吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年11月

【Disc Review】“Ao Vivo No Auditório Ibirapuera” (2012) André Mehmari, Mário Laginha

“Ao Vivo No Auditório Ibirapuera” (2012) André Mehmari, Mário Laginha
André Mehmari, Mário Laginha (piano)

Ao Vivo No Auditório Ibirapuera
Estúdio Monteverdi [dist. Tratore]
2013-08-02


 ブラジル、ポルトガルのスーパーピアニストのDuo、ライブ録音。
 Mário LaginhaはスーパーボーカリストMario Joaoの夫君。
 彼女、あるいは共同名義の作品で、しなやかで柔らかな質感ながら強烈な疾走感のピアノを弾いている人。
 ポルトガル語圏のブラジルはもとより、アルゼンチン現代フォルクローレ系の“Andrés Beeuwsaert” (2015)でも楽曲が取り上げられていたり、どこか南米系と繋がっているのでしょう。
  André Mehmariよりも一回り以上年上のはず、柔らかな音の使い方も共通していて、南米のピアニストに影響が大きい人なのかもしれません。
 ピアノが二台の作品、音がぶつかってうるさくなるケースが無きにしも非ずなのですが、本作は違います。
 私的には“An Evening With Herbie Hancock & Chick Corea In Concert” (1978) Herbie Hancock & Chick Coreaに並ぶ心地よいコンサート。
 いずれも絶妙なバランス。
 短いイントロダクションを経て、フォルクローレ的な優しさに溢れたAndré Mehmariの名曲”Lagoa Da Conceição”からスタート。
 各人のオリジナル曲を中心に、とても優雅な音の流れ。
 クラシックの色はそこそこ、ジャズ~フォルクローレ~MPB的な色合いが強い感じ、ゆったりとしたセンチメンタルなメロディが中心。
 奇数拍子のフワフワとしたイメージが印象に残ります。
 抑え目ながら、要所では跳びはね、短く高速フレーズを散りばめているのがAndré Mehmari、オーソドックスにまとめているのがMário Laginhaなのでしょう。たぶん。
 いずれ劣らぬ名人芸。
 バトルではなく、上品なアンサンブルと、ピリッと効いたオブリガード、強烈なインプロビゼーション、ときおりの疾走と高揚、その他もろもろの交錯、あるいは融合。
 本作はもちろん、この二人が参加する作品はどれも名作です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Em Casa Com Luiz Eça” (2017) Igor Eça

“Em Casa Com Luiz Eça” (2017) Igor Eça
Igor Eça (bass, guitar, voice)
Toninho Horta (guitar, voice) Itamar Assiere (piano) Jurim Moreira, Ricardo Cota (drums)
Dori Caymmi, Edu Lobo, Zé Renato (voice) Mauro Senise (flute, sax) 

Em Casa Com Luiz Eca
Igor Eca
Imports
2017-04-21


 ブラジル、ジャズサンバトリオTamba TrioのピアニストLuiz Eçaへのトリビュートアルバム。
 リーダーは明記されていませんが、息子さんのIgor Eçaが仕切ったのでしょうかね?
 楽曲はLuiz Eçaの作品を中心とした、オーソドックスなジャズサンバ。
 バンドはピアノトリオ+ギター+木管を中心とした、これまた由緒正しいオーソドックスなブラジリアン・ジャズフュージョン編成、一部ボーカル入り。
 そのギターがToninho Horta
 ガットギターはもちろん、丸い音のエレキギターもたっぷり。
 さらにボーカルはそのToninho Hortaに加えて、Dori Caymmi, Edu Loboの豪華ゲスト陣。
 ま、想像通りの平和で楽し気な音。
 普通・・・といえばその通りなのですが、Toninho Hortaのギターがたっぷり聞ければ文句なし。
 やはりこのあたりのサウンドは、気楽に安心して聞けるなあ・・・


※別のバンドから。


posted by H.A.

