吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年06月

【Disc Review】“Vertical's Currency” (1984) Kip Hanrahan

“Vertical's Currency” (1984) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Percussion, Producer)
Peter Scherer (Organ, Synclavier, Synthesizer) Arto Lindsay, Elysee Pyronneau (Guitar)
Jack Bruce (Bass, Piano, Vocals) Steve Swallow (Bass) 
Ignacio Berroa, Anton Fier (Drums) 
Frisner Augustin (Tambou, Tamboura) Milton Cardona (Bongos, Congas) Olufemi Claudette Mitchell (Chekere) Orlando "Puntilla" Rios (Congas, Quinto)
David Murray, Andriau Jeremie, Ned Rothenberg, John Stubblefield (Tenor Sax) Mario Rivera (Baritone Sax) Lew Soloff, Richie Vitale (Trumpet)
Nancy Weiss, Nancy Hanrahan (Voices)

Vertical's Currency
Kip Hanrahan
Enja
2008-03-18
キップ・ハンラハン

 ニューヨークアンダーグランド、アフロキューバンジャズ~ポップスのKip Hanrahan、第三作。
 本作、Smooky Robinsonを意識して云々、タイトルはお金が落ちてくるようにの意、売れ線を狙って云々・・・との情報もあります。
 確かにメロディ、アレンジがキャッチーになり、しっとりとしたソウルな曲、ポップス仕立てのソフトな曲も目立ちます。
 結果的には、しっとりとした感じがジャジーさに繋がり、ここではまだハードではないものの、後々まで続くアフロキューバンジャズの色合いが見えてくる作品のようにも思います。
 もちろん純粋なジャズはないのですが、このあたりからのジャジーな作品が私的には最も好み。
 哀愁のメロディに独特のグルーヴ、Jack Bruceのうらぶれたような男臭い囁きボイスに、David Murrayのこれまた男臭い真っ黒けのテナーサックス。
 ポップスっぽい作りの曲でも、David Murrayのサックスが一音鳴ると一気にハードコアなジャズモード・・・
 ってなところまではいきませんが、ポップス~ソウルの枠にとどまらない、ジャジーな香り、エスニックな香りがとてもいいバランス。
 が、本作でもパーカッションだけで一曲、クリエイティブ系の妙な音のギターが鳴って、なんてマニアックな色もあります。
 ちょっと聞きではポップにロマンチックにできていてとても馴染みやすい音の流れですが、妖しく危ない空気、仕掛けもたっぷり。
 いつも通りの、ジャズ、ファンク、ロック、ブルース、フォーク、アフロ、キューバン、その他諸々、てんこ盛りのフュージョンミュージック、但し、本作は少々ソフトなポップス寄り。
 うらぶれた男の哀愁、それでいてちょっとオシャレなKip Hanrahanワールドはそのまま。
 30年の歳月が経った今にしても、古くない素敵な世界。
 とてもクールです。
 なお、近年のCDに追加された?未発表曲?“Against the Light”も、静かなグルーヴと囁きボイスの組み合わせ。
 静かな哀愁が漂う素晴らしいメロディ、高揚感~陶酔感、ソフト&ハイテンションなKip Hanrahanのカッコよさが濃縮されたとても素敵な演奏です。




 posted by H.A.


【Disc Review】“Conjure: Music for the Texts of Ishmael Reed” (1983) Conjure

“Conjure: Music for the Texts of Ishmael Reed” (1983) Conjure
Kip Hanrahan (Producer, Instruments, Congas)
Kenny Kirkland, Peter Scherer, Steve Swallow (Piano) Allen Toussaint (Piano, Organ) Arto Lindsay, Elysee Pyronneau, Jean-Paul Bourelly (Guitar) Taj Mahal (Vocals, Guitar, Dobro) Andy Gonzalez (Bass) Jamaaladeen Tacuma, Sal Cuevas, Steve Swallow (Electric Bass) Billy Hart (Drums) Puntilla Orlando Rios, Olufemi Claudette Mitchell, Frisner Augustin (Percussion) Frisner Augustin, Milton Cordona, Puntilla Orlando Rios (Congas) David Murray (Vocals, Tenor Sax) Lester Bowie (Vocals, Trumpet) Olu Dara (Trumpet) Brenda Norton, Don Jay, Ejaye Tracey, Molly Farley, Robert Jason (Vocals)
Ishmael Reed (Voice)



