吉祥寺JazzSyndicate

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2020年07月

【Disc Review】“Circular Chant” (Mar.1994) Marilyn Mazur & Pulse Unit

“Circular Chant” (Mar.1994) Marilyn Mazur & Pulse Unit

Marilyn Mazur (Drums, Percussion, Voice)
Bugge Wesseltoft (Piano, Keyboards) Mikkel Nordsø (Guitar) Klavs Hovman (Acoustic Bass, Electric Bass) Jacob Andersen (Drums, Percussion)
Michael Riessler (Bass Clarinet, Clarinet) Hans Ulrik (Soprano, Saxophone, Flute) Nils Petter Molvær (Trumpet, Flute) Per Jørgensen (Vocals, Trumpet)

Circular Chant
Marilyn Mazur & Pulse Unit
Storyville Records
1995-03-14


 Marilyn Mazur、Future Song とは別バンドでの1994年作。
 基本的にはFuture Songと同じく、妖しいヨーロピアン・コンテンポラリー・ジャズフュージョン。
 強いけども柔らかなビート、ハイテンションで哀し気なムードも同様。
 北欧勢を中心に共通するメンバーも多いのですが、分厚いホーンのアンサンブルがビッグバンドのように響き、ホーン陣の強烈なインプロビゼーション、エスニック&プリミティブな男声が前面に出るのが大きな違いでしょうか。
 Future Songの女声スキャットが醸し出す南米風味の幻想的なムードが、アフリカンなのか北欧伝統系なのか勇壮な雄叫び系に代わって、また別の色合いの妖しさ120%。
 フリーで静かなパーカッションとホーンの絡み合いやら、ホーンの妖しいコレクティブインプロビゼーションやら、ディストーションなロックギターの陰鬱リフやら、電子音の飛び交うフリーな場面やら・・・
 エレキベースが弾み、シンセサイザーが絡み疾走を始めると、Weather Reportの初期と後期が混ざり合うような感じだったり・・・
 いろんな要素てんこ盛り。
 これだけ混ざると散漫だったり、難解だったりになりそうなのが、ひとつにキッチリフュージョンしまとまっていることの凄さ。
 これまた三十年近く前の音ながら古くなっていない、新感覚のジャズフュージョン。




posted by H.A.


【Disc Review】“Marilyn Mazur's Future Song” ‎(1990) Marilyn Mazur's Future Song

“Marilyn Mazur's Future Song” ‎(1990) Marilyn Mazur's Future Song 

Marilyn Mazur (Percussion, Drums, Voice)
Elvira Plenar (Piano, Keyboards) Klavs Hovman (Bass) Audun Kleive (Drums)
Nils Petter Molvær (Trumpet) Aina Kemanis (Vocals)



 Marilyn Mazur、1990年のコンテンポラリージャズフュージョン。
 かつてMiles Davisを支えた人。
 それと前後しながら動いていたのがこのバンドでしょうか。
 拠点はデンマークのようで、北欧含めてその周辺のメンバーを集めたユニット。
 リーダー作としては初なのかもしれません。
 複雑なビートとシンセサイザーな音があの時代を感じさせつつも、1980年代のガッチリしたアメリカンなフュージョンとは違う柔らかさ。
 “Time Unit” (1984) Lars Danielsson、“Motility” (1977) Steve Kuhn、“The Colours Of Chloë” (1973) Eberhard Weberあたりのヨーロピアンなジャズフュージョンに近い色合いでしょうか。
 それらにエスニックな色合いも混ぜつつ、妖しくした感じ。
 そんな音の中を漂う、ときに南米的、ときに呪術的、ときにAOR的、ときにフォーキーに聞こえる柔らかなスキャットボイス。
 とても幻想的。
 さらに寂寥トランペット、いかにもヨーロピアンな美しいピアノ、ときおりおとずれる強烈な疾走、フリージャズな混沌。
 てんでバラバラなような要素が、全部まとめて洗練されたジャズフュージョンとして積み上げられています。
 三十年経過した今の耳で聞いても古くは感じません。
 妖しくて柔らかでエキサイティング、そして美しい。
 名作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Franz Schubert: Die Nacht” (2018) Anja Lechner, Pablo Márquez

“Franz Schubert: Die Nacht” (2018) Anja Lechner, Pablo Márquez

Anja Lechner (cello) Pablo Márquez (guitar)

