吉祥寺JazzSyndicate

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2018年10月

【Disc Review】“Xieyi” (1999,2000) Anders Jormin

“Xieyi” (1999,2000) Anders Jormin


Anders Jormin (bass)
Robin Rydqvist (trumpet, flugelhorn) Lars-Goran Carlsson (trombone) Nicolas Rydh (bass trombone) Krister Petersson (French horn)

Xieyi
Universal Music LLC
2009-02-25


 スウェーデンの名ベーシストAnders JorminのECMでのリーダー作。
 ECMでの録音は“Notes from Big Sur” (1992) Charles Lloyd、“Matka Joanna” (1994) Tomasz Stankoあたりからでしょうか。
 たくさんの作品に参加していますが、このレーベルでの初リーダー作。
 あくまでソロ演奏が中心。
 ホーンのアンサンブルは一分前後の短いインタールード的な楽曲のみ。
 堂々たるベースソロ。
 余分な音のない一人だけ、ベースだけの音。
 ジャズであれフリーであれ、スローテンポでも静かな音でもグルーヴを作る人ですが、一人であってももちろんそれ。
 静かなバラード演奏が中心。
 メロディアスな演奏もあれば、断片的なフレーズの連続、次々と景色が変わっていくようなインプロビゼーション的な演奏もあり。
 どこかで聞いた記憶があるようなメロディが現れては消えていく時間が続きます。
 静謐な空間に響く低い弦の響き、静かなグルーヴは心地よさ最高。
 どこか懐かしいような、遠くを眺めているような、断片的な記憶を探しているような不思議な感覚。
 ハードボイルドで静かな時間。




posted by H.A.


【Disc Review】“Agram” (1996) Lena Willemark, Ale Möller

“Agram” (1996) Lena Willemark, Ale Möller


Lena Willemark (vocal, fiddle, viola) Ale Möller (mandola, lute, natural flutes, folk-harp, shawm, wooden trumpet, hammered dulcimer)
Palle Danielsson (double bass) Mats Edén drone (fiddle) Tina Johansson (percussion) Jonas Knutsson (soprano, baritone saxophones, percussion)

Agram
Willemark
Ecm Import
2000-06-06


 スウェーデンのボーカリスト&フィドル奏者Lena WillemarkとマルチインスツルメンタリストAle Möller、“Nordan” (1993)に続くECM第二弾。
 少し人数は減りましたが、前作と共通するメンバー。
 同じく北欧伝統音楽~古楽~ジャズが交錯する音。
 インスツメンタルのアンサンブルは古楽系の弦楽器の美しい高音が穏やかに絡み合う牧歌的な印象。
 が、ヴォイスが入ると勇壮でハイテンションなLena Willemarkの世界。
 前作よりもヴォーカル抜きの場面が多い印象、その分だけ穏やかに聞こえるかもしれません・・・うーん、やはり一緒か・・・
 Palle Danielssonのベースが聞こえると、あるいはソプラノサックスが前面に出るとジャズな空気感もありますが、フィドルとパーカッションの合奏が始まると古の祝祭なムード。
 収穫を祝うのか、はたまた戦いに向かうのか・・・
 見えてくるのは荒野の中の野営地、あるいは風が舞う草原の小さな集落。
 現代の都会とは隔絶された景色。
 メル・ギブソン主演・監督、”ブレイブハート”な感じ。
 アイルランド、スコットランドはもとより、スウェーデンあたりも全て繋がっていたんでしょうねえ・・・
 これまた非日常へのトリップミュージック。

※別の作品から。


posted by H.A.


【Disc Review】“Nordan” (1993) Lena Willemark & Ale Möller

“Nordan” (1993) Lena Willemark & Ale Möller


Lena Willemark (voice, violin) Ale Möller (mandola, natural flutes, folk-harp, shawm, cows-horn, hammered dulcimer, accordion)
Palle Danielsson (bass) Mats Edén (violin, kantele) Per Gudmundson (violin, bagpipe) Jonas Knutsson (saxphone, percussion) Tina Johansson, Björn Tollin (percussion)

