吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年10月

【Disc Review】“Dois Em Pessoa” (2003) Renato Motha, Patricia Lobato

“Dois Em Pessoa” (2003) Renato Motha, Patricia Lobato
Renato Motha (voice, guitar) Patricia Lobato (voice, ganza)
Maruo Rodrigus (flute) Firmino Cavazza (cello) Felipe Moreira (piano) Eneias Xavier, Kiko Mitre (bass) Esdra Ferreira (drums) Serginho Silva (percussion) Ronaldo Gino (Electronic effects) and others

Dois Em Pessoa
Renato Motha
Sonhos & Sons Brasil
2004-10-12


 ブラジルの男女Duoによる、とても静かで穏やかなボサノバ~サンバ~MPB、二枚組。
 ポルトガルの詩人Fernando Pessoaの作品にメロディを付けた楽曲集。
 一枚目はオーソドックスなボサノバ。
 ピアノトリオにギターとボイスのシンプルな編成。
 ブラジリアンスタンダードの名曲群のような素晴らしいメロディ揃いのオリジナル曲。
 神様Jobimの影響が強いのだと思うだけど、もっとシンプルでナチュラルな感じ。
 ときおりポロポロと前面に出るピアノも、Jobimのそれっぽくてとても優雅です。
 Renato Mothaのボーカルスタイルは、これまた神Joao Gilbertoの影響が強い感じでしょうか?
 もちろん声質は違って艶々系だし、あそこまでウイスパーではなく、沈んだ感じでもないのですが、端々におっ?と思う場面ばしばしば。
 さらにPatricia Lobatoの超美声。
 透明度の高い可憐系、自然に鼻に抜けていく、軽くてサラサラとした質感の歌。
 後の”Shahds” (2007)、“In Mantra” (2009)などの瞑想サウンドのイメージに引きずられているわけではないのだけども、淡々と刻まれるサンバビートが陶酔感を誘う、トランス度の高い音。
 天上のサンバ・・・ってな語感がピッタリ、かな?

 もう一枚はサンバのビートを抑え、スローなテンポ中心のブラジリアンサウンド。
 空気感はそのままに、もっとフォーキーだったり、ノスタルジックだったり、一時期のPat Metheny風だったり、あるいは現代的なポップス風だったり・・・
 ミナス系の伝統的なサウンドの色合いを、現代的に整理したのでしょうかね?
 Renato Mothaのボイスを中心にとても優しい歌。
 一枚目よりもテンポを落とし、音数を減らし、もっともっと穏やかでゆるーい感じ。
 徐々に徐々に時間の速度が遅くなっていくような感覚・・・
 こちらも現実逃避にはもってこいのサウンド。
 二枚ともに、とてもナチュラルで、とてもとても優しいトリップミュージック。
 これまた最高。




posted by H.A.


【Disc Review】“Antigas Cantigas” (1999) Renato Motha, Patricia Lobato

“Antigas Cantigas” (1999) Renato Motha, Patricia Lobato
Renato Motha (voice, guitar, trompete vocalizado, etc.) Patricia Lobato (voice)
Esdra Ferreira (percussion) Marcelo Rocha (Clarinette) Zaira Fernandes Mota (voice) Roberio Molinari (piano)

Antigas Cantigas
Motha
2007-10-16


 ブラジル、ミナスの夫婦Duoによるブラジルの伝統曲集。
 後にボサノバの“Dois Em Pessoa” (2003)など、マントラに曲を付けた瞑想音楽”Shahds” (2007)、“In Mantra” (2009)など、いろんな色合いの作品を制作していますが、本作はボサノバ、サンバ以前、タイトル通りにブラジルの「古い歌」。
 とても静かで、とてもとても優雅でノスタルジックな音。
 リオデジャネイロ系ではなく、ミナス系のブラジル音楽を聞いていると、ときおりハワイっぽい楽園ムードの曲に出会う事があるのだけども、このアルバムは全編それ。
 全編スローテンポ。
 軽快なサンバや洗練されたボサノバではなく、もっとまったりとした穏やかで落ち着いたビート。
 基本的にはギターとボイス、ときおり背景がピアノに変わったり、ボイストランペット?、木管楽器、パーカッションが加わったりの、静かでゆったりした音の流れ。
 ボーカルはRenato Mothaの男声中心。
 とてつもない美声の奥様は、全曲に参加しているわけではないのですが、前面に出れば天使の声の楽園ムード。
 このDuoの作品は、どれも静かで穏やか、上品ながら、どこか遠い所に連れて行ってくれるトリップミュージックなのだけども、私的には本作が極め付け。
 誘う先は、遠い昔のブラジルの山奥、あるいはビーチ。
 南の島、やはりハワイあたり。
 楽園度最高。
 アートワークから推察すると、本作、結婚記念アルバムなのでしょうかね?
 そんなイベントにもピッタリな感じ。
 これ、最高。




posted by H.A.


