吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2020年06月

【Disc Review】“Chappaqua Suite” (1965) Ornette Coleman

“Chappaqua Suite” (1965) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone)
David Izenzon (double bass) Charles Moffett (drums)
Pharoah Sanders (tenor saxophone)
& Orchestra

CHAPPAQUA SUITE
ORNETTE COLEMAN
FIVEFOUR
2012-08-05


 Ornette Coleman、摩訶不思議なアルバム。
 映画音楽として作ろうとして使われなかった?などのいわくつきのようです。
 基本的にはピアノレスのサックストリオと管楽器オーケストラの共演。
 トリオの演奏は、同メンバーでの“At the "Golden Circle" Vol. 1& 2.” (1965)に近い感じ、あくまで4ビートジャズ。
 ビートが伸び縮みするような場面が多く、変幻自在な印象ながら、三者がピシッと決まった感じの極めてタイトな演奏。
 が、背景を彩るオーケストラがなんだか変。
 現代音楽的に譜面化された演奏なのでしょうが、何か調子っはずれな感じ。
 そんな中でひたすら鳴るアルトサックス。
 オーケストラが抜けると晴れ間が見えるようなキリッとしたジャズ。
 が、オーケストラが戻ってくると何かモヤっとした感じでアレレ・・・
 ってな感じの演奏の連続。
 摩訶不思議なのですが、あらかじめ長さも展開も計算尽くで、その制約の中でトリオでインプロビゼーションを展開していったのでしょう。
 LPで二枚、全4パート、各曲長尺な演奏ですが、なぜか長さを感じないのは、予想できない展開とバラけない統制の取れた演奏ゆえでしょうか。
 Pharoah Sandersが前面に出るのは少々のみ。
 狂気を纏った“Live in Seattle” (Sep.30.1965) John Coltraneへの参加直前期なのが、これまた興味深いところ。
 実験的色合いの混ざった不思議なジャズ、そしてOrnette Colemanトリオのタイトでハードなジャズをたっぷり聞くにもいい一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ornette on Tenor” (1962) Ornette Coleman

“Ornette on Tenor” (1962) Ornette Coleman

Ornette Coleman (tenor saxophone)
Jimmy Garrison (bass) Ed Blackwell (drums)
Don Cherry (pocket trumpet)

Ornette on Tenor
Ornette Coleman
Rhino/Wea UK
2004-05-03


 Ornette Coleman、1960年作。
 全編テナーサックスを吹いた一作。
 いつもと同じくDon Cherryが加わるピアノレスカルテット。
 楽曲のイメージも変わりませんが、演奏の印象は異なります。
 アップテンポ中心の演奏、不思議感も少なめのクールなジャズ。
 重心が下がってヘビーになったような、その逆、ベースが軽くなって浮遊感が出たような、複雑な質感の変化。
 ひしゃげたようなダーティーな音のテナーサックス、Archie Sheppをスッキリさせたような感じでしょうか。
 重心と音は変わっても加速、疾走はアルトサックスに同じ。
 やさぐれた感じがカッコいい。
 なぜテナーサックスを吹いたのかは知りません。
 が、何の違和感もなくいつもの音楽にピッタリはまっているとともに、エキセントリックさが薄まって、より普通にジャズっぽい感じ。
 諸作に比べると不思議な安定感、男臭いハードボイルドネスたっぷり。
 とてもカッコいいのですが、テナーを吹く作品が限られるのはなぜでしょう?
 アルトでの軽く舞い上がる感じが表現できないから?
 さて?
 ともあれ、カッコいいテナーサックス奏者Ornette Colemanの希少な一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“This Is Our Music” (Jul.Aug.1960) Ornette Coleman

“This Is Our Music” (Jul.Aug.1960) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone)
Charlie Haden (bass) Ed Blackwell (drums)
Don Cherry (pocket trumpet) 

