吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2018年10月

【Disc Review】“The Land That Is Not" (2010) Sinikka Langeland

“The Land That Is Not" (2010) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (kantele, vocals)
Arve Henriksen (trumpet) Trygve Seim (soprano, tenor sax) Anders Jormin (double bass) Markku Ounaskari (drums)

 ノルウェーのカンテレ奏者&ボーカリストSinikka LangelandのECM作品。
 “Starflowers" (2007)と同じスカンジナビア周辺のメンバーでの二管クインテット編成。
 楽曲も同じく北欧トラディショナルの色濃いのオリジナル曲が中心。
 不思議系、深刻系、勇壮系の哀し気なメロディに緊張感の高いヴォイス。
 全体の空気感は前作と同様ですが、カンテレの音が控え目になり、バンドのアンサンブルとヴォーカルが中心。
 クラシック、あるいはアヴァンギャルド系フォーク~ロックのようなヴォイスが前面に出る場面は摩訶不思議なSinikka Langelandの世界ですが、ホーンが前面に出る場面は北欧コンテンポラリージャズ。
 そのジャズ~現代のグルーヴを加えるのは名手Anders Jorminのベース。
 本作でもハイテンションなジャズな場面もちらほら。
 あるいは、聞き慣れないメロディラインの中に、現代的なメロディやコード展開も少々。
 過去の北欧の世界に戻っていきそうでいかなくて、現代の世界に戻ってきたようでそうでもない、漂う違和感、非日常感。
 その北欧トラディショナルとジャズの交錯、バランス~アンバランスがこのバンドのカッコいいところなのでしょう。
 ところどころに現れる、静かな空間に響くカンテレの響きがとても心地よいのですが、その音がしっかり聞こえて、かつ普通にメロディアスなのは“The Half-Finished Heaven” (2013)。
 いずれも非日常の音、どれがいいかはお好み次第。




posted by H.A.


【Disc Review】“Maria's Song” (2008) Sinikka Langeland

“Maria's Song” (2008) Sinikka Langeland

Sinikka Langeland (voice, kantele)

Kare Nordstoga (organ) Lars Anders Tomter (viola)

Maria's Song
Sinikka Langeland
Ecm Import
2010-08-03


 ノルウェーのカンテレ奏者&ボーカリストSinikka Langelandのクラシック寄りの作品。
 本作の前後の““Starflowers" (2006)、“The Land That Is Not" (2010)はジャズにも近い編成でしたが、本作はパイプオルガンとビオラ奏者を迎えクラシック寄り。
 J.S. Bachを中心にノルウェーのトラディショナル+α全28曲。
 インタールード的な短い楽曲を挿みながら、最後に十数分の長尺な演奏。
 カンテレが響く場面は少な目、Sinikka Langelandはボーカルが中心。
 前後の作品ではあまり聞かれない朗々としたクラシック歌手のような歌。
 ビオラ、パイプオルガンのソロ演奏、楽曲も含めて完全にクラシックな質感。
 アカペラボイスで幕を開け、パイプオルガンが教会的な空気も作りつつ、ビオラのソロ演奏が鳴り続く・・・そんな演奏が入れ代わり立ち代わり登場しては消えていく構成。
 合間々に挿まれるカンテレの独奏を含めた美しい音がアクセント。
 ノルウェーのトラディショナル曲もその空気感、音の流れの中に溶け込んでいます。
 根っこは一緒なのかもしれません。
 そんな感じのクラシックフュージョンなノルウェートラディショナルミュージック。


※別の作品から。

 


posted by H.A.


【Disc Review】“Starflowers" (2006) Sinikka Langeland

“Starflowers" (2006) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (kantele, vocals)
Arve Henriksen (trumpet) Trygve Seim (soprano, tenor sax) Anders Jormin (double bass) Markku Ounaskari (drums)

