吉祥寺JazzSyndicate

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2018年12月

【index】 2018年・私的ベストアルバム

【index】 2018年・私的ベストアルバム

 2018年の私的ベストアルバム10。
 基本的には新譜、新発表に限ろうと思っていますが、発表すぐには聞いていないものも多いこともあり、1-2年ぐらい前までは対象ということでアバウトに。  
 今年も、南米とECMへの偏りが・・・
 普通のジャズも聞けばいいのがあるんだろうけども・・・

Ask for Chaos” (2018) Gilad Hekselman
 強烈な浮遊感のニューヨーク系コンテンポラリージャズ。
 先端的なビートで徹底的に攻めているのだけども、とても柔らかでしなやか。
 複雑だけども気難しさゼロ。
 これが今年のイチオシ、かな?

Ask For Chaos
Gilad Hekselman
Pias UK
2018-09-14


"Creciente'' (2016) Claudio Bolzani

 2017年発表の作品ですが・・・
 Shgrada Medra、沈んだ感じの男の哀愁系現代フォルクローレ。
 ECMっぽさ、Pat Methenyっぽさがそこはかとなく漂う・・・と思っていたら楽曲にECM系が何曲も。
 繋がっているというか、好みが偏っているというか・・・

 

Casa” (2016-2017) Clara Presta, Federico Seimandi
 南米にはどれだけ跳び抜けた女性ボーカリストがいるのでしょうか?
 この人もそのひとり。
 優しいアルゼンチンフォルクローレサウンドとの絡みが最高。

Casa
Independiente
2018-02-05







Fiero.” (2017) Quinteto Bataraz
 アルゼンチン、現代タンゴ。
 フォルクローレ、ジャズが絡み合う複雑な音。
 淡くて、優し気で、クールな質感がいかにも現代の音。
 Astor Piazzollaバンドの現代版。

FIERO
QUINTETO BATARAZ
Independent


Vals de Papel” (2017) Luis Barbiero
 アルゼンチンSSWの少し不思議感のある現代フォルクローレ。

 優しいビートと歌、ほんの少しだけ妖しい演奏。
 のどかなような、現代的なような、微妙なバランスがいい感じ。

Vals de Papel
Elefante en la Habitación!
2017-11-28


Dois em Pessoa volume II” (2017) Renato Motha, Patricia Lobato
 とても優しいブラジリアンDuo。
 どの作品も金太郎飴ですが飽きません。
 声、ギター、メロディのどれもに卓越した何かがあるのでしょうねえ。


“Lucent Waters” (2018) Florian Weber
 ドイツのピアニストのトリオ+α作品。
 フリーのなビートを中心とした、とても静かで繊細な音。
 淡すぎず、派手にすぎないちょうどいい頃合いのバランス。

LUCENT WATERS
FLORIAN WEBER
ECM
2018-10-26


Absence” (2017) Kristjan Randalu
 エストニアのピアニストとBen Monderの共演作。
 美しいピアノとクリーントーンのエレキギターの絡み合いがカッコいい。
 静かで地味なようでジワジワくる音楽。

ABSENCE
KRISTJAN RANDALU
ECM


2018-04-06


The Dream Thief” (2018) Shai Maestro

 とても柔らかなピアノトリオ。
 普通のピアノトリオには飽きていて、ついつい避けてしまうのですが、これは別。
 静かで柔らかで明るくてフワフワしていてメロディアス、さらに時折の強烈な疾走。

The Dream Thief
Shai Maestro Trio
Ecm
2018-09-28


Crescent moon Waning” (2015,2016) Kip Hanrahan
 久々ですが、いつもと変わらないKip Hanrahan。
 ちょっとダークで、妖しくて、危なくて、オシャレ。
 なんだかんだでカッコいい音。

クレッセント・ムーン
キップ・ハンラハン
MUZAK/american clavé
2018-03-16






posted by H.A.


