”Rosa" (2006) Rosa Passos
Rosa Passos(Vocal, Guitar)  

Rosa
Rosa Passos
Telarc
2006-04-25
ホーザ パッソス

 目下、私の知る限りのブラジル系のベストボーカリスト。
 かわいい系の声なのだけど実に深い。
 ボサノバ伝統のウイスパー系で、スカートをはいたJoao Gilbertoと呼ばれているらしいのだけど、わずかに強い押し。
 語尾に微妙なビブラートが掛かり、高い音では微妙に裏返り気味、鼻に抜け気味。
 湿っているような乾いているような、絶妙なバランスの発声。
 1曲目、そんな微妙な声で、いきなりアカペラが始まります。
 これにはドッキリ。
 さらに2曲目、Jobimの隠れた佳曲、ガットギター一本のバッキングで哀愁曲を囁きます。
 泣けてくるようなというような大げさな悲しみではなく、切ないもの悲しさが漂うメロディ。
 これが彼女の微妙な声と絶妙なバランス。
 そんな微妙で、絶妙、深い演奏が最後まで続きます。
 背景に何もない、無音の瞬間をたくさん感じられる、静謐で奥の深い音空間。
 有名曲やヒット曲が入っているわけではありませんが、どの曲も佳曲で彼女のために書かれたのでは、と思えるほどベストマッチな曲と声とギター。
 確かにJoao Gilberto的なのですが、女性だけにもっと優しく、同じぐらいに深い。
 最後まで同じ質感だけど、飽きてくる感じはしないのも不思議。
 じっくり聞いてしまうと何をしていても手が止まってしまいそう。
 気持ちが浄化されてくるような感覚も決して大げさではない。
 雰囲気は夕暮れ時。
 郷愁。

(※この投稿は2014/02/20から移動しました。)



posted by H.A.