 Kip Hanrahan、リーダー作と並行して動くプロジェクトの第一作。
 参加メンバーを眺めるだけでもなんだかすごい人たち。
 彼らが詩人Ishmael Reedの詩に楽曲を付け、入れ代わり立ち代わり演奏する構成。
 リーダー作と同様、ジャズ、ファンク、ロック、ブルース、フォーク、アフロ、キューバン、その他諸々、てんこ盛りのフュージョンミュージックですが、楽曲がKip Hanrahan作曲ではないもの中心なので、全体の印象はリーダー作とは異なります。
 ソウル、ブルース、ロックな感じの楽曲が中心。
 が、演奏は、怒涛のパーカッション、ハードコアなジャズの人たちのホーン陣とあわせて、アフロキューバンなジャズの香りも濃厚。
 メロディラインは違っても、どことなく妖し気で危ない空気感は常に流れています。
 地下に潜って、何かわからない煙が立ち込めて・・・ってな危険な香りに、哀愁漂ううらぶれたような歌声。
 パーカッションの連打の中の熱狂の中で、どこか醒めたような空気感。
 そこに炸裂するあのDavid Murrayの真っ黒けなサックス・・・
 それでいてクールで、どことなくオシャレなKip Hanrahanワールド。
 Taj Mahal、Allen Toussaintがフィーチャーされる場面も多く、それらは彼らの色合いなのですが、その他含めて、なんだかんだで全てKip Hanrahanワールド。
 さり気ないブルースまでがクール。
 にしても、Allen Toussaintがピアノ、Jamaaladeen Tacuma, Steve Swallowがベースを弾いて、David Murrayがテナーを吹き、Taj Mahalが歌うなんて、なかなかちょっと・・・
 カリスマLester Bowieもカッコいい演奏。
 いろんな要素をぶっ込んで、強烈な個性の最高の人を集めて、なおKip Hanrahanワールド。
 文字通り、最高のフュージョンミュージック、でしょう。
 なお、Ishmael Reed本人の朗読も収められていますが、私は最近までナレーターとしてMorgan Freemanを呼んだんだ、と思っていました。
 声も語り口もそっくりだもんね。
 ホントは彼などをキャスティングして、映画を作りたかったんだろうなあ。




 posted by H.A.


【Disc Review】“Desire Develops an Edge” (1983) Kip Hanrahan

“Desire Develops an Edge” (1983) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Vocals, Percussion)
Arto Lindsay, Elysee Pyronneau, Ti'Plume Ricardo Franck (Vocals, Electric Guitar) Alberto Bengolea, Jody Harris, John Scofield (Electric Guitar)
Jack Bruce (Vocals, Electric Bass) Steve Swallow (Piano, Electric Bass) Jamaaladeen Tacuma, Sergio Brandao (Electric Bass)
Anton Fier, Ignacio Berroa, Tico Harry Sylvain (Drums)
Milton Cardona (Congas, Shekere) Olufemi Claudette Mitchell (Vocals, Chekere, Percussion) Puntilla Orlando Rios (Vocals, Congas, Congas)
Teo Macero (Alto Saxophone) John Stubblefield, Ned Rothenberg, Ricky Ford (Tenor Saxophone) Hannibal Marvin Peterson (Trumpet) Jerry Gonzalez (Trumpet, Congas, Claves, Percussion) Molly Farley (Vocals)

DESIRE DEVELOPS AN EDGE
KIP HANRAHAN
ewe
2007-06-27
キップ・ハンラハン

 ニューヨークアンダーグランド、アフロキューバンなコンテンポラリーミュージックのKip Hanrahan、第二弾。
 後々まで共演する、あのCreamのJack Bruce、Steve Swallowがここから参加。
 その他何人かのメンバーが入れ替わってはいますが、前作“Coup de tête” (1979-1981)と印象は違います。
 妖しく危ないいムードながら素直な構成だった前作に比べて、本作は構成もマニアック。
 冒頭からパーカッションとドラムのみでの六分超。
 二曲目はホーンアンサンブルが鳴り響く明るいキューバンポップス。
 三曲目からやっとJack Bruceの激渋ボイスが前面に出て、二台のエレキベースとパーカッションと、さらにサックスの妖し気な絡み合い。
 途中からビートが上がって、穏やかながら何とも凄みのあるキューバングルーヴ。
 ニューヨークなのかハバナなのかはわかりませんが、都会のうらぶれた街角、やるせなく危ない空気感がたっぷり。
 そんなムードの合間に、カリブの陽光が見えるようなエスニックで明るい演奏、あるいは、もろカリビアンエスニックな演奏、さらには穏やかなボッサ、などが交錯します。
 オーソドックスなバンド編成で素直に演奏する曲ばかりではなく、パーカッション、ドラムの少ない音数を背景として、囁くボイス、あるいはカリビアンエスニックな歌声を乗せ、ベース、ギター、サックスなどで彩りを付けていくような音作り。
 それがちょっと普通ではない感じ、さらに緊張感を醸し出しているようにも思います。
 先の“Coup de tête” (1979-1981)風はもちろん、後のソフトな“Vertical's Currency” (1984)風あり、激しい“Exotica” (1993)風あり、もろキューバンエスニックな“This Night Becomes a Rumba” (1998)風ありで、後の作品の色合いのショーケース。
 この時点ですでに、彼の頭の中では先々に発表するそんな音が鳴っていて、どう整理するか試行錯誤していたのでしょうか。
 カリビアンな陽光と都会のうらぶれた街角の陰影が交錯する音。
 二作目にして応用編、というか、これがKip Hanrahanの世界、そのショーケースといえば、その通り。




 posted by H.A.

