“Miles At Fillmore(完全版)” (Jun.1970(Apl.1970)) Miles Davis 
Miles Davis (trumpet) 
Steve Grossman (tenor sax, soprano sax) Chick Corea (electric piano) Keith Jarrett (organ, tambourine) Dave Holland (bass) Jack DeJohnette (drums) Airto Moreira (percussion, flute, vocal) 

Miles at the Fillmore: Miles Davis 1970:
Miles Davis
Sony Legacy
2014-03-25
マイルス デイビス

 “Miles Davis At Fillmore(公式版)” (Jun.1970)の完全版、4日間のライブ+α、4枚セット。
 ブートレッグは聞いていなかったし、遅ればせながら聞いたこの音源。
 元々”Miles Davis At Fillmore(公式版)” (Jun.1970)が最も好きなマイルス。 
 ”1969Miles” (Jul.25,1969)が出てからはそちら。 
 これの数か月前のライブ”Live At The Fillmore East (Mar.7, 1970)”が出てからは、それも同等、といった私見。 
 激しく編集されている”Miles Davis At Fillmore(公式版)”ではステージの全貌は見えませんでしたし、全貌が見える”Black Beauty” (Apl.1970) には、Keith JarrettもWayne Shorterもいませんでした。 
 これでやっと全貌が見えました。 
 最初から最後まで叩きまくるドラム、激しく動きまくるベース、切れてしまったような狂気のキーボード二名の凄まじさ。
 Milesも当然ながら好調な演奏。
 背景がアバンギャルドであれ、静謐であれ、時折の激情をはさみながら悠々としたトランペット。
 Steve Grossmanは“Black Beauty”(Apl.1970) と比べると長足の進歩。
 旋回するだけでなく、強烈な抑揚、激情が乗り移ったような凄まじいサックスを吹いています。
 が、2名のテンション、連携は、ちょっとバラつき気味かな。
 金曜日、土曜日は素晴らしい演奏ですが、全体のテンション、まとまりとしては、”1969Miles”、”Live At The Fillmore East (Mar.7, 1970)”の方がいいのかもしれません。
 本作はスッキリとしたミキシングなので、それによるバイアスもあるかもしれません。 
 “Miles Davis At Fillmore(公式版)”の編集の具合も何となく見えてきました。
 その他諸々、細かいところはさておき、どのステージも凄まじいエネルギー放出型ジャズ。
 調性と混沌の交錯。 
 John Coltraneのアヴァンギャルドはとても凄いけどちょっと怖い。
 一時期からは調性が崩れているように思うから。
 一方Milesのアヴァンギャルドは一定の調性の中での爆発、混沌。 
 私にはこの加減が心地いい。
 生で聞けたらどんなに素晴らしいことか・・・ 
 なお、おまけでApl.11.1970のFillmore Westでの録音、3曲がついてます。
 “Black Beauty”の次の日のようですね。

(※本投稿は2016/8/31に追記、変更しました。)




2016/8/31追記)

Disc One: (Wednesday)
1.Introduction - 0:04
2."Directions" - 10:23
3."The Mask" - 11:04
4."It's About That Time" - 10:44
5."Bitches Brew" - 13:41
6."The Theme" - 0:40
7."Paraphernalia" - 11:02
8."Footprints" - 11:13
Recorded at the Fillmore East in NYC on June 17, 1970 (tracks 1-6) and the Fillmore West in San Francisco, CA on April 11, 1970 (tracks 7 & 8)
 
 冒頭はいつもの"Directions"。
 イントロ部分は“Miles Davis At Fillmore(公式版)”にも収められていましたが、一番カッコいいテーマの部分は未収録。
 それが不思議で、Joe Zawinulへの印税云々の話で納得していたのですが、確かにもたついている感じもします。
 が、その後のトランペットソロ、サックスソロ、狂気のキーボード二台のバトル~フリーへの突入、全てカッコいい。
 続く”Mask”はKeithが主導する狂気~混沌の世界からスタート。
 激烈フリー数分の後、Milesが入ってやっと落ち着いて、スローテンポな妖しい世界。
 グニュグニュと不気味に動くキーボードを背景にサックスも妖しいソロ~再び狂気~混沌の世界へ。
 再びテンションを落としてダルなムードで拍手もなく終わると、ヒタヒタと迫ってくるようなアップテンポの"It's About That Time"。
 ここから最後までは”Miles Davis At Fillmore(公式版)”に概ね収められています。
 静かに始まり徐々に音量を上げるバンド。
 狂気のキーボード二台と端正なトランペットのバトルから、これまたブチ切れたようなサックスにAirtoの雄叫び~狂気のエレピソロから再びキーボード二台のバトル~激烈フリーへ。
 Milesが登場し、落ち着いたと思うと"Bitches Brew"の混沌〜ヘビーなビート。
  これまた中盤はキーボード二台とAirtoのフルートが絡み合う混沌の世界。
 これは凄い。
 なお後続の"Paraphernalia"、"Footprints"“は、二か月前、”Black Beauty”の次の日の録音。
 音はあまりよくないですが、演奏はいい感じ。Chick Coreaが凄まじい。
 どうせ出すならまとめて欲しかったのですが・・・


Disc Two: (Thursday)
1."Directions"- 10:10
2."The Mask" - 11:29
3."It's About That Time" - 12:03
4."Bitches Brew" - 11:57
5."The Theme" - 1:29
6."Spanish Key (Encore)" - 10:20
7."The Theme" - 0:27
Recorded at the Fillmore East in NYC on June 18, 1970

