吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2019年03月

【Disc Review】“Como & Porque” (1969) Elis Regina

“Como & Porque” (1969) Elis Regina

Elis Regina (vocal)
Antonio Adolfo (Piano) Roberto Menescal (Guitar) Wilson Das Neves (Drums) Hermes Contesini (Percussion) and others, Orchestra

Como E Porque
Elis Regina
Universal Brazil
1994-12-01


 Elis Reginaの1969年作。
 ジャジーでファンクなブラジリアンポップス。
 ジャズサンババンドにホーン陣、オーケストラがサポートするこの期のオーソドックスな編成。
 名曲“Aquarela Do Brasil”から始まり、Egberto Gismonti, Milton Nascimentoなど新感覚の人たちの楽曲、はたまたMichel Legrandまでを取り入れた構成。
 浮遊、疾走、幻想、激情、哀愁・・・、さまざまな表情を見せるヴォイスとそれに寄り添うバンド。
 普通のボサノバやサンバとは違う弾むビート、ファンクなグルーヴ、畳みかけるようなブレークとキメがカッコいい。
 激しく動き回るベースが醸し出す焦燥感のようなものもこの頃から。
 それが極限にまでに高まった“Elis Regina in London” (1969)と同時期の制作ですが、まだまだ落ち着いていて、違う質感の本作。
 そこに向けた助走とみるか、違う世界にぶっ飛ぶ前の完成された音と見るか。
 この人の作品、どれも名作ですが、楽曲の良さ、当時のレギュラーなのであろうバンドの完成された一体感も含めて、頭一つ抜けた名作の一つだと思います。
 本作でまずはElisさん流ジャジーな1960年代ブラジリアンポップスを極めた感じ。
 次の極めつけ、ハイテンション・ブラジリアン・ファンク“Elis Regina in London” (1969)へと続きます。




posted by H.A.


【Disc Review】“Elis Regina & Toots Thielemans” (1969) Elis Regina, Toots Thielemans

“Elis Regina & Toots Thielemans” (1969) Elis Regina, Toots Thielemans

Elis Regina (vocal) Toots Thielemans (Harmonica)
Antonio Adolfo (Piano) Roberto Menescal (Guitar) Jurandir Duarte (Bass) Wilson Das Neves (Drums) Hermes Contesini (Percussion) & Strings

ブラジルの水彩画
エリス・レジーナ&トゥーツ・シールマンス
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1998-05-27


 Elis Regina、巨匠Toots Thielemans との共演作。
 冒頭から“Wave”, ”Aquarela Do Brasil”と必殺曲が並び、ジャズサンバの名人たちの手練れた演奏。
 ボサノバが半分、Elis さん流ファンクが半分。
 もちろんボサノバ定番ウイスパーヴォイスなんて感じではありませんが、硬軟織り交ぜた多彩なヴォイス。
 バンドはファンクな色合いが見え隠れするハイテンションサウンド。
 そんな中でToots さんはいつもの平和で大らかな音。
 そんなに急がなくてもいいんじゃないの、ってな感じにも聞こえるし、若者のペースにキッチリ合わせたさすがの名人芸にも聞こえるし。
 穏やかでゆったりとしたボサノバサウンド、その合間に挿まれたハイテンションなブラジリアンファンク。
 Elis Reginaのボサノバを聞くのであれば、本作と“Elis Especial” (1968)、“Elis & Tom” (1974)がいいんでしょうね。




posted by H.A.


【Disc Review】“Elis Especial” (1968) Elis Regina

“Elis Especial” (1968) Elis Regina

Elis Regina (vocal) and others

Elis Especial
Elis Regina
Universal Brazil
1979-12-01


 Elis Regina、1968年のアルバム。
 アコースティックなブラジリアンポップス。
 ガットギターかピアノが前面出るジャズサンバなコンボに、控え目なオーケストラ、ストリングスの彩り。
 Baden Powell, Dori Caymmi, Chico Buarque, Gilberto Gil, Edu Loboといった巨匠たちの楽曲が並び、さらにJobim, Mangueiraのメドレー。
 オーソドックスなボサノバ、サンバのアルバムが少ない人ですが、本作が一番そんな感じでしょうか。
 そろそろハイテンションなファンクの表情のバンド演奏が見え隠れしていますが、抑制されたサウンド。
 ボーカルも後のシャウトスタイルはなく、丁寧に、情感たっぷりに、さらに余裕たっぷりに歌われていきます。
 アップテンポでは突っ走り、バラードでは遅れ気味に置かれていく声。
 背景が静かな分だけ、歌のカッコよさが際立ちます。
 普通に1960年代ブラジリアンポップスなElisさんを聞くには、このアルバムあたりがいいのかな?




posted by H.A.


