吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年12月

【Disc Review】“Unloved” (2017) Maciej Obara Quartet

“Unloved” (2017) Maciej Obara Quartet
Maciej Obara (alto sax)
Dominik Wania (piano) Ole Morten Vågan (double bass) Gard Nilssen (drums)

Unloved
Maciej -Quartet- Obara
Ecm Records
2017-11-10


 ポーランドのサックス奏者Maciej ObaraのECMでの第一作。
 静かで美しいジャズバラードを中心としたアルバム。
 Charles LoydeのECM名作諸作を想い起こすような音。
 サックスは、サブトーンがしっかり効きながらも艶のある美しい音、ゆったりとした吹きっぷり。
 アルトがテナーのように聞こえます。
 冒頭からECMの定番、今にも止まりそうなルバートでのスローバラード。
 周囲の景色がゆっくりと溶けていくような音。
 そんな演奏が何曲か。
 ビートが定まっても、繊細に鳴るシンバルとピアノの高音がペースを作る静かな演奏。
 アップテンポの場面では、バンドが一体となった強烈な疾走感。
 サックスは奇をてらったりブチ切れたりはせず、あくまで上品、硬軟織り交ぜた素晴らしい表現力。
 さらにピアニストDominik Waniaは漂うような音から疾走まで、一聴してタダモノではないことが分かるスーパーピアニストの片鱗。
 いかにもヨーロピアン、いかにもECMな素晴らしい演奏。
 オリジナル中心の楽曲は、いかにもポーランドジャズな、少々沈痛系のメロディ、ECMでありがちな抽象的なそれではありません。
 ビートもなんだかんだで4ビートが中心、ECMには珍しくいかにもジャズ。
 さらに、高い透明度とたっぷりのエコーが加わった、こちらはECM的な素晴らしい録音。
 極めて上品で心地よいジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Songs of an Other” (2007) Savina Yannatou, Primavera En Salonico

“Songs of an Other” (2007) Savina Yannatou, Primavera En Salonico
Savina Yannatou (Voice)
Kostas Theodorou, Michalis Siganidis (Double Bass) Kostas Vomvolos (Kanun, Accordion) Harris Lambrakis (Ney) Yannis Alexandris (Oud, Guitar) Kostas Theodorou (Percussion) Kyariakos Gouventas (Violin, Viola)

Songs of an Other (Ocrd)
Savina Yannatou
Ecm Records
2008-09-09


 ギリシャの女性ボーカリストSavina Yannatouの地中海エスニック~クラシックな音楽。
 正直、ギリシャ、地中海のエスニックな音がどんな音なのか、いつの時代の音楽をイメージしたのかはよくわかりません。
 また、Savina Yannatou自身がクラシックの人なのか、伝統音楽の人なのか、はたまたジャズ、ポップ畑の人なのか、あるいはこの音楽がギリシャ的なのかどうかもわかりません。
 “Siwan” (2007,2008),“Nahnou Houm” (2017) Jon Balke、"Arco Iris" (2010) Amina Alaouiなどの北アフリカ色、あるいはアラブ~中近東が混ざり合うような少々妖しげで悲しげな音の流れ。
 ギリシャといえばエーゲ海の陽光のイメージをしてしまうのですが、地理的にはトルコ~アラブ、あるいはアフリカ、そしてヨーロッパの結節点。
 実際はいろんな要素が入り混じる複雑な空気感の地域なのかもしれません。
 それらのエスニックな空気感にヨーロッパ的な優雅でクラシカルな空気感、宗教的な敬虔な空気感が加わった音。
 楽曲を見ると、ギリシャ、イタリアに加えて、セルビア、アルメニア、ブルガリア、カザフスタンなどの伝統曲。
 エスニックで耳慣れない弦と木管、アフリカンなパーカッションの響きと朗々としながらも悲しげな女性ボイスの絡み合い。
 静かながらハイテンションで非日常的なメロディと演奏。
 ときおりの演劇的なアヴァンギャルドなボイスパフォーマンスは、Maria Joao、Iva Bittováあたりを想い起こします。
 敬虔で少々深刻なムードは宗教的な意味合いもありそうですが、それらが祈祷、祝祭、儀式、その他、何の音楽なのかはわかりません。
 ちょっと怖いような、哀しいような、それでいて懐かしいような・・・
 いずれにしても現代日本の日常の中では感じることができない空気感。
 きっと古代~中世の地中海~北アフリカ~中近東のムードなのでしょう。
 強烈な非日常感を味わえるトリップミュージック。




posted by H.A.

