“E.S.P.” (Jan.1965) Miles Davis
Miles Davis (Trumpet)
Herbie Hancock (Piano) Ron Carter (Double Bass) Tony Williams (Drums)
Wayne Shorter (Tenor saxophone)

E.S.P.
マイルス・デイビス
SMJ
2013-09-11


 Miles Davis、クールでモーダルな新主流派的Milesの本格的スタート。
 というよりは、“Miles in Berlin” (Sep.1964)から数カ月、Wayne Shorterを加えた黄金のクインテットの本格的スタート、の方がしっくりくるのでしょう。
 書いておきながら、新主流派って何?ってよくわかっていないのですが、クールな質感のモードを中心としたジャズ、と勝手に定義しておきます。
 その意味では”Milestones”(1958)、”Kind of Blue” (1959)が端緒なのかもしれませんが、その後もハードバップ的ジャズとの間を行き来しながら、ここからは作品のムードが統一されたように思います。
 リズム隊が固まった“Seven Steps to Heaven” (Apl.May.1963)でハードバップ的演奏に区切りをつけ、クールなモード中心の音作りにシフト。
 さらにロック、ファンクを取り入れた”Bitches Brew” (1969)前後作に向けて少しずつ変化していく、そのスタート、といったところ。
 楽曲提供は、御大は一曲のみ、他は各メンバー持ち寄りで、多彩な色合い。
 一風変わったメロディ揃いですが、アバンギャルドでも何でもない、まあ普通にジャズなのですが、ハードバップ色はありません。
 そのメロディが醸し出す雰囲気なのか、バンドの演奏なのか、ハードバップ時代とは違うクールなムードが漂います。
 御大がどこまで明確な指示を出していたのかはわかりませんが、Wayne Shorterの前後の録音“Speak No Evil” (Dec.1964)、“The Soothsayer” (Mar.1965)、“Et Cetera” (Jun.1965) を聞くと、このアルバムで試したことを徐々に取り込んでいっているように思えます。
 本作の二ヶ月後の録音の”Maiden Voyage” (Mar.1965)Herbie Hancockは、完全に本作の要素を完全に取り込み、さらにわかりやすくスタイリッシュに仕上がった本作と兄弟のようなアルバム。
 このムードの根幹がHerbie Hancockだから、と言われても納得してしまいますが・・・
 端正なピアノに、クールなベース、静謐と爆発を使い分けるドラム、なんだか訳の分からないサックス。
 そして悠々としたいつもと変わらないクールなトランペット。
 但し、このバンドのトレードマーク、“Miles Davis in Europe” (Jul.1963)以降のライブで聞かれたような伸び縮みするようなビート、あるいは激しいドラム、ピアノの変態的オブリガードの場面は少々のみ。
 全部合わせて端正なジャズ。
 クールでモーダルな、醒めているようで熱があるような、微妙で不思議なムード。
 とにもかくにも、クールな黄金のクインテット、始動。




posted by H.A.