【Disc Review】“Inland Sea” (2014-2016) Stephan Micus

“Inland Sea” (2014-2016) Stephan Micus
Stephan Micus (Lute, Nyckelharpa, Zither, Shakuhachi, Guitar, Guimbri, Voice)

MICUS, STEPHAN
STEPHAN MICUS
INLAND SEA
2017-06-16


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micusの2017年時点での最近作。
 もちろんいつもと同じ、無国籍、ノンジャンルな、とても静かで穏やかな音。
 “East of the Night” (1985)、“Ocean” (1986)あたりは幽玄さが前面に出ていましたが、作品が進むにつれ音の輪郭がシャープに具体的に変わってきているように感じ。
 が、本作は幽玄な方向に戻ったような印象。
 おそらく、柔らかな弦の古楽器?中心だからでしょう。
 終始漂うような音の流れ。
 Zither, Lute, Nyckelharpaなど、遠い所、遠い時空から響いてくるようなさまざまな音が奏でる悲し気なメロディ。
 間に定番の尺八、ボイスをはさみながら進む、憂いを含んだ幻想的な音。
 “East of the Night” (1985)と近いムードのとても素晴らしいジャケット。
 そちらは全二曲の大作ですが、そのムードはそのままに、楽曲をコンパクトにまとめていったような印象。
 楽曲ごとに景色、空気感が変化していきます。
 どこの、あるいはいつの”内海”の描写なのかはわかりません。
 世界のどこか、いつの時代かの情景を集めたコラージュのようなアルバム。
 現代の都会の喧騒や慌ただしさから完全に隔離された音。
 とても静かで穏やかな気持ちに・・・なるかな?





 Stephan Micus作品群。
 たくさんは聞けていませんが、私が知る限りはどれも静謐なトリップミュージック。
 新しいほど楽器、音の流れのバリエーションが増えていると思いますが、私的な好みはシンプルな“East of the Night” (1985)、“Ocean” (1986)あたり。
 忘れたころに聞きたくなる、気持ちの清涼剤になる素晴らしい音。
 無国籍なエスニック感、さまざまな要素がフュージョンする音、空間が多い静謐な音など、これぞジャズ、クラシックではないECMの典型的な音、ってな感じでしょうね。

“Archaic Concerts” (1976)
“Implosions” (1977)
“Koan” (1977)
“Behind Eleven Deserts” (1978)
“Till the End of Time” (1978)
“Wings over Water” (1981)
“Listen to the Rain” (1983)
East of the Night” (1985)
Ocean” (1986)
“Twilight Fields” (1987)
“The Music of Stones” (1989)
“Darkness and Light” (1990)
Athos” (1994)
“The Garden of Mirrors” (1997)
Desert Poems” (2001)
Towards the Wind” (2002)
“Life” (2004)
“On the Wing” (2006)
“Snow” (2008)
“Bold as Light” (2010)
“Panagia” (2013)
“Nomad Songs” (2015)
Inland Sea” (2014-2016)


posted by H.A.


【Disc Review】“Towards the Wind” (1999-2001) Stephan Micus

“Towards the Wind” (1999-2001) Stephan Micus
Stephan Micus (Duduk, Kalimba, 3 Steel-String, 14-String Guitars, Guitar, Shakuhachi, Talking Drum, Strings, Voice)

Towards the Wind
Stephan Micus
Ecm Import
2002-08-06


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micusのとても静かな無国籍ワールドミュージック。
 本作の主役は尺八とギターに加えて、DudukとKalimbaでしょうか。
 冒頭からバリトンサックスを柔らかく、丸くしたような音がとても美しいDudukで奏でられるセンチメンタルなメロディ。
 アジアなのか、中近東なのか、はたまた日本なのか・・・
 ・・・と思っていると、次はKalimbaのソロ。
 アフリカってよりも、やはりアジアな感じでしょうか。
 そんなDudukとKalimbaのソロ演奏の間にいつもの尺八とギターが絡み合う構成。
 Kalimbaのソロからスタートして、雅な雰囲気のビートとメロディを、アジア~中近東なDudukが奏でる・・・ってな感じで、なんだかよくわからない究極のフュージョンミュージック。
 珍しくアップビートのギターのストロークと尺八のインプロビゼーションが絡む勇壮系の演奏なども。
 あるいは、終盤に収めれらたギターのストロークにボーカルが載ってくるフォーキーなバラードは、あの時代のPat Methenyグループのムード、南米の山奥の空気感。
 そんなこんなで、アジアなのか、アフリカなのか、中近東なのか、南米なのか、日本の里山なのか、わからないトリップミュージック。
 初期の作品“East of the Night” (1985)などと比べると幻想的なムードは薄くなってきているのかもしれませんが、穏やかで優し気、懐かし気な空気感は同様。
 全編エスニックなのですが、なぜか西欧的に洗練された感じがするのは、ヨーロピアンの出す音ゆえでしょうか?
 その不思議なバランスがこの人の音の特色であり、魅力なのでしょう。




