吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年08月

【Disc Review】“Nik Bärtsch's Ronin Live” (2009-11) Nik Bärtsch's Ronin

“Nik Bärtsch's Ronin Live” (2009-11) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (alto saxophone, bass clarinet, contrabass clarinet) Thomy Jordi, Björn Meyer (bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Nik Bartsch's Ronin: Live
Nik Ronin Bartsch
Ecm Records
2012-10-02


 スイスのピアニストNik Bärtschのライブアルバム。
 ECMで “Stoa” (2005), “Holon” (2007), “Llyria” (2010)といった作品を制作したバンドNik Bärtsch's Roninの集大成的な意味合い、それらのアルバムからのベストな選曲、各国でのステージからのベストな演奏のチョイスなのでしょう。
 もちろんファンクなビートと徹底したリフの繰り返しを中心とした、少々ダークなミニマル・ファンク・ジャズ。
 どこに入るか全く予想できないブレークを含めた複雑でポリリズミックなファンクビートと、これまた複雑なアンサンブル。
 音の構成はスタジオ録音諸作と同様なのですが、それらのどこか電子的で硬質なビート感と比べると、柔らかで、よりナチュラルなグルーヴが強調されているようにも感じます。
 さらにスタジオ録音作品ではあまりないジャズ的なインプロビゼーションの場面もそこそこの時間。
 ベースのソロから始まり、うねうねと動き回るそれと、静かだけども変幻自在のドラムを背景にかき回されるピアノ・・・
 前作"Llyria" (2010)はジャズ色も強い静かな感じでしたが、“Stoa” (2005), “Holon” (2007)のデジタル世代、現代のトランスミュージックっぽい雰囲気は薄くなっているようにも。
 それらここまでの三作の色合いを集約したようにも思われます。
 もちろん不思議感、徹底されたリフレインによる陶酔感と、じわじわと盛り上がっていく高揚感はそのままなのですが、微妙な空気感の違いが面白いところ。
 作品が新しくなるにつれ柔らかくなってきているようにも感じられ、この時点での最近作“Llyria” (2010)の流れがそのまままLiveで・・・といった感じでしょうか。
 このバンドの特徴であろう硬質でクールな質感がより強い方がよければ、“Stoa” (2005), “Holon” (2007)の方がよいのでしょうかね?
 そのあたりはお好み次第。
 クールな現代的トリップ&グルーヴミュージック、そのナチュラル&しなやかバージョン・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】"Llyrìa" (2010) Nik Bärtsch's Ronin

"Llyrìa" (2010) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (bass clarinet) Björn Meyer (6-string bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Llyria
Nik Bartsch's Ronin
Ecm Records
2010-10-12


 スイスのピアニストNik BärtschのECM第三作。
  “Stoa” (2005), “Holon” (2007)と同様のミニマルファンクジャズ。
 いつも通りの複雑なビート、不思議系な音階のクールで無機質な質感のリフの繰り返しを中心としたミニマル的なファンクではあるのですが、前掲の二作とは少々雰囲気が異なります。
 落ち着いているというか、沈んだ感じというか、静かというか、ゆるいというか、有機的な感じが強く出ているというか、ジャズっぽくなったというか・・・
 冒頭の“Modul 48”は妖しい感じはそのままに、浮遊感が強くてなんだか優しい感じ、ホーンのインプロビゼーションのスペースもそれなりに。
 続く“Modul 52”もインプロビゼーションらしい場面はありませんが、ホーンがリードしつつ軽快です。
 もちろん甘いメロディなどはありませんが、終始静かで穏やかな表情。
 ドカーンとはこない分、逆に複雑でヒタヒタと迫ってくるようななグルーヴを叩き出すドラムとベースの絡みがよく見えて、よりカッコよく聞こえるように思います。
 締めに向けた“Modul 51”のウネウネと動くベースラインがとてもカッコいいし、最後の”Modul 49_44”も少し沈みがちな変化自在なファンク。
 おっと、確かにこれは”Ronin”,”Zen_Funk”な看板に相応しい日本的な音階だし、そんな展開がアルバムのそこかしこに・・・
 そんなこんなでいつも通りにダークながら、浮遊感強めで、ちょっと軽め、ちょっと沈みがちの不思議なバランス。
 ハイテンション好みな人は“ “Stoa” (2005), “Holon” (2007)、より静かな感じがよければ本作・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Stoa” (2005) Nik Bärtsch's Ronin

