吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年08月

【Disc Review】“Iô Sô” (2007) Sergio Santos

“Iô Sô” (2007) Sergio Santos
Sérgio Santos (voice, guitar)
André Mehmari (piano) Rodolfo Stroeter (bass) Tutty Moreno (drums) 
Andrea Ernest Dias (flute) Marcos Suzano (percussion) Sílvio D’Amico (guitar)
Dori Caymmi, Joyce (voice) and Strings

Io So
Sergio Santos
Biscoito Fino
2007-10-01


 ブラジル、ミナスのシンガーソングライターSergio Santosのアフリカ風味も混ざるMPB作品。
 本作も“Áfrico” (2002)、“Sergio Santos” (2004)に引き続きAndré MehmariJoyceバンドがサポート。
 但し、“Áfrico” (2002) と同様に半数ぐらいの楽曲のみ。
 “Sergio Santos” (2004)の洗練を少々“Áfrico” (2002)の方向に戻し、洗練とエスニックのちょうどいいバランス、といったところでしょうか。
 いきなりDori Caymmiのボイスが登場し、御大Joyceも参加しています。
 数曲、ストリングスオーケストラも参加し、布陣は豪華です。
 それでも本作、上記作品に比べて静かで穏やかです。
 涼し気なギターと静かなパーカッションを中心とした演奏だからでしょうかね。
 André Mehmariのピアノもしっかりフィーチャーされていて、Joyceさんの参加曲はやたら元気ですが・・・
 楽曲はいつも通りのオリジナル曲中心。
 アフリカンな空気感が漂うブラジリアンな音。
 “Áfrico” (2002)と同様、リオデジャネイロの直球なサンバ、ボッサなリズムはあまり出てきません。
 それがミナスな音の特徴のひとつと言われればそうなのかもしれません。
 もちろん、南米あるいはミナス特有の浮遊感とそこはかとない哀愁、郷愁感が全編を覆い、優し気な歌声はここまでの諸作通り。
 但し、少々しっとり系、穏やかな楽園ムード。
 このくらいクールダウンした感じの方が、優し気なボイスにフィットしているように感じるし、陰影も出て、私的には好み。
 リゾートのビーチの夕暮れ、あるいは、夏のトワイライト~少し熱が落ちた夜にピッタリした音、ですね。




posted by H.A.


【Disc Review】“Sergio Santos” (2004) Sergio Santos

“Sergio Santos” (2004) Sergio Santos
Sergio Santos (voice, guitar)
Andre Mehmari (piano) Rodlfo Stroeter (bass) Tutti Moreno (drums)
Marcos Suzano (percussion)
Teco Cardoso (flute, sax) Daniel D’Alcantara (trumpet) Nailor Azevedo (sax, clarinette) Sidnei Borgani (trombone) Leila Pinheiro, Francis Hime (voice)

Sergio Santos
Sergio Santos
Biscoito Fino Br
2004-12-01


 ブラジル、ミナス出身のシンガーソングライターSergio SantosのMPB作品。
 “Canteiro” (2010, 2011) André Mehmari に参加し、“Triz” (2012) André Mehmari, Chico Pinheiro, Sérgio Santosで同世代の面々と素晴らしい作品を作った人。
 本作も“Áfrico” (2002)と同じくAndré Mehmariに加えて、あのJoyceのバンドとの共演。
 が、アルバムのイメージは全く異なります。
 アフリカンな色合いは封印して、洗練されたMPB。
 Milton Nascimentoを現代的にもっと優しくした感じ。
 バンドはしなやかなブラジリアンビートとぶっ飛んだジャズ?ピアノ。
 メンバーから想像される通りの洗練されたジャジーなMPB。
 さらに要所で管楽器、そのお洒落なアンサンブルも加わり、とてもカラフルな構成。
 っても決して派手ではなく、ナチュラルで上品、穏やかな音は、このメンバー界隈のいつもの音、その極めて洗練されている系。
 全曲オリジナル曲、穏やかでスムースなメロディラインに、この人にしては珍しく?ほとんどがサンバ、ボッサのリズム。
 楽しげだったり、センチメンタルだったり。
 フォルクローレな色合いはあまり強くはないのですが、現代の南米音楽的な優しくて穏やかな空気感はが常に流れています。
 主役はブラジル音楽の定番、優しげなボイスと軽やかなギター。
 控え目だけど手練れたバンド。
 後ろの方でさりげなくコロコロと転がるピアノの音が心地よく響きます。
 なお、André Mehmari は名作“Lachrimae” (2003)、“Piano e Voz” (2004)の制作と近い時期。
 本作ではあまり派手に主張はしていないものの、タダモノではない感が漂うピアノ。
 この人が入ると何でも名作になってしまいますねえ。
 とてもさりげないのだけども、抜群の洗練、完成度のカッコいいMPB、ナチュラル系。




