吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年12月

【index】 Best 30 Albums

H.A.の私的ベストアルバム30作。
不定期、気まぐれに更新します。
(2017/12/31更新)


Death and the Flower” (1974) Keith Jarrett
 1970年代のKeith Jarrett諸作は、モダンジャズ、フリージャズ、ロック、フォーク、クラシックが交錯する、最高のフュージョンミュージック。
 静かに漂うように始まり、紆余曲折、徐々にテンションを上げながらゴスペルチックな陶酔感で締める、1970年代Keith Jarrettの様式美、そのコンボ版。

Death and the Flower
Keith Jarrett
Grp Records
1994-03-15



Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny Group
 Pat Metheny Groupの決定盤。
 軽やかでしっとりしていてドラマチック。
 強い浮遊感とヒタヒタと迫ってくるビート、凄まじい疾走のインプロビゼーション・・・
 もっと凄いのもありますが、これが一番いいなあ。

Still Life (Talking)
Pat Metheny
Nonesuch
2006-02-06



'Round About Midnight” (1955) Miles Davis 
 モダンジャズを一作なら、これですかねえ・・・
 クールでハードボイルドでグルーヴィー。
 ジャズのカッコよさが凝縮された一作。

ROUND ABOUT MIDNIGHT
MILES DAVIS
COLUM
2009-04-03



Live At The Fillmore East (March 7, 1970) - It's About That Time” (Mar.1970) Miles Davis
 激烈、痛快、エネルギー放出型ジャズ~ファンク。
 聞いているほうの血管が切れてしまいそうな音楽。
 この期の作品はどれもサイコーなのですが、激烈Wayne Shorter参加の発掘音源をピックアップ。




Lovers” (1988) David Murray
 この人のテナーは黒い。
 ぶっとくて艶々と黒光りするような音に、サブトーンたっぷり。
 一音だけでぶっ飛ぶ強烈なバラード集。

Lovers
David Murray
Diw Records
2001-06-26




A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996) Kip Hanrahan
 超絶グルーヴのコンガに、激烈ピアノ、狂気のバイオリンにあの世から聞こえてくるようなウイスパーボイス。
 とてもとても妖しいアフロキューバンジャズファンク。
 おまけに、とてもとてもオシャレ。


The Sign” (2002) Carsten Dahl
 知る人ぞ知るヨーロピアンコンテンポラリージャズピアノトリオの最高峰?
 妖しさ120%、凄まじい緊張感。
 妖しいまでに美しいピアノと超弩級に激烈なベース。
 浮遊と疾走、静謐と激情が交錯する、凄まじいピアノトリオ。

The Sign
Carsten Dahl
Stunt
2002-10-15



Rosa” (2006) Rosa Passos
 現代最高のボサノバシンガーの全編ギター弾き語り。
 優しくしっとりとした声に、少し遅れ気味に音が置かれていく柔らかなギター。
 哀しげで儚げだけども、前向きなサウダーヂ。
 静謐で穏やかな最高のボサノバ。

Rosa
Rosa Passos
Telarc
2006-04-25



Carlos Aguirre Grupo (Violeta)” (2008) Carlos Aguirre Grupo
 ドラマチックなアルゼンチン・プログレッシブ・フォルクロレリック・コンテンポラリー・ジャズ。
 美しく哀し気なメロディと繊細なピアノ、必殺のギターのユニゾン、コーラス・・・
 そして強烈な高揚感、陶酔感。
 激しくハイテンションながら、ひたすら美しい。

Carlos Aguirre Grupo (Violeta)
Carlos Aguirre Grupo
Shagrada Medra
2018-01-28



Chicken Skin Music” (1976) Ry Cooder
 これまたとてもとてもレイドバックしたアメリカンロック。
 スライド、ドブロなどなど、ルーズなギターが心地よさ最高。
 ゆるーくて、のほほんとしていて、郷愁感があって・・・
 テキサスとメキシコと南米、そしてハワイはつながっているんでしょうねえ・・・

Chicken Skin Music
Ry Cooder
Reprise / Wea
1994-10-19




・↑ best10・・・・・・・・・・・・・・・・・・


The Köln Concert” (Jan.1975) Keith Jarrett
 1970年代Keith Jarrettの様式美、そのソロピアノ版、その紛うことなき決定盤。
 美しくわかりやすい導入から、興奮と陶酔の終盤。
 映画のようなピアノミュージック。