【Disc Review】“Arraial” (2017) Vento em Madeira

“Arraial” (2017) Vento em Madeira
Léa Freire (flutes) Teco Cardoso (Sax, flute) Tiago Costa (piano) Fernando Demarco (bass) Edu Ribeiro (drums) Mônica Salmaso (voice)

Arraial
Vento Em Madeira
Imports
2017-03-03


 ブラジル・サンパウロのコンテンポラリージャズユニット。
 Maria Rita, Chico Pinheiro, Rosa PassosAndre Mehmari, Mônica Salmasoなどなど、サンパウロだけでなくリオ系の人々の作品を含めて、どこかで名前を見たことがあるかな?と思う、ファーストコールなブラジリアンが集まったバンド。
 イニシアティブをとっているはフルートのLéa Freireでしょうか?
 なんだか変わった雰囲気のジャズ。
 メロディが違うのか、コードが違うのか、アンサンブルが違うのか、ビートが違うのか、よくわからないのですが、上記の人たちの作品とも全く異なる不思議感。
 徹底的に凝りまくったアレンジ。
 複雑なビートに複雑なアンサンブル。
 リズム隊とフロント陣のビートを意図的に変えている場面も多いのでしょう。
 さらに、合奏を含めて、入れ代わり立ち代わり次々とフロント陣の主役が変わる構成。
 ちょっと音を出しては後ろに下がり、また前に出て・・・
 コレクティブインプロビゼーションではなく、徹底的に練り上げられた計算づくのアレンジなのでしょう。
 その音の動きが、普通のブラジル音楽とは少々異質な不思議な浮遊感を醸し出しているようにも思います。 
 ベースとなっているとてもしなやかなビート感、穏やかなメロディライン、前向きな空気感はブラジリアンゆえでしょう。
 極めて複雑ながら、あくまで軽快で爽やかなのもブラジリアンのジャズゆえ。
 最初に聞いた際は、あれれ?な印象でしたが、何度か聞いているとその奥深さのようなものが見えてくる、そんな音楽。
 複雑で難解なようで穏やか、穏やかなようでアグレッシブ。
 この界隈の方々、Andre Mehmariが筆頭なのでしょうか?
 みなさんクリエイティブです。



posted by H.A.



【Disc Review】“Colores” (2011) Carmen Paz

“Colores” (2011) Carmen Paz
Carmen Paz (Piano)
Paco Weht (Contrabass) Carlos Falanga (Drums)
Albert Cirera (Soprano, Tenor sax) Pablo Arias (Alto sax) Pablo Selnik (Flute) Roc Albero (Trumpet, Bugle) Josep Tutusaus (Trombone)
Tania Mesa, Aloma Ruiz (Violin) Dolores Nycz (Viola) Sandrine Robilliard (Cello)
Diana Palau (vocal) Marcelo Mercadante (Bandoneon) Pepe Ferrer (Glokenspield)

Colores
Animales en la Vía
2017-04-23


 チリの女性ピアニストCarmen Pazのコンテンポラリージャズ作品。
 ピアノトリオをベースとして、ホーンのアンサンブル、曲によってストリングスのアンサンブル、さらにはバンドネオンやボーカルが加わるカラフルな構成。
 とても穏やかな音の流れ。
 ジャズ特有の都会臭があまり強くなくて、アメリカやヨーロッパのジャズとは一味違う素朴で優し気な空気感。
 いわゆるフォーキーな音、南米フォルクローレな音の流れが根底にあるのでしょう。
 ピアノはオーソドックスで堅実なイメージ。
 派手な音使いはありませんが、緩やかな高揚感を作る音の流れ。
 ホーンもストリングスも近いイメージかもしれません。
 全編通じて緩やかな、でもキチンとしたジャズ。
タイトル通りに「色」のイメージを中心としたのであろう楽曲群。
 黄色、オレンジ、青、赤・・・
 いかにも女性らしいというか、南米フォルクローレ的というか。
 そんな中に一曲収められた、全編ルバートでのスローバラード” Violeta”。
妖しさ含めてECM的なのですが、優しく穏やかな、絶妙なバランス。
 終始静かなフリービートを出すドラム、漂うようなピアノ。
 キツくて派手な「紫」ではなく、あくまでパステルなトーン。
 いい意味で刺激の少ない、ナチュラルで穏やかな、希少なタイプのジャズの一作。

※別のアルバムから。


posted by H.A.


