吉祥寺JazzSyndicate

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2018年09月

【Disc Review】“Lagrimas Mexicanas” (2010) Vinicius Cantuaria & Bill Frisell

“Lagrimas Mexicanas” (2010) Vinicius Cantuaria & Bill Frisell

Vinicius Cantuária (vocals, percussion, acoustic guitar) Bill Frisell (acoustic guitar, electric guitar, loops)

Lagrimas Mexicanas
Vinicius Cantuaria
Imports
2011-03-22


 ブラジルのシンガーソングライターVinicius CantuáriaとBill FrisellのDuo作品。
 Bill Frisellがゲスト参加したジャジーなMPB“Samba Carioca” (2010) Vinicius Cantuariaと同時期の制作。
 Vinicius Cantuáriaのいつもの作品とは少々印象が異なります。
 静かなMPBではなく、アメリカ南西部~メキシコが入り混じる、少しざらついた空気感、フォークロックな音。
 タイトルは”メキシコの涙”。
 ギターのDuoにいくらかのオーバーダビングを加えた静かなサウンド。
 中米、南米が交錯するような哀愁のメロディに、Bill Frisellのソリッドながら一風変わったギター、クールで甘い囁きヴォイスが乗ってきます。
 柔らかで沈み込むVinicius Cantuáriaの音楽に、ソリッドな芯を作りつつあちこちに動き回るBill Frisell。
 甘すぎず辛すぎない、落ち着きすぎず暴れすぎない、そんなバランスの中で、さりげなく複雑に絡み合うギターのアンサンブル。
 強い浮遊感、何曲かではハワイなムードさえ漂う楽園ムード。
 Ry Cooder流Tex-Mex“Chicken Skin Music” (1976)、あるいはブラジルMinasな“Antigas Cantigas” (1999) Renato Motha, Patricia Lobatoにもそんな感じがありましたが、どこか繋がっているのでしょうねえ。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Beautiful Dreamers” (2010) Bill Frisell

“Beautiful Dreamers” (2010) Bill Frisell

Bill Frisell (guitar)
Eyvind Kang (viola) Rudy Royston (drums)

Beautiful Dreamers
Bill Frisell
Savoy Jazz
2010-08-31


 Bill Frisellの変則トリオでのアルバム。
 “Quartet” (1996)あたりから共演が続く弦奏者とドラム。
 それ、あるいは“Lookout for Hope” (Mar.1987)、“Before We Were Born” (1988)あたりの流れを汲むのであろう、とても妖しく不思議なコンテンポラリージャズ。
 が、とても静かになった音。
 ビオラがサックスに変わるとPaul Motianトリオになそうな編成なのですが、不思議さはこちらの方が上。
 例のカントリーとブルースが入り混じるようなマカロニウエスタン風、摩訶不思議な展開のオリジナル曲、あるいはアメリカンスタンダードのメロディに、すっとぼけたような摩訶不思議なアンサンブル。
 ビートはステディですが、フロントの二人がどちらが前に立つでもない、コレクティブインプロビゼーションのような絡み合いがひたすら続きます。
 懐かし気なようで、ポップなようで、歪んだ時空のこの人の音楽。
 美しい夢が見えるか、摩訶不思議な悪夢にうなされるかは聞く人次第。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bill Frisell, Ron Carter, Paul Motian” (2005) Bill Frisell

“Bill Frisell, Ron Carter, Paul Motian” (2005) Bill Frisell

Bill Frisell (guitars) 
Ron Carter (bass) Paul Motian (drums)