“Stoa” (2005) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (bass clarinet, contrabass clarinet) Björn Meyer (6-string bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Stoa
Nik Bartsch
Ecm Records
2006-05-02


 スイスのピアニストNik BärtschのECM第一作。
 ミニマル・ファンク・ジャズとでも呼ばれているのでしょうか?
 Ronin(浪人)もさることながら、“Zen(禅)Funk”なる呼び方もあるようで、日本的なイメージも強く持っているのでしょう。
 果たして日本的な音かどうかはさておき、少々妖し気、不思議系で悲し気なリフと、ファンクなビートの組み合わせ。
 それを徹底的に繰り返すのがこの人の音楽。
 ファンクやエレクトリックMiles諸作と構造的には近い感じもする・・・ってなのは古い感覚で、全く違う複雑なビートとクールで無機質な空気感。
 映画"エクソシスト"を時代の流れの中で経験した世代としては、そのテーマ"Tubular Bells" (1973) Mike Oldfieldを想い起こします。
 その方向には明るくありませんが、その流れ、ミニマル、テクノの色合いを強く取り入れたジャズ、といったところなのでしょう。
 複雑なビートはなぜか硬質で電子ビートっぽくも聞こえるし、全体のムードはプログレッシブロックっぽくも聞こえるのだけども、あくまでアコースティックな静謐系ジャズ。
 そんな微妙なバランスの組み立て。
 インプロビゼーションの場面は少なく、アンサンブル中心。
 フロントのピアノやバスクラではなく、むしろウネウネと動くファンクなエレキベースと、定常なようで微妙に変化し続け、意外なところに入るアクセントが入る変幻自在のドラムの方が印象に残る不思議なバランス。
 そんな組み立てでの徹底的なリフの繰り返し。
 単調なようで少しずつ景色が変わっていくような不思議な楽器の絡み合い。
 あくまでクールな音の流れ。
 が、徹底したリフレインは、ファンクやゴスペル、エレクトリックMiles、あるいはサンバと同様に陶酔感を誘い、徐々に盛り上がっていく高揚感、疾走感。
 それがジャズとは異質な心地よさ。
 デジタル世代、クラブ世代、ゲームミュージック世代、現代のトランス&グルーヴミュージック。
 その界隈で人気なのもさもありなん。
 次作“Holon” (2007)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Corpo de Baile” (2014) Monica Salmaso

“Corpo de Baile” (2014) Monica Salmaso
Monica Salmaso (voice) 
Nelson Ayres (piano, acordeon) Paulo Aragão (guitar) Neymar Dias (viola  caipira, bass)
Teco Cardoso (sax, fluete) Nailor Proveta (clarinete) 
Quarteto de Cordas Carlos Gomes, formado por Cláudio Cruz, Adonhiran Reis (violin) Gabriel Marin (viola) Alceu Reis (cello) and others

Corpo De Baile
Monica Salmaso
Imports
2014-08-19


 ブラジル、サンパウロのボーカリストMonica SalmasoのGuinga作品集。
 現時点では最新作?、Guinga本人との共演作“Porto Da Madama” (2015) の少し前の制作でしょうか。
 ハスキーな声で沈み込むように歌うクラシカルなボイスと、妖し気なほどにムーディでセンチメンタル、さらに少々厭世的、幻想的にも聞こえるGuingaのメロディとの組み合わせ。
 サポートは少人数のコンボにストリングス。
 想像通りの静謐で優雅、少々妖し気な音。
 ここまでくるとMPBと分類してしまうのことに違和感があるかもしれないクラシカルな音の流れ。
 ストリングスがサポートの主役、フルート、クラリネットもクラシックのそれのように聞こえてきます。
 Guingaさん本人のギターとボイスだとどこか遠い所に連れていかれそうになる感じですが、このアレンジ、ボイスだとほどよく現世に踏みとどまっている感じでしょうか。
 それでも時折さり気なくつま弾かれる普通のギターの音が、なぜか別の時空から聞こえてくるようにも感じられるのは、Guingaさんのメロディゆえ、あるいはMonica Salmasoのボイスゆえでしょうか?
 メロディ、ボイス、バンド、ストリングスが一体となって醸し出す強烈な浮遊感。
 何気なく流していると、どこの国のいつの時代なのか、意識が曖昧になってくる、ほどほどの非現実感。
 現代のヒーリングミュージック、あるいは新手のトリップミュージック・・・になるかな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Guris” (2016) Jovino Santos Neto, Andre Mehmari