Nordan
Lena Willemark
Ecm Import
2000-06-06


 スウェーデンのボーカリスト&フィドル奏者Lena Willemarkと、作曲家&マルチインスツルメンタリストAle Möllerの双頭リーダー作、ECMでの制作。
 ECMを聞いているとよく出てくる北欧伝統音楽と現代の音楽、さらに古楽とのフュージョン作品。
 “I Took Up the Runes” (Aug.1990) などノルウェーのJan Garbarekの一連の民族音楽色を入れた作品を想い起こしますが、こちらはスウェーデン。
 聞き慣れない音階の物悲しくて、勇壮系、ときにフォーキーなメロディに、アフリカにもにも通じそうな少々重めのプリミティブなビート感。
 フィドルや古楽器系の弦、さらにバグパイプが鳴ると、ヨーロッパ大陸なのか、スコットランドなのか、スカンジナビアなのか分からなくなります。
 さらにこの人の場合は絶叫系も交えたハイテンションな歌。
 強烈な非日常感。
 それでいてどこか懐かしい不思議な質感。
 それをかろうじて現代ヨーロッパに引き戻そうとするジャズなベースとサックス。
 が、その力は及ばず、儀式と祝祭が続く・・・
 そんな非日常感120%。
 1990年代以降、ECMのエスニックミュージック路線、さらに古楽路線を象徴するような一作。

※別のアルバムから。
 

posted by H.A.


【Disc Review】“Wings Over Water” (1981) Stephan Micus

“Wings Over Water” (1981) Stephan Micus


Stephan Micus (Guitars, Flowerpots, Ney, Zither, Suling)

Wings Over Water
Stephan Micus
Ecm Import
2000-07-18


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micusの初期作品。
 ECMではなくJapo Recordsでの制作。
 名作“East of the Night” (1985)、ECMでの“Ocean” (1986) の少し前。
 1990年以降、北欧系、中近東系、地中海系、アフリカ系、インド系などなど、民族音楽色、あるいは古楽色が強いECM作品が増えているように思いますが、1970年代からのCollin Walcottと1980年代からのこの人、インドのL. Shankar, Zakir Hussainあたりが元だったのかなあ、と思ったりもします。
 なぜか南米系はEgberto Gismonti, Nana Vasconcelosで止まっていますね・・・
 さておき本作、この期はギター中心、管楽器は尺八ではなく少し音の線が細いNey、ヴォイスが響く場面も少々のみ。
 西欧的フォークな色合いも残した繊細な音の流れ。
 ギターあるいはフラワーポットなどで刻まれるリフを繰り返す、プリミティブな、あるいはミニマルミュージックにも通じる背景と、少し変わった音階でメロディを奏で、インプロビゼーションを展開する管と弦。
 オーバーダビングによるアンサンブルも洗練されています。
 例のごとくヨーロッパなのか、中近東なのか、アジアなのか判然としないそれらフュージョンするような音、時代感もわからない不思議な質感。
 強いて言えば本作、どこの色が強いのでしょう?
 ギターの哀感の強いメロディが印象に残るのでスペイン、あるいは管の音、音階からは中近東~インドあたり、優しいフラワーポットの響きはアジア的でしょうかねえ?・・・やはり区別は無用。
 ごちゃまぜなようで、実験的なようで凄い完成度。
 遠いところから聞こえてくるような懐かしい感じの心地よいサウンド。
 終始静かな音を含めてECMなワールドミュージックの端緒、あるいは前夜な一作。




posted by H.A.


【Cinema Paradiso】『ゴーン・ガール』 (2012)

『ゴーン・ガール』 (2012)

ゴーン・ガール (字幕版)
ベン・アフレック
2015-03-06


 2012年、監督デヴィッド・フィンチャー、出演ベン・アフレック、ロザムンド・パイク他。
 ミステリーというか、クライム・サスペンスというか、はたまたサイキック・ホラーというか?
 突然失踪した妻。
 愛する妻を必死に探す健気な夫から一転、犯罪を疑われ、追い詰められていく夫。
 クールなお嬢様ロザムンド・パイクに、いかにもアメリカン、優し気で遊びっ気がある、かといってお人よしではないし、影もあるベン・アフレックのベストなキャスティング。
 謎は膨らみねじ曲がりつつも、徐々に解き明かされていきます。
 ようやく落ち着きどころが見えたかな・・・と思いきや、そこからが凄まじい。
 えっ?そうなるの・・・?ってな恐ろしい結末。
 胸糞というか、後味最悪というか。
 最後の最後まで静かなのがかえって怖い。
 結婚願望のある独身の人、近々結婚しようとしている人、あるいは新婚のカップルにはとてもお勧めできません。
 長く結婚している人には、まあいいか・・・あきらめましょう。
 そんなホラーな一作。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Temporary Kings” (2018) Mark Turner, Ethan Iverson

