“Seven Steps to Heaven” (Apl.May.1963) Miles Davis
Miles Davis (Trumpet)
Herbie Hancock (piano) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums)
George Coleman (tenor saxophone)
Victor Feldman (piano) Frank Butler (drums)

Seven Steps to Heaven
Miles Davis
Sbme Special Mkts.
マイルス デイビス


 Miles Davis、モダンジャズからエレクトリックマイルスへ至り、休養まで、のシリーズ。
 ブートレッグは積極的には聞いていませんでしたが、今年“Miles At Fillmore(完全版)” (Jun.1970(Apl.1970)) Miles Davis、さらに“Everything's Beautiful” (2015) Miles Davis & Robert Glasperを入手したことをきっかけに、全体を聞き直してやっと自分なりの整理がついてきました。
 メンバーを変えながらちょっとずつ変わっていくのが面白い時期、“Circle in the Round” (Oct.27.1955-Jan.27.1970)などの未発表曲集なども含めて時系列で追いかけると新しい発見があったり、メンバーのリーダー作との関連含めて、分かっていなかったこと、想像の余地など、まだまだたくさんありました。
 私的な謎だったドラマーAl Fosterにこだわり続けた理由が、“Get Up with It”(May.1970-Oct.1974)を時系列、前後の作品の流れを意識ながら聞いていくと見えてきたりも。 
 などなど、この辺りの流れ、どこかの本で読んだような気もしますが、もう忘れてしまったので、私なりに。
 何年か後にまたやると違う印象になるんだろうなあ・・・


 スタートは新クインテットの始まりの本作から。
 しばらく行動を共にするピアノトリオHerbie Hancock、Ron Carter、Tony Williamsが揃った一作。
 後の革新的メンバーが揃いましたが、何か革新的な・・・というよりも、極めてハイレベルなハードバップ。
 冒頭の”Basin Street Blues”から“'Round About Midnight” (1955)の頃を想わせるような演奏。
 こちらはVictor Feldmanのトリオですが、続くタイトル曲のHerbie Hancockのトリオのサポートにしても典型的なモダンジャズ~ハードバップ。
 シンバルレガートにウォーキングベースにオーソドックスなコンピング。
 LP片面に三曲づつ、各8分前後の演奏、バラードとブルースとオリジナル曲の適当な配分。
 This is ハードバップな様式美的な音、様式美的なアルバム構成です。
 新主流派的なクールなムードはまだありません。 
 それにしてもカッコいいハードバップだなあ。
 ”I Fall in Love too Easily”とかのミュートトランペットのさりげないフレージングはあの時代の象徴の一つ。
 聞き飽きたはずのメロディがとてつもなくかっこよく聞こえます。
 なおこの曲はエレクトリック期、激烈な"Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)でも吹いている愛奏曲。
 体に染みついたようなメロディ、バラードでのトランペット自体はこの頃から何も変わっていないのでしょう。
 最後の曲の”Joshua”に次を予見させるモーダルでリズムの伸び縮みが感じられる演奏。
 時代は”Impressions” (1963) John Coltraneあたりのモードの黎明期、激烈系“Free for All” (Feb.1964) Art Blakey、“Out To Lunch” (Feb.1964) Eric Dolphyまでもう少し。
 Milesの次のスタジオ録音は“E.S.P.” (Jun.1965)。
 Milesのアコースティック4ビート、モダンジャズな演奏はまだ続きますが、ハードバップ的ジャズはこれでおしまい。
 ここで最高のメンバーを揃え、ここからのライブで音を固めつつ、次の展開、伸び縮みするビート、クールな質感の新主流派的ジャズ~エレクトリックマイルスへと数年に渡る試行が始まります。
 新クインテットの始まりというよりも、Milesのハードバップの最終作品として。
 それにしても端正でカッコいいジャズだなあ。


 

posted by H.A.