吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2021年11月

【Disc Review】“Edizione Speciale” (2019) Enrico Rava

“Edizione Speciale” (2019) Enrico Rava

Enrico Rava (Trumpet, Flugelhorn)
Francesco Diodati (Guitar) Giovanni Guidi (Piano) Gabriele Evangelista (Bass) Enrico Morello (Drums)

Francesco Bearzatti (Tenor Saxophone)


Edizione Speciale (Live)
ECM Records
2021-10-29


 大御所Enrico Rava の新作、ライブ録音。
 ライブ録音“Roma” (2018) Enrico Rava, Joe Lovano以来、単独リーダーでは“Wild Dance” (2015)以来久々でしょうか。
 そちらのメンバーからトロンボーンがサックスに代わり、長年共演が続く名ピアニストGiovanni Guidiが加わります。
 “Wild Dance” (2015)はピアノレス、今風ギターがたっぷりフィーチャーされた少しとんがり気味今風コンテンポラリージャズでしたが、本作はよりオーソドックスに寄ったコンテンポラリージャズ。
 冒頭はOrnrtte Colemanっぽいジャズ。
 高速4ビート、リフ一発、ディストーションが効いたロックなギター。
 さらに上品で穏やかな人と思っていたGiovanni Guidiさんのぶっ飛んだ激しいピアノ。
 そんなやんちゃな音もどこ吹く風、硬軟織り交ぜたMiles Davis的な端正なトランペット。
 滑らかで鈍い光を放つ真鍮な感じの音色、しなやかなフレージングは、1970年代から変わらず、衰えなし。
 続く“Once Upon A Summertime”も端正なジャズバラード。
 これまた妖しいロックなギターと激しいピアノが一風変わっていますが、やはりジャズ。
 その他、かつて演奏されたオリジナル曲たちも、このバンドのメンバーの色合いで彩りを変え、いかにもライブなテンションとノリで演奏されていきます。
 締めはラテンな”Quizás, Quizás, Quizás”。
 Ravaさんとしてはありそうですが、ECMさん、ここまでやるの?ってな違和感はマニアな心理に過ぎないのでしょう。
 妖しさは抑えめ、静けさはなし、ECMレコードのEnrico Rava作品としては少々異色の元気で明るいジャズ。
 タイトルをみると“特別版”、なるほど。
 みんなジャズが大好き、明るくてよろしいのでは。




posted by H.A.



【Disc Review】“Subaqueous Silence” (2019) Ayumi Tanaka Trio

“Subaqueous Silence” (2019) Ayumi Tanaka Trio

Ayumi Tanaka (piano)
Christian Meaas Svendsen (double bass) Per Oddvar Johansen (drums)


Subaqueous Silence
Ayumi Tanaka Trio
ECM
2021-10-29


 日本人女性ピアニストAyumi Tanaka、ECMレコードからの第一作。
 “Lucus” (2017), “Bayou” (2018) Thomas StrønenといったECMのアルバムに参加していた人。
 リーダー作はホームグラウンドなのであろうノルウェーの人たちとのトリオ。
 フリー風味たっぷり、静かで繊細なコンテンポラリージャズ・・・というより、音による情景描写。
 静寂と寂寥の時間。
 “廃墟”から始まり、”黒い雨”、”風”などを経て、”水の中の静寂”で締める展開。
 確かにそんな音。
 終始ゆったりとしたテンポ。
 絞り込まれた音とたっぷりの空白。
 流れているようで動かない、留まっているようでゆっくりとグラデーションを描きながら変わっていく音。
 ひんやりした温度感、高いのか低いのか判断がつかない湿度感。
 強いというよりも、ことさら強調されることなく自然に全体を包み込むような浮遊感。
 それらを先導する繊細な質感のピアノ。
 曖昧で抽象的な音の流れの中、ときおり整ったメロディ、定常なビートが表出します。
 が、その時間は短く、再び境界が曖昧な世界へ・・・
 終始沈んだムードの中、抽象的な音の流れが続きます。
 が、なぜか心地よい時間。
 あくまで静かで穏やか、強い音や沈痛で深刻な場面がないからでしょうか。

 気持ちが沈静する不思議な時間。
 これまたどこか遠いところ、非日常へと誘うトリップミュージック。
 静かな夜の、あるいは忙しかった日の終わりのナイトキャップにどうぞ。




posted by H.A.



【Disc Review】“A Love Supreme: Live In Seattle” (Oct.2.1965) John Coltrane

“A Love Supreme: Live In Seattle” (Oct.2.1965) John Coltrane


John Coltrane (soprano, tenor saxophone, percussion)

McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)

Pharoah Sanders (tenor saxophone) Donald Garrett (bass) Carlos Ward (alto sax)