posted by H.A.


【Disc Review】“Áfrico” (2002) Sérgio Santos

“Áfrico” (2002) Sérgio Santos
Sérgio Santos (Guitar, Vocals)
André Mehmari (Piano) Rodolfo Stroeter (Bass) Tutty Moreno (drums)
Silvio Damico (Guitar) Teco Cardoso (Flute, Sax) Nailor Proveta (Clarinet, Sax)
Décio Ramos (Marimba, Percussion) Marcos Suzano, Robertinho Silva Agogo, Paulo Sérgio Santos (Percussion)
Olivia Hime, Martinália , Marco Antônio Guimarães, André Costa, Analimar (voice)
and Grupo Uakti, Joyce, Lenine, Olivia Hime

Africo (Dig)
Sergio Santos
Biscoito Fino Br
2004-07-20


 ブラジル、ミナス出身のシンガーソングライターSergio SantosのアフリカンなMPB作品。
 “Canteiro” (2010, 2011) André Mehmari に参加し、“Triz” (2012) André Mehmari, Chico Pinheiro, Sérgio Santosで素晴らしい作品を作った人。
 本作はAndré Mehmariに加えて、Joyceのバンドとの共演。
 この後、そのピアノトリオ+サックスが参加とした作品が何作か続きます。
 本作では彼らの参加は半数ほどで、タイトル通りに自身のルーツなのであろうアフリカにフォーカスしたであろう楽曲が中心。
 Richard Bona、Lionel Louekeのアフリカンフュージョン作品を想い起こすような音の流れ。
 が、アフリカンなコーラス、あるいはパーカッションを交えつつ、アフリカンエスニックな色合いを出しつつも、なんだかんだでブラジリアンな音。
 直球でサンバ、ボッサなビートはほとんどないのですが、なんだかんだで背景の音を支配しているのは、おそらく本人であろうガットギターなので、柔らかなブラジル風味になるのでしょうかね。
 メロディ、コードもどこかしらブラジル風なのでしょう。
 全編、優しく明るい表情。
 楽曲はSérgio SantosとPaulo César Pinheiroの共作を中心とした、これまたアフリカンなようなブラジリアンなような、これまた優しい表情。
 ギターとパーカッションの素朴でネイティブな感じながら、なぜか洗練された音の上に乗ってくる優し気なヴォイス。
 ハッピーな歌ばかりなのかどうかはわかりませんが、とにもかくにも明るく穏やかな音。
 さらに、さりげない演奏のようで、ギター、バンドともに凄まじい演奏力。
 それでいて、リラックスできるというか、作り物ではない自然な感じというか。
 南米系の音楽を聞いていると、たまにハワイっぽい楽園な感じな音に出会うことがあるのだけども、本作もそんな場面がしばしば。
 音にピッタリなとても素敵なジャケットもあわせて、これは名作でしょう。
 この後の作品、本作に近いアフリカンなテイストは次次作“Iô Sô” (2007)、André MehmariJoyceバンドとの洗練されたMPBを聞きたい人はコンボでの次作“Sergio Santos” (2004)、ドラマチックな大作がよければ“Litoral e interior” (2009)、静かな弾き語り的な音がよければ“Rimanceiro” (2013)をどうぞ。
 私が知る限りの作品、本作含めてすべて名作です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Agora e Sempre” (2016) Zeli Silva