This Is Our Music
Ornette Coleman
Imports
2014-02-18

 Ornette Coleman、1960年作。
 問題作“Free Jazz” (Dec.1960)の数ヶ月前の録音。
 “The Shape of Jazz to Come” (May.1959)、“Change of the Century” (Oct.1959)のメンバーからドラマーが交代したカルテット。
 オーソドックスなモダンジャズに近いイメージの演奏から、全編ルバートでのスローバラード、超高速カッとびジャズ、スタンダード・・・などなど、さまざまな表情。
 オーソドックスなジャズの形が崩れてきた感じ、フリージャズっぽい演奏もちらほらしますが、どれもが計算尽くで組み立てられた展開なのでしょう。
 ブレークだらけで複雑だけどもまだまだ平和な感じテーマのアンサンブルが終わると、徐々に時空が歪み始め、アレレと思っていると、なぜか唐突にテーマに戻る、そんな繰り返し。
 そして殺気を発するベースが煽る緊張感。
 優雅なはずの”Embraceable You”までが異次元から聞こえてくるような、別の何かのように響きます。
 かといって意味不明でもグチャグチャでもない、絶妙なバランス。
 同年の問題作“Free Jazz” (Dec.1960)っぽさは・・・さてどうでしょう。
 モダンジャズ、激烈フリーでも、深層心理覗き込む系でも、現代音楽風でもない、あくまでOrnette Colemanのジャズ。
 そんなバランスがクールな一作。




posted by H.A.



【Disc Review】“Change of the Century” (Oct.1959) Ornette Coleman

“Change of the Century” (Oct.1959) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone)
Charlie Haden (bass) Billy Higgins (drums)
Don Cherry (pocket trumpet)

Change of the Century
Ornette Coleman
Rhino/Wea UK
2008-01-13


 Ornette Coleman、1959年作。
 “The Shape of Jazz to Come” (May.1959)と同じメンバー、その数ヶ月後の録音。
 異様な緊張感のそちらに対して、オーソドックスで明るい色合い、キリッとした感じのジャズ。
 メンバーは違いますが、“Tomorrow Is the Question!” (Jan.Feb.Mar.1959)に近い感じかもしれません。
 ちょっと聞きでは大仰なタイトルとはちょっと違う、普通なジャズな感じ。
 ブレークとアップダウンたっぷり、緻密でメカニカルなアンサンブルでのテーマ一発、怒涛のインプロビゼーション。
 平和なような、普通にブルースっぽい感じなようで、徐々に歪んでいく時空。
 この期の作品群、進むにつれてその歪み方が大きくなってきたようにも聞こえます。
 さておき、そんな雰囲気の中で最後に収められたタイトル曲。
 ブレークだらけの複雑なテーマ、伸び縮みするビート、ストップ&ゴーを繰り返すベース、起承転結などお構いなし、あちこちのフレーズを集めてきたような、明後日の方向にぶっ飛んでいくようなインプロビゼーション。
 “Something Else!!!!” (1958)からあった違和感の要素が整理され、明確な形になった感じでしょうか。
 普通のモダンジャズな枠を完全にはみ出した転換点ってな感じが、タイトル通り・・・といえばその通り。



posted by H.A.


【Disc Review】“Tomorrow Is the Question!” (Jan.Feb.Mar.1959) Ornette Coleman

“Tomorrow Is the Question!” (Jan.Feb.Mar.1959) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone)
Percy Heath, Red Mitchell (bass) Shelly Manne (drums)
Don Cherry (trumpet)



 Ornette Coleman、1959年、デビュー第二作目。たぶん。
 “The Shape of Jazz to Come” (May.1959)の少し前の録音。
 メンバーは盟友Don Cherryと西海岸のファーストコールたち。
 前作“Something Else!!!!” (1958)と同じく、軽やかな4ビートのモダンジャズ。
 ハイテンションではありますが、とても平和。
 フロント陣も端正なモダンジャズなインプロビゼーション。
 これ、Chet BakerとBud Shank?・・・ってなことでもないのですが、そんな感じがしないでも・・・
 が、時間が進むつれて次第に空間が歪んでいくような不思議感。
 ビートを崩すわけではなく、コードには乗っているし、個々のフレーズはモダンジャズな感じ、でもなんだか妙・・・
 ズレているような、そうでもないような、落ち着きどころを探して彷徨っているような。
 何事もなかったようにソロのオーダーはキッチリ回り、テーマに戻って平和に幕・・・
 そんな演奏の連続。
 普通に聞き流せば普通にモダンジャズ。
 キリッとしたホーンとシャキシャキしたリズム。
 クッキリハッキリ、クールでシャープ。
 爽やかとまでは言わないまでも心地いい音。
 でも、よーく聞いてみるとなんだか変。
 そんな微妙で不思議なバランスが、初期のこの人の作品のカッコよさなんでしょう。




posted by H.A.