“Guris” (2016) Jovino Santos Neto, Andre Mehmari
Jovino Santos Neto (piano, melodica, flute) Andre Mehmari (piano, harmonium, rhodes, bandolim)
Hermeto Pascoal (teakettle, melodica)

Guris
Jovino Santos Neto
Adventure Music
2017-07-21


 ブラジル人ピアニストJovino Santos Netoと、同じくAndre MehmariのDuo。
 Hermeto Pascoalの作品集。
 ブラジル系のアーティストにとって、Jobim、Joao Gilbertは言わずもがな、Egberto GismontiHermeto Pascoalも神のような人なのでしょう。
 ピアノ二台の音を基本として、フルート、メロディアなどで彩りを加える形。
 Hermetoさん本人も三曲ほどに参加し、得意の不思議な音を出してます。
 意外なのが二人のピアノの色合いが似ていること。
 大先輩方に敬意を払ってかどうか、Andre Mehmariが抑え気味なこともあるのでしょうが、随分落ち着いた演奏。
 実はJovino Santos Netoからの影響も小さくないのでしょうかね?
 子弟か兄弟のような、ぶつかることのない、自然な二台のピアノの絡み合い。
 でも、たまに高音でぶっ飛んだ音が聞こえるのは、いつものMehmariさんなのでしょうね・・・?
 ん・・・?
 基本的にはHermeto Pascoalの色合いのブラジリアンフュージョンというか、インスツルメンタルMPBなのだけども、全編を通じたジャジーなムード、要所でのクラシック香りは、Jovino Santos Neto、Andre Mehmariそれぞれの得意な色合いが出ている演奏、場面なのでしょう。
 Hermeto Pascoalのメロディの中でそれらが交錯する音の流れ。
 端正で上品、いろんな要素が交錯するピアノミュージック。
 ボッサやサンバとは違うけども、全体を漂う郷愁感。
 もちろんブラジル風味120%。





 Andre Mehmari参加作品、私が今知る限り。
 他にもたくさんあるのでしょう。
 ジャズだろうがクラシックだろうが、何でも凄いピアノを弾いてしまう人。
 当然、駄作なし。
 徐々にジャズ色が薄くなり、クラシックっぽさ、またタッチが強くなってきているようにも聞こえます。
 私的にはオムニバス盤“Veredas”あたりまでの柔らかい音楽、ピアノが一番好み。
 もちろん近作も格調高くて素晴らしいのですが。

edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) with Celio Barros
 “Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno 
nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso
“Canto” (2002)
 “Áfrico” (2002) Sérgio Santos
Lachrimae” (2003) 
Piano e Voz” (2004) with Ná Ozzetti
 “Ia Ia” (2004) Monica Salmaso
 “Sergio Santos” (2004) Sergio Santos
Continuous Friendship” (2007) with Hamilton de Holanda
 “Io So” (2007) Sergio Santos
de arvores e Valsas” (2008)
Veredas” (2006-2008) Omnibus
Miramari” (2008) with Gabriele Mirabassi 
 “Nonada” (2008) with Rodolfo Stoeter, Tutty Moreno, Nailor Proveta, Teco Cardoso
 “Litoral e interior” (2009) Sérgio Santos
Gimontipascoal” (2009, 2010) with Hamilton de Holanda
 “Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro (一曲のみ)
Canteiro” (2010, 2011)
Afetuoso” (2011)
 “Naissance” (2012) François Morin
Triz” (2012) with Chico Pinheiro, Sérgio Santos 
“Orquestra A Base De Sopro De Curitiba e André Mehmari” (2012)
"Macaxeira Fields" (2012)  Alexandre Andrés
 "Sunni-E" (2012) Renato Motha & Patricia Lobato (一曲のみ)
Arapora” (2013) with Francois Morin
Tokyo Solo” (2013)
“Angelus” (2013)
Ao Vivo No Auditorio” (2013) with Mario Laginha
Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014)
 ”Caprichos" (2014) Hamilton de Holanda (一曲のみ)
As Estacoes Na Cantareira” (2015)
 “Partir” (2015) Fabiana Cozza (一曲のみ)
"MehmariLoureiro duo" (2016) with Antonio Loureiro
Três no Samba” (2016) with Eliane Faria, Gordinho do Surdo
Guris” (2017) with Jovino Santos Neto
Am60 Am40” (2017) with Antonio Meneses
Serpentina” (2017) with Juan Quintero, Carlos Aguirre
Dorival” (2017) with Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Nailor Proveta
"Macieiras” (2017) Alexandre Andrés