【Disc Review】“Elis” (1966) Elis Regina

“Elis” (1966) Elis Regina

Elis Regina (vocal) and others

Elis
Elis Regina
Universal Import
2005-12-22


 ブラジルのカリスマElis Regina、1966年の”Elis”。
 ブラジリアンポップスですが、普通のボサノバ、サンバではない、ドラマチックな音。
 ジャズサンバコンボにコーラス、オーケストラ、Edú Lôbo, Gilberto Gil, Caetano Vellosoを複数曲、さらにMarcos Valle, Chico Buarque, Pixinguinha, Vinicius De Moraes, Milton Nascimentoといった、新旧、諸々の色合いの選曲。
 編成、選曲だけ見るとこの先と変わらない感じなのですが、ポップス色があまり強くありません。
 凝った構成の楽曲、編曲。
 決して長くはない一曲々の中でビート、メロディ、色付けが次々と変わり、ストリングス、管楽器と相まって、クラシック、あるいは演劇的な要素も感じるドラマチックな構成。
 ボサノバでもサンバでもポップスでも、後のファンクでもない何かを模索しているようにも感じます。
 それらを表現豊かに歌い綴る声。
 ドラマチックなElis Regina。




posted by H.A.


【Disc Review】“2 Na Bossa” (1965) Elis Regina, Jair Rodrigues

“2 Na Bossa” (1965) Elis Regina, Jair Rodrigues

Elis Regina, Jair Rodrigues (vocal) & others

2 Na Bossa
Universal Music LLC
2006-08-14


 Elis Regina, Jair Rodriguesの双頭リーダー作、ライブ録音。
 ノリノリのハイテンションジャズサンバ。
 この期のスタジオ録音諸作のように凝った音ではなく、ピアノトリオ?を背景にしたシンプルなジャズサンバ。
 Jobim、Carlos Lyraなどのメドレーで幕を開け、Marcos Valle, Edu Loboなどなど、今も歌い続けられるブラジリアンスタンダードたち。
 コロコロと激しく転がるピアノ(これが凄い!)が盛り上げる音の流れの中で、堂々と朗々と歌う二人。
 二人の掛け合いの間の自然な合いの手までが、完璧な計算され配置されたようなカッコよさ。
 ときおりのバラードと、すっとぼけたような男声、柔らかなコーラスに一息しつつも、最初から最後まで楽しげでハイテンションな宴が続きます。
 ジャズサンバ≒ボサノバなのかどうか、よくわからないのですが、ボサノバよりもジャズサンバって語感の方が似合います。
 それも汗が飛び散る熱狂型。
 あの時代のブラジルの熱。




posted by H.A.


【Disc Review】“Samba, Eu Canto Assim” (1965) Elis Regina

“Samba, Eu Canto Assim” (1965) Elis Regina

Elis Regina (vocal) and others

Samba:Eu Canto Assim (1965)
Elis Regina
Soul Jazz Records


2012-10-22


 ブラジルのカリスマElis Regina、1965年作。
 オーケストラに彩られたブラジリアンポップス。
 普通のジャズサンバ、ボサノバとは違ったイメージ、重めのドラマチックな音。
 “Brilhantes(“Ellis Regina”, “O Bem Do Amor”)” (1963)などのジャズな感じでもなく、むしろクラシック的な感じさえする重厚なムード。
 Edu Lobo, Dorival Caymmi, Baden Powell, Marcos Valleといった巨匠たちのよく聞くメロディながら、軽快ではなくて、ドラマチックで深刻系。
 複雑にアレンジされたオーケストラが重厚な空気感を醸し出し、軽い編成のコンボ、ジャズな演奏、あるいはバラードでも、分厚めのホーン陣が重みと強いテンションを付け加えます。
 サンバ、ボサノバをポップスではなくて、違う世界に持って行こうとしていたのかもねえ・・・ってな感じの肝の据わった音。
 近いムードが残る“Elis” (1966)へと続きます。




posted by H.A.


【Disc Review】“Brilhantes” (1963) Elis Regina

“Brilhantes” (1963) Elis Regina

Elis Regina (vocal) and others

アーリー・デイズ・オブ・エリス・レジーナ
エリス・レジーナ
エピックレコードジャパン
1999-06-19


 ブラジルのカリスマElis Regina の初期作品、“Ellis Regina” (1963), “O Bem Do Amor” (1963) からのオムニバスアルバム。
 とてもノスタルジックで優しい音のブラジリアンポップス。
 後の“Elis Regina in London” (1969)のハイテンション・ファンクのイメージが強いのですが、この期はジャジーで落ち着いた歌。
 可憐なシルキーヴォイスと抜群の歌唱力。
 背景を彩るアコースティックなジャズサンババンドとオーケストラ。
 ストリングスのアレンジと素朴なビートに時代を感じる、何ら奇をてらわないオーソドックスな音ながら、キリッとした感じがするのは、この人の歌ゆえなのでしょう。
 全くブレの無い完璧な歌。
 アップテンポはもちろんバラードの哀しげ、沈痛な感じも、この期、十代?にして既に出来上がった音。
 この先、時代のいろんな音を取り入れながら変わっていきますが、まずは1940-60年代のノスタルジーに浸れる、ジャジーで穏やかな素敵な音。




posted by H.A.


