吉祥寺JazzSyndicate

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2018年02月

【Disc Review】“On Broadway Volume 3” (1991) Paul Motian

“On Broadway Volume 3” (1991) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Joe Lovano (tenor saxophone) Bill Frisell (electric guitar) Charlie Haden (bass) Lee Konitz (alto saxophone)

Vol. 3-on Broadway
Paul Motian
Winter & Winter
2013-09-10




 Paul Motianトリオ+αのブロードウェーミュージックの第三弾。
 “On Broadway Volume 1” (1988), “On Broadway Volume 2” (1989)と同じく, 楽し気でほんの少し妖し気なスタンダード集。
 本作の目玉は大ベテランLee Konitzのアルトサックスの参加。
 フワフワしたテナーサックスに対して、シャープなアルト。
 ここまでのアルバムと比べてシャキッとした感じのジャズ、よりオーソドックスに聞こえるかもしれません。
 ここまで名人が揃ってバンドとしても落ち着いてくると、オーソドックスであっても極めて上質なジャズサウンド。
 Bill Frisellのギターは相変わらずフワフワしているのですが、ジャズサウンドの中に溶け込んで、不思議感が少なくなった感じがするのは聞き手側の慣れでしょうか?
 Paul Motianも気持ちよさそうにジャズドラマーに徹しています。
 ってな感じで、十分にオーソドックスなジャズ。
 そのあたりで好みが分かれる・・・のではなく、普通のジャズファンにも好まれる一作、かな?




posted by H.A.


【Disc Review】“Motian in Tokyo” (1991) Paul Motian

“Motian in Tokyo” (1991) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Joe Lovano (tenor saxophone) Bill Frisell (electric guitar)

Motian in Tokyo
Paul Motian
Polygram Records
1992-03-17


 Paul Motianトリオ、東京でのライブ録音。
 “On Broadway Volume 2” (1989)などのジャズスタンダード演奏ではない、過激な方のPaul Motianトリオ。
 オープニングは漂うようなルバート的スローバラード。
 フワフワとした夢見心地の素敵な時間・・・
 と思っていると、Ornette Coleman風フリージャズ、陰鬱な表情のメロディにディストーションの効いたグショグショギター、Dewey Redman風の激しい咆哮・・・
 ま、そもそもKeith Jarrettアメリカルテットの人だし、ハードロックなBill Frisellもよくあることだし・・・
 ミュージカルシリーズはあくまで企画ものであって、こちらが本質なのでしょう。
 後の“At the Village Vanguard” (1995) にも近い感じですが、このライブのアクセントは御大Ornette Coleman作、“Song X” (1985) Pat Methenyに収められた名バラード“Kathelin Gray”。
 この誰も取り上げない名曲のカバーを、このメンツ、Bill Frisellのギターで聞けるのは希少でしょう。
 こちらは過激ながらフワフワとした穏やかな表情・・・
 などなど、激しい音と漂う音の交錯。
 あっちに行ったりこっちに行ったり、彷徨するようなステージ。
 さすがPaul Motianな、クールでハードコアでクリエイティブなサウンド。
 さて、そんな演奏に当時の東京のオーディエンスは面食らったのかな・・・?




posted by H.A.


【Disc Review】“Bill Evans” (1990) Paul Motian

“Bill Evans” (1990) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Joe Lovano (tenor saxophone) Bill Frisell (electric guitar) Marc Johnson (bass)

Bill Evans
Paul Motian
Winter & Winter
2003-11-04


 Paul Motianトリオ+αのBill Evans曲集。
 ベースはこれまた元Bill EvansトリオのMarc Johnson
 Paul Motian参加の“Waltz for Debby” (1961)あたりの内省的、耽美的な雰囲気ではなく、スウィンギーなジャズ。
 ピアノが入ると普通にBill Evansっぽくなってしまうのかもしれませんが、流麗なジャズも吹けるJoe Lovanoはいいとしても、門外漢のBill Frisellが入るとなんだか変わってきます。
 普通のモダンジャズの演奏では聞くことが出来ない強烈な浮遊感。
 それでもMarc Johnsonの律儀なベースに、なぜかいつものように好き勝手には叩かないジャズドラマーなPaul Motian。
 盟友Bill Evansの上品な音に対して襟を正したのでしょうかね?
 もちろんサックスは百戦錬磨の上質なジャズサックス。
 サックスが抜けた時間はオーソドックスなジャズサウンドを背景に弾くBill Frisellの希少な演奏。
 ディストーションなギターに激しいフリーっぽく演奏される”Five”以外はオーソドックスで穏やかな感じのジャズ。
 締めはフワフワとした“Children's Play Song”の優しい音で幕・・・
 モダンジャズ時代以降の一番モダンジャズなPaul Motianのアルバムはこれかな?




posted by H.A.