【Disc Review】“Blue Maqams” (2017) Anouar Brahem

“Blue Maqams” (2017) Anouar Brahem
Anouar Brahem (oud)
Django Bates (piano) Dave Holland (bass) Jack De Johnette (drums)

Blue Maqams
Anouar Brahem
Ecm Records
2017-10-13


 チュニジアのウード奏者Anouar Brahem、ジャズのメンバーとの共演。
 ここまでピアニストFrançois Couturierを中心としたフランス系かアラブ系の人との共演が多く、アメリカンなジャズの人だけとは“Thimar” (1998)以来でしょうか?
 過激なイギリス人ピアニストDjango BatesエレクトリックMilesのリズム隊。
 普通に考えると、ぶっ飛んだ激しい系のピアノトリオ。
 確かにジャズなビート感の演奏が多くなってはいますが、あくまでAnouar Brahemの静かで穏やかな寂寥の世界。
 淡々と刻まれるビートに、美しいピアノの響き。
 それを背景に、ゆったりと、訥々と、語るように奏でられるウード。
 ベース、ドラムは、あの時代のジャズのように強烈にフロント陣を煽ることはしません。
 強力な推進力ながら、あくまで抑制的な静かなビート、穏やかなグルーヴ。
 それでも時間が進むにつれ、徐々にテンションは上がっていきます。
 そのジャズ的な高揚感とともに静かに熱を帯びていくウード。
 寂寥感、やるせなく哀し気なムードはそのままですが、いつもとは違う感覚の音の流れ。
 Django Batesはいつもイメージとは異なる、音数、音量を抑えた音使い。
 たっぷりのエコーに、零れ落ちるような、儚げな、ECMな音。
 フレーズの端々に感じられる静かな凄み。
 長い時間ではありませんが、ピアノトリオの場面は恐ろしいほどに美しく、静かで流麗なジャズ。
 物悲しいメロディをベースにしたウードとのDuoの場面は、漂うような空白の多い時間。
 その他、ウードのソロ、ドラムとのDuoなど多彩な構成。
 北アフリカ~地中海沿岸~アラブの色合いに加えて、北海側ヨーロッパ、あるいはアメリカ大陸までが混ざり合う音。
 ゆっくりと周囲の景色が変わっていくような音の流れ、寂寥感はいつものこの人の作品通り。
 さらに上質、上品なジャズ的な洗練が加わった音。
 Anouar Brahemにとってもチェンジオブペース。
 一番ジャズなAnouar Brahemはこのアルバムでしょう。
 一聴、普通なようで、何度か聞いているとジワジワ来るなあ・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Conte De L'Incroyable Amour” (1991) Anouar Brahem

“Conte De L'Incroyable Amour” (1991) Anouar Brahem
Anouar Brahem (Oud)
Kudsi Erguner (Ney)

Conte De L'Incroyable Amour
Anouar Brahem
Ecm Records
2000-04-11


 チュニジアのウード奏者Anouar Brahem、“Barzakh” (1990)に続くECMでの第二作。
 本作もウードのソロ演奏を中心、楽曲によって木管楽器、パーカションが加わります。
 静謐で幽玄な音。
 静かでゆったりとした楽曲が多い分、前作よりも寂しさ、哀しさが強いかもしれません。
 冒頭から静かな空間に響く、エコーがたっぷりと効いた木管楽器の音。
 寂寥の世界。
 途中から入るウードの音がより哀し気に聞こえます。
 とても温かな音だと思いますが、なぜか感じる寂寥感、孤独感、やるせなさ。
 強烈な人間臭ささ。
 感情を吐露するわけでも爆発させるわけでもなく、抑制しつつも、内面の心情がにじみ出てきているような雰囲気。
 それがアラブ、あるいはチュニジアの空気感なのかどうかはわかりません。
 その複雑な感情表現を含めて、非日常的なトリップミュージック。
 この後、ECMではジャズ系の人脈とのセッション、Jan Garbarekとの共作“Madar” (1992)を経て、フランス人脈の“Khomsa” (1994)へと続いていきます。
 それら洗練されたヨーロピアンの音とフュージョンする前、生のチュニジア、Anouar Brahemの音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Barzakh” (1990) Anouar Brahem

