”Trios / Solos” (1972) Ralph Towner/Glen Moore
Ralph Towner (Guitar, Piano)
Glen Moore (Bass) Paul McCandless (Oboe) Collin Walcott (Tabla)

Trios / Solos
Universal Music LLC
ラルフ タウナー


 私にとって最もECM的なアーティストと言えばRalph TownerとJan Garbarek。
 二人とも他では聞けないひんやりとした質感と緊張感だから。
 極度の透明感も同様。
 氷のように、冷たく、鋭く、透き通った美しい音。 怖いぐらい。
 Ralph Townerだけだと穏やかな感じもあるのですが、特にJan Garbarekと共演すると・・・
 ”Solstice” (Dec.1974)、あるいは”Sol Do Meio Dia” (Nov.1977)Egberto Gismontiあたりの印象が強すぎて・・・ 
 が、二人とも1980年代から優しい音に変わっていくのも面白いところ。


 そんなRalph TownerのECM初作。
 実質的にバンド”Oregon”のメンバーでの録音。
 別レーベルのOregon作品とは別のムード。
 幻想的、ハイテンションまででは同じとして、加えてひんやりとした緊張感。 
 ブラジル系のように柔らかに弾くこともできるはずのガットギターが、氷の様な透明度、触れると切れてしまう刃物のように鋭いインプロビゼーション。
 この人のギターにジャズは全く感じないのですが、ロックでもフォークでもなく、ブラジル系でもない。
 スパニッシュな感じはあるように思うのですが、ベースはクラシックなのでしょうかね?
 未だに上手く説明することができないこの人ならではの音使い。
 輪郭が明確な全く迷いの感じられない強い音。
 さらにオーバーダビングされたピアノがまた絶品。
 Glen Mooreは強烈な推進力のベース。
 本作は変則編成のゆえ、Collin Walcottとのコンビでの強烈なグルーヴが聞けるのがわずかなのが残念なところ。
 タイトル通りに、リーダーそれぞれのソロ、二人にPaul McCandless、Collin Walcottが一人ずつ加わるトリオ演奏など。
 楽曲は両リーダーの作品に加えてよく取り上げるBill Evans曲など。
 アメリカンな感じもあるのですが、全体的には国籍不明。
 メランコリックな曲に加えて、フリーなインプロビゼーションも少々。
 それにしても1970年代前半、アナログ録音の時代にこの透明度の高い音はなんだろう。
 2016年の作品、と言われても疑えない音。
 それがまたひんやりとした緊張感につながるのですが・・・
 それら含めてECMマジックに掛かったOregon、Ralph Towner。




posted by H.A.