【Disc Review】“On Broadway Volume 2” (1989) Paul Motian

“On Broadway Volume 2” (1989) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Joe Lovano (tenor saxophone) Bill Frisell (electric guitar) Charlie Haden (bass)

On Broadway 2
Paul Motian
Polygram Records
1990-08-21


 Paul Motianトリオのブロードウェーミュージックの第二弾。
 私的にはこのアルバムが最初に聞いたPaul Motianのリーダー作であり、Bill Frisellのギター。
 この冒頭、“Good Morning Heartache”が凄い。
 ベースレス、全編ルバートでの今にも止まりそうなスローバラード。
 聞いたことのないような強烈な浮遊感のフワフワ、ゆらゆらしたギターと微妙にズレながら並走し、あるいはカウンターをあてるサブトーンたっぷりのテナー。
 それらが前後左右に入れ替わりながら、揺れながら進む時間。
 さらに、それらと無関係なように静かにゆっくりと動くブラシ・・・
 夢の中を漂うような、周囲の景色が歪んでいくような不思議な時間、あるいは甘い毒がゆっくりと回っていくような危ない時間。
 二曲目、ベースが入りビートがキッチリ決まった“You and the Night and the Music”に変わっても、その強烈な浮遊感、クールネスは消えません。
 さらに三曲目、これまたスローバラードの“Moonlight Becomes You”の甘い毒・・・
 音楽が進むにつれ、普通にスウィンギーなジャズな時間に遷移し、現実に戻っていくのですが、冒頭の毒が効いているのか、心地よい時間が続きます。
 このグループではこのアルバム、あるいは後のECM作品“I Have the Room Above Her” (2004)の強烈な浮遊感が一番好み。
 曲順を変えるとまた違う感じになるんだろうけども・・・
 とにもかくにも、この人たちが演奏するスローバラードは最高の毒。

※ライブ録音から


posted by H.A.


【Disc Review】“On Broadway Volume 1” (1988) Paul Motian

“On Broadway Volume 1” (1988) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Joe Lovano (tenor saxophone) Bill Frisell (electric guitar) Charlie Haden (bass)

On Broadway Vol.1
Paul Motian
Polygram Records
1991-07-01


 Paul Motianトリオのブロードウェーミュージックの第一弾。
 ECMで“It Should've Happened a Long Time Ago” (1984)を制作後、別レーベルに移籍しベースを加えて制作したミュージカル~ポップミュージックの演奏集。
 Bill Frisell も“Lookout for Hope” (Mar.1987)の後、別レーベルに移った時期。
 ECMで芸術的で気難しい音楽を作るよりも、明るくて楽しくて一般受けもしそうな音楽を作りたかった・・・かどうかは分かりません。
 一聴、オーソドックスに聞こえるのですが、フツーのジャズバンドの演奏ではありません。
 スパイスを効かせるフワフワグニャグニャしたへんてこりんなギター。
 生粋のジャズメンJoe Lovano, Charlie Haden, Paul Motianはフツーにジャズの演奏をしているのかもしれませんが、聞き慣れたメロディ、4ビートに強烈な浮遊感が加わり、なんだか説明できない不思議な感じ。
 っても、バックビートが効いたドラムにグルーヴを作るベース、人間臭いテナー。
 ジャズです。
 おそらくPaul Motianの音楽にしてはルバートな演奏が少ないからでしょう。
 が、よく聞くとドラムもなんだかフツーではありません。
 乾いていて、パタパタしていて、不思議なタイミングで入るアクセントと、時間の流れと関係なく舞い散るシンバル。
 どこか醒めた感じがクールで現代的な、いかにもPaul Motianなジャズスタンダード集。




posted by H.A.