posted by H.A.




【Disc Review】“Partir” (2015) Fabiana Cozza

“Partir” (2015) Fabiana Cozza
Fabiana Cozza (voice)
Swami Jr. (7strings guitar) Jurandir Santana (guitar) Marcelo Mariano (bass) Douglas Alonso (drums) Felipe Roseno (percussion) 
André Mehmari (piano) and others

パルチール(PARTIR)
ファビアーナ・コッツァ
ALMA BRASILEIRA
2015-09-16


 ブラジルのサンビスタ(サンバを歌う人)Fabiana Cozzaの現代サンバ。
 正直、リーダーについての詳しい情報はもっておらず、André Mehmariの参加に惹かれて聞いた作品。
 当のAndré Mehmariの参加は一曲のみでアレレ・・・?
 さておき、ソウルフル&しっとり系の歌が映える、ナチュラル系、しっとり系のサンバアルバム。
 ギター、ベースとパーカッションが背景を作り、エレキギター、カバキーニョ系の弦楽器が彩りを加える構成。
 うるさくなく、あくまで上品で静かな音。
 エレキギターがちょっと変わっていて、クリーントーンながら少し前のクリエイティブ系ロックな感じで、新しいんだか、古いんだか、いい感じの不思議感のアクセントになっています。
 カバキーニョっぽくエレキギターを弾いているのかな?
 そんな音を背景にして、堂々としたしっとりボイス。
 楽曲はおそらく伝統曲が中心なのだと思いますが、現代の人も混ざっているのでしょう。
 さり気なく、Gisele_De_Santiなんて名前もあり、それはいかにもそんな感じの現代的でポップなしっとり系なので、同姓同名ではないのでしょう・・・?
 そんなちょっとノスタルジックないいムードと、現代の香りが交錯する構成。
 André Mehmariの参加曲はサンバではなく、フォーキーなバラード。
 ついついぶっ飛んだサンバを期待してしまうのですが、そちらは全編それの“Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdoで聞くとしましょう。
 いつもの零れ落ちるようなピアノ。
 控え目な演奏ですが、上品にぶっ飛んでいます。
 ともあれ、他はいい感じの現代サンバ、しっとり系。
 陽気で楽し気なようで、ほのかな哀愁が漂う、本場のサンバ、共通の空気感。
 Mehmariさんの事は忘れて、それを楽しみましょう。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014) Andre Mehmari

“Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014) Andre Mehmari
Andre Mehmari (piano)
Neymar Dias (bass) Sérgio Reze (drums)

Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul
Andre Mehmari アンドレメーマリ
Estudio Monteverdi
2014-10-05


 Andre Mehmari、ブラジルのピアニスト、作曲家Ernesto Júlio Nazarethの作品集。 
 ソロピアノ(+α)。
 Ernesto Júlio NazarethはブラジルのChopin、あるいはブラジルのScott Joplinと呼ばれている人のようです。
 もちろんクラシック中心の作品。
 クラシックについては全く疎いので、その観点での善し悪し、その他諸々は分かりません。
 が、とても優雅でジャズの耳にとっても素敵な音楽。
 微妙なタメと強烈な疾走が交錯する音の流れ。
 全くのクラシック作品ですがAndre Mehmariの音楽だなあ・・・と思います。
 もちろん彼のルーツの大きな部分がErnesto Nazarethなのでしょう。
 初期の作品からクラシックの色合いは強いのですが、近年はそれが強くなっているようにも感じます。
 バラード的なスローテンポな曲もちろん、Scott Joplinよろしくラグタイムっぽかったり、コミカルだったり、決して高尚な感じでだけでもなく、ノスタルジックな香りをふりまきつつ進む音楽。
 ・・・と思っていたら、終盤に乱入するドラム、ベース、エレピのアバンギャルド一歩手前~ジャズピアノトリオな演奏。
 とても素敵です。
 こんな音が低く流れているカフェがあれば最高です。
 さて、私もいつかクラシックを好んで聞く日が来るのでしょうか・・・?
 さて・・・?