“Temporary Kings” (2018) Mark Turner, Ethan Iverson

Mark Turner (tenor sax) Ethan Iverson (piano)

Temporary Kings
Ethan Iverson/Mark Turner
Ecm
2018-09-07


 Mark Turner、“Lathe Of Heaven” (2014)以来のリーダー作品。
 “All Our Reasons” (2011), “One Is the Other” (2013) Billy Hartでも共演を続けるピアニストEthan IversonとのDuo。
 半数以上をEthan Iversonの楽曲が占め、イニシアティブを執ったのは彼かもしれません。
 静かで妖しいジャズ。
 ダークな空気感、抽象的で不思議なメロディとコード。
 Duoゆえの自由さ、伸び縮みするビート感はありますが、フリーになる時間は長くありません。
 ジャズ、ポップス、あるいはクラシックの整った表情になりそうでならない、どこか意図的に外しているのであろう音の動き。
 ソプラノサックスのような高音の連続から一気に下に急降下し、とぐろを巻くように徘徊するテナー。
 あくまで淡々と不思議な音を紡ぎ続けるピアノ。
 一曲取り上げられたジャズナンバーもどこかひねくれた不穏な表情。
 Thelonious MonkとJohn ColtraneのDuoを、クラシックの香りと現代のクールな質感で包み込んだような音・・・ってな感じ・・・も違うか?
 いずれにしても時空が歪んだような静かな時間。
 そんな不思議感たっぷりの現代ジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“One Is the Other” (2013) Billy Hart

“One Is the Other” (2013) Billy Hart

Billy Hart (drums)
Ethan Iverson (piano) Ben Street (double bass)
Mark Turner (tenor sax)

One Is The Other
Universal Music LLC
2014-02-28


 Billy Hart、“All Our Reasons” (2011)に続くサックスカルテット。
 前作と同じメンバー、不思議感たっぷり、フリー混じりのコンテンポラリージャズ。
 前作と同様にBilly Hart, Ethan Iverson, Mark Turnerで楽曲を分け合い、スタンダードを一曲。
 メカニカルなMark Turner曲で突っ走り、フリーなEthan Iversonの曲で漂い、Billy Hartの曲でちょっとだけ普通のジャズに戻る、そんな組み合わせ。
 少々陰鬱系。
 John Coltraneをクールにしたというか、Wayne Shorterをスッキリさせたというか、そんなサックスが全編で鳴り続けます。
 Ethan Iversonのピアノもそれに合わせてかどうか、前作よりも不思議系。
 前作はECMっぽくやってみましたが、本作はThelonious Monk系を強めに・・・ってな感じ。
 御大は変幻自在、大技小技の軽快なドラム。
 全部合わせて、明後日の方向に飛んで行って、なかなか帰ってこないで次の曲へ・・・
 でもなんだかなんだでECMにしてはジャズだったりします。
 懐かしいんだか、新しいんだか・・・
 これまたフリーとオーソドックスの狭間をさまよう、不思議感たっぷりの現代ジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“All Our Reasons” (2011) Billy Hart

“All Our Reasons” (2011) Billy Hart

Billy Hart (drums)
Ethan Iverson (piano) Ben Street (double bass) 
Mark Turner (tenor sax)