The Koln Concert
Keith Jarrett
Ecm Records
1999-11-16



The Survivor's Suite” (1976) Keith Jarrett
 これまた1970年代Keith Jarrettの様式美、コンボ版、その決定盤はこちらでしょうか?
 沈痛で美しくてドラマチック、さらに激烈。
 沈痛度、激烈度、妖しさ、深刻さ、そして美しさ最高。

Survivor's Suite
Keith Jarrett
Ecm Records
2000-05-09




La Scala” (Feb.13.1995) Keith Jarrett
 もがきながら進むような音、徐々に形を変えながら長い長い時間を掛けて到達する、とてつもなく美しい結末・・・
 フリージャズ混じりのとっつきにくさゆえ、応用編なのかもしれませんが、その先には桃源郷が・・・
 座して聞くべき一作。
 アートです。

La Scala
Keith Jarrett
Ecm Records
2000-01-25



Cycles” (1981) David Darling
 美しいピアノ、激しいサックス、妖しげなシタール、とても哀しげなチェロ。
 フリー混じりの妖しい演奏の中に、激甘ベタベタのメロディがいくつか。
 ECMから一作を選ぶとすればこれ・・・ってなのはマニアックにすぎますか・・・?




The Way Up” (2003,2004) Pat Metheny Group
 勇壮、激烈、ドラマチックなすさまじい音楽。
 よくも、まあ、ここまで凄いジャズフュージョンミュージックがあったものです。
 ここまでくると最高のアート。
 約70分、映画を見るつもりで座して聞きましょう。

ザ・ウェイ・アップ
パット・メセニー・グループ
ワーナーミュージック・ジャパン
2005-02-09




Exotica” (1993) Kip Hanrahan
 アフロキューバンなジャズファンク。
 Don Pullenの鍵盤を中心とした最高にカッコいいトリオに妖しいささやきボイス。
 シンプルながら強烈なグルーヴ。
 とても危ないダンスミュージック。

EXOTICA
KIP HANRAHAN
ewe
2010-07-21



John Abercrombie Quartet” (Nov.1979) John Abercrombie Quartet
 強烈な浮遊感のルバートあり、疾走ありのハイテンションジャズギターカルテット。
 妖しくて美しくて、グルーヴィー。
 ギターとピアノは言わずもがな、ドラムとベースも最高の演奏。
 さらにオリジナルのジャケットが最高なんだけどなあ・・・

The First Quartet
John Abercrombie
Ecm Records
2015-12-04



Pasodoble” (2006,2007) Lars Danielsson & Leszek Możdżer
 稀代のメロディメーカーと氷のように冷たく鋭いピアノのDuo。
 懐かしくて美しいメロディ、コードに乗った、とてつもない透明感の美しい音。
 零れ落ちるような儚さと疾走の交錯がカッコいい。

PASODOBLE
Lars Danielsson & Leszek Mozdzer
Act Music + Vision
2013-03-01


Magico:Carta de Amor” (1981) Magico
 北欧、南米、アメリカのフュージョンミュージック。
 同メンバーでのちょっとキツメのスタジオ録音諸作に対して、マイルドな質感の本作。
 あの時代のハイテンションな音源ながら、サラリと聞けるのが21世紀型ECM、新しいECMマジック。
 名曲揃いに加えて、名人たち三者三様の交わるようで交わらない危ういバランスがカッコいい。

Magico-Carta De Amor
Garbarek
Ecm Records
2012-11-06



Playground” (2007) Manu Katché
 ポップなようで強い陰影、不思議な寂寥感が漂う音楽。
 BGMにもなるし、じっくり聞けば現代ヨーロッパの若手陣の凄みが見える作品。
 これだけ聞きやすくて深い作品は希少。 

Playground (Ocrd)
Manu Katche
Ecm Records
2007-09-25



Volver” (1986) Enrico Rava, Dino Saluzzi
 イタリアの巨匠とアルゼンチンの巨匠の共演。
 ハイテンションなコンテンポラリージャズ。
 ダークさとスタイリッシュさと、サウダーヂが交錯するジャズ。

Volver
Enrico Rava
Ecm Import
2001-06-19



Tribe”(2011)Enrico Rava
 イタリアのスタイリストの近年作。
 何をやってもカッコいいのですが、本作はバラードを中心としたアルバム。
 それもルバートでのスローバラードがたっぷり。
 スタイリッシュ&ハードボイルド。

Tribe
Enrico Rava
Imports
2011-11-01



Antigas Cantigas” (1999) Renato Motha, Patricia Lobato
 ブラジリアン男女Duoのとても優しいMPB。
 透明度の高い天使のような女声に優しい男声。
 音数を抑えたシンプルでゆったりとした音の流れ。
 なぜかハワイ的な楽園ムード。
 全てが弛緩してしまいそうな優しい音。