A Love Supreme: Live In Seattle
John Coltrane
Verve
2021-10-22


 John Coltrane、1965年の未発表ライブ演奏。2021年発表。
 1965年の第四四半期はタイトルを見るだけでビビッてしまう、ちょっとこれは・・・な凄い演奏が続く時期。
 “Live in Seattle” (Sep.30.1965)、”Om” (Oct.1.1965)、“Kulu Sé Mama”、“Selflessness” (Oct.14.1965 (一部))、“Meditations” (Nov.1965)。
 激烈フリージャズの入り口“Live in Seattle” (Sep.30.1965)の二日後、ちょっとではなく大変怖い”Om” (Oct.1.1965)の翌日のステージ。
 メンバーもほぼ同じとくると身構えてしまうのですが、演奏されるのが“A Love Supreme” (Dec.1964)となると・・・というか、この期のColtraneさんであれば演目がなんであれ聞かざるを得ないのが哀しい性。
 おそるおそる聞いてみたところ・・・
 予想に違わぬ激烈さ。
 が、“Live in Seattle”ほどにはぶっ飛んでいないというか、叫びとか呪文系とかが無いので怖くはないというか、オリジナル“A Love Supreme” (Dec.1964)+α+β+γ+δぐらい、あるいは“Sun Ship” (Aug.1965) 、“First Meditations” (Sep.2.1965)、はたまた色合いは違えど“Miles Davis At Fillmore” (1970)の五割増しぐらいの弩級激烈エネルギー放出型ジャズ。
 ベースやドラム、パーカッションをフィーチャーしたインタールードを含めて75分超える演奏は、オリジナルの倍以上、発表されていたフランスでのライブ音源(Jul.1965)と比べても1.5倍の長尺の凄まじいステージ。
 私家録音なのでしょうし、ドラムが強いバランスですが、音質はまずますいい感じ。
 Part1、ベースを中心として厳かに始まりますが、徐々にテンションと音量を上げていくバンド、凄まじいテナーサックス。
 ピィーとかキィーとかギャーとかまでにはいきませんが、この期のもどかし気に高速旋回しまくるスタイルから常軌を逸しつつの、もはや何がなんやらわからない激烈さ。
 そんなトランス状態が10分以上?続いた後、例のお題目フレーズともに、周囲を取り巻いていた土埃が消えていくような鎮静。
 妖しいパーカッションとベースのインタールードからPart2へ。
 あの緊張感の塊のような超カッコいいテーマもそこそこに始まる客演のアルトサックスのインプロビゼーション。
 これまた激烈系ですがちょっとだけスッキリした感じ。
 Part3は、高速ビートの中、トランス状態へのグルと思しきPharaohさんの絶叫サックス。
 そんなサックスが引くとMcCoyさんの超高速疾走ピアノの出番。
 軽やかに始まりますが、気が付けば大音量の千手観音ドラムとの凄まじいバトル。
 激烈系ピアノトリオの最高峰。
 そして締めは全編ルバートでのスローバラードPart4。
 沈痛、あるいは敬虔なムードの中、静かに重々しく幕。
 十分に激烈なオリジナルの何倍も激しい音。
 全編緊張感の塊、凄まじいまでの激烈トランスミュージック。
 いき過ぎない、いや十分にいってしまっているか・・・いずれにしてもぶっ飛んだ超人たちが作る凄まじい音の洪水。
 いまさらながらではありますが、畏れ入りました。


 


posted by H.A.

【Disc Review】“When we leave” (2020) Matthias Eick

“When we leave” (2020) Matthias Eick

Mathias Eick (Trumpet, Keyboard, Vocals)
Andreas Ulvo (Piano) Audun Erlien (Bass) Torstein Lofthus (Drums) Helge Andreas Norbakken (Drums, Percussion)
Håkon Aase (Violin, Percussion) Stian Carstensen (Pedal Steel Guitar)

When we leave
Matthias Eick
ECM
2021-09-24


 ノルウェーのトランペッターMathias Eick、哀愁ヨーロピアン・コンテンポラリージャズ、ECMレコードから。
 前作“Ravensburg” (2017)と同様、ピアノトリオにバイオリン、パーカッションを加えた編成に、一部にスチールギターが加わります。
 いつもと変わらない寂寥感の塊トランペットに、いつもと変わらない哀愁滴るメロディ、それでいてとても穏やかな空気感もいつもと変わりません。
 トランペットの寂寥感に対して、音楽自体はもともと明るい色合いの人。
 ECMでの第一作“The Door” (2007)と比べても、その質感は変わりません。
 とはいえ、メロディアスな楽曲が揃ったからなのか、アンサンブルが洗練の極みに達したからなのか、全編が穏やかな空気感だからなのか、哀愁指数、郷愁指数は本作が一番高いかもしれません。
 ゆったりとしたビート。
 優しくセンチメンタル、ノルウェーの色合いなのであろうエキゾチシズム、微かな違和感を含んだメロディ。
 インプロビゼーションよりもアンサンブル。
 ドカーンとではなくジワジワくる系。
 計算し尽くされ編み上げられているのであろう、が、さりげなく聞こえる柔らかな音の流れ。
 さらに一曲一曲の中に込められた、これまたさりげない起承転結。
 さりげなくとてもドラマチック。
 あくまで穏やかなのですが、まるで涙腺と琴線を狙い撃ちしているかのようなメロディ、アンサンブル、展開。
 連発される哀愁のメロディとアンサンブル中心の構成、8ビート系中心のリズムは、ともすればポップにも聞こえるかもしれません。
 実際、ポップでキャッチーだと思います。
 が、最初の20秒のみで図らずも涙腺がゆるんでしまいそうな破壊力をもったメロディがたくさん。
 全部含めて哀愁・郷愁の金太郎飴。
 切るところによって微妙に表情は違います。
 どの表情もとてもSaudade。



 
posted by H.A.



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