All Our Reasons
Deutsche Grammophon ECM
2018-01-19


 大御所ドラマーBilly Hart、ECMでのサックスカルテット作品。
 エレクトリックMilesあるいはHerbie Hancockのサウンドを支えた人。
 ECMでもサポートは多数あったと思いますが、リーダー作は初。
 別レーベルで”Quartet” (2005)を作ったメンバーそのまま、旬な若手Mark Turner、Ben StreetにECMのカラーに合うのか否か何とも微妙な過激なジャズロックバンドThe Bad Plusのピアニスト。
 激烈系にもなりそうな顔ぶれですが、結果は静かなフリー混じりのジャズ。
 Billy Hart, Ethan Iverson, Mark Turner三者のオリジナル曲は淡くて抽象度の高いメロディ。
 冒頭からECMでのお約束、ルバートでのスローバラード的な静かに漂うようなジャズカルテット。
 終始フリーなドラム、高音で旋回するような音が目立つサックス、徐々に激烈になっていく様は、“Kulu Sé Mama” (Jun.Oct.1965) John Coltraneの“Welcome”あたりを想い起こします。
 そんな演奏は冒頭のみ、以降はビートが決まったグルーヴィーで不思議系なジャズ。
 Mark Turnerのサックスはいつものクールな感じよりも、沈痛で陰鬱な感じが目立つ緊張感の高い音。
 リーダーらしく叩きまくるBilly Hart、あちこちに跳びまわりながらも意外にECM的なピアノを弾くEthan Iversonに、ペースキーパーの役割であろうBen Street。
 1960年代にタイムスリップ・・・ってな感じでもないのですが、現代の先端ジャズを演奏する今の若手~中堅もそんなジャズが好きなのでしょう。
 フリーとオーソドックスの狭間をさまよう、不思議感たっぷりの現代ジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Helsinki Songs” (2018) Trygve Seim

“Helsinki Songs” (2018) Trygve Seim

Trygve Seim (tenor, soprano sax)
Kristjan Randalu (piano) Mats Eilertsen (bass) Markku Ounaskari (drums)

Helsinki Songs
Trygve Seim
Ecm
2018-08-31


 ノルウェーのサックス奏者Trygve Seim、カルテットでのコンテンポラリージャズ。
 サポートはリーダー作”Absence” (2017)でタダモノではない感を漂わせていたエストニアのピアニストKristjan Randaluを中心とするトリオ。
 ここまでの作品からすれば意外にもポップで穏やかなジャズ、静かなバラードが中心。
 静かながらとんがりまくっていた”The Source and Different Cikadas” (2000)あたりから、作品が進むにつれて徐々にわかりやすくなってきていたように思うので、落ち着くところに落ち着いたのかもしれません。
 静かにビートを刻むベースとドラムに、明度の高い上品なピアノ、強い浮遊感のピアノトリオ。
 “My Song” (1977) Keith Jarrett までとは言わずとも、そんな空気感も漂う、懐かし気で前向きな明るいメロディ。
 そんな音を背景にした優しいサックス。
 沈痛、敬虔な感じではなくてあくまで懐かし気な穏やかさ。
 ECMのお約束、ルバートでのスローバラードは中盤の”Birthday Song”。
 他にもそんな雰囲気の演奏がちらほら、というよりも全編そんなイメージのゆったりと浮遊するような音。
 近年のノルウェーのアーティストのECM作品、穏やかな表情の作品がたくさん。
 近年の北欧の若手~中堅の本音は、こんな感じのわかりやすい音なのかもしれません。




posted by H.A.


【Cinema Paradiso】『ノクターナル・アニマルズ』 (2016)

『ノクターナル・アニマルズ』 (2016)

 2016年、監督トム・フォード、出演エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン他。
 小説と現実が交錯するサスペンス、あるいはひねった恋愛ドラマ、はたまた心理ドラマ。
 セレブながらどこか空疎な生活を送る主人公に送られてくる、元夫が書いた小説”夜行性動物”の原稿。
 映像化されたその小説と、現在、過去が交錯しながら進む構成。
 主人公の頭の中で映像化された小説の主人公は元夫。
 そのストーリーは凡庸ながら激烈な悲劇、映像は20世紀的。
 それになぜか没頭してしまう現在の主人公。
 一方、現在の映像は先端的な美術画廊、美しいレストラン、住宅、インテリア、とてもクールでスタイリッシュ。
 その中でなぜか疲れた表情の現在の主人公。
 何も関係がなさそうな小説と現在、双方の主人公の心理と現実が交錯するとき・・・?
 途中にこれ見よがしに挿入される”あれれ?”な場面で伏線を張り、方向を見せつつ、それでいてなお謎めいたエンディング。
 ストーリーの結末、背景、登場人物の心理など含めて、観る側の想像力によっていろんな解釈が出来るように構成されているのでしょう。
 なお冒頭のタイトルバックはちょっと正視できないキツイ映像。
 それと本編との関りがわからないのでググってみると・・・
 なるほど、美術と心理学に詳しければもっと楽しめて、解釈も違ってくるのかな?


 

posted by H.A.



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