【Disc Review】"Livre" (2018) Antonio Loureiro

"Livre" (2018) Antonio Loureiro

Antonio Loureiro (voice, piano, synthesizer, drums, percussion, electric bass, electronics)
Pedro Martins (guitar, chorus) Kurt Rosenwinkel (guitar) André Mehmari (synthesizer) Frederico Heliodoro (electric bass) Ricardo Herz (violins) Genevieve Artadi (voice) Pedro Martins, Tó Brandileone, Rafael Altério, Pedro Altério (chorus)

Livre リーヴリ
Antonio Loureiro
NRT
2018-10-20


 ブラジルのマルチ楽器奏者、あるいはシンガーソングライターAntonio LoureiroのMPB。
 リーダー作としては"MehmariLoureiro duo" (2016)以来でしょうか。
 Vibraphoneがメイン楽器と思っていましたが、本作ではそれは使わずピアノとパーカッション、そして自身のボーカルを中心とした構成。
 ポップながら不思議系のメロディと、複雑で強いビート、厚めな音を中心としたハードなジャズフュージョン系、あるいはプログレッシブロック系、ボーカル入り、ハイテンションなMPB。
 各曲5分前後でコンパクトに収まっていますが、いずれの楽曲もとてもドラマチック。
 ハードに始まり、あれよあれよと変化しながらさらに音が強くなり、ドカーンと盛り上がっていく系。
 ちょっと線が細めのボーカルでクールダウン・・・ってな感じでもなく、全編通じてハードです。
 共演作はさておき、ここまでのリーダー諸作もそんな感じでしたね。
 Milton Nascimentoが現代にデビューしたならこんな感じなのかもしれません。
 “Caipi” (2017)で共演したKurt Rosenwinkel、盟友André Mehmariは一曲ずつの参加。
 前者はいかにもなファットなエレキギターでウネウネとどこまでも続いていきそうな演奏、後者はシンセサイザーでハードな音の彼。
 ブラジル系でキリッとした強めの音を聞きたい時はこの人のアルバムがいいのかな?
 そんなハードな、現代のブラジリアンジャズフュージョンな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Combo 66” (2018) John Scofield

“Combo 66” (2018) John Scofield

John Scofield (guitar)
Gerald Clayton (piano, organ) Vicente Archer (bass) Bill Stewart (drum)

COMBO 66 [CD]
JOHN SCOFIELD
VERVE
2018-09-28


 大御所ギタリストの最新作。
 4ビートを中心としたオーソドックスな現代ジャズ。
 ピアノトリオ、またはオルガントリオを背景にした、いつもの軽く歪ませたブルージー成分、ロック成分多めなジャズギター。
 全曲、あの沈んでいくようなダークで不愛想なオリジナル曲、ミディアムテンポ中心。
 私的にはあの“You're Under Arrest” (1984,1985) Miles Davisの超高速タイトル曲が強烈過ぎて、ついついそれを期待してしまうのですが、30年経ってもあれっきり、というかあれが特別だったのでしょうねえ。
 ともあれ、男臭くてヤクザな感じ、意外なところにブレークが入るいつものスタイル・・・と思っていたら、終盤にポップソングのようなキャッチーなバラードも。
 かつてのハイテンションジャズフュージョン、あるいはジャムバンドっぽさも残しつつ、心地よくバウンドする一線級のジャズバンドに、ウネウネとしたギター。
 どこか懐かし気な香りのする、かといってモダンジャズには収まらない、ロック世代以降のアメリカンな音。
 歳を重ねてもなお、何事もなかったように淡々と弾き連ねていく姿が何ともクールでカッコいいなあ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Christmas Songs” (2005) Diana Krall

“Christmas Songs” (2005) Diana Krall

Diana Krall (piano, vocals)
The Clayton/Hamilton Jazz Orchestra
Jeff Hamilton (drums) Robert Hurst (bass) Anthony Wilson (guitar) Gerald Clayton, Tamir Hendelman (piano) Jeff Clayton (alto sax, flute) Keith Fiddmont (alto sax, clarinet) Rickey Woodard, Charles Owens (tenor sax, clarinet) Adam Schroeder (baritone sax, bass clarinet) Rick Baptist, Sal Cracchiolo, Clay Jenkins, Gilberto Castellanos (trumpet) William Barnhart, Ira Nepus, George Bohanon, Ryan Porter (trombone) Tommy Johnson (tuba) Rick Todd, David Duke, Joe Meyer, Brad Warnaar (French horn) Joe Porcaro (percussion)

Christmas Songs
Diana Krall
Verve
2005-11-01


 懐かしいクリスマスアルバム。
 ものすごーく久々に聞いてみると、巷にあふれるアルバムとはちょっと違う、徹底的に洗練された音。
 いわゆるポップス仕立てではなく、ブルージーでジャズなこの人らしい音。
 よき時代のアメリカンなノスタルジー。
 


【Cinema Paradiso】『レッド・スパロー』 (2018)

『レッド・スパロー』 (2018)