Antigas Cantigas
Renato Motha & Patricia Lobato
Sonhos & Sons Brasil
1998-11-30



De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari
 ワルツを中心とした優雅な浮遊感が全編に漂うブラジリアン・クラシカル・ジャズ&MPB。
 ボーカリストを交えた柔らかなジャズ~ポップスと、クラシック色が交錯する構成。
 全編、優雅で優しくて上品、少々の幻想と興奮を加えた絶妙のバランスの一作。

Dos ríos” (2008) Andrés Beeuwsaert
 アルゼンチンサウダーヂなコンテンポラリージャズ、あるいはジャズ寄りの現代フォルクローレ。
 ブラジル系とは少しニュアンスが違う、ゆったりとしたワルツなフォルクローレビートの浮遊感と、遠くを眺めているような郷愁感。
 幻想的なスキャットに柔らかな管楽器、そして儚げで美しいピアノの絡み合いはジワジワときます。




Naissance” (2012) François Morin
 一時期のPat Metheny Groupのサウンドを現代の感覚でよみがえらせたような音。
 ヒタヒタと迫ってくるようなビートに、南米的サウダーヂの哀しげながら前向きな空気感、郷愁感。
 強い浮遊感の音の流れの中のときおりの強烈な疾走とグルーヴ。
 繊細ながら興奮、高揚の一作。

Naissance
Francois Morin
Tratore Music Brasil
2013-02-05



"Caravanserai" (Feb-May.1972) Santana
 とても妖しげな最高のジャズフュージョン。
 しっとりした質感とヒタヒタと迫ってくるようなビートは、他のロック作品とは全く異質。
 妖しさに加えて、強烈な疾走とラテンな高揚感、さらにドラマチック。

Caravanserai
Santana
Sony
2010-06-29



"There's One in Every Crowd" (1974,1975) Eric Clapton
 とてもレイドバック(懐かしい!)したロック。
 埃っぽくてゆるーいようで、実はものすごく洗練された音。
 気楽に聞けるし、スカスカなようで骨太な演奏と繊細な歌の最高のバランス。

安息の地を求めて(紙ジャケット仕様)
エリック・クラプトン
ユニバーサル ミュージック
2016-03-23



Diamond Life” (1984) Sade
 大ヒットしたポップス・・・なんて括りは表面的。
 ポップながらダーク、オシャレなようで危険、チャラいようで深い・・・
 1980年代、スタイリッシュなブリティッシュソウルのカッコよさ、そして妖しさが凝縮された一作。

DIAMOND LIFE
SADE
EPIC
2000-11-13



posted by H.A.



【index】 2017年・私的ベストアルバム

 2017年の私的ベストアルバム10。(順不同)。
 基本的には新譜、新発表に限ろうと思っていますが、発表すぐには聞いていないものも多いこともあり、1-2年ぐらい前までは対象ということでアバウトに。  
 見事に南米とECMへの偏りが・・・
 アメリカ、日本にもいいのがたくさんあるのでしょうけど・・・
 他にも南米系でいいのが諸々あったのだけども、整理しつつ、また来年に。
 来年は全部南米になったりして・・・


Vento Sul” (2017) Luis Leite
 ブラジルのギタリストのフォルクローレ的なジャズフュージョン。
 とても優しくて穏やかでキャッチ―。
 全曲捨て曲なし。

 Vento Sul [CD]Luis Leite


Serpentina” (2017) André Mehmari, Juan Quintero, Carlos Aguirre
 これ見よがしなこのメンツかあ、なんだかなあ・・・
 ってなのは穿った考え。
 南米フォルクローレとジャズとクラシックとポップスと・・・諸々混ざった現代最高のフュージョンミュージック。




Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdo
 André Mehmariの穏やかなサンバ。
 何のことはないサンバアルバムのようで普通ではないのは、とんでもないピアノゆえ。
 っても変なことはしていません。
 とても上品で穏やかでクラシカルだけど、アグレッシブなサンバ。

Tres No Samba
Andre Mehmari
Imports
2017-03-03






Caipira” (2017) Mônica Salmaso
 いつもながらに優雅の極めつけ、強烈な浮遊感。
 穏やかでアコースティックなトリップミュージック。
 ジャケットも最高。

Caipira
Biscoito Fino
2017-08-21







Macieiras” (2017) Alexandre Andrés
 目下の一番のストライクゾーン、南米フォルクローレなジャズ。
 優しくて穏やかで悲し気でカッコいい。
 いい作品がたくさんありそうなので、探し出すとキリがなくなりそうですが・・・

Macieiras
Alexandre Andres
Fazenda Das Macieira
2017-09-14




Fronteira” (2017) Rafa Castro
 ブラジル、ミナス~フォルクローレなコンテンポラリージャズ。
 どうもこの種が最近の一番の好みで、完成度云々よりも空気感を優先しているかなあ。
 “Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny Groupのころから好みが変わっていない、が正解かもしれませんが・・・ん?30年前・・・!?




