吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2022年02月

【Disc Review】“Vermillion” (2021) Kit Downes

“Vermillion” (2021) Kit Downes

Kit Downes (piano)
Petter Eldh (double-bass) James Maddren (drums)

Vermillion
Kit Downes
ECM
2022-02-11


 イギリスのピアニストKit Downes、ピアノトリオ作品、ECMレコードから。
 ECMでは“Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Stronenでタダモノではない感たっぷりな疾走ピアノ、リーダー作としてはパイプオルガン演奏“Obsidian” (2017) 、ベースレスの変則編成“Dreamlife of Debris” (2019)ときて、ようやくオードドックスなピアノトリオ編成。
 が、オーソドックスではない不思議感たっぷりな音。
 難解さ、気難しさはありません。
 美しく、サラサラとした質感の音。
 メロディアス、でも幻想的、そんなバランス。
 柔らかな音の軽やかなピアノ。
 饒舌なベースと静かで自由なドラム。
 静かながら凝りまくったビート。
 誰が何拍子で何を演っているのかわからない複雑さ。
 三者三様、キッチリと主張しているのですが、誰が突出するわけではない一体感。
 淡いメロディ、静かで穏やかな音の流れ。
 疾走や激情はありません。
 ECMでのお約束、ルバートでのスローバラードもありません。
 ビートが効いているのに、なぜか漂う浮遊感。
 メロディアスなのですが、なぜかその芯をつかめない感じ。
 不思議感たっぷり。
 でも迷宮感はない、穏やかで明るい色合い。
 強い浮遊感、淡い色合いは、21世型ECMの典型のような感じですが、このバランスは新しいのかも、とも思います。
 いずれにしても心地よい時間。
 不思議感ゆえなのでしょう、飽きそうにありません。



posted by H.A.



【Disc Review】“Live At Budokan 1978” (Dec.12,1978) Keith Jarrett

“Live At Budokan 1978” (Dec.12,1978) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

Live At Budokan 1978
Keith Jarrett
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、ソロピアノ、東京でのライブ音源。
 これもブートレッグ、FM放送の音源でしょうか?

 “My Song" (Oct.-Nov.1977)と“Sleeper”, “Personal Mountains” (Apl.1979)の間、ソロ作品では“Sun Bear Concerts” (Nov.1976), ”Concerts:Bregenz” (May.1981)の間。
 1970年代終盤、作風が変わってきたと思しき時期の演奏。
 沈痛な面持ちのバラードからスタートし、ビートが定まった後も沈痛、散りばめられる高速パッセージ。
 その表情は徐々に明るくなっていき、フォークロックモードから、リフレインが続く長尺なゴスペルモードへ。
 20分を過ぎたあたりでビートを落とし思索モードから再びバラード、フォークロック~リリカルへと変わっていき、強い音、不思議感たっぷりなリフレインに帰着、リリカルな展開と交錯しながら前半は終演。
 後半は冒頭から速いテンポでの哀しく激しい表情。
 後のソロ演奏でよく聞かれる強い音、沈痛な面持ちのリフレインへと展開。
 ときおりの明るさは短い間、重く激しく不可思議なムードが全体を支配。
 フォークロックな表情もヘビー、静かな場面はリリカルというよりも沈痛。
 終盤は不可思議で激しい音、混沌と高揚の中でのエンディング。
 そして重苦しいムードを払拭するような喝采から、あの”My Song”。

 暴風雨は終わり陽光が射し・・・ってな感じのありがたい演出。
 静かに始まり、沈痛、不安、混沌を経て、安寧に至る、ってなドラマ。
 1970年代中盤のリリカル成分が強くてメロディアス、前向きな高揚感で結ぶ様式が、この辺りで変わってきたのでしょうか。

 キャッチーでわかりやすいのは“The Köln Concert” (Jan.1975)前後~“Sun Bear Concerts”、複雑で少々気難し気だったり、クラシック~現代音楽色が強かったりなのがこのあたり以降、といった感じでしょうか。

 いずれにしても、いまだ全貌つかめず、それが面白くて抜けられません。





posted by H.A.



