペットはジャズなんだろうなあ。たぶん。




posted by H.A.