Calma” (2017) Carlos Aguirre Trío
 現代のカリスマ。
 ここまでの主だった作品の現代的なフォルクローレ的ポップスなイメージとは変わって、静謐なコンテンポラリージャズ。
 これはジワジワきます。

Calma
Carlos Aguirre Trio
Shagrada Medra
2017-12-17



Blue Maqams” (2017) Anouar Brahem
 チュニジアのウード奏者とDjango BatesエレクトリックMilesのリズム隊の共演。
 これが意外にもいい感じのコンビネーション。
 それにしてもDjango Batesは静かに弾いてもスゲーや。

Blue Maqams
Anouar Brahem
Ecm Records
2017-10-13



Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Strønen
 あのフリーの人だなあ・・・と思いながら聞いたアルバム。
 そんな演奏も少なくないのですが、ビートが入るとヒタヒタと迫ってくる系のグルーヴ。
 時空が歪むような妖しい弦との絡み合いがカッコいい。
 中ほどに置かれた”I Don't Wait For Anyone”は今年一番たくさん聞いたであろう、私的大大大名演。

Time Is a Blind Guide
Thomas Stronen
Imports
2015-10-30



Birdwatching” (2015) Anat Fort
 ちょっと薄味な人・・・、のイメージでしたが、本作はいかにもECMな妖しさもたっぷり。
 ゲストのクラリネット奏者Gianluigi Trovesiが大名演。

Birdwatching
Anat Fort Trio & Gia
Ecm
2016-02-19









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番外編

A Multitude of Angels” (Oct.1996) Keith Jarrett
  “La Scala” (Feb.13.1995)の大ファンとしては聞かざるを得ない作品。 
 “The Köln Concert”(Jan.1975)に対する“Sun Bear Concerts”(Nov.1976)のような作品と期待しましたが・・・
 さておき、本作を入手したことをきっかけにソロピアノ作品を聞き直し。
 いい機会をいただきました。

A MULTITUDE OF ANGELS
KEITH JARRETT
ECM
2016-11-04






posted by H.A.

【Disc Review】“Calma” (2017) Carlos Aguirre Trío

“Calma” (2017) Carlos Aguirre Trío
Carios Aguirre (Piano)
Fernando Siiva (contra bass, cello) Luciano Cuvielio (drums, cascabeles)
Claudio Bolzani, Marceio Petteta (voice) Mono Fontana (keyboards)

Calma
Carlos Aguirre Trio
Shagrada Medra
2017-12-17


 現代フォルクローレの親分であろうCarios Aguirreのピアノトリオを中心としたアルバム。
 自身のレーベルShagrada Medraからはたくさんのアーティストの作品がリリースされ、“Serpentina” (2017)などの共演作はありますが、自身のリーダー作としては“Orillania” (2012)以来、久々の作品。
 名作“Luz de agua” (2005) のFernando Siivaがベーシスト、Claudio Bolzaniがゲスト参加し、音響派のMono Fontanaが名前を連ねます。
 ボーカルはゲストが入った一曲のみ。
 全体のムードは、ポップで躍動感強めの前作から大きく変わって、ヨーロッパ系、ECMな空気感も漂う、ピアノトリオによるとても静かなコンテンポラリージャズ。
 今時珍しく各曲が長尺な全七曲。
 静かで内省的なムード、甘すぎない淡いメロディも含めて、空気感は“Carlos Aguirre Grupo (Violeta)” (2008)に近い感じもあますが、もっともっと抑えたジャズな感じ。
 “Caminos” (2006)をジャズに寄せた感じでしょうか。
 ほのかにセンチメンタリズムが香るメロディに、漂うわけでも疾走するわけでもない、端正でゆったりとした落ち着いたピアノトリオ。
 弾きすぎないピアノ、スウィング、グルーヴしすぎないリズムは、ジャズな音とは少しニュアンスが違うのでしょう。
 もっと繊細で複雑な音。
 丁寧に置かれていくピアノの音。
 インプロビゼーション、インタープレーの場面も全て計算されているような、美しく哀しい音の流れが続きます。
 甘いメロディやカラフルなアンサンブル、歌がない分、ここまでの作品に比べると地味なのでしょう。
 が、耽美的で内省的、じわじわとくる系。
 数多い美しく哀しい名曲のメロディの断片を散りばめていくように淡々と続くピアノの音・・・
 そして最後に収められた、抑制されつつも強烈な高揚感の中での感動的な終演。
 これは名作“Carlos Aguirre Grupo (Violeta)” (2008)の世界。
 その他、躍動感のある場面もしばしばありますが、基本的には静かで穏やか、フォルクローレな浮遊感のある音。
 時間の流れが遅くなっているような、ゆっくりと周囲の形式が変わっていくような音の流れ。
 ジャケットのイメージと同様に、孤独で寂寥感が漂う心象風景・・・、そんな形容が似合うのでしょう。
 アルゼンチンからは地球の裏側の日本の今の季節にピッタリの音かもしれません。