Starflowers (Ocrd)
Sinikka Langeland
Ecm Records
2007-08-21


 ノルウェーのカンテレ奏者、ボーカリストSinikka LangelandのECMでの第一作。
 カンテレはフィンランド、小型のハープ、あるいは琴のような楽器。
 古楽器なのだと思いますが、透き通った高音と控え目な響きが何とも美しい楽器。
 バンドはECM御用達の北欧陣、ノルウェーのホーン二人にスウェーデンのベース、ドラマーがフィンランド。
 ノルウェーあるいはフィンランドのトラディショナルがベースなのだと思います。
 とても静かな時間。
 聞き慣れない音階、ゆったりとしたアフリカにも通じそうなプリミティブな感じのビート。
 カンテレの音はとても美しいのですが、ヴォイスはフォーキーながら呪術的に響きます。
 悠久の何とか・・・とはニュアンスが違うのかもしれませんが、遠い過去から聞こえてくるような音。
 そんなカンテレ、ヴォイスと絡み合う寂寥感の塊のようなトランペット、緊張感の塊のようなサックス。
 名手Anders Jorminの地の底でうごめくようなベースとジャズドラマーであろうMarkku Ounaskariが作る静かなグルーヴを背景にして、妖しく漂うようなフロント陣。
 それらあわせて、少々沈痛で敬虔な空気感。
 基本的に静謐系なのですが、後半になぜか凄まじいエネルギー放出系、1970年代型激烈ジャズの場面があったり・・・この手の演奏は久しぶりだなあ・・・
 などなど含めて、不思議な北欧トラディショナルなコンテンポラリージャズ。
 これまた非日常、異空間へのトリップミュージック。




posted by H.A.


【Cinema Paradiso】『レヴェナント: 蘇えりし者』 (2015)

『レヴェナント: 蘇えりし者』 (2015)

 2015年、監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、出演レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ他。
 アカデミー賞、監督賞、主演男優賞、撮影賞、受賞。
 後々まで語り継がれる“名画”になるのでしょう。
 舞台は1800年代、開拓途上、アナーキーなアメリカの北西部、雪の山岳地帯。
 描かれたのは、あくまで生き抜こうとする動物としての人間と、理性と激情が交錯する感情をもつ人間。
 野生の熊との壮絶な闘い、瀕死の状態からひたすらじっと回復を待つ、あるいは生肉を食らって飢えをしのぎ、獣の腹の中に身を隠す事で寒さをしのぐ、ひたすら生き残ろうとする動物としての人間。
 息子の死を嘆き、復讐ために、生き抜くためには非合理な行動を取る、感情が前面に出た人間。
 それらを鬼気迫る姿で演じるレオナルド・ディカプリオ。
 オスカーを取るべくして取った、すさまじい演技。
 命を懸けて秩序を守ろうとする隊長を含めて、登場人物それぞれが厳しい自然と他者との関係の中で生き抜こうとする生々しい姿。
 極限に近い状況下での凄まじいまでの人間ドラマ。
 社会システムが確立し自然の脅威からも守られた現代に生まれたことを感謝しつつも、生き抜くといったことは何なのか?、考えてしまう軟な現代人は私だけではないのでしょう。




posted by H.A.



【Disc Review】“Songs of Thessaloniki” (2014) Savina Yannatou & Primavera En Salonico

“Songs of Thessaloniki” (2014) Savina Yannatou & Primavera En Salonico


Savina Yannatou (voice)
Kostas Vomvolos (qanun, accordion) Yannis Alexandris (oud, guitar) Kyriakos Gouventas (violin) Harris Lambrakis (nay) Michalis Siganidis (double bass) Kostas Theodorou (percussion)

Songs of Thessaloniki
Savina Yannatou & Primav
Ecm Records
2015-05-18


 ギリシャのボーカリストSavina Yannatouと地中海系伝統音楽バンドPrimavera En Salonico、ECMでは“Sumiglia” (2004)、“Songs of an Other” (2007)に続くアルバム。
 本作はギリシャの都市Thessalonikiにまつわる楽曲集。
 Thessalonikiはギリシャの北東部の港町。
 トルコ、東欧にも近くヨーロッパと中近東の結節点なのでしょう。
 ここまでの諸作と同様、諸々の民族感、歴史感、空気感が入り混じる、そんなサウンド。
 いつも通りに静かでゆったりした音の流れが中心。
 祈り系あり、祝祭系あり、呪術系あり、勇壮系あり、童謡系あり・・・そして全編を漂うそこはかとない哀感、やるせなさ。
 アコーディオンとバイオリンよりもウード、カヌーンといった中近東系楽器の音が目立つ印象、メロディも中近東寄りな感じがするのはThessalonikiの場所ゆえでしょうか。
 ヴォイスも裏声の時間が長くなったイメージ。
 ときおりのベースが目立つ場面のジャズなグルーヴがかろうじて現代に引き戻す・・・そんな感じ。
 どこか懐かしい感じがするのは、歴史の優しさゆえなのか、それとも哀しさゆえなのか?
 諸々あわせて強烈な非日常感。
 いにしえのエーゲ海へのトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Sumiglia” (2004) Savina Yannatou & Primavera En Salonico