DIE NACHT
ANJA LECHNER/ PABLO MARQU
ECM
2018-11-01


 ドイツのチェリストAnja Lechnerとアルゼンチンルーツ?のギタリスト Pablo MárquezのDuo、ECM New Seriesから。
 もちろんクラシック。
 あまりこの域には近寄らないのですが、ECMでお馴染みのAnja Lechnerとアルゼンチン系のギターとなれば、おそらく好みから遠くないと想像し。
 違わぬとても優しく揺らぐ音。
 シューベルトとブルクミュラーの楽曲集のようですが、期待通りに現代フォルクローレな空気感もそこそこ・・・気のせいなのかもしれませんが・・・
 とにもかくにも穏やかでノーブルな音。
 流れるようなギターと揺れるチェロ。
 おそらくは何らかの意味のある楽曲の選択、構成なのでしょう。
 そちらは詳しい方にお任せするとして、明るい色合いから始まり、悲喜こもごもな空気感の移り変わり。
 いずれも穏やか。
 上品な揺らぎがとても心地よい時間。
 夜ではなくて、朝ともちょっと違って、昼下がりな感じ。
 ビート感が強くないなあ、キチンとし過ぎているなあ、刺激がないなあ・・・ってなのはジャズやロックに慣れてしまった耳ゆえの哀しさ。
 心穏やかに優雅な空気に浸るのが吉。
 とても平和。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Prism” (2013) Dave Holland

“Prism” (2013) Dave Holland

Dave Holland (bass)
Kevin Eubanks (guitar) Craig Taborn (piano, Fender Rhodes) Eric Harland (drums)

PRISM
HOLLAND, DAVE
OKEH
2013-09-20


 Dave Hollandのロックなジャズ。
 ピアノトリオとギター、ファールトコールなジャズメンたち。
 ギターがKevin Eubanksとくれば、カミソリのように鋭いハイテンションジャズ“Extensions” (1989)、あるいは“Turning Point” (1992)、“Spirit Talk” (1993) あたりの音を期待してしまうのですが、意外にも強いロックテイスト。
 ディストーションを掛けてチョーキングしまくりのギターにエレピ、ちょっと重めながら現代的な複雑感のあるビート。
 エレクトリックMilesの時代の音を整えてもっとロックに寄せた感じがしないでもないですが、むしろプログレッシブロックそのものな感じ。
 それはアクセントかな?と思いつつ聞き進めると、全編そんな感じ。
 なんだかんだでアコースティックジャズの人と思っていただけに、これは意外な展開。
 さておき、もちろん演奏は超一線級。
 ドラムがビシバシして、変態的なグニョグニョエレピ、そしてKevin Eubanksのロックなギターが全編で唸りまくり。
 ファンクあり、混沌あり、激しいビートのロック色全開のジャズ。
 この手の音楽、この時期に流行っていたかなあ・・・?
 さておき、気持ちを切り替えてしまえば、これはこれで心地よかったりして。




posted by H.A.


【Disc Review】“Overtime” (2002) Dave Holland

“Overtime” (2002) Dave Holland

Dave Holland (double bass)
Steve Nelson (marimba, vibraphone) Billy Kilson (drums)
Duane Eubanks, Taylor Haskins, Alex Spiagin (trumpet, flugelhorn) Robin Eubanks, Jonathan Arons, Josh Roseman (trombone) Mark Gross (alto sax) Antonio Hart (flute, alto,soprano sax) Chris Potter (tenor sax) Gary Smulan (baritone sax)

Overtime
Holland, Dave
Sunny Side
2005-02-22


 Dave Holland、2002年のビッグバンド作。
 前作ECMレコードでの最終作“What Goes Around” (2001)とメンバーも大きくは変わっていません。
 そちらもECMでは珍しいジャズジャズした音でしたが、本作も同じ質感。
 ECMの呪縛がなくなったのかどうかはさておき、元気いっぱいなコンテンポラリービッグバンドジャズ。
 平和で能天気な感じではなくハイテンションでドカーンときますが、眉間にしわが寄った感じや気難しさはなし。
 徐々にブチ切れていくソリストの後ろから激しく煽るアンサンブルとリズム隊。
 ホーンの激しい音が怒涛のように押し寄せてきます。
 マリンバ、ヴィブラフォンの妖し気、涼し気な音がところどころで顔を出しつつ、やはり終盤に向けてドカーンとくるバンド
 ホーン陣の主役はChris Potterでしょうか。
 気が付けばソロ状態のドラムともに突っ走るサックス、バンド。
 手に汗握るスペクタクル系ジャズ。
 それでいてかつてのそんな音よりも、汗が噴き出す感じや埃っぽさを感じないのは、21世紀の音だからなのか、このバンド特有のクールネスなのか。
 ともあれ、スッキリしていてその上エキサイティング。
 21世紀コンテンポラリーなビッグバンドジャズの好作品としてよろしいのでは。




posted by H.A.