“Barzakh” (1990) Anouar Brahem
Anouar Brahem (Oud)
Bechir Selmi (Violin) Lassad Hosni (Percussion)

 チュニジアのウード奏者Anouar BrahemのECMでの第一作
 ウードのソロ演奏を中心として、半数ほどの楽曲でバイオリン、パーカションが加わります。
 悲し気なメロディ。
 やるせなく、どこか悟ったような哀し気な音。
 インド、スペイン、その他が混ざり合うような、アラブ~中東の空気感。
 テンポを落とすとなぜか日本の子守歌、童謡、あるいは演歌にも通じる音の流れ、弦の響きは琴のようにも聞こえます。
 どこか繋がっているのでしょう。
 高速なフレーズもどこか哀しく寂し気。
 遠くから聞こえてくるようなパーカッションと、クラシックのように優雅ではなく、複雑な情念がこもったようなバイオリンの響き。
 ノスタルジックというよりも、確かに「悠久」といった言葉が似合いそうな音でしょう。
 人肌な温かさと、それでいてなぜか孤独な空気感。
 ヨーロッパとアジア、北アフリカ、また、過去と現代を繋ぐ音。
 それがなぜ、こんなに寂しく響くのでしょう・・・?




posted by H.A.

【Disc Review】“Poema da Gota Serena” (1977,1980,1982,1996,2000,2004) Ze Eduardo Nazario

“Poema da Gota Serena” (1977,1980,1982,1996,2000,2004) Ze Eduardo Nazario
Zé Eduardo Nazario (Drums, Kalimba, Khene, Tabla, Glockenspiel, Mridangam, Percussion, Flute, Whistle, Voice)
Lelo Nazario (Electric Piano, Percussion, Synth, Piano, Xylophone, Bells) Fernando Nélio Porto (Keyboards, Piano) Pereira (Guitar)
Zeca Assumpção (Contrabass, Bass) Luciano Vieira (Bass)
Cacau (Tenor Sax, Flute) Roberto Sion (Flute) Roberto Sion, Teco Cardoso (Soprano Sax) Roardo Bernardo (Tenor Sax) Rommel Fernandes (Violin)
Guilherme Franco, Dinho Gonçalves (Percussion)



 ブラジルのドラマーZe Eduardo Nazarioのコンテンポラリージャズ。
 2015年?再発アルバム。
 1970年代から2000年まで長い期間、1980年代にリリースされたアルバム”Poema Da Gota Serena” (1982)を中心として、2000年のライブなども含めたオムニバス作品
 コンテンポラリージャズというよりも、John Coltraneのフリージャズ、あるいはエレクトリックMilesの流れを汲むアバンギャルドジャズといった面持ち。
 ボサノバ以降、この期のブラジリアンジャズの事情には疎いのですが、エレクトリックMiles系の激しいジャズファンク、あるいはフリージャズ、プログレッシブロックを吸収しつつ、ブラジルエスニックな音が強く混ざった、アバンギャルドなジャズフュージョン。
 ボサノバ的な洗練とは全く別世界な音。
 1970年代のEgberto Gismonti諸作あたりに通じるのかもしれませんが、もっとドロドロとしたコアな色合いでしょう。
 1970-1980年代の演奏はまさにそんな音。
 LPレコード片面一曲の重厚で激しい組曲構成。
 ドンドコドンドコ、ビヒャー、ドカーン、ビユユーン、ケチャケチャ・・・ってな感じ。
 冒頭からド激しいドラムとテナーサックスのDuo、続くこと約8分。
 “Interstellar Space” (Feb.22.1967) John Coltraneな時間。
 ドラムがアフロっぽいというか、サンバっぽいというか。
 さらにドロムソロ~妖し気な笛の音・・・
 さらには、引っ掻き回されるエレピ系の電子楽器と、カリンバ、マリンバ系、パーカッション、Nana Vasconcelos的ボイスの饗宴、いや狂演。
 南米密林フリージャズ、あるいは南米密林フリーファンク。
 激しいビートと妖し気な音の流れに誘われる陶酔感、その世界にトランスさせてくれる音。
 その種の音楽が流行らなくなったであろう1990-2000年代になると、洗練された感じ、Weather Reportっぽくなったり、キメキメフュージョンっぽくなっていますが・・・
 とても素晴らしいオリジナル”Poema Da Gota Serena” (1982)のジャケットを含めて、包装は爽やか系ですが、中身はドロドログチャグチャ。
 John Coltraneのアバンギャルドジャズ、エレクトリックMilesWeather Report、そしてブラジル大好きな人にとってはたまらない作品でしょう。
 色合いの違う音源が集まっていることはさておき、凄いアルバムです。



