“Equilibrium”(2012)Benedikt Jahnel TRIO
Benedikt Jahnel (piano)
Owen Howard (drums) Antonio Miguel (bass)
 
Equilibrium
Benedikt Trio Jahnel
Ecm Records
2012-11-13
ベネディクド・ヤーネル




 最近お気に入りのドイツのピアニスト、Benedikt Jahnel。
 基本的にはヨーロッパの香りがする上品なジャズ。
 ヨーロッパ系のピアニスト、暗かったり重かったりする場合も少なくないのですが、この人は楽曲、フレージングともに明るく前向きなタイプ。
 繊細な感じのタッチ、クラシックの強い香り、いいタイミングで入る“タメ”の効いた音回し、控えめに入る高速フレーズのバランスがいい感じ。
 それらに加えて音が軽い。もちろんいい意味で。
 端正でセンチメンタル音の流れ、妖しさもほどほど。
 優しい感じがむしろ女性的かもしれません。
 似た感じのフレーズでもKeith JarrettSteve Kuhnが弾くとキツイ感じがしそうな所が、この人だと優しく感じられます。
 押しつけがましくないというか、自然に流れてくるというか。
 シンプルなようで複雑、乾いた感じのビート感は、いかにも現代的な若手の音作り。
 中ほどにECMの真骨頂、ルバート的なスローバラードも含まれています。
 シンプルなリフを繰り返しながらピークを作っていく感じの演奏が何曲かありますが、前作に当たる“Modular Concepts” (2007)と同様。
 波が押し寄せては引いていくような感じ。
 ドラマチックな感じなのですが、これも押しつけがましくなくて自然な感じ。
 それがこの人の一番の特徴かもしれません。 
 明るく元気な“Modular Concepts” (2007)もいいけど、ECMらしい影が差すこのアルバムも明暗のバランスがちょうどいい感じ。
 ジャケット写真ほど暗い感じではなくて、穏やかな海の波頭がきらめくような音、ってな感じですかね。
 本作はしっとり系ですが、ECM制作ではない“Bemun” (2006) Cyminologyや“Modular Concepts”を聞く限り、グルーヴィーで疾走感のある音も出来る人なので、今後いい楽曲、いいアレンジができてくれば、大化けしそうな予感・・・さて?




posted by H.A.