【Disc Review】“What Goes Around” (2001) Dave Holland

“What Goes Around” (2001) Dave Holland

Dave Holland (bass)
Steve Nelson (vibraphone) Billy Kilson (drums)
Duane Eubanks, Alex Sipiagin, Earl Gardner (trumpet, flugelhorn) Josh Roseman, Andre Hayward, Robin Eubanks (trombone) Mark Gross (alto sax) Antonio Hart (alto sax, flute) Chris Potter (tenor sax) Gary Smulyan (baritone sax)

ホワット・ゴーズ・アラウンド
デイヴ・ホランド・ビッグ・バンド
ユニバーサル ミュージック クラシック
2002-10-23


 Dave Holland、2001年作、ビッグバンド編成、ECMレコードでの最終作。
 ベースのコンボはピアノの代わりにヴィブラフォンが入る例のクールな音。
 質感そのまま、ここまでの少人数の管のアンサンブルがさらに分厚くゴージャズになり、よりジャズっぽくなった感じ。
 シャキッとした4ビート、ブルージーなラインに乗って統制されたアンサンブルが彩りをつけつつ、ビヒャーってな感じのホーン陣の血管切れそうなソロでテンションと音量を上げていくバンド。
 フリーやら先端系やら妖しい感じやらはなくオーソドックス、もろニューヨークな感じのコンテンポラリージャズ。
 って、ニューヨークでの録音でしたね。
 ここまでくるとECMレコードの音源ってことを忘れてしまいそう。
 少し前の作品からProducerのクレジットはDave Holland本人、EicherさんはExecutive-Producer。
 さもありあん、な「ジャズ」。
 合間から聞こえるヴィブラフォンのクールな響きと、下の方でボコボコ動きまくるベースがこのバンドならではの色合い。
 分厚いホーンの分、健全な感じで元気いっぱいな分、クールさとハードボイルネスは薄めでしょうか。
 そんな塩梅、かつてぶっ飛んだエレクトリックMilesバンドを支えたDave HollandのECM最終作は、エキサイティングなビッグバンドジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Extended Play: Live at Birdland” (2000) Dave Holland

“Extended Play: Live at Birdland” (2000) Dave Holland

Dave Holland (double bass)
Steve Nelson (marimba, vibraphone) Billy Kilson (drums)
Robin Eubanks (trombone, cowbell) Chris Potter (alto, soprano, tenor sax) 



 Dave Holland、2000年作、ライブ録音。
 編成は“Points of View” (1998)からのヴィブラフォントリオ+二管のクインテット。
 ほとんどが10分越え、20分を超える演奏も何曲かの激しいジャズ。
 スタジオ録音作品から多くの楽曲が取り上げらていますが、同じ楽曲とは気づかない凄まじい演奏。
 各曲ともアンサンブルはスタジオ録音の色合いと大きくは変わっていないのだと思うのですが、長尺なソロを含めて熱量とテンションが別次元。
 ゴリゴリブリブリ、凄まじい音量とスピードで突っ走るサックス、それに呼応するこれまた凄まじいドラム。
 ホーンが引くと音量が下がって一息つき、ベースのソロ、ドラムとのバース交換(今や懐かしい?)、もちろんヴィブラフォンが前面に出る時間もたっぷり。
 ヴィブラフォントリオでドラムがずーっと凄まじいソロ状態の場面がカッコいい。
 ホーンと対等にフィーチャーされていますが、音量が小さい分、目立つ場面が少なくなった感じもします。
 一息つくと怒涛のような音圧のホーン陣。
 甘さのないメロディ、演奏は、いつもながらのクールでハードボイルドなこの人の音楽の色合い。
 とても激しい演奏ですが、1960-70年代のような混沌や絶叫はありません。
 が、紛うことなき超ド級熱血ジャズ。
 そんなDave Hollandバンドの生身の記録。




posted by H.A.