“Agora e Sempre” (2016) Zeli Silva
Zeli Silva (bass)
Moises Alves (piano) Fernamdo Correa (guitar) Edu Ribeiro (drums) Vitor Alcantara (sax, flute)
Cleber Almeida (Percussion, drums) Lulinha Alencar (sanfona) 
Vinicius Gomes, Thiago do Espirito Santo (guitar) Antonio Baeker (piano) Paulo Malheiros (trombone) Lea Freire (flute) Dado Magnelli (Clarinet) Daniel D'ALcantara (Flugelhorn, trumpet) Samuel Pompeu (clarone) Fabio Peron (Bandlim)
Arismar do Espirito Santo (Piano, voice) Sergio Santos (voice, guitar) Ana Luiza, Vanessa Moreno, Livia Nestrovski, Filo Machado, Simone Guimaraes (Voice)

Agora E Sempre
Zeli Silva
Tratore
2016-09-18


 ブラジル人ベーシストのMPB作品。
 音作りはブラジリアンジャズフュージョンなのですが、全曲ボーカル入りなので、ジャジーなMPBな色合い。
 ピアノトリオ+ギターのブラジリアンフュージョンバンドのオーソックスな編成に、アコーディオンやホーン陣などが彩りを添え、男女のゲストボーカリストが代わる代わるフロントを取る形態。
 Edu Ribeiroをはじめ、どこかで名前を見たことのあるような、ないようなメンバー、いずれも手練れた演奏。
 派手な演奏やエキサイトな場面があるわけではないのですが、穏やかで上品。
 上質なブラジリアンジャズフュージョン。
 柔らかでしなやかな質感、不要い浮遊感の中、色々なタイミングで色々な音が零れ落ちてくるような流れは、ブラジリアンならではの音作り。
 その洗練された都会的な色合いの系。
 これまた洗練されたメロディの楽曲含めて、インスツルメンタルだけでも結構な名作になりそうなのですが、さらに素晴らしいボーカルが載ってきます。
 ボーカリストの有名どころはSergio Santosぐらいでしょうか?
 が、例外なく全員素晴らしいボーカリスト。
 中でもAna Luizaが出色でしょうか。
 現代最高のボーカリストだと思うGisele De Santiをもう少し軽く、スモーキーにした感じ。
 フワフワと漂うようなシルキーボイス。
 そこそこキャリアがある人のようですが、果たしてブラジルにはどれだけとんでもないボーカリストがいるのでしょうかね?
 この人の二曲だけでも買い。
 もちろんその他の曲も素晴らしい、全曲外れなしのジャジーMPBアルバム。




posted by H.A.

【Disc Review】“Alma Lirica Brasileira” (2011) Monica Salmaso

“Alma Lirica Brasileira” (2011) Monica Salmaso
Monica Salmaso (voice) 
Nelson Ayres (piano) Teco Cardoso (flute, sax)

