“Facing You” (Nov.10,1971) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)

Facing You
Keith Jarrett
Ecm
キース ジャレット


 Keith Jarrett若き日の初めてのピアノソロアルバム。
 これがエレトリックMilesバンドのヨーロッパツアーでオルガン、エレピを引っ掻き回していたついでの録音とは想像できない端正な演奏。
 同時期のMilesバンドの演奏では、“The 1971 Berlin Concert”(Nov.6,1971)がDVDで発表されているようです。
 “Death and the Flower”(Oct.1974)、“The Köln Concert”(Jan.1975)あたりから遡って聞いた立場としては、あれれ?と思った記憶があります。
 おそらく沈痛激烈か、静謐耽美を期待していたのでしょう。
 長尺な冒頭曲、それらとは少々違う質感のビートに乗った素直なピアノが強く印象に残ったこともあるのでしょう。
 が、二曲目”Ritooria”に入ると一転。
 短いながらも、沈痛、激烈、静謐、耽美すべての要素が入った美しくも凄まじいピアノ。
 この6分弱に後のKeith Jarrettがギュッと詰め込まれているようにも感じます。
 静謐、耽美から始まり、徐々に高揚し、激烈、沈痛に展開していく構成。
 あの“The Köln Concert”(Jan.1975)の断片もちらほら。
 一般的にはメロディアスで前向きなもうひとつの“My Song” (1977)、”Lalene”あたりが人気なのでしょう。
 私的には静謐耽美、沈痛激烈な”Ritooria”が好み。
 それでも”Lalene”もメロディアスなだけでなく、後の様式美の断片があっていいなあ・・・
 その後再演された曲は“Vapallia”だけかもしれませんが、楽曲、インプロビゼーション、その他含めて、後のKeith Jarrettの断片がいろんなところにちりばめられています。
 それにしてもあきれるぐらい次から次へとフレーズが湧き出てくるし、強烈な加速感、疾走感はもちろんこの頃から。
 個々の楽曲、アルバムとしてのまとまり、完成度についてはさておき、インプロビゼ―ションはただ者ではない凄み。
 端々に感じられる微かな狂気混じりとも思えるフレージングは、音楽の質感は違えど、Milesバンドと同じなのかもしれませんし、この後のさまざまな音楽そのもののようにも思います。
 なお、この作品と前後しながら、エレクトリックマイルス所縁のアーティストが次々とECMに吸収されていきます。
 Chick CoreaKeith Jarrett, Dave Holland, Jack DeJohnette, Bennie Maupin・・・
 さらにECMマニアな人としては、同門のChick Corea、"A.R.C." (Jan.1971) 、"Piano Improvisations vol.1.2." (Apl.1971)、あるいは、後に同じメンバーでそれぞれのバンドを作るBobo Stenson、同時期の完成度の高いトリオ作品“Underwear” (May.1971)と比べてしまうのですが、アルバムとしての評価は人それぞれでしょう。
 ピアニストとしての凄みは・・・

(※本投稿は2016/10/15より移動しました。)



posted by H.A.