【Disc Review】“Points of View” (1997) Dave Holland

“Points of View” (1997) Dave Holland

Dave Holland (double bass)
Steve Nelson (marimba, vibraphone) Billy Kilson (drums)
Robin Eubanks (trombone) Steve Wilson (alto, soprano sax)

Points of View
Billy Kilson
Ecm Records
1998-09-15


 Dave Holland、1997年作。
 ヴィブラフォントリオ+二管のクインテット、Steve Nelsonのみが残り、めまぐるしくメンバーは変わります。
 ドラムは前作の鬼のようなGene Jacksonからこれまた鬼、この後長く共演するBilly Kilson、管はM-Base閥。
 後にビッグバンドまで拡大していきますが、“The Razor's Edge” (1987)あたりまでの分厚い感じとは少し違ったスッキリ系。
 ヴィブラフォンのクールで甘い響きゆえなのか、計算されたアンサンブルゆえなのか。
 いずれにしてもテーマ一発、順にソロを回して・・・ってなシンプルな感じよりも、複雑なテーマを複雑なアンサンブルでキッチリ決めつつ、ドカーンとくる各人のソロ、コレクティブなインプロビゼーションへと繋いでいく凝った編曲。
 ヴィブラフォンが前に出る場面も本作ではたっぷり。
 さらに乾いたスネアの音が目立つ激しいドラム。
 そして締めはマリンバの音がすっとぼけてるんだか、妖しいんだか、長閑なラテン調のトリオ演奏で締め。
 これまた珍味でよろしいのでは。
 この後音量とテンションをさらに上げていくバンド、ヴィブラフォンが目立つアルバムはこれが最後でしょうか。
 そんなバランスのDave Hollandバンド。




posted by H.A.


【Disc Review】“Dream of the Elders” (1995) Dave Holland

“Dream of the Elders” (1995) Dave Holland

Dave Holland (bass)
Steve Nelson (vibraphone) Gene Jackson (drums)
Eric Person (alto, soprano sax) Cassandra Wilson (vocals)

Dream of the Elders
Holland, Dave
Ecm Records
1996-03-26


 Dave Holland、1995年作。
 後々まで共演が続くビブラフォンが加わり、長くフロントを務めたSteve Colemanが交代、ドラムはこれまたスタイリストGene Jacksonに交代。
 形としてはワンホーンカルテット。
 さらにこれまたM-Base閥、後の女王Cassandra Wilsonが一曲に参加。
 例のドスの効いたビート、無骨で愛想のない楽曲に、ビブラフォンの涼しげな音が加わります。
 音の感じは変わりました。
 サックスはよりシャープな印象、全体的には少し軽くなった感じがします。
 後の二管作品と比べるとヴィブラフォンの出番、存在感がたっぷり。
 サックスが達人であることは言わずもがななのですが、それが引いてヴィブラフォントリオになる場面もカッコいい。
 突っ走るヴィブラフォン。
 “Extensions” (1989)のギターとは違う印象の疾走感。
 涼し気なようでハイテンションな怒涛のような演奏。
 爽やか・・・とはニュアンスが違った、後々までも続く独特のクールネスと激しい演奏のバランスが定まった感じでしょうか。
 なおCassandraさんはこの期にして既に貫禄たっぷり、例の異次元から響いてくるようなドスの効いた声、妖しいムード。
 全部含めてカッコいいコンテンポラリージャズ、クールかつ激しい系。
 Dave Holland諸作、分厚い音がよければ二管以上、スッキリ系がよければ本作か“Extensions” (1989)って感じでよろしいのでは。




posted by H.A.


【Disc Review】“Extensions” (1989) Dave Holland

“Extensions” (1989) Dave Holland

Dave Holland (bass)
Kevin Eubanks (guitar) Marvin "Smitty" Smith (drums) 
Steve Coleman (alto sax)

Extensions
ECM Records
2008-11-04


 Dave Holland、1989年作。
 前作“Triplicate” (1988)にギターが加わった入ったサックスカルテット編成。
 ギターは後の“Turning Point” (1992) などでも共演が続く、疾走ギターのKevin Eubanks
 ギターが加わっただけで景色はガラリと変わります。
 装飾なし、武骨なまでにハードボイルドネス最高だった前作のトリオに対して、決して派手ではない洗練された彩りとクールネスが加わります。
 たっぷりのリバーヴを効かせた上での繊細なクリーントーン中心、カミソリのような疾走ギター。
 心地よさ最高な音。
 時折のディストーション、チョーキング、ロックフレーズもあくまでシャープで上品。
 複雑なファンクなビート、そろそろ始まった頃なのであろうM-Baseな感じもたっぷり。
 そのうえでの浮遊感、疾走感、飛翔感。
 ハードボイルドネスたっぷり、クールネス最高、オシャレさも少々。
 Dave Holland諸作、これが一番カッコいい、というか私的な好み。
 でもECMレコードでのKevin Eubanks参加作品はこれ一作のみ、スタイリストSteve Colemanもここまで。
 ま、他のレーベルからカッコいい共演作がたくさん出ているので、うまくいったのでしょう。




posted by H.A.


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