【Cinema Paradiso】『A.I.』 (2001)

『A.I.』 (2001)

A. I. (吹替版)
ハーレイ・ジョエル・オスメント
2014-01-01


 2001年、スティーヴン・スピルバーグ監督、出演ハーレイ・ジョエル・オスメント、ジュード・ロウ他。
 未来版ピノキオ、あるいはアンドロイドの悲哀を描いたSF。
 原案はスタンリー・キューブリックとのことで、事情が許せば彼が撮っていたのかもしれません。
 スピルバーグ諸作の中では不人気なのでしょう。
 が、ありきたりのファンタジーには留まらない、何ともいえない複雑な思いを喚起する映画。
 ごく普通のファミリーに迎えられたアンドロイド。
 いじめられ、それでも健気に暮らしつつ、いつの日か人間になれることを想う日々。
 珍妙ながら平穏な日々を経て、ふとしたトラブルで家を追われ、浮浪生活を始めます。
 立ち振る舞いがとても洒落ている浮浪ジゴロ・アンドロイド他、さまざまなアンドロイドがさまざまな小ネタとともに登場し消えていきます。
 そして画面一面に広がる月の場面に代表されるように、とても美しい映像。
 紆余曲折を経て人類が滅びていく中、人間に成れることを信じ、海中に沈んだティンカーベルの像をただただ見つめ、魔法を待つアンドロイド。
 経つ数千年の時・・・
 果たしてアンドロイドは救われたのかどうか?、夢を追い求めることは幸せをもたらすのかどうか?・・・・
 とても残酷なストーリーにも思えるし、ほのぼのとしたムードに悲哀が溶けていくようにも感じます。
 さまざまな複雑な想いが残る、極上のファンタジー。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“And Then Comes The Night” (2018) Mats Eilertsen

“And Then Comes The Night” (2018) Mats Eilertsen

Mats Eilertsen (bass)
Harmen Fraanje (paino) Thomas Strønen (drums)



 現代ECMのファーストコールベーシストのひとり、ノルウェーのMats Eilertsen、ECMでのリーダー作第二弾。
 編成はシンプルなピアノトリオ、前作”Rubicon” (2015)よりも淡く漂うような色合いが強くなった繊細で静かな音。
 ピアノは引き続き美しく繊細な音を奏でるオランダのHarmen Fraanje、ドラムはECM御用達、ノルウェーのフリー系Thomas Strønenに交代。
 いかにも近年のECM的なルバートでのスローバラードを中心とした、静かで淡い色合いの音。
 ベース、ピアノ、ドラム、三者三様の自由なビート。
 ゆったりと散りばめられていく美しい音。
 Keith Jarrettをより繊細にしたような静かなピアノ、変幻自在に動くこれまた繊細なドラム、音の流れ全体を下から支えるベース。
 余白の多い空間。
 自由な動きが拡散していくようで発散はせず、各人の波動は常に同期が取れているような、絶妙なアンサンブル。
 その静かで淡い音の流れの中から、ときおり表出するセンチメンタルなメロディ。
 そんな繊細なインタープレーが織り成す綾。
 夢うつつの時間、全身の力が抜けていくような音の流れが続きます。
 哀しげながら絶望でも激情でもない、穏やかな空気感、
 根底に流れているのはヨーロッパのSaudadeなのでしょうか。
 どこか遠いところへ誘う、静かなトリップミュージック。




posted by H.A.



【Disc Review】“Seeds Of Change” (2018) Joe Lovano

“Seeds Of Change” (2018) Joe Lovano

Joe Lovano (tenor sax)
Marilyn Crispell (piano) Carmen Castaldi (percussion)



 Joe Lovanoの変則トリオ。
 大ベテランの大御所にしてECMでの初リーダー作。
 テナーサックスと鐘の音を中心としたパーカッションのDuoから始まる静謐で幽玄な時間。
 静けさを助長する金属の共鳴音の中、ゆったりと哀しげなフレーズを紡ぐサックス。
 ピアノが加わっても空気感は変わりません。
 静かに零れ落ちてくるピアノの音、繊細なパーカッション、その中を漂うようなサックス。
 終始ゆったりしたテンポ、フリーな色合いが混ざりつつの淡い色合い、予想とは違う方向に流れていく音。
 ときおりのセンチメンタルなメロディ、強い音に覚醒しつつ、張り詰めているような、夢の中のような、いろんな質感が交錯する静かな時間が流れていきます。
 哀しげであったり、悟ったようであったり。
 侘び寂びなんて言葉、禅寺なんて空間が頭を過ぎる、静謐な時間。
 そして中盤以降に収められた、いくつかの激しさの混ざる演奏。
 残るのは覚醒か、それとも幻想か・・・
 そんな幽玄な時間。




posted by H.A.



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