【Disc Review】“Solo Guitarra” (2012) José Luis Montón

“Solo Guitarra” (2012) José Luis Montón
José Luis Montón (guitar)

Solo Guitarra
Jose-Luis Monton
Ecm Records
2012-11-13


 スペインのギタリストJosé Luis Montón のソロギターでのECM作品。
 "Arco Iris" (2010) Amina Alaouiでこの上なく美しいギターを弾いていた人。
 本作は北アフリカではなく、対岸のスペインの空気。
 全編スパニッシュ、フラメンコな音の流れなのですが、もっと抑制された静かなギター。
 J. S. Bachの”Air”を挟んだ、オリジナル曲のセンチメンタルなメロディ。
 スローで漂うように静かに始まり、高速な展開、フラメンコチックな音を交えながらも淡々と進む音楽。
 決して暗くはなく、危なさも感じないのだけども、誰もいない街角から聞こえてきそうな、寂しそうな音の流れ。
 寂寥といった語感ではない、不思議な孤独さとセンチメンタリズム。
 激しい場面、高速なフレージングもあくまでクール。
 それでいてフラメンコ系ギターならではの加速感、疾走感は十二分。
 もちろんECMならではのいい感じのエコーが効いた、透明度の高い美しい音。
 たった一人で演じる、クールで静かなフラメンコ、といった面持ちでしょうか。
 ECM的な毒気やアバンギャルドさ、妖しさ、プログレッシブさの成分は少ないのかもしれないけども、上品で上質な音楽。
 温度、湿度は低め、少しだけECM寄り。
 このくらいの方が平和で聞きやすくていいのかな?
 静かで、さり気なくて、とても心地よいスパニッシュギター。




posted by H.A.


【Disc Review】"Arco Iris" (2010) Amina Alaoui

"Arco Iris" (2010) Amina Alaoui
Amina Alaoui (Vocals, Percussion)
José Luis Montón (Guitar) Eduardo Miranda (Mandolin) Sofiane Negra (Oud) Idriss Agnel (Percussion) Saïfallah Ben Abderrazak (Violin)

Arco Iris
Amina Alaoui
Ecm Records
2011-06-28


 モロッコの女性ボーカリストAmina Alaouiの北アフリカ~南スペイン~アラブなエスニックミュージック。
 ノルウェーの名ピアニストJon Balkeと“Siwan” (2009)を制作した人。
 少し低音に振れた、朗々としながらも、ミステリアスなボイス。
 おそらくは伝統曲なのであろう、聞き慣れないアラブな音階、物悲しいメロディ。
 北アフリカなのか、スペインなのか、ポルトガルなのか、あるいは中近東なのか、どこなのかはわかりません。
 冒頭のアカペラからどこか遠い場所、遠い時代にトリップするような非日常的な空気感。
 “Siwan” (2009)と同様に弦の中心の背景なのですが、大きな違いはスパニッシュJosé Luis Montónのギターが大きなスペースを占めること。
 ECM独特のリバーブと透明感。
 断言はできないけども、私が知る限り、ECMのアコースティックギター系では本作が一番美しい音かもしれません。
 さらにマンドリン、ウード、バイオリンが絡み合う、とても静かな天上のようなサウンド。
 弦が絡み合う空間の中に漂うミステリアスなボイス。
 ドキッとするような美しさと緊張感。
 ジャケットの素晴らしいポートレートは、モロッコの海? 
 対岸はスペインの地中海、あるいはポルトガル、はたまた遠くキューバ~アメリカ大陸を望む大西洋なのかもしれません。
 が、そのイメージの陽光は少なく、少し曇った哀し気な海。
 とても静かで優し気ですが、そんな音。
 ECMのエスニック・トリップ・ミュージック、北アフリカ版。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Nahnou Houm” (2017) Jon Balke, Siwan

“Nahnou Houm” (2017) Jon Balke, Siwan
Jon Balke (piano, keyboards, percussion)
Mona Boutchebak (vocals, oud)
Derya Turkan (kamanche) Pedram Khavar Zamin (tombak) Helga Norbakken (percussion)
Bjarte Eike, Alison Luthmers, Øivind Nussle (violin) Milos Valent, Per Buhre, Torbjørn Köhl (viola) Judith Maria Blomsterberg, Mime Brinkmann (cello) Johannes Lundberg (bass)

