“Miroslav Vitous Group” (1980) Miroslav Vitous Group
Miroslav Vitous (Bass)
Kenny Kirkland (Piano) John Surman (Soprano, Baritone Sax, Bass Clarinet) Jon Christensen (Drums)

Miroslav Vitous Group
Miroslav Vitous Group
Ecm Records
ミロスラフ・ビトウス


 Miroslav VitousのECMでのサックスカルテット第二弾。
 “First Meeting” (1979)と同メンバー。
 インタープレー中心の前作に対して、各人のソロスペースが明確になった構成。
 逆に楽曲の抽象度、フリージャズ的な色合いは強くなった印象。
 結果的には、Kenny Kirkland、John Surman含めた強烈なインプロビゼーションがたっぷりと聞けます。
 アップテンポでのKenny Kirklandは、まんまWynton Marsalisバンドでの強烈な疾走感のKenny Kirkland。
 これは微笑ましいというか、なんというか。
 それでもECMの真骨頂、ルバートでのバラードでは強烈な浮遊感の素晴らしいピアノ。
 そういえば、後のBranford Marsalisのバンドではそんな演奏もありました。
 その他フリージャズや激しい系、妖しい系もありますが、どんな曲でも自らがバンドを引っ張るような素晴らしい演奏。
 ダークな色合いの他のメンバーに対する、美しく明るい色合いのピアノ。
 大御所に十分伍して、絶妙なバランスを作っています。
 まだWynton Marsalisと合流する前だと思いますが、やはりこの頃から稀代の天才の雰囲気十分。
 前作では穏やかだったJohn Surmanは、本作では少々激しめ。
 得意の激しい旋回フレーズもちらほら。
 Miroslav Vitous少々後ろに引き気味でしょうか。
 もちろん後ろ回っても強烈な牽引力、推進力は全開。
 前作よりは明るさは無くなりましたが、その分ハイテンションで強烈な演奏。
 この心地よい激しさを出せるバンドは希少。
 この時期のMiroslav Vitousサックスカルテット三作、どれかを選ぶならば、この作品。私は。
 ECMの同じメンバーは二作までの流れに従ってかどうだか、次作“Journey's End” (1982)ではピアニストが交代。
 明るいのをお求めの場合は“First Meeting” (1979)、ハイテンションならば本作、妖しいのがよければ次作“Journey's End” (1982)、といったところ。

 なおこの先、1980年代からECMの作品は淡いものが増えていくように思います。
 気のせいかもしれませんし、録音がアナログからデジタルに移行していったことも影響しているのかもしれません。
 やはり、1970年代ハイテンションコンテポラリ―ジャズ、最後の砦、ってな表現が当たっているような気もするなあ・・・
 最後ってのは大げさで、他にもいくつか砦があったかな・・・?


※別のバンドですが・・・


posted by H.A.