Bill Frisell Ron Carter Paul Motian
Bill Frisell
Nonesuch
2006-09-12


 Bill Frisell のジャズギタートリオ作品。
 “With Dave Holland and Elvin Jones” (2000,2001)と同様、大御所二名とのトリオ。
 基本的には同じテイスト、ジャズスタンダードも含めて、少々ぶっ飛び気味のジャズ。
 なんだかんでアコースティック4ビートなElvin Jonesに対して、なんでもありのバシャバシャドラムのPaul Motian。
 Ron CarterはあのMilesバンドと同じく伸び縮みするビート。
 ジャズながら不思議感たっぷりなビート感の中、Bill Frisellはいたってマイペース、ひねりまくったアメリカンテイスト、ジャズではないギター。
 同時期のECM制作“I Have the Room Above Her” (2004) Paul Motianと比べると、クールで緊張感の強いそちらに対して、あっけらかんとした本作。
 かつてよりも揺らぎ成分が減ってソリッドになったクリーントーン中心、それでもフワフワしたギターに、同じくPaul Motianの何でもありドラムですが、テイストは全く異なります。
 妖しい系、不思議系ながら、やはりジャズ。
 レーベル、リーダーの違いなのでしょうが、本作の感じはECMでは作らせてもらえないんだろうあ・・・
 ベースが落ち着いている分だけ“With Dave Holland and Elvin Jones” (2000,2001)よりもこちらの方がジャズっぽいのかな?
 さてどうでしょう・・・?




posted by H.A.


【Disc Review】“East/West” (2003,2004) Bill Frisell

“East/West” (2003,2004) Bill Frisell

Bill Frisell (guitars, electronic effects)
Viktor Krauss (bass) Tony Scherr (bass, acoustic guitar) Kenny Wollesen (drums)

East-West
Bill Frisell
Nonesuch
2005-09-05


 Bill Frisell、オーソドックスなトリオ編成でのライブ録音。
 ジャズスタンダードにカントリーに摩訶不思議なオリジナル曲などなどが交錯するてんこ盛りライブ、東西海岸でのステージを収めた二枚組。
 ドラムとベースは若手ジャズバンド”Sex Mob”のメンバーが中心。
 同じくトリオの“With Dave Holland and Elvin Jones” (2000,2001)、“Bill Frisell, Ron Carter, Paul Motian” (2005) に近い時期ですが、何か質感が違います。
 ジャズスタンダードや4ビートもあるのですが、モダンジャズ感がほとんどないというか、何と申しましょうか・・・
 かといってロックでもなければカントリーでもない、不思議で淡々としたムード。
 いかにも彼らしいといえばそうなのでしょうし、若手の新感覚なジャズビートなのかもしれません。
 10分を超える演奏が並び、Bob Dylanで締めるWest、Yoshi's, Oakland。
 ルバートでのスタンダード演奏から始まり、短いインタールド的な演奏を挿みつつカントリーで締めるEast、Village Vanguard。
 ジャズの殿堂でのEastの方がジャズっぽい感じもしますが、いずれにしてもモダンジャズさはない、静かなロックというか、何とも言えないBill Frisellな演奏。
 そんな不思議なサウンドとBill Frisellのギターを浴びるように聞ける一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“The Intercontinentals” (2003) Bill Frisell

“The Intercontinentals” (2003) Bill Frisell

Bill Frisell (electric, acoustic guitars, loops, bass)
Vinicius Cantuaria (electric, acoustic guitars,vocals, drums, percussion) Christos Govetas (oud, vocals, bouzouki) Greg Leisz (slide guitars, pedal steel guitar) Sidiki Camara (calabash, djembe, congas, percussion, vocals) Jenny Scheinman (violin)



 Bill Frisell、弦楽器を中心とした変則エスニックミュージック。
 タイトル通り、ブラジル、アフリカ、中近東、インド・・・その他のアーティスト、弦楽器を集めた不思議な編成。
 主役はあくまでギター。
 いつも通りパラパラ、フワフワと鳴っていますが、不思議感はいつも以上。
 マカロニウエスタン風あり、フォーク風あり、アフリカンあり、ラテンあり、中近東風あり、インド風あり・・・その他諸々。
 その曲間を電子音とループで繋ぎつつ、全一曲的な構成。
 十分に整った音楽なのですが、Bill Frisellのマカロニウエスタン風のメロディをベースに、エスニックな弦楽器や電子音が入り乱れつつ、コレクティブインプロビゼーション風に演奏するのだから、もうカオス状態。
 これをニヤニヤしながら余裕で聞けると大人なんだろうなあ・・・とか何とか思いつつ、音の洪水に圧倒されるのみ。
 さすが魔術師Bill Frisell。
 これはスゴイや・・・


 

posted by H.A.