【Disc Review】“It Should've Happened a Long Time Ago” (Jul.1984) Paul Motian

“It Should've Happened a Long Time Ago” (Jul.1984) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Joe Lovano (tenor saxophone) Bill Frisell (guitar, guitar synthesizer)

It Should've Happened a Long Time Ago
Paul Motian
Ecm Records
2001-02-27


 Paul Motian、長く続く名トリオでの第一作にして、この時点のECMでのリーダー作としては最終作になるのだと思います。
 Paul Motianも参加した“Rambler” (Aug.1984) Bill Frisellの前月のセッション。
 他のレーベルではこのメンバーにベースその他が加わった作品もありますが、本作はベースレス変則トリオによる強烈な浮遊感のクリエイティブな音。
 冒頭は後のブロードウェーシリーズに繋がるようなバラード。
 静かに空間を埋めるギターのスペーシーな音と淡々と鳴るシンバル、
 もちろん前面に立つのは名人Joe Lovanoのスムースなサックスですが、三者の出すバラバラな音が混然一体となった素晴らしい音の空間。
 この時点でバンドのサウンドは完成しています。
 が、続くはギターシンセサイザーが唸る激しいフリージャズ。
 John Coltrane的、あるいはKeith Jarrettアメリカンカルテット的な激烈系。
 三人ともぶっ飛んだすさまじい演奏。
 そんな過激な演奏も含めて、後はバラードやら、沈痛系やら、前向きで穏やかなフォークロック調やら。
 整った演奏が揃っているのですが、ベースレス、Bill Frisellのギターゆえの強烈な浮遊感、逆に端正なジャズを演奏するJoe Lovano。
 素晴らしいアンバランスの調和。
 妖しく危ない絶妙なバランス。
 とてもカッコいい新しいジャズ。
 が、この後レーベルを移籍し、わかりやすい普通のジャズに近いブロードウェーシリーズをスタート。
 ECMでリーダー作を作るのは20年後の名作“I Have the Room Above Her” (2004)。
 上手くいっているんだか、いっていないんだか・・・

※タイトル曲を別のアルバムから。


posted by H.A.


【Disc Review】“Le Voyage” (1979) Paul Motian

“Le Voyage” (1979) Paul Motian

Paul Motian (drums, percussion)
Jean-François Jenny Clark (bass) Charles Brackeen (soprano, tenor sax)

Voyage
Paul Motian
Ecm Import
2008-11-18


 Paul Motianのピアノレス・ワンホーン・トリオ。
 Keith Jarrettアメリカンカルテットは”Byablue”, ”Bop-Be” (Oct.1976)で終了し、Joe Lovano, Bill Frisellとの共演を始める前の作品。
 フランスのスーパーベーシストJenny Clarkは近い時期の“Enrico Rava Quartet” (1978) Enrico Ravaにも参加していて、ECMに近づいた時期だったのでしょう。
 アメリカ人サックスを加えて、ピアノレスでハードコアなフリー混じりのジャズ。
 冒頭バラード“Folk Song for Rosie”は漂うようなスローバラード。
 今にも止まりそうなビート。
 ゆったりと太い音を出すベースに、例の舞い散るシンバルのフリーなドラム。
 そして静かな空間の中に響く、エコーがたっぷり効いたソプラノサックスが奏でる悲しいメロディ。
 さらにサックスが抜けるとその静謐さが凄みを増してきます。
 シンシンと静かにシンバルが舞い降る中でのベースのこれまた静かな響き・・・
 とても悲しくて、とてもハードボイルド。
 さらに続くソプラノサックスの激情のインプロピゼーション・・・
 こんなに静かで悲しい演奏はなかなか・・・
 この強烈な浮遊感が、後のBill Frisellとのバンドの原型だったのかもしれません。
 以降、Ornette Colemen風のフリージャズ、陰鬱な演奏などが並びます。
 少人数ゆえ、個々の楽器の音が手に取れるように見える、繊細な音。
 後に繋がる、ちょっと気難し気で陰鬱だけど、強烈な浮遊感とハードボイルドネスが交錯するPaul Motianの音楽。

※Bill Frisell入りのバンドの演奏から。


posted by H.A.