“Sumiglia” (2004) Savina Yannatou & Primavera En Salonico


Savina Yannatou (voice)
Primavera en Salonico:
Kostas Vomvolos (accordion, qanun, kalimba) Yannis Alexandris (tamboura, oud, guitar) Michalis Siganidis (double-bass) Kyriakos Gouventas (violin, viola) Harris Lambrakis (ney) Kostas Theodorou (percussion)

Sumiglia
Universal Music LLC
2005-03-08


 ギリシャのボーカリストSavina Yannatou、ヨーロッパ~地中海の伝統音楽作品、ECMから。
 アコーディオンのトリオをベースにして、バイオリン他の弦、木管が絡み合う揺らぎの強いサウンド。
 少し陰のあるソプラノヴォイスはクラシック系の歌唱、裏表を駆使した変幻自在の表現力ですが、声を張り上げないサラリとした感じはポップス的、ジャズ的でもあるのでしょう。
 とても優し気ですが、呪術的でもあるミステリアスヴォイス。
 基本的には静かでゆったりした音。
 おそらくは中央アジア~中近東~東欧~ギリシャ~地中海の伝統音楽集。
 トルコ~中近東、アルメニア、ケルティッシュ、西欧的クラシック、教会系・・・その他諸々な感じが交錯します。
 楽曲ごとにイメージが異なる感じは、さまざまな地区の楽曲を集めてきているのだろうと思います。
 後の“Songs of an Other” (2007)、“Songs of Thessaloniki” (2014)と比べると、よりメロディアスでセンチメンタルな感じでしょうか。
 少し緊張感、非日常感が薄らぎ、静かで優しい印象が勝ります。
 哀しげな表情の漂うようなサウンドを中心として、祝祭的であったり、祈りのようであったり。
 遠い所を眺めているような、ささくれた気持ちをなだめてくれるような。そんなサウンド。
 とても優しく穏やかな魔術のような音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Terra Nostra” (2001) Savina Yannatou & Primavera En Salonico

“Terra Nostra” (2001) Savina Yannatou & Primavera En Salonico

Savina Yannatou (Voice, Vocals)

Lamia Bedioui (Voice) Tassos Misyrlis (Cello) Antonis Maratos (Percussion)

Primavera En Salonico:

Yannis Alexandris (Oud, Guitar, Tamboura) Kostas Vomvolos (Kanoun, Accordion, Caliba, Tamboura) Kyriakos Gouventas (Violin) Harris Lambrakis (Nay) Michalis Siganidis (Double-Bass) Lefteris Ahgouridakis (Percussion)

Terra Nostra
Savina Yannatou
Ecm Records
2003-03-25


 ギリシャのボーカリストSavina Yannatouと地中海伝統音楽バンド Primavera En Salonicoのライブ録音。
 別レーベルで制作、流通していた音源をECMで再発した形なのでしょう。
 ギリシャ、ブルガリア、スコットランド、イタリア、レバノン、トルコ、北アフリカ、フランス、カリブ・・・その他諸々の伝統曲、全20曲。
 全体を覆う中近東的な空気感、聞き慣れない音階と、弦を中心とした古楽器の響き。
 宗教系、祝祭系、勇壮系、その他諸々な質感の音。
 中核の変幻自在なヴォイスパフォーマンスを含めて、めまぐるしく景色が変わっていきます。
 過去の音楽の再現の部分と、現代の音の区別はつきません。
 弦の響きは遠い過去から聞こえてくるようだし、終始下を支えるベースは現代的なグルーヴと疾走のようにも聞こえるし、パーカッションはアフリカのようにも中近東のようにもインドのようにも聞こえるし、ヴォイスはクラシックにも演劇にも呪術にも叫びにも聞こえるし・・・
 決してキツイ音楽ではなく、むしろ懐かしくて優しい感じなのですが、強烈な非日常感とインパクト、圧倒的なパフォーマンス。
 古代南ヨーロッパ~中近東へのラウンドトリップ。
 次はECMらしく少し音量を落とした”Sumiglia” (2004)へと続きます。




posted by H.A.