Alma Lirica Brasileira
Monica Salmaso
BISCOITO FINO
2011-06-10


 ブラジルのボーカリストMonica Salmasoのしっとり系MPB、2011年作。
 ベース、ドラムを排して、ピアノと管楽器のみのサポートでのバラード集。
 ボッサ、サンバではなく、ミナス~フォルクローレ、さらにクラシックの空気感も強い、静かで上品な作品。
 もともと沈みがちなハスキーな低音ボイスの人、内省的というよりも、それを通り越したような神秘的な声。
 バンドは少し前の作品“Noites de Gala - Samba Na Rua” (2006)と同様、”Pau Brasil”なるバンド?ムーブメント?のメンバーの二人。
 静かで上品、Andre Mehmariを想わせるクラシカルなピアノに、彩を加える優しい管の音。
 それらを背景に慈しむようなボイスが漂います。
 穏やかで静謐、ゆったりと流れる時間。
 ヒーリングミュージック、なんて言葉はあまり聞かなくなったけれども、まさにそんな音。
 楽曲はブラジルの伝統曲に、Jobimをはじめとした大御所たちのメロディが中心。
 但し、有名どころの曲を選んででいるわけではないし、空気感も単なるカバーとは異なります。
 かといって奇をてらったことをしているわけでもなく、なんだか不思議です。
 全編を通じてどこか懐かし気な空気感が立ち込めていて、ジャケットなどの作りも含めてクラシカルなのですが、決して古い感じではなく、なぜか現代的・・・なのか、どうなのか不思議な質感。
 ネオ・クラシカル・ブラジリアン・・・なんて言葉があるとすれば、それがぴったりとくるムード。
 さらに、見えてくる景色は広大な大地か、ゆったり流れる大河か、静かで穏やかな海のようでもあるし、さり気なく流れるせせらぎのようでもあるし・・・
 サンパウロにはたくさんの若手のクリエイティブな人たちが集まっているようで、すでに大御所?のAndre Mehmariはもとより、女性ボーカリストもDani Gurgel, Tatiana Parraなどがカッコいい音をたくさん作っています。
 その二人は元気系でスキャットを中心に飛び跳ねるタイプですが、この人はあくまでもしっとり系。
 幻想的で神秘的なムードは巫女さんみたいですね。
 現代ブラジル最高の女性ボーカリストとして、Gisele De SantiRosa Passosをツートップと書いたような気がするけれども、この人も加えてスリートップとしますかね?
 ボッサではない、静謐で奥深いブラジル、代表作・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Gisele De Santi” (2011) Gisele De Santi

“Gisele De Santi” (2011) Gisele De Santi
Gisele De Santi (voice) 
Alexandre Vianna (piano) Leonardo Boff (Rhodes) Fabricio Gambogi (Guitars) Gilberto Ribeiro Jr. (Guitar, Sampler, Percussion) Ianes Coelho (guitar)
Carlos D’Elia, Ever Velaz, Clovis Boca Freire (bass) Diego Silveira (drums, Percussion) Fernando Sesse (percussion)
Huberto “Boquinha” (trombone) Rodrigo Siervo (Tenor sax) Tuzinho Trompete (trumpet) Mateus Mapa (flute, voice)
Vagner Cunha (Violin, Viola) Alexandre Diel, Milene Aliverti (cello)
Matheus Kleber (Accordion) Marcelo Delacroix (voice)

Gisele De Santi
Gisele De Santi
Tratore Music Brasil
2006-09-30


 現代サンバのGisele De Santiのデビュー作。
 サンバ寄りのMPB、かなりポップス寄り。
 次作“Vermelhos e Demais Matizes” (2013)は名作ですが、本作も同じテイスト。
 透明度の高い美しいボイスと、微妙に裏声と表声が行き来するとても素敵なボイスコントロール。
 もちろん肩に力が入っていない(ように聞こえてしまう)フワフワとした典型的なブラジリアンテイスト。
 現代ブラジル最高のボーカリスト・・・と書いてしまうと最高が何人にもなってしまって困るのだけども、何度聞いてもそう思えてしまう素晴らしい声と歌。
 私的にはRosa Passosとこの人がツートップ。
 さらに素晴らしいのが、本人が書いたオリジナル曲。
 根底にはサンバ、ブラジリアンテイストが流れているのでしょうが、フレンチポップスのようだったり、歌謡曲のようだったりする、少々センチメンタルで小粋なメロディ。
 アレンジは、穏やかながらタイトなビートに、ストリングスやら、エレキギターやら、ホーンやらが交錯する、いかにも今風のポップス然とした作り。
 もちろん、時にはいかにもサンバなパーカッションや、アコーディオン、さらにはジャジーなピアノやギターも交錯します。
 現代的なようで、ちょっとノスタルジック感もあったり。
 少々前のJ-Pop風だったり、オーガニック系のポップスだったりする場面もあるので、それに耳慣れた日本人にとってもとても心地よいのではないのかな?
 トラディショナル系のサンバとは距離のある、また、ナチュラル系とも少々違う感じのポップテイスト。
 ポップス色の強いMPBは苦手ですが、本作、この人の作品は別。
 この声とメロディには勝てません。
 次作“Vermelhos e Demais Matizes” (2013)、しっとり系に大きく振った次次作“Casa” (2016)、いずれも名作です。