【Disc Review】“Live In Hanover 1974” (Apl.1974) Keith Jarrett

“Live In Hanover 1974” (Apl.1974) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)
Palle Danielsson (bass) Jon Christensen (drums)
Jan Garbarek (saxphones)


Live In Hanover 1974
Keith Jarrett European Quartetto
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、いわゆるEuropean Quartetでのライブ音源。
 American Quartetでの“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973)と同じくブートレッグ、TV放映用のものからの音源なのでしょう。
 同じくハイテンションながら、そちらとは色合いの違うスッキリしたコンテポラリージャズ。
 “Belonging” (Apl.1974)の録音の一週間前の録音、その全曲を演奏、さながら公開リハーサル。
 当然“Belonging”に近い色合いではあるのですが、ここから余剰なモノを削って研ぎ澄ましたのがそちら、激しく生々しいのがこちら。
 公式ライブ録音作品では、“Nude Ants” (1979)よりも、スッキリした“Personal Mountains”, “Sleeper” (1979)寄りな印象。
 ぶっ飛ぶDewey Redmanとは違うぶっ飛び方をするJan Garbarek、アクが強いリズム隊含めて遠いところまで行ってしまうAmerican Quartetに対して、破裂寸前のようなピリピリした緊張感が持続するこちらのバンド。
 スタジオ録音とは違う印象のダークで妖しい”Belonging”から始まり、ビートが入るとハードなハイテンションジャズ。
 怖いほどに張り詰めたサックス、突っ走るピアノ。
 バラードもありますが、後の”My Song”やら”Country”のような甘さは抑えたられたハイテンションな演奏が続きます。
 激しくとも崩れていっても、あくまで端正でクールなこのバンド。
 散りばめらたフリーな展開もあくまでスッキリ。
 この期の演奏、どのバンド、どの作品とも、カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973) Keith Jarrett

“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973) Keith Jarrett

Keith Jarrett (Piano,Reeds)
Charlie Haden (Bass) Paul Motian (Drums) Guilherme Franco (Percussion)
Dewey Redman (Tenor Sax)

Berliner Jazztage 1973(+2)
Keith Jarrett American Quartetto
Hi Hat
2022-01-29


 Keith Jarrett、いわゆるAmerican Quartet+αでのライブ音源。
 ブートレッグ、TV放映用の音源なのでしょう。
 ”Solo Concerts:Bremen/Lausanne” (Mar.Jul.1973) と“The Köln Concert” (Jan.1975)の間、“Treasure Island” (Feb.1974)録音直前。
 神掛かってきた時期の演奏の、妖しくハイテンションなコンテンポラリージャズ。
 公式ライブ作品で"Fort Yawuh" (Feb.1973)、“Eyes of the Heart” (1976)がありますが、激しい前者、残り火な感じの後者に対して、もちろん近い時期の"Fort Yawuh"寄り。
 "Fort Yawuh"で演奏されていた楽曲を中心に、“Treasure Island”から少々、それらをもっと妖しくして、ほどほどに激しく、そんなバランス。
 “Death and the Flower” (1974)の冒頭的、妖しいパーカッションと笛のイントロダクションからスタート。
 その後は"Fort Yawuh"と同様、全力疾走ハイテンションジャズ。
 突っ走り転げ回るピアノにグショグショなテナーサックス、それらが落ち着いたら二管での不思議系。
 そして何事もなかったように始まる沈痛耽美系、が、早々にハイテンションジャズに様変わりし、ゴスペルチックなリフレインヘ。
 続いて“Treasure Island”的ノリノリフォークロックにリリカル系、ピアノレス二管での4ビートジャズ。   
 さらにその合間に妖しいパーカッション大会やら、山奥系のボイスやら。
 何が何だかなカオス状態。
 いかにもこのバンド的なハチャメチャさ。
 黒いサックス、バタバタドラムとボコボコベース、ピアノはタメと疾走が交錯する絶好調期。
 毒気たっぷり、甘さも少々。
 カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Molde Jazz Festival 1972 & 1973” (1972,1973) Keith Jarrett