【Disc Review】“Storytellers” (2017) Luciana Souza

“Storytellers” (2017) Luciana Souza

Luciana Souza (voice)
WDR Big Band Köln:
Vince Mendoza (produce, arrange, conduct)
Johan Hörlen, Karolina Strassmayer, Olivier Peters, Paul Heller, Jens Neufang, Stefan Karl Schmid (saxophone) Wim Both, Rob Bruynen, Andy Haderer, Ruud Breuls, John Marshall, Bastian Stein (trumpet) Ludwig Nuss, Shannon Barnett, Andy Hunter (trombone) Mattis Cederberg (tuba)
Paul Shigihara (guitar) Rainer Böhm (piano) John Goldsby (bass) Hans Dekker (drums) Marcio Doctor (percussion)

Storytellers
Souza, Luciana and the Wd
Delta
2020-03-27


 ブラジルのボーカリストLuciana Souza、ドイツのビッグバンドWDR Big Band Kölnとの共演。
 ジャジーでゴージャス、少々幻想的なMPB。
 Jobim、Djavan、GuigaからChico Pinheiroまで、新旧のブラジリアンの作品からの渋い選曲。
 柔らかなビート感のブラジル曲、奇をてらわないオーソドックスなビッグバンドアレンジと、楽曲ごとに律儀にソリストを変え、いずれも手練れた各人のソロ。
 それらに彩られたスモーキーとシルキーを行き来するミステリアスヴォイス。
 主役は歌なのかもしれませんが、オーケストラのアンサンブル、ソロのスペースがたっぷりとられているので、コンテンポラリーなビッグバンドジャズとして聞いてもいい感じ。
 パキーンとしたバンドサウンドと幻想的なメロディ、スキャットの対比。
 決して大音量ではありませんが、とてもリッチな音。
 ソリストたちの音にもタダモノではない感が漂います。
 放送局曲系を中心としたドイツのビッグバンドモノには、ブラジル系を含めてよく出くわすのですが、いずれもゲストの色合いと喧嘩しない徹底的に洗練されたサウンド。
 王道サウンドっちゃあその通りなのですが、どれもがありそうでなかなかない極めて上質なジャズ、あるいはジャズフュージョン。
 本作も然り。
 ドイツのビッグバンドモノにハズレなし。
 Luciana Souzaにもハズレなし。




posted by H.A.



【Disc Review】“Japan Tour 2019” (2019) Guinga & Monica Salmaso

“Japan Tour 2019” (2019) Guinga & Monica Salmaso

Guinga (guitar, voice) Mônica Salmaso (voice)
Teco Cardoso (Sax, Flute) Nailor Proveta (Clarinet)

JAPAN TOUR 2019
Nailor Proveta
MUSAS


 ブラジルのギタリスト、シンガーソングライターGuinga、ボーカリストMonica Salmaso、日本でのライブ録音+α。
 繊細でミステリアス、儚い音の二人。
 そんな色合いそのまま。
 ギターと木管楽器二本、二人の声。
 弾き語り以上、コンボ未満。
 沈んだ感じのギターと柔やかな木管の二つが絡み合う、とても静かで穏やかな音。
 少人数の変則な編成ですが、計算し尽くしたのであろうアンサンブルはとても豊かに響きます。
 そんな音の流れの中を漂うスモーキーなミステリアスヴォイス×2。
 個々の楽器と声が絡み合い、少しずつズレ、漂いながら織り成していく綾。
 いつものノスタルジックなような、新しいような、メロディアスながらどこに動いていくのかわからない淡い色合いのメロディ、コードの流れ。
 もはや二人の声の区別ができなくなるような緩やかでまどろむような時間。
 ゆったりしたテンポの演奏が続きますが、いくらかのアップテンポではとてもノーブルなブラジリアジャズ。
 21世紀の大都会東京で録られた音ながら、19世紀なのか18世紀なのか、はたまたもっと前なのか、よくわからない空気感。
 耽美でアンニュイ。
 これまたトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Noturno Copacabana” (2003) Guinga

“Noturno Copacabana” (2003) Guinga

Guinga (guitar, voice)
Lula Galvão, Marcus Tardelli (guitar) Jorge Helder (bass) João Cortez (drums) Armando Marçal (percussion)
Carlos Malta (flute) Andrea Ernest Dias (flute, piccolo) Paulo Sérgio Santos (Clarinetes, alto sax, clarone) Nailor Proveta Azevedo (soprano, alto sax) Marcelo Martins (tenor Sax) Flavio Melo, Nelson Oliveira, Jessé Sadoc (trumpet) Jessé Sadoc (trumpet, flugelhorn) Sérgio de Jesus, Bocão (trombone) David Chew (cello) Gilson Peranzzeta (accordion)
Ana Luiza, Leila Pinheiro (voice) and others

