”Once Upon a Time - Far Away in the South” (1985) Dino Saluzzi
Dino Saluzzi (bandoneon)
Palle Mikkelborg (trumpet, fluegelhorn) Charlie Haden (bass) Pierre Favre (percussion)

Once Upon A Time - Far Away In The South
Dino Saluzzi
Ecm Import
ディノ サルーシ






 Dino Saluzzi、ECMでのリーダー作二作目、コンボでは初作になるのでしょう。
 第一作“Kultrum”(1982)は彼独自のノンジャンル、ワールドミュージックな世界でしたが、こちらはジャズメンがサイドを固め、ジャズに近づいた作品。
 冒頭から十分を超えるルバートによるバラード。
 遠くから聞こえるようなバンドネオン、優雅なワルツのようなリズムがベースのルバート、現れては消えていくとても美しいメロディ、Charlie Hadenの沈み込むようなベースとMilesのようなミュートトランペット。
 Enrico Ravaとの名作 “Volver” (1986)に近い世界観。 
 LP片面、全部これがいいんじゃない、と思わせるような素晴らしい演奏。
 と思っていたら、LPではB面の冒頭にその続編があったりします。
 アルバム全編そんな幻想的な音、浮遊感の強い音。
 揺らぐ音。
 決して難解でも深刻系でもなくて、ほのかに温かなムード。
 タイトルからすると遠くの家族に捧げた演奏集なのでしょう。まさに全編そんな音。
 ブラジルやアルゼンチンの音楽に共通の穏やかな郷愁感、サウダーヂが強烈に感じられる演奏。
 ジャズでもタンゴでもボッサでもない、でも十分に普通の耳で馴染める、Dino Saluzzi唯一無二の世界。
 名作だと思います。




posted by H.A.