“Sorcerer” (May.1967,1962) Miles Davis
<1967>
Miles Davis (Trumpet)
Herbie Hancock (Piano) Ron Carter (Double Bass) Tony Williams (Drums)
Wayne Shorter (Tenor saxophone)
<1962>
Miles Davis (trumpet)
Bob Dorough (vocals, piano) Paul Chambers (bass) Jimmy Cobb (drums) Willie Bobo (bongos)
Wayne Shorter (tenor saxophone) Frank Rehak (trombone)

Sorcerer
Miles Davis
SBMK
マイルス・デイビス


 Miles Davis、大黄金のクインテット、クールでモーダルな新主流派的Miles第三弾。
 もちろん“E.S.P.” (Jan.1965)、“Miles Smiles” (Oct.1966)と同じ線ですが、このバンドの音が確立した作品のように思います。
 この機のバンドの完成その1が“Four & More” (Feb.1964)だとすれば、本作が完成その2。
 クールで妖し気なムード。
 多くを占めるWayne Shorterの不思議系の楽曲の因る部分が大きいでしょう。
 予測不能なメロディとフワフワとした質感。
 どんな音が背景であれ、Milesはいつも通りのクールな佇まいですが、サックスの爆発的なインプロビゼーションが目立ってきました。
 また、本作でもピアノが音を出していない場面が目立ちます。
 そのピアノレス感も妖しさ、クールさを増幅。
 ピアノソロは流麗で、バックのビートも含めて一気に空気が変わります。
 が、バッキングは離散的、かつ、どこからきてどこに飛んでいくのかわからない大胆不敵な音使い。
 さらにTony Williams、Ron Carterを中心とするビートもより強烈に。
 淡々としたシンバルと激しいフィルイン、淡々としていながら突然スピードを変え伸び縮みするベース。
 ライブの場ではこのバンドの定番の手法でしたが、スタジオ録音でもビートが伸び縮みする場面が増えてきたように思います。
 ドラム、ベース、ピアノのさまざまな組み合わせで、ビートが変化していくスタイル。
 シンバルが高速な4ビートを刻む中で、ベースのみが遅くなったり、三人揃って加速したり、減速したり、二人だけが動いたり・・・
 その他諸々、変幻自在。
 それらが妖しいメロディ、コード進行と合わせて、他にはない不思議な浮遊感、躍動感。
 その他含めて、前二作を経て、このバンドの音が確立したアルバム。
 本作と同時期の録音“Nefertiti” (Jun.Jul.1967)がこのバンドのたどり着いた高みのように思います。
 次作、Miles最後のアコースティック4ビートジャズ“Nefertiti” (Jun.Jul.1967)へ続きます。




posted by H.A.