“Molde Jazz Festival 1972 & 1973” (1972,1973) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

Molde Jazz Festival 1972 & 1973
Keith Jarrett
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、ノルウェーのジャズ祭でのソロ演奏、1972年、1973年二年分。
 ブートレッグ、テレビ放映からの音源でしょうか。
 公式作品“Solo Concerts:Bremen/Lausanne” (Mar.Jul.1973)を間に挟んだ両年のステージ。

 1972年、冒頭は沈んだムード、徐々にテンション上げながら見え隠れする美メロ・・・が、鳴り響く不協な音・・・、前向きなフォークロックなメロディで立て直す5分前後。
 それをベースとしつつ、ゴスペル、美メロ、フリー、ラグタイムなどの色合いが交錯。
 どこに向かうのか模索すること十分前後、落ち着いたのは美メロをベースに高速パッセージが飛び交う展開。
 が、その時間は短く、再びフォークロック、ゴスペルチックな展開に転じて前半を締め。
 後半、短く不思議系な展開を挿み、リリカルな感じから諸々の展開を経てビートが定まると、再びフォークロック、前向きなコード展開と美しい高速パッセージ。
 その流れでゴスペルモードに移行していくかと思いきや、ビートを落としてこの期では珍しい雅な感じからコードを叩きつける激しい時間を経て、フォークロックとリリカルが入り混じる形で静かにエンディング。
 目まぐるしく色合いが切り替わる1972年のステージ。

 1973年、穏やかに始まりますが、早々にアップテンポへ移行、続いて後の“La Scala” (Feb.1995)あたりで目立つ思索的ミニマル的なリフレインに突入、そこに美しい高速パッセージが散りばめられる強烈な緊張感。
 沈痛な表情は少しずつ形を変えながら徐々に明るくなっていき、定番のフォークロック~ゴスペルパターンに移行、高揚感の中で前半を締め。
 後半は思索的にスタート、ビートを定めることなく漂うような演奏が続いた後、ゴスペルパターンに突入。
 再び思索パターンに転じたのち、雅モードとミニマルモードが入り混じる形から、ゴスペルモード、穏やかな高揚感の中で幕。
 躍動感が強い1973年のステージ、名演でしょう。

 いずれも近い時期の“Solo Concerts” (Mar.Jul.1973)に近いイメージ、ほどほどに甘く、ほどほどに硬派。
 近いムードではあるのですが、三者三様、それぞれに違う表情。
 但し、本二ステージ、クラシック色は薄く、フォークロックな感じが目立つともに、フリーや抽象的な場面が混ざり、双方ともに1980年代以降の色合いも既に、ってな感じでしょうか。
 “The Köln Concert” (Jan.1975)を超えるようなステージはあったのか?ってな興味もあるのですが、結局の所、最も穏やかで、リリカル成分、美メロが多く、気難しさがないのが“The Köln Concert”、それで一番人気、ってな感じなのでしょうかね。
 いずれにしても、この期はメロディアスな演奏が中心、美メロのてんこ盛り。
 これらを即興で演ってしまうってのが信じがたいというか、畏れ多いというか・・・




posted by H.A.



【Disc Review】“One Time Out” (1987) Paul Motian

“One Time Out” (1987) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Joe Lovano (tenor saxophone)