posted by H.A.


【Disc Review】“Desert Poems” (1997-2000) Stephan Micus

“Desert Poems” (1997-2000) Stephan Micus
Stephan Micus (Sarangi, Dilruba, Ngoni, Ney, Strings, Kalimba, Harp, Talking Drum, Steel Drums, Percussion, Voice)

Desert Poems
Stephan Micus
Ecm Import
2001-02-27


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micus、ECMでの無国籍、ノンジャンルな静かな音。
 本作のテーマは砂漠なのでしょう。
 この人の作品、アルバム毎にメインの楽器が変わってくるように思いますが、本作のメインは、ギター的な弦楽器とカリンバ、さらにボイス。
 反響音が少ない乾いた弦の音、あるいはカリンバが、砂漠~中央アジア~中近東のイメージでしょうか。
 それらの響き、ルバートではなく淡々と定常に刻まれるビートと、何語かよくわからないボイスが瞑想へ誘う音。
 中近東的な感じとオリエンタルな感じ、中盤以降は日本的な感じが交錯する物悲しいメロディは、お経のように響きます。
 非日常感は120%。
 そのボイスの入り方で好みが分かれるのかもしれませんが、強い非日常感をお求めの向きにはいいんだろうなあ・・・と思う楽曲がいくつも。
 お約束?の尺八のソロでサムライ~侘び錆び風の風情でペースを変えながら、ゆったりとしたビートと乾いた弦、木管の音が響く、幻想的な時間が続きます。
 とても素敵なジャケットは、このレーベルにしては稀有な色鮮やかで灼熱な感じですが、音の方は穏やかで温かな感じ。
 相対的に温度感が高いかもしれませんし、湿度感もそこそこ。
 少々妖し気ながら、静かさ、穏やかさは同様。
 いつも変わらないこの人の作品の空気感、静謐なトリップミュージックです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Athos” (1993-1994) Stephan Micus

“Athos” (1993-1994) Stephan Micus
Stephan Micus (Zither, Sattar Strings, Voice, Shakuhachi, Suling, Percussion, Flowerpots, Ney)


Athos
Stephan Micus
Ecm Import
2000-07-18


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micusの厳かな作品。
 1980年代、“East of the Night” (1985)、“Ocean” (1986)あたりはアジアの空気感が強めでしたが、本作はヨーロッパ。  
 タイトル”Athos”、サブタイトル“A Journy to The Holy Mountain”の通り、ギリシャの聖地アトス山への巡礼?の旅を表現したのだと思います。
 本作の主役は半数の曲にフィーチャーされる聖歌のようなコーラスでしょう。
 荘厳といった感じまではいかずとも、とても厳か。
 私が知る限りの彼の作品の中では、沈痛度が高めなようにも感じます。
 スタートはヨーロッパ~中央アジア?の古い弦楽器のZither, Sattar。
 漂うような弦の音を背景にした、少々沈痛気味のメロディと、激情を包み込むようで隠しきれないような弦の響き。
 とても悲しい音。
 ECMではお馴染みのDavid Darlingのチェロを想い起こします。
 続くはオルガンような音を背景にした厳かなコーラス。
 そんなパートを挟みながら、尺八のソロ、竹のリード楽器などが交錯します。
 締めは冒頭と同じ減の響きとコーラスのドラマチックな絡み合い。
 宗教的な意味はわかりません。
 決して暗いわけではありませんが、少々重々しい事も否めません。
 が、この音が流れている時間は完全に別世界。
 心が洗われる・・・かどうかは、人それぞれなのでしょうが、いつもながらのトリップミュージック。
 古代~中世のヨーロッパにトランスできる・・・かな?
 ・・・にしても、ジャケットのポートレートがさり気ないながら深いなあ・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Ocean” (1986) Stephan Micus