Nahnou Houm
Jon Balke
Ecm Records
2017-11-17


 ノルウェーのピアニストJon Balkeの北アフリカ~スペイン・アンダルシア~中近東~アラブ~その他のエスニックミュージックプロジェクト、ECMでの第二作。
 前作“Siwan” (2007,2008)からフロントの女性ボーカルがモロッコのAmina AlaouiからアルジェリアのMona Boutchebakに交代。
 古楽のバンド-Barokksolistene-はそのままなのだと思いますが、そのメンバーは入れ替わっているようです。
 ボーカリストが繊細な感じになり、ビート、展開を含めてオーソドックスになった感じもしますが、不思議感たっぷりのアラビアンなメロディ、アンアンブル、アフリカンなパーカッション、歪んだ時空から聞こえてくるような弦の響きは変わりません。
 前作では前面に出る場面が少なくなかったトランペットが抜け、あくまで弦のアンサンブルとボイスが中心。
 ピアノの登場場面も前作と同様にほとんどありません。
 結果的にはジャズ度がさらに薄くなり、エスニック度、時代不明度が濃くなっています。
 不思議感、妖しさ、緊張感120%のメロディですが、メロディラインが明確であるがゆえに、迷宮感はほんの少し薄らぎ、その地域、その時代のポップミュージックのようにも聞こえます。
 どの場所なのか、どの時代なのかは不明なのですが・・・
 ところどころに見え隠れするサンバなメロディラインの断片、Kip Hanrahan的バイオリンなどからは、地中海~北アフリカ~カリブ~南米との繋がりを意識してしまうのは、考えすぎでしょうか?
 Jon Balkeの一連の作品、北欧~中近東~アフリカ~南米までが混ざり合う無国籍なエスニック感、過去と現在、未来のフュージョン、静謐で悲し気な音、強い浮遊感、ちょっとした気難しさと高尚さ、狂気と正気の交錯、・・・その他含めて、1990年代以降のECMの象徴の一人のようにも思います。
 いずれにしても本作も妖しさ120%、非日常に浸れる音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Siwan” (2007,2008) Jon Balke, Amina Alaoui

“Siwan” (2007,2008) Jon Balke, Amina Alaoui
Jon Balke (Keyboards) Amina Alaoui (Vocals)
Jon Hassell (Trumpet, Electronics) Kheir Eddine M'Kachiche (violin) Pedram Khavar Zamini (Goblet Drum) Helge Norbakken (Percussion)
-Barokksolistene-
Bjarte Eike, Per Buhre, Peter Spissky, Anna Ivanovna Sundin (violin)
Milos Valent (violin, viola) Rastko Roknic, Joel Sundin (viola) Tom Pitt (cello) Kate Hearne (cello, recorder) Mattias Frostensson (bass) Andreas Arend (theorboe, archlute) Hans Knut Sveen (harpsichord, clavichord)

Siwan (Ocrd)
Jon Balke
Ecm Records
2009-06-30


 ノルウェーのピアニストJon Balkeとモロッコの女性ボーカリストAmina Alaouiの北アフリカ~スペイン・アンダルシア~中近東~アラブ~その他諸々がフュージョンするエスニックミュージック。
 古楽のバンド-Barokksolistene-と絡みつつ、どこかなのか、いつの時代なのか、わからない時間。
 Jon Balkeはピアノを封印して、作曲とサウンドメイクに徹しています。
 不安感を煽るかのようなメロディ、聞き慣れない音階と妖し気な弦楽器の響き。
 時空が歪んだかのように揺れ動くアルコを中心に、ときおりの哀し気なアルペジオ。
 そんなサウンドを背景に、Amina Alaouiは哀し気な表情の朗々とした声、緊張感の高い歌は、どこか宗教的な色彩も帯びた妖しい音の流れ。
 さらにはアフリカンなパーカッションに、思い出したように響くジャズなトランペット。
 妖しさ120%
 現代の日常とは乖離した不思議な時間。
 憂いに満ちた深刻な音の流れ、荘厳なムードは、神々しい・・・畏れ多い・・なんて言葉が似合いそう。
 それが中世の地中海沿岸の日常の空気感、そこでの音楽はそんな感じの存在だったのかもしれません。
 また、別のバンド“Batagraf”と同様、なぜか本作でも聞こえるKip Hanrahan諸作に似たバイオリンの動きは、大西洋を隔てたキューバとの浅からぬ関係が・・・
 ・・・とかなんとか、歴史の事はよくわかりませんが、そんな感じで数十万キロ、数百年トリップ出来る音。
 さすが、Jon Balke、ECM。
 このプロジェクトの第二弾は、十年後の“Nahnou Houm” (2017)。
 古いようでプリミティブなようで、新しくてクリエイティブな凄みが詰まった一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Say and Play” (2009) Batagraf, Jon Balke