One Time Out
Soul Note
1989-12-31


 Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルからのトリオ作品。
 ここに来て幻想的名トリオ編成に。
 この期の連作、作品が進むごとに落ち着いてきている感じがするし、人数が減って静かになるかと思いきや、逆。
 確かに静かな演奏もあるのですが、ベースレスになり普通にジャズな感じが無くなりました。
 しかも、凶悪、激烈な音が並ぶ激しい演奏が中心。
 いつもの陰鬱沈痛なメロディと激しいビート。
 ギターとドラムはやりたい放題。
 グシャグシャ・ギュイーンにバタバタ・ドシャーン。
 端正でハードボイルドなイメージのJoe Lovanoもブチ切れる場面多々。
 このバンド、実はベースがかろうじてジャズサイドへ引き留めていたのかあ・・・と感心しきり。
 そんな中でスタンダードもいくつか演奏されていて、それは後のBroadwayシリーズに繋がる穏やかな音。
 艶やかでスペーシーなギターに丁寧にメロディを置いていくサックス。
 これは甘美。
 激烈と甘美な幻想が交錯する音。
 ぶっ飛んでいます。
 この後、スタンダード中心のBroadwayシリーズ、さらに後のECMレコードでの静かな音の名作群、など含めて落ち着いていくトリオですが、この期の再スタートは激烈さが圧倒する過激な内容。
 畏れ入りました。



Conception Vessel” (1973)
Tribute” (1974)
Dance” (1977)
Le Voyage” (1979)
Psalm” (1982)
The Story of Maryam” (1984)
Jack of Clubs” (1985)
It Should've Happened a Long Time Ago” (1985)
Misterioso” (1986)
One Time Out” (1987)
”Monk in Motian” (1988)
On Broadway Volume 1” (1989)
On Broadway Volume 2” (1989)
Bill Evans” (1990)
Motian in Tokyo” (1991)
On Broadway Volume 3” (1991)
Paul Motian and the Electric Bebop Band” (1992)
”Trioism” (1993)
”Reincarnation of a Love Bird” (1994)
At the Village Vanguard” (1995)
”Sound of Love” (1995)
”Flight of the Blue Jay” (1998)
”Trio 2000 + One” (1997)
”Play Monk and Powell” (1998)
”Europe” (2000)
”Holiday for Strings” (2001)
I Have the Room Above Her” (2004)
Garden of Eden” (2004)
”On Broadway Vol. 4” (2005)
Time and Time Again” (2006)
”Live at the Village Vanguard 1-3” (2006)
”On Broadway Volume 5” (2009)
Lost in a Dream” (2010)
The Windmills of Your Mind” (2011)


posted by H.A.



【Disc Review】"Misterioso” (1986) Paul Motian

"Misterioso” (1986) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)


Misterioso
Soul Note
1987-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作、第三弾。
 タイトル曲含めてMonkさんの曲が何曲か。
 その孤高でハードボイルドな感じがこのバンドに似合っているといえばその通り。
 この期の連作、作品が進むにつれ落ち着いてきている感じ、本作は普通なジャズ度が強いかもしあません。
 普通に4ビート(そうでもないか・・・)、ハードボイルドな感じの二人のサックスがとてもカッコいい。
 が、それを引っ搔き回していくジャズからはみ出した未来的、ときにグシャラグシャラに凶悪なギターの音。
 そんな音を煽っているんだか、どこ吹く風のマイペースなのか、摩訶不思議な親分の激しい打撃音。
 つられてサックス陣も狂気渦巻く世界へ行ったり、行かなかったり・・・
 Bill Frisellが静かにソロ奏でるあの懐かしい“Byablue”なんてマニアックな趣向もあったりしますが、 その後はいきなり激烈凶悪系なギターが鳴り響いたりして・・・
 そして締めはゴスペル(スピリチュアル?)チックなサックスの朗々とした独奏。
 変幻自在、予測不可能。
 普通にジャズな演奏がある分、かえって振れ幅が大きくなったように感じたり、落ち着いたように感じたり。
 いずれにしても、この期の連作で共通しているのは、甘さなし、苦み走った男っぽい感じ、ちょっとへんてこりん。
 ジャケットのポートレートな感じ。
 このくらいのバランスの方が自然に聞けていいなあ。今日は。




posted by H.A.