【Disc Review】“With Dave Holland and Elvin Jones” (2000,2001) Bill Frisell

“With Dave Holland and Elvin Jones” (2000,2001) Bill Frisell

Bill Frisell (guitars)
Dave Holland (bass) Elvin Jones (drums)



 Bill Frisell、ジャズジャイアント二人とのトリオ作品。
 っても素直なジャズにはなりません。
 いつもの作品と違って4ビートな場面はたっぷり、ジャズなビート感が常時流れていますが、不思議感タップリのメロディにギター。
 ギターのエフェクティングは時折にとどめ、素直でソリッドなクリーントーンが中心ですが、ジャズっぽいフレーズは出てきません。
 あくまで摩訶不思議なカントリー、ロック混じりのBill Frisellの世界。
 アメリカの古い映画かテレビの主題歌、マカロニウエスタン(懐かしい)っぽい雰囲気のオリジナル曲のメロディに、ジャズのリズム。
 Elvin Jonesは何をやってもElvin Jonesです。
 それを意識してか、せずか、いつものようにあちこちに跳びまわる、パラパラ、フワフワとしたギター。
 決して深刻でもヘビーでもなくてサラリと流れていくような音。
 ありそうでなかったジャズとカントリー、アメリカンルーツミュージックのフュージョン。
 新しいものを作ろうとしていたんでしょうねえ・・・それとも狙ってではないのかな?
 ジャケットはあんな感じだし、”Strange Meeting”てなタイトルの曲もあるなあ・・・
 そんなミスマッチな名人たちの貴重な共演の記録。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ghost Town” (2000) Bill Frisell

“Ghost Town” (2000) Bill Frisell

Bill Frisell (electric & acoustic guitars, 6-string banjo, loops, bass)

Ghost Town
Bill Frisell
Nonesuch
2000-03-21


 Bill Frisellのソロギター作品。
 アコースティックギターを中心に、エレキギターを含めてオーバーダビングした構成。
 カントリーテイストをベースに、幻想的あるいはブルージーな演奏が並びますが、この期のコンボでの作品“Good Dog, Happy Man” (1999)などとは質感が異なります。
 沈んだ空気感、ゆったりとしたテンポに静かな音。
 電子音なども交えていますが、マジカルなサウンドはほどほどに抑制されたシンプルなギター中心のサウンド。
 メロディ、ビートを含めて漂うような強い浮遊感。
 しばらくすると時間、場所が曖昧になってくるような不思議な時間・・・
 ・・・ではあるのですが、ジャケットの???な感じではないし、タイトルほどは寂しくもなくて、概ねスッキリ。
 “Paris, Texas” (1985) Ry Cooderにも似たムードですが、あのやるせない感じではなく、あっけらかんとした感じなのはいかにもこの人の色合い。
 少し鬱屈したAmerican Saudadeなサウンド。
 異空間へのトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Good Dog, Happy Man” (1999) Bill Frisell

“Good Dog, Happy Man” (1999) Bill Frisell

Bill Frisell (electric, acoustic guitars, loops, music boxes)
Greg Leisz (pedal steel, Dobro, lap steel, Weissenborn, National steel guitar, mandolin)
Wayne Horvitz (organ, piano, samples) Viktor Krauss (bass) Jim Keltner (drums, percussion) Ry Cooder (guitar)

