吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年08月

【Disc Review】“Tongos” (2010) Diego Schissi Quinteto

“Tongos” (2010) Diego Schissi Quinteto
Diego Schissi (piano)
Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar)  Juan Pablo Navarro (contrabass)

Tongos
Diego Schissi
Sunnyside
2012-06-19


 現代タンゴのDiego Schissi、セカンドアルバムになるのだと思います。
 Astor Piazzolla Quintetoと同じ楽器構成。
 ギターが全編ガットギターなところは違うのですが、音楽そのものムードもAstor Piazzollaとは全く違う印象。
 もちろんさまざまなところにAstor Piazzollaの影響を感じるし、全体のイメージはタンゴに他ならないのですが、質感は異なります。
 現代音楽~クラシックな音の動きを中心として、フォルクローレな色合いの優しい音の流れ、さらにポップスなのか、ロックなのか、そんな現代的な色合いが混ざるタンゴ。
 後のライブ作品”tipas y tipos – en vivo en café vinilo”(2012)のようにボイス、コーラスまでは入りらず、ハイテンションな色合い。
 リーダーのピアノとベースが作る背景の上に、ガットギターが柔らかな空気を作り、バンドネオンとバイオリンがフロントに立つ。
 そんな感じでしょうか。
 もちろんタンゴらしく次々と展開するアンサンブル中心。
 メロディは抽象度高めの淡い色合い。
 Astor Piazzollaのような強烈な哀感はなく、むしろクールな感じ。
 ロック、ポップスを経て、現代の空気感を吸収した若者が作る音楽の共通点なのでしょうかね。
 フォーキーなギターが入るタンゴなんてあまりイメージできなかったもんね?
 複雑な表現で激情を表現しつつも。ときどき優しく穏やか、あくまでクール。
 そんなタンゴ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ventanas”(2009)Aca Seca Trio

“Ventanas”(2009)Aca Seca Trio
Juan Quintero (guitar, voice) Mariano Cantero (drums, percussion, voice) Andres Beeuwsaert (piano, keyboards, voice)
Tatiana Parra, Liliana Herrero, Dante Yenque (voice) Juan Pablo Di Leone (flute) Fernando Silva (cello, contrabass) Javier Malosetti (bass) Victor Carrion (clarinette、soprano sax)

Ventanas
Aca Seca Trio
Imports
2011-09-20


 ネオ・フォルクローレのAca Seca Trioのデビュー第三作。
 優し気な音と男声ボイス、優雅なコーラスのバンド。
 前作“Avenido”(2006)と同様に歌とコーラスが中心ですが、管楽器、チェロ、女性を含めたゲストボーカルが加わる構成。
 さらに前作では無かったインスツルメンタル曲、あるいはインプロビゼーションのスペースも少々。
 豪華な編成、構成になっているとともに、心なしか前作よりも穏やかでしっとりとした雰囲気かもしれません。
 もちろん中核は歌とコーラス。
 アカペラでの堂々としたコーラス曲もあります。
 さらにピアノが前面に出る場面が増え、Andres Beeuwsaertの穏やかでしっとりとしたジャジーな雰囲気が強くなっているように感じます。
 同時期に“Dos ríos” (2008) Andrés Beeuwsaert、“Carlos Aguirre Grupo (Violeta)” (2008) Carlos Aguirre Grupoなど、穏やかな名作が制作されていて、そんな雰囲気が強くなっていた時期でもあるのでしょうかね?
 Juan Quintero、Andres Beeuwsaertのオリジナル曲に、アルゼンチンの古そうな曲、新しそうな曲を交えた構成。
 それらがフォルクローレなのか何なのか、よくはわかりませんが、いずれも優しい表情。
 6/8のフォルクローレビート、オーソドックスなビートはもちろん、いくらか強めのビート、現代的な変拍子的なビートの曲も含めてとても優雅な音の流れ。
 この系統のアーティスト、私の知る狭い範疇では、美しいのはCarlos Aguirre、しっとりしているのはAndres Beeuwsaertの単独リーダー作、瑞々しいのがQuiqueSinesi、ブラジルまで範囲を広げればジャズ~クラシックまで何でもありのAndre Mehmari、ハッキリしていてポップなのがこのバンド、ってな感じでしょうか?
 本作もそんな感じ、但し、少々しっとり系。
 とてもわかりやすいのだけども、非日常的。
 アルゼンチンの人にとっては日常的な音なのかもしれませんが、日本にいるとね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Avenido” (2006) Aca Seca Trio

“Avenido” (2006) Aca Seca Trio
Juan Quintero (guitar, voice) Mariano Cantero (drums, percussion, voice) Andres Beeuwsaert (piano, keyboards, voice)

アベニード
アカ・セカ・トリオ
オーマガトキ
2007-06-20


 ネオ・フォルクローレのAca Seca Trioのデビュー第二作?。
 ネオ・フォルクローレなのか、現代フォルクローレなのか、フォルクロレリックジャズなのか、何が何だかよくわかりませんが、とにもくかくにも現代アルゼンチンのアコースティックミュージック。
 あまりTVやラジオでは流れていない、ちょっと日本の日常とはズレた感じもある、とても優しい音楽。
 フワフワとした質感、とても優しい音の流れは、この系のアーティストの共通点ですが、このバンドはビート感が強めで、男声ボーカルを含めて押しが強い方、さらにポップス度強めかもしれません。
 メンバーのAndres Beeuwsaertの諸作は、ECMっぽい静謐さとジャジーさ、陰影も強いのですが、このバンドは元気で明るく素直な感じ。
 演奏は超一流ですが、あくまでボーカルと優しく優雅なコーラスがメインの音。
 多くの楽曲はこの系のアーティストの共通点のフワフワとした質感、優しく優雅なナチュラルでオーガニック(そろそろ死語?)な音。
 この系のアルゼンチン音楽、まんま森の中で録音した“acacia” (2013) Mery Murua & Horacio Burgos Trioなんてアルバムもありますが、それに近い感じで虫の声のみを背景にしたアカペラコーラス、なんてのも収録されています。 
 それら、強めのビートと優しくナチュラル&オーガニックな質感が交錯し、フュージョンする音。
 強いビートと強い声にあれれ?と思っていると、次の優し気な歌声とコーラスですっかり落ち着いてしまう・・・そんな流れのアルバムであり、そんなバンド。
 男声といってもあくまで優しげな声。
 さらに、美しくときに幻想的なコーラスのアンサンブル。
 それはこの系の元締めなのであろうCarlos Aguirreのムード。
 本作でも彼の美しい楽曲を二曲カバーしています。
 主役はそんな歌とコーラスと、現代的だけども、どこか懐かし気な感じのするメロディ。
 Andres Beeuwsaertのピアノはリーダー諸作通り優しくジャジーですが、インプロビゼーションの場面はほとんどありません。
 ギターも同様、あくまでアンサンブル中心。
 複雑な現代的なビートを作るパーカッションも柔らかに聞こえてしまうのは、南米の人の音ゆえでしょうか。
 激しいビートの演奏も、なぜか遠い所を眺めているような不思議な感覚。
 センチメンタルだけども、沈痛、ベタベタにはならないバランス。
 これもサウダージ、郷愁感ってやつでしょうかね。
 但し、かつてのサンバ、ボッサ、あるいはタンゴ、フォルクローレのそれではなく、現代の若者が感じるサウダージ、郷愁感は、こんな感じなのかもしれません。




posted by H.A.


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