“Cycles” (1981) David Darling
David Darling (cello)
Collin Walcott (sitar, tabla, percussion) Steve Kuhn (piano) Jan Garbarek (sax) Arild Andersen (bass) Oscar Castro-Neves (guitar)
ECMの隠れた名盤。
現代音楽の色が強い?チェリストがリーダー、ECMオールスターがサポート。
曲者揃いですので、どんな音なのか予想できませんが、聞いてみてもなんとも簡単には説明できない多様な内容。
ともあれ、冒頭の”Cycles”は激甘、涙ちょちょ切れの大名曲。
とても悲しい映画のテーマ曲、というより、そんなイメージよりもずーっと悲しく、美しく、奥が深い音。
訥々したピチカートから始まり、シタールが絡み妖しげな雰囲気、さらに凜としたピアノが美しいメロディを奏で、三者で定まっているような、そうでもないような浮遊感の強い、でも美しい空間を作る。
それだけもとても美しく、もの悲しく、感動的なのに、そこにリーダーのチェロのアルコが後ろの方の空間から引きずるような沈痛なテーマを展開。
でも、そのままそこに居座るのではなく、消え入ったり、また現れたり。
中盤以降はボリュームが上がり、前面へ、でも気が付くとまた消えていて・・・。
その間もずっと淡々としたベース、ピアノとシタールの美しくて妖しい絡み合いが続く・・・
なんとも奥ゆかしいというか、聞けば聞くほどはまっていきそうな深い音。
ってな感じで涙々、沈痛の約七分間。決してこれ見よがしな派手な演奏はないのだけども、何度聞いても飽きません。
後続は少し現代音楽、フリージャズの色の濃い演奏。
無国籍、ノンジャンルな音。
でも混沌はわずかで、基本的にはピアノが透明な空間を作り、その中でチェロ、サックス、シタールなどが自在に色づけしていく感じ。
サックスが前面に出ると北欧系の厳しい感じだったり、ピアノが前面に出ると上品なヨーロピアンジャズっぽくなったり、さまざまな表情。
特にSteve Kuhnのピアノ、このアルバムでは決して音数は多くないのですが、ゆったりとしたテンポの上に、後ろ髪を引かれるようなタメの効いた音の置き方、微妙な音の変化でもの悲しさと美しさ全開。
リーダーのチェロの時折りの強烈に感傷的な音使いとの絡みは絶妙。
冒頭曲のような甘いメロディが他にもいくつか。
どれも深い音、胸が詰まるような切ない音、奥の深い絡み合い。
いずれにしても秋っぽい音、今の季節にはピッタリだなあ。