posted by H.A.




【Disc Review】“Baião De Domingo” (2009) Alexandre Gismonti Trio

“Baião De Domingo” (2009) Alexandre Gismonti Trio
Alexandre Gismonti (Guitar)
Mayo Pamplona (Double Bass) Felipe Cotta (Percussion)

Baiao De Domingo
Alexandre Trio Gismonti
Microservice Brazil
2005-10-31


 Egberto Gismontiのご子息Alexandre Gismontiのおそらく初リーダー作。 
 善きにつけ悪しきにつけ御父上のイメージをもって聞いてしまうのですが、本作はまずまずオーソドックスなボサノバ混じりのブラジリアンジャズ。
 オリジナル曲、高速なフレージングのギターに父Gismontiの影は感じますが、その毒というか、妖しさというか、ちょっと普通ではない感じはなく、穏やかです。
 オーソドックスなギタートリオ編成でのオーソドックスな音。
 父Gismonti とのDuoによる“Saudações” (2006,2007)よりも優しい表情かもしれません。
 オリジナル曲にいくつかのブラジルの巨匠たちの楽曲群。
 “Saudações” (2006,2007)を聞く限り、スパニッシュ色が強くなるのかな?と勝手に想像していましたが、むしろ父上よりもブラジルブラジルしている感じでしょうかね。
 アグレッシブではなく、むしろノスタルジック。
 少々センチメンタルな音の流れ。
 ベタつかないクールな質感は現代の若者の音の特徴なのでしょう。
 さて、ここから姉Biancaさんのように、現代的でポップな感じで行くのか、父Egbertoさんのようにアグレッシブで求道的な線でいくのか、それはこれからのお楽しみ。
 まずは普通に心地よいブラジリアンギタートリオを、気楽に聞くのが吉。
 ・・・っても、父上と同様に新作がなかなか来ないなあ・・・


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Saudações” (2006,2007) Egberto Gismonti

“Saudações” (2006,2007) Egberto Gismonti
Alexandre Gismonti, Egberto Gismonti (Guitar)
Camerata Romeu, Zenaida Romeu (Conductor, Strings Orchestra)

Saudacoes
Egberto Gismonti
ECM
2009-10-20


 Egberto Gismontiの2017年時点での最新作。
 ストリングスオーケストラ作品と、ギターのDuoの二編成。
 この前の作品はオーケストラの“Meeting Point” (1995)。