posted by H.A.

【Disc Review】“Fronteira” (2017) Rafa Castro

“Fronteira” (2017) Rafa Castro
Rafa Castro (piano, voice)
Igor Pimenta (bass) Gabriel Alterio (drums)
Vana Bock (cello) Ricardo Taka, Marcos Scheffel (violin) Daniel Pires (Viola)
Vinicius Gomes (Guitar) Lea Freire (Flute) Teco Cardoso (Sax)
Monica Salmaso (Voice)



 ブラジル、サンパウロのシンガーソングライター、ピアニストRafa CastroのMPB、あるいはミナス~フォルクローレ的なブラジリアンコンテンポラリージャズ。
 “Lachrimae” (2003) Andre Mehmari, “Naissance” (2012) François Morin,“Dos ríos” (2008) Andrés Beeuwsaertなど、新しいところでは“Macieiras” (2017) Alexandre Andrésなどに近いムード、フォルクローレの香りがする南米ジャズフュージョンの系。
 ピアノトリオ+自身のボイスをベースとして、楽曲ごとにストリングスカルテット、ギター、管楽器が入れ替わり加わっていく形。
 冒頭から幻想的なECM的ルバートのイントロ、ピアノトリオとソプラノサックスの絡み合い。
 さらにストリングスカルテットにスキャットボイスが入るとAndré Mehmari風に・・・、ビートが強くなるとあの時期のPat Metheny風に・・・
 バラードになってもその空気感は変わりません。
 強烈な浮遊感、哀し気で、寂し気で、幻想的で・・・
 そんな線でまとめてくるのかな?と思いきや、先に進むにつれて音量が上がりエネルギーも強くなっていきます。
 ギターが映えるちょっとハードなジャズテイストやら、ドラマチックで派手な演出やら、スモーキーなミステリアスボイスMonica Salmasoが参加した幻想的な音やら、その他諸々いろんな色合い。
 いずれも少々寂し気で悲しげだけど前向きな雰囲気、いわゆるサウダージなオリジナル曲のメロディがとてもいい感じ。
 リーダーの少々素っ頓狂系のハイトーンボイスが、若き日のEgberto Gismonti風に聞こえるのもご愛敬。
 少々ハードな演奏などは音楽自体もEgberto Gismontiっぽいというか、神のごとき彼の強い影響は多くの若手にあるのでしょうね。
 などなど含めて、いろんな要素がてんこ盛りのブラジリアンミュージック。
 André Mehmari的あるいはCarlos Aguirre的な色合いに、ちょっとハードなジャズ、あるいはEgberto Gismontiな色合い、現代のポップス、ジャズが複雑に交差する、なんて感じでしょうか、
 今後どう化けるか楽しみな人。




posted by H.A.

【Disc Review】“Macieiras” (2017) Alexandre Andrés

“Macieiras” (2017) Alexandre Andrés
Alexandre Andrés (flute, guitar, voice)
Rafael Martini (piano, accordion, voice) Pedro Trigo Santana (Acoustic Bass, Voice) Adriano Goyatá (Drums, Marimba de vidro, Voice) Rafael Dutra (Voice) Gabriel Bruce (Drums), Natália Mitre (Vibraphone)
André Mehmari (piano) Antonio Loureiro (Vibraphone) Joana Queiros (Clarinet, Clarone) Ricardo Herz (violin)