“Say and Play” (2009) Batagraf, Jon Balke
Jon Balke (Piano, Keyboards, Electronics, Percussion)
Erland Dahlen (Drums) Helge Andreas Norbakken (Percussion)
Torgeir Rebolledo Pedersen (Poetry Reading) Emilie Stoesen Christensen (Vocals)

Say And Play
Universal Music LLC
2017-07-28


 ノルウェーのピアニストJon Balke、アフリカン~エレクトロニクスなプロジェクトBatagrafでの作品。
 このプロジェクト、ECMでは“Statements” (2003, 2004)に次ぐ二作目。
 前作からとてもカッコよかったサックス、トランペットが抜け、アフリカンなボイスの登場場面も減っていますが、その分シンプルで静かな音。
 電子楽器が前面に出る場面が増え、アコースティックピアノのインプロビゼーションのスペースもしっかりと確保されています。
 温かなアフリカンパーカッションに、複雑なビート。
 クールな電子音と美しいピアノ、これまたクールな女声。
 その妖しい声の主は、あのECM御用達、ノルウェーの名ドラマーJon Christensenの娘さんのようです。
 前作と異なり基本的には静かな音、強烈なビート、強い音はあまりありません。
 静かながら複雑なビート、強いグルーヴと、悲し気なメロディ、美しいピアノ、妖しげなボイス・・・
 エスニックなビートと電子音、肉声の静かな絡み合い、高速に突っ走るジャズピアノとスローテンポで漂うボイスの絡み合い、あるいはWeather Reportのような軽快なグルーヴとシンセサイザーの絡み合い、はたまた前作と同様、妖しくてオシャレなKip Hanrahan諸作を想い出す場面・・・などなど。
 マニアックなようで、とてもポップに聞こえます。
 おそらく、プリミティブな雰囲気なようで、それも含めて計算尽く、とてもとても洗練されているのでしょう。
 The Magnetic North Orchestraでの作品は不思議で妖しい北欧ジャズ、Siwanでは地中海沿岸~アラブなエスニックミュージックですが、Batagrafはアフリカンと未来のフュージョン。
 血肉とエレクトロニクス、原始と現代、未来が交錯するような不思議で妖しい、エレトリック・エスニック・ポップ・ミュージック。
 とても心地いいトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Book of Velocities” (2007) Jon Balke

“Book of Velocities” (2007) Jon Balke
Jon Balke (piano)

 ノルウェーのピアニストJon Balkeのソロピアノ作品。
 ピアノによるとても美しい断片のコラージュ。
 4部構成、全19曲。
 即興のような、準備されたメロディがあるような、淡いイメージの音の流れ。
 ピアノのイメージは、Paul Bleyに近い感じ?、彼をもう少し丸く柔らかくした感じでしょうか。
 強烈なグルーヴを作りつつ突っ走ることが出来る人なのですが、そんな場面は少なく、静かでゆったりとした、余白が多い時間。
 抽象的な音の流れ。
 一分~長くて四分程度で楽曲は変わり、次々と周囲の景色が流れていきます。
 Keith Jarrettのソロピアノは手に汗握るスぺクタルですが、こちらはもっとカジュアルな空気感。
 但し、少し日常からずれたような不思議な感覚。
 フリージャズ的で抽象的だし、応用編である事は否定しませんが、慣れてしまえば不思議な心地よさ。
 極上に美しいピアノの音に加えて、とても静かで間が多いからでしょう。
 一日中流れていても違和感のない音楽の一つ。
 聞き流してもよさそうな感じなのですが、周りに誰もいない静かな時間に聞くと、何か意外なものが見えてくるかも・・・
 そんな静かなピアノミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Diverted Travels” (2003) Jon Balke The Magnetic North Orchestra