 2018年、監督フランシス・ローレンス、出演ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ他。
 女性スパイのアクションサスペンス。
 クールで無表情なジェニファー・ローレンスが似合うロシアの女スパイ、その誕生~ファーストミッション。
 時代は現代、舞台はモスクワ、ブタペスト、ロンドン。
 冷戦は終わったものの諜報戦が続く東西陣営。
 ケガでバレリーナへの夢を断念し、情報機関勤務の叔父を頼り、いわゆるハニートラップ要員養成機関を経てスパイへの道へ。
 『007』や『ミッションインポシブル』、あるいは女性エージェントの『ソルト』(2010)のようなド派手なアクションや壮大な陰謀はありません。
 二重、三重スパイの情報戦と非情なだまし合い、トラップの仕掛け合い。
 決してスーパーウーマンではない主人公含めて、こちらの方がよりリアルなのでしょうから、かえって怖いようにも思います。
 華やかな衣装と美しい景色に彩られながらも、全編ダークで陰湿なムード。
 もっと過激で激しい方向に行きそうでそうはならない、あくまで頭脳戦と駆け引きが中心の本作。
 さて、次作があるのでしょうかね?
 いろんなシナリオが期待できるいいネタだと思うのですが、さて・・・?


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

Florian Weber (piano)
Linda May Han Oh (double bass) Nasheet Waits (drums)
Ralph Alessi (trumpet)

LUCENT WATERS
FLORIAN WEBER
ECM
2018-10-26


 ドイツのピアニストFlorian Weberのトランペット入りカルテット、ECMでの初リーダー作。
 “Alba” (2015) Markus Stockhausenでとても静かで穏やかな演奏していた人。
 サポートはアメリカンRalph Alessi、そのバンドのドラマーNasheet WaitsのECM御用達の人たちに、知る人ぞ知る強烈なアジア系女性ベーシストLinda Oh。
 “Alba” (2015)とは面持ちを変えて、自由に激しく動きつつも、少し線が細めの繊細な音。
 静かなフリービート時間が中心。
 美しい音で美しいメロディを奏でるピアノ、それに寄り添いときおり強烈な推進力のベース、自由にアクセントをつけていくドラム。
 夢と現実を行き来するような時間。
 数曲で加わる覚醒を促すような鋭いトランペット、ときおりの激しいビート。
 が、テンポと音量が下がると、また夢の中・・・
 ”水”をテーマにした楽曲を集めたようで、確かにそんな演奏が続きます。
 1970年代ECMとは全く違う質感、21世紀型ECMの穏やかで優しい、繊細な音。
 美しさと妖しさはそのまま。
 とてもわかりやすいのですが、メロディが甘すぎたりセンチメンタルに過ぎたりしない、クールな色合いなのも現代的なのでしょう。
 静かなヨーロピアンコンテンポラリージャズ、その21世紀型ECMな音、これまた白日夢系。




posted by H.A.


【Disc Review】“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

Wolfgang Muthspiel (guitar)
Brad Mehldau (piano) Larry Grenadier (bass) Eric Harland (drums)
Ambrose Akinmusire (trumpet)

WHERE THE RIVER GOES
WOLFGANG MUTHSPIEL
ECM
2018-10-05


 オーストリアのギタリストWolfgang Muthspiel、ECMでのリーダー作、第三弾。
 前作“Rising Grace” (2016)と同じ編成、ドラマーがBrian BladeからEric Harlandに交代。
 色合いも前作と同様、トランペットがアクセントになった穏やかなジャズ。
 かつてのとんがった音は影を潜め、淡く明るい色合い、フワフワと漂うようなサウンド。
 手練れた人たちによる繊細なアンサンブルと、タダモノではない感の漂うインプロビゼーションが続きます。
 楽曲の表情は妖しいコンテンポラリージャズ、ハイテンションジャズ、南米、ブルース、はたまたスタンダードのパロディ、その他諸々のごった煮。
 但し、それら全てがスッキリとまとまり洗練された、ジャズな音。
 オーソドックスなようで先端的なビートを出すドラムとベース、不思議な音の動きのピアノトリオ。
 それを背景にしたクリーントーンのエレキギター、ガットギターもさることながら、それと絡み合うトランペットがカッコいい。
 控え目ながら、繊細から過激までの多彩な表現力。
 この人もECMから出て来るのでしょう。
 全部合わせて、オーソドックスになようでほんの少しだけ現実からズレたような、白日夢のような音。
 穏やかで優しい、21世紀型ECMな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