Macieiras
Alexandre Andres
Fazenda Das Macieira
2017-09-14


 ブラジル、ミナスのシンガーソングライター~フルーティスト~マルチインスツルメンタリストのフォルクローレなジャズフュージョン。
 ミナス系のボーカリストLeonora Weissmannの“Adentro Floresta Afora” (2015) や、André Mehmari人脈、Antonio Loureiroの"" (2012) その他で名前をよく見かける人。
 本作はボイスはスキャットのみ、フルートを中心としたブラジリアンジャズフュージョン。
 この種の音楽のもはや大御所André Mehmari本人もゲストで一曲に参加しています。
 ブラジリアンならではのしなやかなグルーヴのピアノトリオを背景にして、アコーディオンにビブラフォンにバイオリン・・・、そしてリーダーを含めた管楽器の丸い音。
 この種の音楽の定番のヒタヒタと迫ってくるようなビートに、上品なアンサンブルはもちろん、少々激しめ、エキサイティング系の演奏も含めて、ジャズ的なインプロビゼーションのスペースがたっぷり。
 ほぼ全曲のオリジナル曲は、少し陰のある哀愁を含みつつも前向きな、あのブラジリアンなメロディ。
 さらには遠くから聞こえてくるようなコーラス・・・
 全編に漂う、懐かしげなような哀しげなような、いわゆるサウダージ、郷愁感。
 徐々に周囲の景色が変わっていくような音の流れに、ドラマチックなアレンジ。
 あの期のPat Metheny Group、“Lachrimae” (2003) Andre Mehmari, “Naissance” (2012) François Morin,“Dos ríos” (2008) Andrés Beeuwsaertなどの南米系ジャズフュージョンの名作群を想い起こします。
 全編通じて、とてもしなやかなブラジル・ミナス的なフォルクローレ色の混ざり合うジャズ。
 素晴らしい楽曲、演奏揃い。
 名作です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Dorival” (2017) Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Andre Mehmari, Nailor Proveta

“Dorival” (2017) Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Andre Mehmari, Nailor Proveta
André Mehmari (Piano) Nailor Proveta (Alto sax, Clarinet) Rodolfo Stroeter (Contrabass) Tutty Moreno (Drums)

 ブラジリアンジャズの名手が揃ったDorival Caymi作品集。
 大将はJoyceの夫君Tutty Morenoでしょうか?それともAndré Mehmari
 いずれにしても“Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno、“nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso、“Nonada” (2008)などを制作した中核メンバー。
 上記の作品群からかなりの年月が経過し、ほんの少しエキセントリックに、言葉を変えればクリエイティブに変化した音。
 ベテラン陣はあまり変わっていないのかもしれませんが、André Mehmariのピアノが変わっているように思います。
 内面から出てくるモノを抑えきれないような、その場に止まれないような、激しい演奏。
 スローテンポで漂うような音の流れから始まり、徐々に飛び跳ね、突っ走るピアノ。
 過去のジャズカルテット作品でも、頭抜けた演奏力のピアノだけがぶっ飛ぶ場面はあったのですが、この期では彼のピアノが全体を支配しているようにも聞こえます。
 そんなピアノに寄り添うように伸びたり縮んだり、時に共に突っ走り、時に定常に引き戻すバンド。
 多くの場面でフロントに立っているのは流麗なサックス、クラリネットなのですが、後ろで動きまくるピアノに耳が行ってしまいます。
 郷愁漂うDorival Caymiのブラジリアントラディショナルなメロディとドラマチックな編曲、ハイテンションなジャズカルテットの演奏。
 企画、メンツどおりの心地よい、ほんの少しだけぶっ飛んだブラジリアンジャズ。
 なお、録音はノルウェー、OsloのRainbow Studio。
 言わずと知れたECMのホームグラウンド。
 ここまでの作品とは音の感じが変わってそれっぽい音?・・・・ではありませんね・・・?





 Andre Mehmariの参加作品、私が知る限り。
 他にもたくさんあるのでしょう。
 2017年は極めて多作。
 近年はクラシック色が強くなってきているように思いますが、いずれにしてもどれもハズレなしの名作、佳作揃いなのが凄いなあ・・・

edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) with Celio Barros
  “Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno 
nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso
“Canto” (2002)
  “Áfrico” (2002) Sérgio Santos
Lachrimae” (2003) 
Piano e Voz” (2004) with Ná Ozzetti
  “Ia Ia” (2004) Monica Salmaso
  “Sergio Santos” (2004) Sergio Santos
Continuous Friendship” (2007) with Hamilton de Holanda
  “Io So” (2007) Sergio Santos
de arvores e Valsas” (2008)
Veredas” (2006-2008) Omnibus
Miramari” (2008) with Gabriele Mirabassi 
  “Nonada” (2008) with Rodolfo Stoeter, Tutty Moreno, Nailor Proveta, Teco Cardoso
  “Litoral e interior” (2009) Sérgio Santos
Gimontipascoal” (2009, 2010) with Hamilton de Holanda
  “Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro (一曲のみ)
Canteiro” (2010, 2011)
Afetuoso” (2011)
“Orquestra A Base De Sopro De Curitiba e André Mehmari” (2011)
  “Naissance” (2012) François Morin
Triz” (2012) with Chico Pinheiro, Sérgio Santos 
  "Macaxeira Fields" (2012)  Alexandre Andrés
  "Sunni-E" (2012) Renato Motha & Patricia Lobato (一曲のみ)
Arapora” (2013) with Francois Morin
Tokyo Solo” (2013)
“Angelus” (2013)
Ao Vivo No Auditorio” (2013) with Mario Laginha
Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014)
  ”Caprichos" (2014) Hamilton de Holanda (一曲のみ)
As Estacoes Na Cantareira” (2015)
  “Partir” (2015) Fabiana Cozza (一曲のみ)
"MehmariLoureiro duo" (2016) with Antonio Loureiro
Três no Samba” (2016) with Eliane Faria, Gordinho do Surdo
Guris” (2017) with Jovino Santos Neto
Am60 Am40” (2017) with Antonio Meneses
Serpentina” (2017) with Juan Quintero, Carlos Aguirre
Dorival” (2017) with Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Nailor Proveta
  "Macieiras” (2017) Alexandre Andrés(一曲のみ)


posted by H.A.

【Disc Review】“Vento Sul” (2017) Luis Leite

“Vento Sul” (2017) Luis Leite
Luis Leite (guitar)
Erika Ribeiro (piano) Fred Ferreira (guitar) Marcelo Caldi (acordion) Ivo Senra (Fender Rhodes) Peter Herbert (bass) Diego Zangado, Felipe Continentino (drums) Luis Ribeiro (percussion)
Wolfgang Puschnig (flute) Giuliano Rosas (clarinette) Sergio Krakowski (adufo) Elisa Monteiro (viola) Márcio Sanchez (violin,viola) Tatiana Parra, Lívia Nestrovski (voice)

 Vento Sul [CD]Luis Leite

 ブラジルのギタリストLuis Leiteのブラジリアンジャズフュージョン。
 Andre Mehmari系の知る人ぞ知る名作“Naissance” (2012) François Morin、あるいはアルゼンチンのQuique Sinesi諸作を想い起こすアルバム。
 リオデジャネイロの若手なのだと思いますが、ミナス的であり、フォルクローレ的な優しく繊細なサウンド。
 Tatiana Parraの参加が目を引き、確かにそんな表情もありますが、彼女の諸作よりももっと穏やかでポップなテイスト。
 ピアノとギターの美しいDuoで始まり、Tatiana Parraのテクニカルなスキャット、この種の音楽の定番クラリネット、アコーディオン、さらにはストリングスとの絡み合い、などなど。
 女性ピアニストErika Ribeiro も、Andre Mehmariのエキセントリックな部分を削ってヨーロピアンジャズのテイストを混ぜたような素晴らしいピアノ。
 速いテンポになるとあの一時期のPat Methenyのようなヒタヒタと迫ってくるようなビート。
 さらにはあの?Wolfgang Puschnig?のフルートを交えたコンテンポラリージャズカルテット、などなど。
 全曲違った編成、ムードも異なるのですが、なぜか一貫した質感。
 リーダーが派手にギターを弾きまくるわけではありませんが、素晴らしいバランスのサウンド。
 全曲オリジナル曲、少々哀し気なような懐かし気なような、それでいて前向きな、サウダージな表情のメロディ揃い。
 最後は弦が奏でるとても切ない音の流れで幕・・・
 近年の南米ジャズ系音楽のカッコいい所が詰まったような傑作。
 “Naissance” (2012) François Morin、あるいはAndre MehmariCarlos Aguirre諸作に並ぶような・・・は大袈裟でしょうか?
 こういうのがあるから、ブラジル~南米音楽探しはやめられまへん。




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【Disc Review】“Gafieira São Paulo” (2010) Gafieira São Paulo

“Gafieira São Paulo” (2010) Gafieira São Paulo
Veronica Ferriani, Cae Rolfsen (Vocal)
Conrado Goys (Guitar) Marcio Roldan (Piano) Daniel Amorim (Contrabass) Thiago Rabello (Drums) 
Anderson Quevedo (Sax) Jaziel Gomes (Trombone) Paulinho de Viveiro (Trumpet) Paulinho Timor, Bruno Prado (Percussion)