“Diverted Travels” (2003) Jon Balke The Magnetic North Orchestra
Jon Balke (piano, keyboards)
Per Jørgensen (trumpet, vocals) Fredrik Lundin (bass flute, saxophones) Bjarte Eike, Peter Spissky (violin) Thomas Pitt (bass violin) Helge Andreas (Norbakken percussion) Ingar Zach (percussion)

Diverted Travels
Jon Balke
Ecm Import
2004-08-31


 ノルウェーのピアニストJon Balkeの変則な編成のコンボ作品。
 このバンド、ECMでは“Further” (1993)、“Kyanos” (2001)に続く三作目でしょうか。
 メンバーは少しずつ変わっていますが全体のトーンは変わらず、ストリングスとホーンが妖しく絡み合う、不思議系北欧コンテンポラリージャズ。
 上記二作と比べると、静かさが増した感じでしょう。
 また、数分の短い楽曲を繋ぎ合わせ、次々と場面が変化していくような、この期のJon Balkeの作品と類似する構成。
 この人の作品の多くは何かのイメージを物語的に構築していく感じなのだと思うのだけども、本作は“逃避?”でしょうか。
 もどかし気、やるせなさ気なピアノの徘徊からスタート。
 アフリカンなパーカッションとストリングスが絡み合う妖しい音の流れ。
 ベースレスゆえ、ビートが入っても不思議な浮遊感。
 ゆらゆらと揺れる背景を作るストリングスとバーカッション、断片的にコラージュされていくような、美しいピアノ、ホーン、ボイス。
 Nils Petter Molvaer、あるいはMiles DavisっぽいトランぺッターPer Jørgensenが大活躍。
 ミュートトランペットとピアノが加速しながら高速チェイスする場面も目立ちます。
 中盤に収められた全編それの“Climb”なんて最高にカッコいいジャズ。
 沈痛さ、陰鬱さは無いのですが、妖しさ、不思議さは満点。
 締めは、放心したような静かなノイズの響きから、この上なく悲し気な“Falling”。
 タイトルのイメージ通り、レクイエムのような音、祈りのようなエンディング。
 いかにもこの人作品、不思議系ジャズで綴った物語。




posted by H.A.


【Disc Review】“Outstairs” ‎(2013) Christian Wallumrød Ensemble

“Outstairs” ‎(2013) Christian Wallumrød Ensemble
Christian Wallumrød (piano, harmonium, toy piano)
Per Oddvar Johansen (drums, vibraphone) Gjermund Larsen (violin, hardanger fiddle, viola) Tove Törngren (cello) 
Eivind Lønning (trumpet) Espen Reinertsen (tenor saxophone)

Outstairs
Christian Ensemble Wallumrod
Ecm Records
2013-08-06


 ノルウェーのピアニストChristian Wallumrødの変則編成のコンボ作品。
 Christian Wallumrød Ensemble でのECM初作“Sofienberg Variations” (2001)、“The Zoo Is Far” (2006)なとと同様、とても静かで魔訶不思議なコンテンポラリージャズ。
 が、それらから時間が経過し、雰囲気は異なります。
 静かで限られた音数、ゆったりとしたテンポはそのままですが、ルバートでの美しいスローバラードは影を潜め、不穏な中断を繰り返す定常なビート。
 さらにメロディというよりも、スケールの断片?のように不思議な楽曲。
 また、集団で同じメロディを奏でているようで少しずつズレていくような不思議で不安な音の流れ・・・
 ミニマルミュージック的・・・とは違うのでしょうが、不思議で実験的な音。
 変わらないのはレクイエム集のようなムード。
 本作ではそれをさらに抽象的にさらに陰鬱にした感じの、アヴァンギャルドで哀しい音が最初から最後まで続きます。
 哀しげな表情、定まった8ビート的なリズムになると、同じくノルウェー、同世代のECMのピアニストTord Gustavsenに近い空気感はあるのですが、その甘美さはなく、異次元から聞こえてくるような不思議で哀しい音。
 やはりレクイエム・・・なのでしょうかねえ・・・?
 とても静かで、とても哀しい迷宮ミュージック。


※別メンバーでのライブ映像から。


posted by H.A.


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