 構成はWednesdayと同じ。
 こちらも“Miles Davis At Fillmore(公式版)”に収められていた"Directions"、カットされたテーマの部分はもたついた感じ。
 これまた同じく各人のソロはまずまず好調ですがWednesdayの方がいいかな?
 その後、混沌を経てダルな"The Mask”、再び混沌に突入し、アップテンポな"It's About That Time"、ヘビーな"Bitches Brew"へと続きます。
 “Miles Davis At Fillmore(公式版)”には"The Mask"、”It's About That Time"が概ねそのまま収められています。
 ThursdayまたはWendsdayのオープニングには、"Directions"をフルで収めて、尺を見ながら重複する他の何かをカットすると、全体の流れ、まとまりがよくなったのかな?と思ったり、思わなかったり。
 例のテーマの部分がねえ・・・
 なお、この日にはアンコールの"Spanish Key"も収録。
 これもいい演奏、トランペットは言わずもがな、サックス、中盤の混沌まで含めてカッコいいのに、なぜ“Miles Davis At Fillmore(公式版)”に入れなかったのだろう?
 ”It's About That Time"、"Bitches Brew"は何度も出てくるのにね。
 平和に過ぎて他と合わないから?そうでもないと思うのだけど。
 今は謎です。また考えてみましょう。
 また、どの演奏も概ね10分+-αでまとめており、LP片面に二曲収めるつもりでライブレコーディングを意識していたのかな?と思ってみたり。
 出来上がったもののように、曜日ごとにLP片面に入れていく案だったかどうかはわからないけども。


Disc Three: (Friday)
1."Directions" - 12:50
2."The Mask" - 10:00
3."It's About That Time" - 11:27
4."I Fall in Love Too Easily"- 1:47
5."Sanctuary"- 3:24
6."Bitches Brew" - 12:38
7."The Theme" - 0:44
8."Miles Runs the Voodoo Down" - 13:20
Recorded at the Fillmore East in NYC on June 19, 1970 (tracks 1-7) and the Fillmore West in San Francisco, CA on April 11, 1970 (track 8)

 録音の具合もありそうですが、疲れも感じたThursdayに比べて全体的にスッキリして、各人のソロも明瞭で前に飛び出してくる印象。
 この日から"I Fall in Love Too Easily"、"Sanctuary"、この時期定番のバラードメドレーが加わります。
 他の構成はここまでと同じですが、激烈な中に一服のオアシスが出来ました。
 毒気もあるオアシスですが。
 “Directions”はこの日は例のテーマの部分もそこそこカッコいいキメ。
 トランペットもサックスもソロは絶好調の凄まじいソロ。
 混沌から立ち上がる妖しい"The Mask"、アップテンポな"It's About That Time"で上がった熱を冷ますようなバラードコーナー。
 それも最後はドカーンと来て、拍手まで来て、締めの"Bitches Brew"へ。
 中盤の混沌の凄まじいこと。
 交通整理のような笛で鎮静化され、拍手喝采。
 “Miles Davis At Fillmore(公式版)”にはその二つの山場も含めて、"It's About That Time"以降が概ねそのまま収まっています。
 さすがに全部納めたくなる素晴らしい演奏の連続。
 この日Fridayの演奏が録音、テンションを含めて、ベストテイクが揃っているようにも思います。
 なお後続の"Miles Runs the Voodoo Down"は、二か月前、”Black Beauty”の次の日の録音。
 ここに入れなくてもねえ・・・カッコいい演奏なのでなおさら・・・


Disc Four: (Saturday)
1."Directions" - 10:48
2."The Mask" - 11:14
3."It's About That Time" - 11:03
4."I Fall in Love Too Easily" - 1:20
5."Sanctuary" - 3:20
6."Bitches Brew" - 9:39
7."Willie Nelson" - 9:21
8."The Theme" - 0:37
Recorded at the Fillmore East in NYC on June 20, 1970

 最終日、構成はFridayと同様。
 アンコールではないのだと思うのですが、最後に“Jack Johnson"(Feb.18,Apl.7,1970)収録のファンクナンバー”Willie Nelson”が加わります。
 "Directions"大好き人間としてはやはりその出来が気になるのですが、決まってきたように思うのだけど、やはりちょっとだけバラつき気味。
 もちろん各人のソロはこの日も素晴らしいのですが・・・
 “Miles Davis At Fillmore(公式版)”には、この日の演奏もFridayと同じく"It's About That Time"以降が収められていますが、”Willie Nelson”を入れる尺を確保するため、"It's About That Time"は最後の混沌部分のみがピックアップ、"Bitches Brew"も一部がカットされています。
 全体の演奏はFridayと同様にハイテンションでまとまった演奏、音質も良好です。
 こちらも一部の整理がつけばそのまま一枚のアルバムにしてしまってもよさそうな音源です。
 最後に収められた”Willie Nelson”が、ジャズは忘れてファンクに行くぞ宣言のように聞こえないでもありません。


 やはり重ね重ね"Directions"のテーマの部分がスッキリ収まらなかったのが残念。
 Friday、Saturdayはいけそうな気もするのだけども。 
 もう一つ、”Spanish Key”の扱い。
 カッコいい曲だし、他の音源ではたびたび取り上げられていたようだけど、ここでは少々のみ・・・”Willie Nelson”よりも・・・ま、新曲優先ですか。 
 さらに、曜日別にしなければ、あんな感じやこんな感じで・・・
 とかなんとか、40年以上も後に聞くだけの方としては、好き勝手に想像するだけなのですが、“Miles Davis At Fillmore(公式版)”を編集するTeo Maceroさんのアイデアと苦労が、少しぐらいはわかったような、わかっていないような。
 いずれにしてもいろんな形で何度も楽しめるというか、悩ませられるというか、そんな凄い音源であることは間違いありません。
 おそらくまだ理解度10%ぐらいだろうなあ・・・と思っています。

 さて、“Miles Davis At Fillmore(公式版)”を聞き直してみますか。


posted by H.A.