【Disc Review】"Mar Aberto" (2016) Renato Braz, Roberto Leão, Mario Gil, Breno Ruiz

"Mar Aberto" (2016) Renato Braz, Roberto Leão, Mario Gil, Breno Ruiz
Renato Braz, Roberto Leão (voice) Mario Gil (guitar) Breno Ruiz (piano)
Dori Caymmi (voice, guitar)

Mar Aberto
Renato Braz
Imports
2016-11-04


 ブラジル、サンパウロのボーカリストRenato Brazのとても優雅なMPB作品。
 ピアノとギターを背景にして、ポルトガル人Roberto Leãoとデュット中心。
 とても美しく、静かで穏やかなピアノとギター。
 さらにそれに輪をかけたようにとても穏やかなボイス。
 この人たち、この音楽もサンパウロ系なのでしょうか?
 そんな明確なカテゴリがあるのかどうかさえよくはわかっていませんが、とにもかくにもサンパウロのスーパーピアニストAndre Mehmari一派のような瑞々しく優しい音。
 それらをさらに静かに穏やかに、素朴にしたような空気感。
 サンバ、ボッサではなく、ミナスあるいは南米フォルクローレに近い感じ、さらにクラシック~おそらくショーロのムードも交錯します。
 とても美しいピアノの音と、とても瑞々しいギターの響きに、フワフワとしていて、童謡のようにも教会音楽のようにも聞こえるメロディ。
 漂う哀愁感、どこか懐かし気な郷愁感。
 さらにとても優し気で儚げなボイスとコーラス。
 センチメンタリズムの極めつけの様な感じもあるし、もっと淡い感じでもあるし・・・
 ゲストでDori Caymmiが一曲に参加していますが、それから想像されるようなとても柔らかで優しい音。
 そんな楽園な音。
 ジャケットの水色は明るい色のストライプですが、音はもっと淡くてアンティークな色合い。
 現代ブラジル、サンパウロあたりの空気感であり、そんな音なのでしょう。
 たぶん。




posted by H.A.



【Disc Review】“Cancao da Impermanencia” (2016) Guinga

“Cancao da Impermanencia” (2016) Guinga
Guinga (guitar, voice)



 ブラジル人ギタリストGuingaのソロ作品。
 アウトテイク集のようです。
 とてもそうとは思えません。
 とてもとても静かで穏やかなギターとボイス。
 静謐な音は神作品“João Voz é Violão” (2000) João Gilberto、あるいは”Rosa" (2006) Rosa Passosなどが思い浮かびますが、ボサノバではないことも含めて全く違う音楽。
 あるいは、ECMにたくさんありそうなガットギターのソロ作品のムード。
 それらよりもノスタルジックでセンチメンタル、より内省的。
 そんな感じの空気感。
 全曲オリジナル曲、穏やかなメロディ。
 静々と爪弾かれるギターと、優し気でちょっと悲し気なスキャットボイス。
 それだけ。
 渋さ120%。




posted by H.A.