 ストリングスオーケストラの作品は、クラシック音楽の色合い。
 メカニカルにアップダウンするアグレッシブでハイテンションな表情が中心ですが、優し気なコンボ作品“Sanfona” (Nov.1980,Apl.1981)、“Em Família” (1981)あたりを想い出す場面もたくさん。
 さらに、合間々にコミカルな表情も見え隠れする構成。
 前作と同様に、Egberto Gismontiミュージックの集大成、オーケストラバージョンといえるのかもしれません。
 いろんなところに過去の楽曲の断片も出てくるのも面白いところ。
 前作“Meeting Point” (Jun.1995)と比べると優し気で柔らかな空気感なのは、ホーンがいないせいかな?と思って、クレジットを見るとオーケストラは全員女性のようで、妙に納得。
 優し気なGismontiミュージック、ストリングス版。

 ギターのDuoは想像通りのGismontiミュージック、ギター編。
 どちらが父でどちらが息子なのかの判別はつきません。
 娘Bianca Gismontiと同様、天賦の才能とともに英才教育を受けてきたのでしょう。
 過去の名曲を含めて、ハイテンション系の演奏が並びます。
 が、1970年代ECM、“Sol Do Meio Dia” (Nov.1977)のRalph TownerとのDuoのように超ハイテンションな感じでは無くて、まずまず穏やかな音の流れ。
 もちろんボッサやジャズではなく、あくまでGismontiミュージック。
 本作に収められたソロでの演奏を聞く限り、息子さんの方はスパニッシュ系が得意なのでしょうかね?
 少し後の初リーダー作”Baiao de Domingo” (2009)はオーソドックスなブラジリアンジャズっぽい感じでしたが、さてこの後、父上のように求道的にいくか?、Bianca Gismontiのようにポップ系にいくか?
 本作がその予告編になるか・・・な?

 明るいようで陰影の強い、とても素敵なジャケットのポートレートは、とびきりの美しさ、含蓄の深さ。
 明るいようで陰影があって、大人なようで童心なようで、妖しいようで優しくて、あるいは優しいようで妖しくて・・・
 Egberto Gismontiミュージックそのものの構図。
 その後、十年の歳月が経ちますが、新作がそろそろ出ませんかね・・・?





 初期の作品はボサノバ、ロックの色も強いちょっと変わったMPB。
 そこから激しい系のロックな色合いが強くなって、“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)などはとんでもなく凄い作品。
 そこからECMで制作を開始して、それらはまずまず落ち着いた印象。
 っても十二分にハイテンションで激しいのですが。
 その後のECM以外の作品は電子音が強くなって・・・、また気が向けば。
 私的な好みは柔らかなジャズの色が強い“Sanfona”(Nov.1980,Apl.1981)、(1981) “Em Família” ですねえ。
 凄いのは上記二作だと思うけど。

(1969) “Egberto Gismonti” 
(1970) “Sonho '70” 
(1970) “Orfeo Novo” 
(1972) “Agua e Vinho” 
(1973) “Egberto Gismonti” 
(1974) “Academia de Danças” 
(1976) “Corações Futuristas” 
(1977) “Carmo” 
(Nov.1976) “Dança Das Cabeças” with Nana Vasconcelos
(1978) “No Caipira” 
(Nov.1977) “Sol Do Meio Dia” 
(1978) “Solo” Solo 
(Mar.1979) “Saudades” Naná Vasconcelos
(Jun.1979) ”Magico” Magico
(Nov.1979) “Folk Songs” Magico
(1980) “Circense
(Nov.1980,Apl.1981) “Sanfona
(1981) “Em Família” 
(Apl.1981) “Magico:Carta de Amor” Magico
(1982) “Fantasia”
(1982) “Sonhos de Castro Alves”
(1983) “Cidade Coração”
(1984) “Duas Vozes” with Nana Vasconcelos
(1985) “Trem Caipira” 
(1986) “Alma” Piano Solo(+α)

(1986) “Feixe De Luz"

(1988) “Dança Dos Escravos” Guitar Solo
(1989) “Kuarup”
(1989) “In Montreal” with Charlie Haden
(1990) “Infância” 

(1991) “Amazônia”

(1992) “Casa Das Andorinhas”

(Apl.1995) “ZigZag” 
(Jun.1995) “Meeting Point” with Orchestra
(2006, 2007) “Saudações” with Orchestra


posted by H.A.


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