【Disc Review】“Jack of Clubs” (1984) Paul Motian

“Jack of Clubs” (1984) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)

Jack Of Clubs
Soul Note
1985-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作。
 近い時期にECMレコードでの“It Should've Happened a Long Time Ago” (1984)でBill Frisell, Joe Lovanoとのトリオ編成もありますが、こちらは前作 “The Story of Maryam” (1983)と同じくサックス二管、ベース入り。
 同編成は次作“Misterioso” (1986)まで続きます。
 これまた激しい系。
 端正なJoe Lovanoと狂気なJim Pepper。
 一人で両極端、どちらにでも振れていくBill Frisell。
 もちろん質感は前作と近く、沈痛で危機感煽り系のムードも同様。
 が、少しだけ穏やかになった感もあります。
 バラードっぽかったり、ミニマル的展開があったり、静かなギターのみの演奏があったり、サックス二本のみが絡み合う時間がたっぷりあってみたり。
 結果、不思議感も増大。
 天才的スタイリストのみなさま方がやることはわけわからず、予測不可能。
 それがカッコいい。
 それにしてもシンプルながらカッコいいジャケットのポートレート。
 まったく爽やかではなく、毒気たっぷりですが、やるせなくて男っぽい感じそのまま。
 まだここでは優しさよりも狂気強め。
 そのバランスがこの期のこのバンド。




posted by H.A.



【Disc Review】“The Story of Maryam” (1983) Paul Motian

“The Story of Maryam” (1983) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)

Story Of Maryam
Soul Note
1984-12-31


 かつてBill Evans, Keith Jarrettを支えたスタリストPaul Motian、1980年代アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルから。
 ECMレコードからの“Psalm” (1982)に続くアルバム、同じくBill Frisellのギターとベースのトリオにサックス二管入り。
 とても妖しく激しい音。
 よじれたメロディ、ぶっ飛んでいくビート。
 浮遊と激烈を行き来するギターに、狂気が入り混じる二本のサックス。
 近い時期のECMレーベルからの諸作では、静かなイメージもあるのですが、こちらはぶっ飛んだ激しい系。
 テンションの高い混沌はエレクトリックMilesの派生型のようにも思えますし、ブチ切れた演奏が始まればPharoah Sandersが加わった頃のJohn Coltraneバンドのような感じもします。
 あるいは十二分に激しい“Fort Yawuh” (1973) Keith Jarrettをさらにグチャラグチャラにした感じは、Keith Jarrettアメリカンカルテットの行きついた先、ってな感じもします。
 いずれにしても、エレキギターの音が新しいというか、妖しさ激しさを先導しているというか、不思議さ120%。
 そんな激しい演奏の合間に挟み込まれるジャズでバラードな演奏がとてもハードボイルド。
 が、その時間は短く、再び混沌の中へ・・・
 時代はフュージョン、AOR真っ盛りだったのだと思うのですが、どこ吹く風。
 後の甘美なBroadwayシリーズとは全く違うハードネス。
 毒気たっぷり、遅れてきた激烈フリージャズたっぷり、それに少々の優しさが交錯する男臭い音。
 硬派でカッコいいんじゃないでしょうか。

※これは爽やか系。



posted by H.A.



【PlayList】No.2 甘美な毒

【PlayList】No.2 甘美な毒


 ジャズにしろロックにしろ、普通な音には飽きてしまっている感、無きにしも非ず。
 かといってアヴァンギャルドや実験的なモノはちょっとキツイ。
 甘いメロディが大好物ですが、それだけだと胸焼けしたり恥ずかしかったりで・・・
 といったことで、非日常的な感じだったり激しかったりへんてこりんだったりする中に激甘メロディが混ざっていたり、その逆だったり、が好みのバランス。
 そんな音を探してみました。
 ・・・が、並べてみると、やはり甘党ですね。