【Disc Review】“Porto Da Madama” (2015) Guinga

“Porto Da Madama” (2015) Guinga
Guinga (guitar, voice)
Mônica Salmaso, Maria João, Maria Pia de Vito, Esperanza Spalding (voice)

Porto Da Madama
Various Artists
Sescsp
2015-09-16


 ブラジルのギタリストGuinga、さまざまなボーカリストを迎えた作品。
 ゲストボーカルは変幻自在のミラクルボイスのポルトガル人Maria João、元気なアメリカンEsperanza Spalding、ジャジーなようなクラシカルなようなイタリアンMaria Pia de Vito、深く沈み込むようなブラジリアンMônica Salmaso、いずれ劣らぬスーパーな人たち。
 偶然なのか狙ったのか、国籍もタイプもバラバラな声。
 それを束ねる激渋なギター。
 全曲スローテンポ、オリジナル曲を中心にブラジルの名曲が加わる構成。
 ギター一本を背景にして、彼女たちのボイスと一部のGuingaさんとのデュエット。
 ボッサではなく、ビートを出すタイプの演奏でもなく、アルペジオとコードを流す演奏を中心とした漂うような音の流れ、空白の時間の多いギター。
 そんな静謐で浮遊感の強い空気の中の色とりどりのボイス。
 ブラジル的しっとり系のMônica Salmasoはイメージ通り、Maria Joãoの魔女的なボイスはちょっと凄いものがあるし、本来ジャズ系であろう方々もとてもカッコいい。
 いろんな彩の静謐で上質な世界が、最初から最後まで続きます。
 さらにそんな静かな空気の中に、クールなようで激甘、ネトネトにも聞こえるGuingaさんのスキャットボイスが乗ってくると・・・
 涼しげなような暖かなような、乾いているような湿っているような、妖しいような穏やかなような、不思議で微妙なバランス。
 どの季節にもいけそうではありますが、夏の夜にはこれしかないような音。
 あまりにもムーディーにすぎて、健全ではない大人な世界、取扱注意・・・なのかもしれませんが。




posted by H.A.

【Disc Review】“Hermanos” (2013) Aca Seca Trio & Diego Schissi

“Hermanos” (2013) Aca Seca Trio & Diego Schissi
Juan Quintero (guitar, voice) Mariano Cantero (drums, percussion, voice) Andres Beeuwsaert (piano, keyboards, voice)
Diego Schissi (piano) Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar) Juan Pablo Navarro (contrabass)

エルマノス
アカ・セカ・トリオ+ディエゴ・スキッシ・キンテート
コアポート
2014-07-23


 現代フォルクローレのAca Seca Trioと現代タンゴのDiego Schissiのバンドの共演。
 現代アルゼンチン音楽の傑作ライブ。
 いずれもその界隈の第一人者。
 予想に違わない、フォーキーな現代タンゴ、あるいはタンゴの香りがする現代フォルクローレ。
 ボーカルが前面に出ている分、後者のイメージ方が強い感じでしょうか。
 Juan Quintero、Diego Schissiの楽曲を中心として、古今の南米の楽曲を加えた構成。
 いずれも優しい表情のメロディと優しい音。
 Aca Seca Trioの音楽をもっと優しくして、ベース、バンドネオン、バイオリンが加わって華やかになった印象。
 あるいは、Aca Seca Trioがゲストコーラスで入っていたDiego Schissiのライブアルバム”tipas y tipos – en vivo en café vinilo”(2012)をもっとポップにわかりやすくした感じでしょう。
 華やか、ポップといってもこの人脈の音ですので、とても穏やかで上品。
 浮遊感の強い音は、ときに幻想的でもあります。
 タンゴな曲、ロックな曲を含めて、ときおり強めのビートを織り込みながら、基本的には優し気な表情で進む音。
 いろんな人のいろんな楽曲が混ざっているようで、また、事実上、タイプの異なるバンドが一緒に演奏しているのに、何の違和感もない統一感。
 コーラスワークはもちろん、完璧なアンサンブルと、思い出したように前面に出るバンドネオン、バイオリン、ピアノがつつましやかでとてもカッコいい。
 優雅でもあり、若々しくもあるのですが、なぜか感じるノスタルジー。
 もちろん全編を通じた穏やかな郷愁感はこの人脈の共通した色合い。
 タイトルの意味は「同胞」のようです。
 なるほど、これが現代アルゼンチンの空気感なのでしょうかね。
 とてもとても素敵な空気、音だと思います。




posted by H.A.

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