【Disc Review】“Conception Vessel” (Nov.1972) Paul Motian

“Conception Vessel” (Nov.1972) Paul Motian

Paul Motian (drums, percussion)
Keith Jarrett (piano, flute) Sam Brown (guitar) Charlie Haden (bass)
Leroy Jenkins (violin) Becky Friend (flute)

Conception Vessel: Touchstones Series (Dig)
Paul Motian
Ecm Records
2008-09-30


 Paul Motian、本作がリーダー作の第一作になるのでしょう。
 この時期はKeith Jarrettアメリカンカルテットで活動中、"Expectations" (Apl.1972)、"Fort Yawuh" (Feb.1973)の間での録音。
 Dewey Redmanが加わればKeith Jarrettアメリカンカルテットになりそうなメンバーなのですが、本作はデュオ、トリオ、ソロなど、楽曲ごとにメンバーを変えてのPaul Motianの独壇場。
 多くの場面でドラムソロ状態のフリーなビート、叩きまくり。
 Keith Jarrettはピアノとフルートで各一曲。
 ピアノでの演奏はフリー混じり、絶好調期の入り口らしく切れ味抜群、あの雄たけびを上げながらの激しい演奏。
 レアなPaul Motian, Sam Brown, Charlie Hadenのギタートリオでは、スパニッシュなムードのアコースティックギターの漂うようなバラードと、サイケなエレキをフィーチャーした長尺なフリー混じりのやんちゃな演奏。
 締めは、バイオリンとフルートを交えた激しい系のコレクティブインプロビゼーション。
 あのマシンガンのようなベースと最初から最後までドラムソロ状態リズム隊との怒涛のようなフリージャズ。
 Keith Jarrettの登場場面はわずかですが、彼のアメリカンカルテットにも通じる少々陰鬱で沈痛な面持ちは、Paul Motian, Charlie Hadenコンビの色合いであり、当時の時代感なのでしょう。
 1970年代初頭のECM、ポストフリージャズ時代の過激なジャズ。

※近い時期のKeith Jarrettトリオでの演奏。


posted by H.A.


【Disc Review】“Petra Haden & Bill Frisell” (2003) Petra Haden

“Petra Haden & Bill Frisell” (2003) Petra Haden

Petra Haden (Violin, Vocals) Bill Frisell (Guitar, Loops)

Petra Haden & Bill Frisell
Petra Haden
Universal Int'l
2003-12-16


 Charlie Hadenの娘さんPetra HadenとBill FriesellのDuo作品。
 “The Windmills of Your Mind” (2010) Paul Motianでの共演に先立つこと7年。
 そちらはジャズですが、こちらはフォーキーなポップス。
 オーバーダビングを含めた二人での演奏。
 ジャズスタンダードな“Moon River”, “When You Wish Upon a Star”, “I've Got a Crush on You”に、Tom Waits, Stevie Wonderなどのポップスに、オリジナル曲。
 ボイスはちょっと舌足らずのかわいらしい系。
 バイオリンは前面にはでてきません。
 Charlie Hadenっぽさ、ジャズっぽさはなく、Bill Frisellも歪む時空のギターではなく、カントリー~アメリカンなフォーク~ロックギタリスト。
 こんな感じがアメリカ育ちの人の原風景なのでしょうかね。
 なんだか懐かしくて平和な空気感。
 Charlie父さんもマニアックなジャズと並行して、古き良き時代のアメリカンノスタルジーな音楽をやっていましたが、一世代進んだアメリカンノスタルジー・・・ってな感じかもしれません。
 この種の音楽、守備範囲からは外れてしまったのですが、たまにはいいかな?
 平和だなあ・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Quartet” (1996) Bill Frisell

“Quartet” (1996) Bill Frisell

Bill Frisell (guitars)
Eyvind Kang (violin, tuba) Ron Miles (trumpet, piccolo trumpet) Curtis Fowlkes (trombone)

 Bill Frisellの変則な編成でのコンボ作品。
 楽器の構成からして既によくわかりません。
 いろんな編成での作品がありますが、ECMでの”Rambler” (1984)と同じく不思議系のホーンアンサンブルが絡む、不思議感120%の明るい音楽。
 すっとぼけたような、中世のサーカスのような、明るいようで妖しいムード。
 映画のサントラか何かのなのでしょうかね?
 冒頭のワルツから妖しさ全開。
 バイオリンがリードしつつ、終盤はハードロックなギターの爆発。
 以降はカントリー、ノスタルジックなジャズっぽい演奏、コレクティブインプロビゼーションのような演奏が続きます。
 ジャズでもなければ、ロックでもポップスでもない不思議な世界。
 懐かしい古き良きアメリカな感じが全編で漂っていいるのですが、いかんせんアンサンブルが不思議感のかたまり。
 歪んだ時空へのトリップミュージックなのですが、行先はいったい何処なのでしょうか?
 1920-40年代のテキサス、ニューオリンズあたり?
 それもなんだか違うなあ・・・?
 さすが魔術師Bill Frisellの名目躍如というか、何と申しましょうか・・・




  posted by H.A.
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