“Ocean” (1986) Stephan Micus
Stephan Micus (Dulcimer, Zither, Ney, Sho, Shakuhachi, Voice)

Ocean
Stephan Micus
Ecm Import
2000-07-18


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micus、ECMでの無国籍、ノンジャンルな静かな音。
 前作に当たるのであろう“East of the Night” (1985)はギター中心でしたが、本作はDulcimer, Zither(打弦楽器)と尺八を含めた木管が中心。
 聞き慣れない音、アジアなのか、ヨーロッパなのか、中東なのかわからない、無国籍ワールドミュージック色が強くなってきました。
 冒頭曲ではヴォイスが入って、妖しい感も増幅。
 といってもメロディの芯が明解で、フォーク~ポップミュージックっぽさもあり、その微妙、絶妙なバランス。
 二曲目以降は、前作と同様の静かでゆったりとした幽玄な音の流れ。
 恐らくヨーロッパ系の古楽器であろう弦の音と日本的な笙、尺八が絡み合う不思議な空間。
 弦楽器が琴のように聞こえ、笙がパイプオルガンのように響く、何とも摩訶不思議な感覚。

時間が止まっているような、ゆったりと動きだすような、そんな音の流れ。

 テーマはもちろん海なのでしょうが、地中海や北海よりも、瀬戸内海的でしょかね。
 日本的な夜明け、あるいは夜明け前な感じ。
 きらめく陽光はありませんが、激しい波もうねりもありません。
 とても静かで穏やかです。
 前作が山間部の夜明け前であれば、本作はまさに海辺のそれ。
 ジャケットのポートレートそのままの音。
 トリップ度、トランス度、高。
 これも名作です。




posted by H.A.


【Disc Review】“East of the Night” (1985) Stephan Micus

“East of the Night” (1985) Stephan Micus
Stephan Micus (10-String, 14-String Guitar, Shakuhachi, 4 Shakuhachi)

East Of The Night
Universal Music LLC
1988-01-11


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micus、とても静かで穏やかな無国籍ワールドミュージック。
 ECMからの配給ですが、制作はJapoレーベルのようです。
 全二曲のクレジットを見るとちょっと身構えてしまいますが、中身はとても穏やかで優しい音。
 LPレコードA面は、ギターと尺八が妖しく絡みあう、ゆったりとした幽玄な空気感。
 おそらく日本をイメージしているのでしょう、どこかしら東洋的な雰囲気。
 甘くも華やかでもなく、妖しげでもあるのですが、どことなく懐かしく、センチメンタルな音の流れ。
 LPレコードB面はギターのみでの演奏ですが、これまたとても優し気でセンチメンタル、あるいはロマンチック。
 A面比べると少々シャープな印象、メロディも明確ですが、淡くて穏やかな空気感は同じ。
 訥々としたアルペジオで爪弾かれる悲しげなような、懐かし気なようなコードとメロディ。
 全二曲、いずれも淡々とした音の流れがひたすら二十数分続きますが、退屈はありません。
 一日中このアルバムがループしていても、おそらく違和感はないでしょう。
 終始静かで優しい音だから。
 他の作品に比べると、使われる楽器の種類が少なくシンプルなこと、ボイスが入らないことも、よりナチュラルなムードにつながっているのかもしれません。
 具体に過ぎず、抽象に過ぎない、絶妙なバランスの音の流れと空気感。
 周囲の景色がゆったりと変わっていっているような、何とも微妙な音と時間の流れ。
 ジャケットのアートのそのままの、幽玄で広い空間の音。
 タイトルは「夜明け前」といったニュアンスでしょうか?
 正否はさておき、そんな夜の静寂のゆったりとした曖昧な時間の動きのような音。
 とても静かなトリップミュージック。
 名作です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Serpentina” (2017) André Mehmari, Juan Quintero, Carlos Aguirre

“Serpentina” (2017) André Mehmari, Juan Quintero, Carlos Aguirre
André Mehmari (Voice, Piano, Oberheim, Synth, Accordion, Harmonium, Koto, Viola de arco, Bandolim, Acoustic bass, Pandeiro, Pife) Juan Quintero (Voice, Guitar, Charango, Bombo, Percussion) Carlos Aguirre (Voice, Piano, Accordion, Fretless bass, Guitar, Percussion)