【Cinema Paradiso】『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 (2015)

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 (2015)

 2015年、監督アダム・マッケイ、製作ブラッド・ピット他、出演クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット他。
 2016年アカデミー賞脚色賞受賞。
 2008~2009年、サブプライムショック、リーマンショックのドキュメンタリー風映画。
 リアルな出来事を忠実に再現しようとしたのだと思います。
 マッドな金融サイエンティストなクリスチャン・ベール、脇役としてさり気なく登場するクールなブラッド・ピット。
 笑いはもちろん、派手な演出も仕掛けもなく、カッコいいヒーローも魅力的なヒロインもでてきません。
 ただただ事実、当時のアメリカの様子を淡々と描いただけ。
 それだけで悲喜こもごも、虚々実々なやり取りが跋扈する壮絶なドラマ。
 金融市場、その歪みに乗る人、その人たちを利用しようとする人、さらにその裏を行こうとする人・・・
 ある意味病んだアメリカの象徴であり、ダイナミズムでもあるのでしょう。
 怖いのはそれらが作り話ではない事。
 金融業界、畏るべし。
 投資マニアは必見。
 そちらに興味ない人にとっては地味で難解なのかもしれませんが、このストーリーが一通り理解、把握できれば投資マニアの仲間入り・・・かも。
 事実は小説より奇なり。




posted by H.A.


【Disc Review】“Iva Bittová” (2012) Iva Bittová

“Iva Bittová” (2012) Iva Bittová

Iva Bittová (Violin, Voice, Kalimba)

Iva Bittova
Ecm Records
2013-03-26



 チェコのスーパーアーティストIva BittováのECM作品。
 ECMではクラシック系ECM New Series からの“Iva Bittová / Vladimír Godár – Mater” (2007)以来のようです。
 エスニック、古典音楽と現代の音をフュージョンしようとする近年のレーベルカラーからすれば、満を持した制作、といったところなのでしょう。
 アルバムタイトルは堂々の名前だけ。
 楽曲はFragmentsとのみ題された短編12編。
 自身の声とバイオリン、カリンバの音だけ。
 東欧の伝統音楽、ロマ音楽、現代ロック~ポップス、アヴァンギャルド、さらにレーベルカラーならではの静けさを混ぜ合わせたような音。
 カリンバの音が響く冒頭と締めの同曲とその間にはさまれた全12編の演奏。
 変幻自在の美しくかわいらしい系の声の歌、聞き慣れない音階の哀し気でやるせなさげな音の流れは、練られたエレジーのようでもあるし、シンプルに体から出てくる音を表に出しているだけにも聞こえます。
 静かで広い空間に響くたっぷりのエコーが効いた声。
 それは天使の囁きか、魔術師の呪文か、それとも長く重い歴史を背負った人間の生身の音なのか?
 果たしてこの音の源泉は何なのか、沈思黙考しつつ聞くか、ただただ静かで穏やかな心地よい幻想的な空間に身をゆだねるか・・・さて・・・?


 

posted by H.A.



【Disc Review】“In Winds, In Light” (2003) Anders Jormin

“In Winds, In Light” (2003) Anders Jormin


Anders Jormin (bass)
Marilyn Crispell (piano) Karin Nelson (church organ) Raymond Strid (percussion)
Lena Willemark (voice)

In Winds in Light
Anders Jormin
Ecm Import
2004-08-31


 Anders Jormin、パイプオルガンと豪華メンバーを迎えた摩訶不思議な作品。
 北欧伝統音楽色、静かなフリージャズ、教会的音楽、それらが交錯しフュージョンする一作。
 Lena Willemarkが叫びを含めた演劇めいた語り口で激しく歌う時間は、遠い時代の北欧伝統音楽の香り。
 気がつけば美しいピアノが鳴り始め、静かなフリージャズの世界。
 あるいはパイプオルガンが前面に出ると敬虔な空気が周囲に立ち込め、あるいは地の底で動き回るようなベース、唸るような漂うようなアルコでのベースソロ・・・
 そんな場面がめまぐるしく次々と切り替わっていくような音の流れ。
 全曲オリジナル曲、いかにもこの人な物悲しい色合いの抽象度の高いメロディ。
 全編通じたただ事ではない緊張感は、深刻な映画のサウンドトラックのようにも聞こえます。
 終盤に収められたその名も”Love Song”にほっとしつつ、締めはパイプオルガンと叫び声、フリーなピアノとベースをたっぷりフィーチャーした激しい展開で幕。
 愛想のない緊張感は、とっつきやすい作品ではないのかもしれません。
 逆に不思議なアート感、たっぷり。
 ちょっと怖いけど・・・
 そんな入魂の一作。

※別のアルバムから。


posted by H.A.


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