1.Generique /“Theme Ascenseur Pour L'echafaud” (1957) Miles Davis


 クール&ハードボイルドの極み。
 「甘美な毒」ってなイメージには、なんだかんだでMilesさんが一番似合うなあ。

死刑台のエレベーター

マイルス・デイビス
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1989-10-05


2.Sitt Al Milla/Zumurrud /“A Thousand Nights and a Night” (1996) Kip Hanrahan


 怒涛のラテンビートに狂気のピアノが繰り広げる超ハイテンションな演奏。

 その上に載ってくる、哀愁のバイオリンとウイスパーなヴォイス。
 とても危ない感じですが、とてもオシャレ。

A Thousand Nights and a Night
Kip Hanrahan
American Clave
1998-06-21


3.Animation/Imagination /“Animation/Imagination” (1998) Tim Hagans

 変態的超高速ファンクジャズ。
 突っ走るバンド、グチャラグチャラなようで極めて端正。
 エレクトリックMiles路線が行き着いた先はここかも。

Animation/Imagination
Blue Note Records
2009-06-30


4.Afterthoughts /“In The Evenings Out There” (1993) Paul Bley


 激甘だなあと思っているとグシャグシャと崩れていくのがこの人のパターン。
 最後はあっけらかんと激甘に戻るのもお約束。
 これはちょっと崩れ方が控えめ、甘味たっぷりでしょうかね。

In the Evenings Out There
John Surman
ECM
2000-03-07


5.Kathelin Gray /“Song X” (1985) Pat Metheny/Ornette Coleman

 鬼のようなお二人の鬼気迫るスローバラード。
 全編ルバート、定まらないビートで奏でられる哀しいメロディ。
 艶やかなようなザラザラしているような、不思議な心地よさ。
ソングX:20thアニバーサリー

パット・メセニー&オーネット・コールマン
ワーナーミュージック・ジャパン
2005-09-28


6.Le Triangle Et Les Trois Allumettes /“The Sign” (2002) Carsten Dahl

 美しく幻想的なスローバラードから始まり、気が付けば凶悪なベースが唸りまくり、強烈なグルーヴ、凄まじい疾走、暴風雨。

 頭の中を引っ掻き回されるような、電気椅子に座らされているような。

The Sign
Patrice Heral
Stunt
2002-10-15


7.Everything That Lives Laments /“Mysteries” (1975) Keith Jarrett

 この人も「甘美な毒」ってな感じの代表の一人でしょうか。
 甘いメロディのバラードのはずが、次第に雲行きは妖しくなり、終盤は暴風雨、とても危ない桃源郷へ。

Mysteries
Jarrett, Keith
Mca
1989-10-26


8.Tale /“Lontano”  (2005) Tomasz Stanko

 かつての激烈野郎が奏でる全編ルバートでの超スローバラード。
 寂寥なトランペットと美しいピアノ、強烈な浮遊感。
 止まりそうで止まらない、もし止まるとこちらの心臓も止まるんじゃないか・・・

Lontano
Stanko, Tomasz
Ecm Records
2006-08-29


9.Romance Del Diablo /“Concierto En El Philharmonic Hall De Nueva York” (1965) Astor Piazzolla

 これは紛れもなく甘美。
 お題は悪魔のロマンス、毒気が隠されているのでしょう。
 悪魔と天使は同類でしたよね、確か・・・



10.Sacred Ground /“Sacred Ground” (2007) David Murray feat. Casandra Wilson

 「甘美な毒」の塊のようなお二人の共演。
 甘く切ないバラードは次第に崩れていき、気が付けば凄まじい混沌、ぶっ飛んだ疾走、サックスの絶叫を経て、甘く切ない世界に回帰。
 さて無事に帰還できるでしょうか?

Sacred Ground
Murray, David
Justin Time Records
2007-06-26


11.Tion /“Khmer” (1998) Nils Petter Molvær

 凶悪なジャズファンク。
 ノリノリのビートと繊細なトラペットの対比が・・・とか思っていると、デスメタルなヴォイスが聞こえてきて・・・

Khmer
Molvaer, Nils Petter
Ecm Records
2000-08-08


12.Love Is Like a Cigarette /“Days and Nights of Blue Luck Inverted” (1988) Kip Hanrahan


 締めはノスタルジックで平和なジャズバラード・・・、と思いきや、演奏が終わるとなぜか女声のアカペラ。
 地の底から聞こえてくるようなウイスパーボイス。

 これが怖い。
 ぞっとする美しさで、静かに幕。

DAYS AND NIGHTS OF BLUE LUCK INV
KIP HANRAHAN
ewe
2010-07-21



※代表選手はこれ。


posted by H.A.



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