 ブラジルのAndré Mehmariと、アルゼンチン、現代フォルクローレのAca Seca TrioのJuan Quintero、現代フォルクローレのドン?Carlos Aguirreのトリオ作品。
 夢のなんとか・・・と書いてしまうのが憚られるような、あざといまでの組み合わせ。
 “Triz”(2012)André Mehmari, Chico Pinheiro, Sérgio Santosなんてブラジル人スーパーなトリオ作品もありましたが、それを上回るようなビッグネームなセッション。
 クラシックとジャズとMinasなAndré Mehmariと、元気系ポップスなフォルクローレなJuan Quinteroと、しっとり系フォルクローレのAndré Mehmari
 それらが交錯し混ざり合う音。
 穏やかな怒涛?のような全18曲。
 三人で概ね均等に楽曲を分け合い、他にブラジル曲、アルゼンチン曲を数曲。
 プロデューサーにAndré Mehmariのクレジット、また多くの楽曲でピアノを弾く彼の色が少々強いのかもしれません。
 が、さすがにつわものたち、いい感じでフュージョンし、André Mehmari諸作とは違う色合い。
 あの素晴らしくも強烈なピアノが続くと聞き疲れするかな・・・?と思っていたら、Carlos Aguirreの優しいピアノに変わってみたり、思い出したように水が滴るようなギターが聞こえたり、穏やかなだったり楽し気だったりのアコーディオンが聞こえたり・・・
 さらにはボーカリストが入れ替わりながらのさまざまなコーラスワーク。
 ・・・瑞々しい感性が有機的に絡み合いながら、自然に対するリスペクトとそこはかとない感傷、憂いを秘めた・・・とかなんとかの恥ずかしくなるような形容がそのまま当てはまってしまう音なのだから、困ってしまいます。
 André MehmariCarlos Aguirreがお互いに捧げ合っている曲もあり、まあ、そこまで演出しないでも・・・とも思ってしまいますが、それらがまた素晴らしい演奏なので、まあ、何と申しましょうか・・・
 全編、フワフワしていて、優しくて、センチメンタルで、でも前向きで・・・
 南米の郷愁感の極めつけ。
 ピアノを中心としたジャズ的インプロビゼーションのスペースもたっぷり。
 企画負けすると・・・?は全くの杞憂。
 大変失礼しました。
 期待以上の極上の出来。
 月並みな結論ですが、2017年の一番はこれでしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Am60 Am40” (2017) Antonio Meneses, Andre Mehmari

“Am60 Am40” (2017) Antonio Meneses, Andre Mehmari
Antonio Meneses (cello) Andre Mehmari (piano)


Antonio Meneses 2017-09-01

 気がついたら新譜が出ている、多作の2017年のAndre Mehmari。
 サンバな“Três no Samba” (2016)、ブラジリアンジャズの“Guris” (2016)に、南米フォルクローレの“Serpentina” (2017)と来て、こちらはクラシック。
 チェリストとのDuo作品。
 Antonio Menesesについての情報はもっていませんが、タイトルからして60歳のベテラン、クラシックの人なのでしょう。
 巨匠な人なのかもしれませんが、そちらに疎くて・・・
 J.S.Bachで始まり、間にJ.S.Bachを何曲か、J.S.Bachで締め。
 その間にAndre Mehmariのオリジナル曲、さらにとても悲しいJobimナンバー、長尺、激情なAstor Piazzollaナンバーに、その他南米のクラシック曲?などなど、短めの演奏を中心にたっぷり15曲。
 前面に出るのはチェロ。
 丁寧に端正に紡がれる音。
 一歩後ろに引いた感じのピアノですが、いつものタメと疾走が交錯する例の音使い。
 ゆったりとしたチェロが奏でる旋律の後ろで漂い、舞い落ち、時に転げまわるピアノ。
 もちろん全体の空気感はクラシックですが、その合間合間にMinasのような、Jazzのような、郷愁感が漂うサンパウロ~Andre Mehmariの色合い。
 お得意のワルツを含めて、フワフワと漂うような強い浮遊感。
 さらに少々沈痛なタンゴの色も加わり、優雅で優しい音、センチメンタルな音、Egberto Gismontiなハイテンションな音、その他諸々、ブラジル~南米な空気感がてんこ盛り。
 ECMでも同フォーマットの作品が多数ありますが、それらほど妖しくなく、トゲもない端正な音。
 クラシック作品としてはどうなのかはわかりませんが、ジャズの耳からすれば、とてもわかりやすくて心地よい作品でしょう。
 中盤以降、少々重めで激しい演奏もありますが、上品で優し気なムードが勝ります。
 クラシックながら南米の香りがする音の流れと浮遊感。
 南米・コンテンポラリー・クラシックとでも呼ぶのでしょうかね。
 とても美しくて、とても優雅です。




posted by H.A.

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