Noturno Copacabana
Guinga
Universal Import
2003-02-12


 ブラジルのギタリスト、シンガーソングライターGuingaのMPB、2003年作。
 ジャズな色合いをベースに、ホーン陣、ストリングス、ゲストのボーカリストなど、さまざなな彩り。
 いつもの耽美的なメロディに、内省的・アンニュイな演奏・声に加えて、室内楽的な柔らかなホーンのアンサンブルがフィーチャーされる場面がたっぷり。
 アップテンポな演奏も多めでジャジー度高め。
 優雅さ、妖しさはそのまま。
 ギターと声中心だと静謐さゆえの儚さ、緊張感、沈痛感が強くなりますが、本作はのほほんとリラックスした感じにも聞こえます。
 半数ほどのインスツルメンタル曲もとても柔らかな空気感。
 少々ノスタルジックで洗練された音。
 ところどころに挿まれる耽美なスローバラードやギターのみの演奏、ワルツ~フォルクローレの奇数系ビートが、本作ではむしろアクセントのように響きます。
 楽曲ごとに違う編成ながら空気感は統一されています。
 ほのかな哀感を湛えたSaudadeな音。
 この人特有の危うさ、妖しさが希釈された感じのさり気なさ。
 それでいて部屋の空気がガラッと変わるパワー。
 スタイリストのジャジーさたっぷりなMPB。




posted by H.A.


【Disc Review】“Cheio De Dedos” (1996) Guinga

“Cheio De Dedos” (1996) Guinga

Guinga (Guitar, Voice)
Chano Dominguez, Itamar Assiere (Piano) Lula Galvão, Rogério Souza (guitar)
Armando Marçal, José Eladio Amat, Celsinho Silva (Percussion) Marcos Esguleba (Pandeiro) Pirulito (Ganzá) Rodrigo Lessa (Bandolim) Papito Mello (Bass)
Gilson Peranzzetta (Acordeon) Mário Sève (Flute, Soprano Sax) Carlos Malta (Soprano, Alto,Tenor, Baritone Sax, Flutes, Bass Flute) Sérgio Galvão (Soprano Sax) Paulo Sérgio Santos (Soprao, Alto Sax, Clarinette, Clarone) Paulinho Trompete (Flugelhorn)
Jorge Helder, Serafin Rubens Petion, Dener de Castro Campolina, Serafin Rubens Petion (ContraBass) Daniel Pezzotti, Cássia Menezes Passaroto, Marcus Ribeiro Oliveira, Romany Luis Cana Flores (Cello) Lula Galvão, Eduardo Roberto Pereira, Jairo Diniz Silva, Herbert Peréz Jones, Lesster Mejias Ercia (Viola) Angelo Dell'Orto, Antonella Lima Pareschi, Carlos Eduardo Hack, Glauco Fernandes, Léo Fabrício Ortiz, Luiz Carlos Campos Marques, Armando Garcia Fernandez, Antonella Lima Pareschi, Herbert Peréz Jones (Violin)
Chico Buarque, Ed Motta (Voice)

Cheio De Dedos
Caravelas
1996-01-01


 ブラジルのギタリストGuinga、1996年作。
 ボサノバでもサンバでもなく、ミナスでもショーロでもなく、ジャズっぽくもない、ポップスには渋すぎる・・・
 そんな要素が入り混じる、とても優雅で不思議なブラジリアンミュージック。
 たくさんの名前がクレジットされていますが、基本的にはギターを中心として、楽曲ごとにさまざまな編成、ストリング、ホーンのアンサンブルが加わる構成。
 ボーカル入りは数曲、インスツルメンタル中心。
 メロディアスで奇をてらったアレンジもないのですが、なぜか不思議感、幻想感たっぷり。
 わかりやすいセンチメンタリズムやキャッチーさはありませんが、全編に淡い儚さが充満。
 テンポが落ちてくるとどこかいけないところに引き込まれそうな感、たっぷり。
 基本的には都会的、現代的な感じなのだと思うのだけども、山奥的な感じがちらほらしたり、やっぱり夜の静寂な感じだったり、生暖かい空気感だったり、ベタついてみたり、涼しげだったり、ノスタルジックだったり。
 後の諸作の静謐、耽美って感じばかりではなくて、普通っぽいのになぜか妖しい。
 そして、21世紀直前の音にしてなぜかノスタルジック。
 不思議なメロディとサラサラと流れていく演奏の織り成す複雑な綾なのでしょう。
 さすがのスタイリスト、平和なようで深みに嵌められてしまいそうな音。




posted by H.A.

Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