Good Dog Happy Man
Bill Frisell
Nonesuch
1999-05-26


 Bill Frisellのこれまたアメリカンなアコースティックフュージョンミュージック。
 ECM時代の摩訶不思議感、Paul Motianバンドのミステリアス感、強烈な浮遊感はすっかり抑制され、オーソドックスな色合い。
 ジャズ度も表面には出て来ない、カントリー、フォークミュージック、ロック、ブルースが混ざり合うサウンド。
 “Nashville” (1995,1996)あたりと同じく思いっきりアメリカンな感じではあるのですが、カントリー系をちょっと薄めてロックに寄せた感じでしょうか。
 ゆったり、キッチリとした8ビートをベースに、オルガンと揺れるギター、スライド系ギターが絡み合う、ほどよいバウンド感と浮遊感がとてもいい感じ。
 心地いい風が吹く平原、遠くに山が見えますぅ・・・的な大らかなアメリカンサウンド。
 Ry Cooderっぽくていいなあ・・・と思っていたら、ドラムが彼のバンドの人だったり、御大ご本人も参加していたり・・・
 御大の参加は一曲のみのようですが、全編にそんなムードが流れています。
 あっけらかんとした感じではあるのですが、洗練されていて、ほんの少し沈んだ感じの不思議なバランスはこの人ならではのテイスト。
 こりゃ気持ちいいや。




posted by H.A.


【Disc Review】“Gone, Just Like a Train” (1998) Bill Frisell

“Gone, Just Like a Train” (1998) Bill Frisell

Bill Frisell (guitar)
Viktor Krauss (bass) Jim Keltner (drums)

Gone Just Like a Train
Bill Frisell
Nonesuch
1998-01-29


 Bill Frisell、オーソドックスな編成のトリオでの穏やかなサザンロックなアルバム。
 カントリーな“Nashville” (1995,1996)とサザンロックな“Good Dog, Happy Man” (1999)の間の作品。
 ドラムがJim Keltnerといったこともあり、Ry Cooderっぽい音を散りばめつつのBill Frisell。
 冒頭は一風変わったヘビーなブルース。
 やはりひねくれているなあ・・・と警戒してしまうのですが、後は陽気でポップな感じ。
 のどかなカントリーサウンドやら、ジャズっぽいバラードやら、スッキリとした穏やかな演奏が並びます。
 フロントに立つのはギターだけ。
 あの手この手のいろんなサウンド、最初から最後までずーっとギターが鳴っています。
 明るい雰囲気とゆったりとしたビートはテキサスあたりの空気感。
 Ry Cooderの声が聞こえてきても全く違和感のないサウンド。
 とても穏やかです。
 本作は次作の予告編、ってなことはないのでしょうが、Ry Cooderをゲストに迎えた名作“Good Dog, Happy Man” (1999)へと続きます。




posted by H.A.


【Disc Review】“Nashville” (1995,1996) Bill Frisell

“Nashville” (1995,1996) Bill Frisell

Bill Frisell (guitar)
Jerry Douglas (dobro) Ron Block (banjo) Adam Steffey (mandolin) Viktor Krauss (bass) Robin Holcomb (vocals) Pat Bergeson (harmonica)

Nashville
Bill Frisell
Nonesuch
1997-04-24


 Bill Frisellのアメリカンなアコースティックフュージョンミュージック。
 ECM系はもちろん、同時期の“Quartet” (1996)、あるいは“At the Village Vanguard” (1995) Paul Motianの妖しさ、緊張感とは全く無縁の、カントリー色120%のポップなミュージック。
 ドラムレスでギターを中心としたアメリカ南部っぽい弦楽器の穏やかなアンサンブル。
 数曲でフィーチャーされるハーモニカに、カウボーイハットかぶって酒場で・・・ってな雰囲気の女性ボーカルがアクセント。
 ま、“The Sound of Summer Running” (1998) Marc Johnsonにも近かったりして、そんな陽気でアメリカンな音楽をやりたかったのでしょう。
 穏やかなビートに乗った、ドブロやらスライドやらあのリバーブが効いたエレキギターやらの緩やかな音がたっぷり。
 平和でのんびりした空気感。
 それでいて少しだけ妖し気な感じなのは、Bill Frisellならではのナッシュビルサウンド、ってなところ。
 もちろんギターはあの手この手を絡めた名人芸。
 などなど含めて、実は凝った音楽なのだと思うのですが、細かな事は気にせずに、大らかなアメリカンミュージックをボケーっと楽しむのが吉。




posted by H.A.


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