“In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davis
Miles Davis (trumpet)
Chick Corea, Herbie Hancock (electric piano) Joe Zawinul (organ) Dave Holland (double bass) Tony Williams (drums) Wayne Shorter (soprano saxophone) John McLaughlin (electric guitar)

In a Silent Way
Miles Davis
Mobile Fidelity Koch
マイルス デイビス


 Miles Davis、世紀の問題作。
 私にとって”Bitches Brew” (1969)は早めにある程度わかったような気がしたのですが、こちらはいまだによくわからないというか、いや、わからないのでなくて不思議で、なんというか・・・
 前作“Filles de Kilimanjaro” (Jun.Sep.1968)はちょっと変わったファンクジャズの範囲でしたが、延長線上にあるような感もあれば、隔絶しているような感もするし・・・
 Joe Zawinulが参加していない“Water Babies” (Nov.11-12.1968)のセッション、参加した“Directions”収録の"Directions I & II"、"Ascent"<Nov.27,1968>を比べてみると、彼の参加が全体のムードを不思議で妖しい方向に変えたのだろうと推察できます。
 さらにJohn McLaughlinがここまでにはなかった色付け。
 いずれにしても、全編穏やかながら、ぶっ飛んでいます。

 終わったと思ったらまた始まり、
 このインプロビゼーションは聞いたような気もするし、そうでもないような気もするし、
 エレピが終始カウンターをあてているので誰のソロなのかわからなくなり、
 ソロのオーダーがどうなっていたのかわからなくなるし、
 左右中央、いつどこからエレピが飛び出てくるかわからないし、
 気が付けばエレピがオルガンになっていたりして・・・
 ・・・・・・同じところをグルグル回っているような迷宮感。

 楽曲だけ決めてフリーにセッションして、その結果をテープ編集で作品にしたから。
 Joe Zawinulの参加とテープ編集が不思議感と“Filles de Kilimanjaro”とのギャップの根幹なのでしょうね。
 これが激しい演奏だったりすれば、まだわかりやすそうな気もするのですが、終始淡々としていて穏やかなのがなんとも不思議で・・・

 各々長尺な全四曲。 
 ヒタヒタと静かに迫ってくるようなビート。
 複雑に絡み合いながらスペーシーな背景を作る二台のエレピとオルガン、ギター。
 その中を泳ぐような端正なトランペット。
 あまり激しくはないギター、サックスとエレピのインタープレー。 
 複数台のエレピが絡み合いながら、どこかで何が鳴っているのかわからない不思議な空間・・・ 
 ・・・・・・おっと、文章にすると「激しくはない」を除けば、”Bitches Brew”と同じですね。
 違いはクールなのか、熱いのか、だけなのかもしれません。
 それでも、後に数か月後の激烈なライブ”1969Miles” (Jul.25,1969)などを聞いてしまうと、この穏やかなムードは不思議です。
 Joe Zawinulの新たな参加によって妖しく穏やかになり、さらに本作にはHerbie Hancockが参加しているので、クールに上品に仕上がってしまった・・・
 よって、もっと激しくしたかった、あるいは結果的に激しくなった”Bitches Brew” (1969)、そのライブにはHerbie Hancockは呼ばれていない、もしくはHerbieの方から断った・・・・・・
 確信はありませんが、さて・・・?

 ・・・とかなんとか、やはりMiles 諸作の中では異色だと思いますが、淡々としていて、フワフワしていて心地いいので、結構好きだったりします。
 ”1969Miles”を聞いてからは、それとのギャップに、頭の隅で?はてな?マークを頭に浮かべながら。
 激烈ライブ”Bitches Brew Live”/一部 (Jul.5,1969)、”1969Miles” (Jul.25,1969)などを経て、公式音源としては、聖典”Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)へと続きます。




posted by H.A.