※ライブ映像から。


posted by H.A.


【Disc Review】“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari

“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari
André Mehmari (Piano, Accordion, Bandolim, Bass, Bateria, Cello, Clarinet, Cravo, Fender Rhodes, Flute, Guitar, Mellotron, Organ, Palmas, Percussion, Synthesizer Bass, Viola, Violin, Vocals)
Teco Cardoso (Baritone Sax) Gabriele Mirabassi (Clarinet)
Mônica Salmaso, Sérgio Santos (Vocals)



 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの2008年作。
 南米系の音源は廃盤になるのが早く、その中にはとんでもない名作があるのですが、このアルバムはその最たる作品。
  現在も流通しているであろうオムニバスアルバム“Veredas” (2006-2008)にその一部、一番よさそうなところが収められてはいるのですが、アルバムとしての素晴らしさはまた別格。
 タイトルは「木?とワルツ?」。
 その通りに全編フワフワとした優雅なビートとナチュラルな音の流れ。
 サンバ、ボッサではない、フォルクローレな雰囲気。
 計算しつくされたと思われるアレンジと、オーバーダビングによる自身での演奏、効果的な彩りを加えるゲストの音。
 柔らかな管、弦のアンサンブルと、要所に配置される自身の声、最高のボーカリストMônica Salmaso, Sérgio Santosの声。
 シンプルな編成のピアノトリオ、あるいはソロピアノではなく、いろんな優し気な音が絡み合いながら流れていく時間。
 センチメンタルだけども、暗さや絶望感とはほど遠い優しいメロディ。
 全曲、名曲名演。
 全編を通じた浮遊感と穏やかな郷愁感。
 哀し気なようでとても前向きな、あるいは、前向きなようで悲し気な音の流れ。
 南米音楽共通の質感ですが、その繊細でデリケートな版。
 そんな空気の中を漂うような、零れ落ちてくるようなピアノ。
 スローでは十二分にタメを効かせ、時には突っ走り・・・
 少し前の“Lachrimae” (2003)の素晴らしさに多言は無用ですが、そちらは少々ジャズピアノトリオ寄り。
 この後の作品“Miramari” (2008)以降はクラシックの色合いがより強くなっているように感じます。
 その分水嶺的な作品かもしれません。
 ジャズとクラシックとフォルクローレの最高のバランスのフュージョンミュージック。
 もちろん一番強い成分はブラジル的南米的フォルクローレ。
 どこを取り出しても、とても優雅で美しい音。
 この人の音はいつもどこか遠くを眺めているような音。
 どこを切り出してもその真骨頂。
 これはもう最高でしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Rimanceiro” (2013) Sergio Santos

“Rimanceiro” (2013) Sergio Santos
Sergio Santos (voice, guitar)
Sílvio D’Amico (guitar)