 ブラジル、サンパウロのミュージシャンのプロジェクトによるジャジーなMPB作品。
 明るくてほのぼのとした、それでいてグルーヴィーでハイテンションな演奏。
 同じくサンパウロのDani Gurgel諸作に近い感じ、おそらく仲間の人たちなのでしょう。
 若手?のミュージシャンが集まって作った作品なのだと思いますが、演奏は超ハイレベル。
 ピアノトリオ+ギター+パーカッションの定番の編成に、ホーンのアンサンブルが加わる形。
 いわゆるジャジーなサウンド、クラブジャズ的なノリ、アレンジを含めてとても現代的でオシャレ。
 ブラジル混じりのイタリアンなクラブジャズが一時期流行っていたようなことを思い出しますが、そのクールな感じをウォームな感じにしたイメージ。
 もちろん、ブラジリアンのジャズならではのしなやかなグルーヴ。
 そんな音を背景に、これまたブラジルの定番、優し気な男女ボーカルが入れ代わり立ち代わり。
 楽曲はMoacir Santos, Chico Buarque, Caetano Veloso, João Donato, Joyce Morenoなどの大御所に加えて、若手の Giana Viscardi、参加メンバーのオリジナル曲も何曲か。
 どれもキャッチーで素敵なブラジリアンメロディ。
 何のことはなさそうな楽し気な演奏ですが、とてもグルーヴィーで完璧なアンサンブル。
 バラバラなようで完璧な統一感。
 この上質さはどこから来るのでしょうかね?
 とても明るくて温かな陽だまりのような音。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Wear My Love” (2009) David T. Walker

“Wear My Love” (2009) David T. Walker
David T.Walker (Guitar)
Leon Ndugu Chancler (Drums, Percussion) Clarence McDonald (Piano, Synthesizer) Byron Miller (Bass) Barbara Morrison (Voice)

Wear My Love
Universal Music LLC
2009-11-18


 David T.Walkerのクリスマスアルバム。
 一番好きなギタリスト。
 全体のサウンドは、ちょっとキッチリし過ぎてポップに過ぎるフュージョンかな?
 でもまあ、この人のギターが鳴ればどうでもいいや。
 ソフトでメロウなクリスマスサウンドに映える激渋ギター。
 これ、最高。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Study of Touch” (2017) Django Bates' Beloved

“The Study of Touch” (2017) Django Bates' Beloved
Django Bates (piano)
Petter Eldh (double bass) Peter Bruun (drums)

The Study of Touch
Django Bates
Ecm Records
2017-11-10


 イギリスのフリージャズ系ピアニストDjango Bates、ECMでのリーダー作。
 ECMでは客演で“So I Write” (1990), “Exile” (1993) Sidsel Endresen, “Eréndira”(1985), “Cantilena”(1989) First Houseなどがありますが、リーダー作としては初めてでしょう。
 ECMとDjango Bates、ソロ、変則コンボ・・・何でもありそうないかにも危険な組み合わせですが、本作はオーソドックスな編成のピアノトリオ、“Confirmation” (2012)など、超弩級に激しく過激なジャズバンドDjango Bates' Belovedでのアルバム。
 1970年代ECMならいざ知らず、その激烈なジャズが現代のECMに合うのかなあ・・・と思いながら・・・
 さすがECM、厳しいご指導があったのでしょうかね?
 ほどほど静かなDjango Bates' Beloved。
 トレードマークの変幻自在、予測不能、複雑怪奇なジャズの色合いははそのまま。
 が、激烈さは影を潜め、穏やかなサウンド。
 激しくは弾かれないピアノと、それに合わせるような暴れないバンド。
 このバンドの流儀と思しきジャズスタンダードをグチャグチャに解体するのではなく、何となくジャズっぽい感じのオリジナル曲。
 メカニカルでピキピキパキパキとしつつも、ECMのお約束、ルバートでのスローバラードなども交え、近年のECM的な淡いサウンドに近づけようとしているようにも聞こえます。
 それでもフワフワとした感じにならず、なんだかんだでDjango Batesのパキパキした感じ、ECM諸作の中ではジャズ寄りのサウンドでしょうかね。
 直近の客演“Blue Maqams” (2017) Anouar Brahemでは、もう少しフワフワしていて、ECMっぽかったようにも思うのですが・・・?
 なんだかんだで過激ではない、上品で上質なピアノトリオジャズ。
 ECM移籍第一作目は淡い色合いになる、の法則は、鬼のようなベテラン激烈ピアニストにも当てはまる・・・かな?




posted by H.A.
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