Jakob Bro (guitar)
Thomas Morgan (double bass) Joey Baron (drums)

BAY OF RAINBOWS
BRO/MORGAN/BARON
ECM
2018-10-05


 デンマークのギタリストJakob Broのトリオ、ニューヨークでのライブ録音。
 トランペット入りの前作“Returnings” (2018)から、“Streams” (2015)と同メンバーのトリオに戻りました。
 あの乳濁色の空気。
 トランペットの鋭い音や激しいビートでの覚醒はなく、ゆったりとして淀んだような緩やかな音の流れ。
 終始ルバートのように浮遊するビート感、リバーヴたっぷりの艶のある音のギターが紡ぐ、ゆったりとしたメロディとコードの動き。
 寄り添うように慎ましやかにカウンターを当てるベースとフリーにアクセントをつけるドラム。
 オリジナル曲はいつもの淡くて悲し気で懐かし気なメロディ。
 中盤にいかにもニューヨークな先端的な音、ループを使いつつの強いビートのハイテンションな演奏。
 が、それも一曲のみ、他はひたすら続く緩やかで穏やかな音。
 ライブ録音ながらスタジオ録音諸作と同じムード、合間の賑やかな拍手と掛け声でふと現実に立ち返るような、淡い時間が流れていきます。
 白日夢のような音、21世紀型ECMな音。
 ほんとにマンハッタンのど真ん中で演奏された音なのでしょうかね?
 どこか違う場所の違う時間に連れて行ってくれるトリップミュージック。




posted by H.A.


【Cinema Paradiso】『モーガン プロトタイプL-9』(2016)

『モーガン プロトタイプL-9』(2016)

 2016年アメリカ、イギリスの共作、監督ルーク・スコット、製作リドリー・スコット、出演ケイト・マーラ、アニャ・テイラー=ジョイ、トビー・ジョーンズ他。
 人間兵器をテーマにしたSFサスペンス。
 遺伝子操作によって生まれた”超”人間、アニャ・テイラー=ジョイ扮するモーガン。
 逃走するモーガンを追う遺伝子企業のエージェント、ケイト・マーラ扮するウェザーズ。
 不気味で超人的なモーガンと、あくまでクール、ビジネスウーマンなウェザーズ。
 頭脳戦から徐々に激しさを増す二人の女性のチェイス。
 そして行き着く先は、いかにもリドリー・スコット系の作品らしく、伏線を張りながらのどんでん返し。
 中盤から微妙に変化する登場人物の描き方に気付くかどうか?
 おそらく多くの人が気付くように演出しているのでしょう。
 えっ?・・・で終わるか、やっぱりそうか・・・で終わるか。
 どちらにしても楽しめるエンターテイメント。
 テーマ、空気感は重くてダークです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Live In Bologna 1985” (Apl.1985), “Strollin'” (Jun.1985) Chet Baker

“Live In Bologna 1985” (Apl.1985), “Strollin'” (Jun.1985) Chet Baker

Chet Baker (trumpet, vocals)
Philip Catherine (electric guitar) Jean-Louis Rassinfosse (double bass)


ストローリン
チェット・ベイカー
SOLID/ENJA
2018-05-23


 Chet Baker、この期の定番の編成の一つ、ギターとベースのトリオでのライブ録音。
 ギターがジャストジャズなDoug Raneyからロックも混ざるPhilip Catherineに、ベーシストも交代。
 イタリア、ドイツでの近い時期のステージを収めた二作。
 少し躍動感が強い“Live In Bologna 1985” (Apl.1985)、ひたすら沈み込むような“Strollin'” (Jun.1985)。
 “Diane” (1985) Chet Baker & Paul Bley と同年、1980年代、静謐なChet Baker。
 どちらのステージも水を打ったように静かな空間。
 その中を静かに流れていくジャズ。
 徐々に熱を帯びていく攻撃的なギターとベースにクールなトランペット。
 ときおりのファンクなビートやエフェクティングされたギターも交えながら演奏は進みます。
 スピードが上がっても、ラテンになっても、バックのテンションが上がっても、トランペットはあくまでクール。
 トランペットが後ろに引くとフュージョンの香りも漂うギター、ベースの怒涛のようなDuo。
 が、トランペットが戻ると端正で流麗なジャズ。
 懐かしいものが脳裏をよぎる瞬間。
 American_man in EuropeのAmerican Saudadeな音。




posted by H.A.

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