Rimanceiro
Sergio Santos
インパートメント
2013-09-15


 ブラジル、ミナスのシンガーソングライターSergio Santosの静かなMPB作品。
 アフリカンなエスニックテイスト、ブラジリアンジャジーなテイストなど、いろいろな作品がありますが、本作はギターと声のみの静かなアルバム。
 どれもそれぞれにカッコいいのですが、やはりこのフォーマットは特別な色合い。
 “Ao Vivo 100ª Apresentação” (1983) João Bosco、”Durango Kid”(1993) Toninho Horta、“João Voz é Violão” (2000) João Gilberto、“Rosa" (2006) Rosa Passos、“Cancao da Impermanencia” (2016) Guinga、その他諸々、たくさんの名品があります。
本作はギターが二本ですが、同じく素晴らしい作品。
 João BoscoToninho Horta作品よりは静かだけども、他の上記作品よりも明度や躍動感は強め。
 ギターはアルペジオ中心の静かで柔らかな音使い。
 ボサノバのビートは数曲のみで、フォルクローレっぽさが漂うミナス的な音の流れ。
弾き語りではなく二台のギターの微妙な絡み合いが、強い浮遊感を醸し出していると思います。
 フワフワとした柔らかい音を背景にした優し気な歌。
 楽曲はいつものときおりアフリカンな空気を感じる、柔らかなブラジリアンメロディのオリジナル曲。
 João GilbertoRosa Passosのような沈んだ凄みはないけども、ナチュラルで瑞々しい優しい音。
 これだけサラリとしていて、普通に聞こえて、それでも何となく引っ掛かる奥の深そうな音もなかなかないように思います。
 André Mehmariとの共演やアフリカンな色合いもいいのだけども、この編成は特別、とてもカッコいいと思います。
 この人の作品はどれも名作。
 ・・・なのですが、廃盤になるのが早くて・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Litoral e interior” (2009) Sérgio Santos

“Litoral e interior” (2009) Sérgio Santos
Sérgio Santos (voice, guitar)
André Mehmari (piano) Rodolfo Stroeter (bass) Tutty Moreno (drums) 
Andrea Ernest Dias (flute) Marcos Suzano (percussion) Sílvio D’Amico (guitar) Jota Moraes (Vibraphone) Fabio Cury (Fagote) Éser Menezes (Oboé) Luca Raele (clarinette) and Strings, others

Litoral & Interior
Sergio Santos
Biscoito Fino Br



 ブラジル、ミナスのシンガーソングライターSergio SantosのMPB作品。
 “Áfrico” (2002)、“Iô Sô” (2007)のアフリカンなブラジリアンな感じ、“Sergio Santos” (2004)の洗練されたジャジーなMPBに加えて、クラシックな色合いを加えたアルバム。
 André MehmariJoyceバンドが引き続いてサポートするとともに、ストリングスの登場場面が増えています。
 クラシカルな色合いとドラマチックなテイストが・・・と思っていたら、André Mehmariがアレンジその他に関わっているようだし、全編に参加。
 ストリングス主体のクラシック風、サントラ風、スキャットとアコーディオン、管が絡み合う曲、サックスがフィーチャーされるジャズ曲など、インスツルメンタル中心の楽曲が何曲か。
 André Mehmariとしても名作“Canteiro” (2010, 2011)制作直前のようで、そんな色合いもちらほら。
 それらが“Sergio Santos” (2004)のような洗練されたサンバ、ミナス的なボーカル曲の間に挿入される構成・・・
 というか、実質的に半分半分だし、ボーカル曲についてもAndré Mehmari的な複雑なアレンジでさまざまな楽器が絡み合う構成。
 ピアノも後ろの方で跳びまわっています。
 冒頭はいつものギターとボイスでスタートしますが、ビートが入るとヒタヒタ迫ってくるようなブラジリアンの色合いの緊張感のあるグルーヴ。
 あの一時期のPat Metheny Groupのムード。
 それに続くのは映画のサントラ的なオーケストラ曲、さらにはジャジーなサンバ・・・
 そんな感じで色々なテイストの素晴らしい演奏が続きます。
 楽しげだったり哀しげだったり、ボッサだったりジャズだったりクラシックだったり・・・全く違うテイストのようで不思議な統一感。
 一編の映画を見ているようなストーリー性と完成度。
 締めは優雅で美しいストリングスオーケストラのワルツから、ギターとゲスト女性ボーカルとのDuoで静かな幕。
 もちろんリーダーのボーカルはいつものゴムまりのように弾む柔らかで優しい声。
 楽曲も全て彼のオリジナル、メロディ自体はいつもと同様。
 が、ここまでの延長線のようで、意欲作であり、新機軸。
 MPBとして扱ってしまうには、あまりにも多彩で複雑、高度な演奏。
 でも、聞いた感じは極めてナチュラルでポップ、明るくて楽し気。
 現代ブラジリアンサウンドの最高峰・・・は大袈裟なのかもしれませんが、そんな凄みのある作品。
 繰り返しますが、しかもポップ。
 これは凄い作品、でしょう。




posted by H.A.


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