“January” (2008) Marcin Wasilewski
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

January (Ocrd)
Marcin Wasilewski
Ecm Records
2008-05-06
マルチン・ボシレフスキ

 ポーランドの人気ピアニストMarcin Wasilewskiのピアノトリオ。
 シンプルアコースティックトリオ名義で人気を得た後でのECMレーベルへの移動。
 親分Tomasz Stankoのアルバム、直近では“Lontano”(2006)への参加でいい演奏を展開していましたので期待の一枚。
 なかなか期待通りに出来てくるアルバムは多くないのですが、これは大当たり。
 ECMレーベルの質感とこのトリオの現代的な質感が絶妙なバランスでマッチングした名盤だと思います。
 冒頭曲、親分StankoがECMでも何度か吹き込んだシンプルな哀愁曲。
 ECMによく聞かれるゆったりとしたルバートでのバラードですがこれが絶品。
 厳かに始まり、漂うようなリズム、何度か止まりそうなほどに減速したテンポを何度も立て直しながら、美しくももの悲しいメロディを綿々と奏でていきます。
 決して長い演奏ではではありませんが、ドラマチック。
 数分間の間にさまざまな映像が頭の中に浮かんでは消えていきます。
 没頭して聞いていると、悲しいメロディに胸が締めつけられ、リズムに合わせて心臓が止まるのではないかと思うほど。
 さまざまなルバートでのバラードを聞いてきましたがこれが一番。
 さらに2曲目。
 Gary Peacockの“Tales Of Another” (1977) でKeith Jarrettの名演がある"Vignette"。
 オリジナルは緊張が極めて高い、美しくも激しい演奏でしたが、このバージョンはむしろ軽やか。
 緊張感と美しさはそのままに、現代的な軽さが加わることで新しい質感に進化しているようにも思います。
 これだけでも満足なのですが、止まりません。
 3曲目はあのモリコーネのCinema Paradiso。
 元々オリジナルが漂うようなゆったりとした演奏でしたが、そのムードそのままに、思索的なイントロから、哀感あふれるメロディを奏でていきます。
 その後もPrince、親分StankoCarla Bleyなどのカバー曲にオリジナルを加えつつ、中だるみすることなく最後まで素晴らしい演奏が続きます。
 Marcin Wasilewskiのピアノ、さまざまな聞き方、評価があるのだと思いますが、私は「しなやかさ」「柔らかさ」、いい意味での「軽さ」に注目。
 Robert Glasperあたりとも質感は近く、現代的なジャズピアノの一つの特徴だと思っています。
 Keith JarrettSteve KuhnBobo StensonなどECM系のベテランスタイリストとも一線を画すポイント。
 ともすれば、彼らに比べて緊張感が足りない、シビアさ、アグレッシブさに欠ける、といった向きもあるのかもしれませんが、そんなクールネスが現代ジャズの一つの特徴。
 私的現代的ジャズピアノトリオの代表作の一つ。


 

posted by H.A.