【Disc Review】“Coup De Tête” (1979-1981) Kip Hanrahan

“Coup De Tête” (1979-1981) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Percussion, Synthesizer, Vocals)
Carla Bley (Piano, Vocals) Orlando Di Girolamo (Accordion)
Arto Lindsay, Bern Nix, Fred Frith, George Naha (Electric Guitar)
Bill Laswell, Jamaaladeen Tacuma (Electric Bass) Cecil McBee (Bass)
Anton Fier, Ignacio Berroa, Victor Lewis (Drums)
Nicky Marrero (Bongos) Angel Perez, Carlos Mestre, Gene Golden, Jerry Gonzalez Daniel Ponce (Congas, Percussion) Jerry Gonzalez, Daniel Ponce, Nicky Marrero (Percussion) Daniel Ponce, Gene Golden, Jerry Gonzalez (Shekere) Dom Um Romao (Surdo, Agogô)
Chico Freeman (Clarinet, Tenor Sax) Carlos Ward, George Cartwright (Alto Sax) David Liebman (Soprano Sax) Byard Lancaster, John Stubblefield, Teo Macero (Tenor Sax) Michael Mantler (Trumpet) George Cartwright, Byard Lancaster, George Cartwright (Flutes) John Clark (French Horn) Billy Bang (Violin) Lisa Herman (Vocals)

Coup De Tete
Kip Hanrahan
Yellowbird
2010-07-13
キップ・ハンラハン

 ニューヨークアンダーグランド、アフロキューバンなコンテンポラリーミュージックのKip Hanrahan、第一作。
 ジャズ、ファンク、ロック、ブルース、フォーク、アフロ、キューバン、その他諸々、てんこ盛りのフュージョンミュージック。
 人種のるつぼ云々の土地柄通り、全部突っ込んで混ぜ合わせてみました、それも薄暗い地下室に危ない人たちが集まって・・・そんな感じの音。
 発表と同時に聞いたわけではなく、“A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996)のDon Pullenの凄まじい演奏、あるいは後の作品に参加するDavid Murrayからさかのぼって聞いた人。
 もちろんジャズではないのだけども、ジャズ系、ファンク系の恐ろし気なメンバーの名前を眺めるだけどもその凄みが伝わってきます。
 冒頭から乾いたパーカッションの響き、ドスの効いたファンクなベースラインを背景にした、囁くように緩く歌う妖しい男声、女声。
 後にあのCreamのJack Bruce、ジャズボーカリストCarmen Lundyを求めた理由がよくわかります。
 さらに、時にクールに、時にクダを巻くようななサックスに、遠くから響いてくるようなフルート、狂気の漂うギター、バイオリン・・・
 ピアノが入るのはCarla Bleyが参加した一曲のみで、基本的にはピアノレスな音、ギターの多用が、初期の作品のクールな色合い、あるいはロック色、ポップ色の強さにも繋がっているように思います。
 それでもサックスが鳴り出すと一気にハードコアなジャズのムード・・・ 
 もちろん楽曲は、うらぶれた街角のやるせなさが漂う、Kip Hanrahanのメロディ。
 ほどほどポップでほどほどソウル、猥雑な感じながらなぜかオシャレでクールな空気感。
 硬派と軟派が交錯する感じは、アメリカ版あるいはアフロキューバンなThe Style Councilってな感じがしないでもありません。
 が、ポップスと片づけてしまうには、あまりにも凝ったアレンジに、充実したインプロビゼーションとインタープレーに、一部のアバンギャルドで激しい音。
 ここからメンバーが入れ替わりながら完成度を増していきますが、この時点でその世界観は出来上がっています。
 それは約30年後の最近作、“At Home in Anger” (2007-2011)まで変わっていないように思います。
 もし、トゲやザラつきを削ってポップさを前面に出していけば、The Style CouncilやSadeのような存在になったのかもしれません。
 後の“Vertical's Currency” (1984)でそれにチャレンジしたのかもしれません。
 あるいは、プロデューサーとして素晴らしい作品を制作したAstor Piazzollaと長く活動を共にできたならば、または、誰かしら彼に続く才能に出会っていたら、新世代のTeo Macero、あるいはアメリカのManfred Eicherになっていたかもしれません。
 が、なんだかんだでさらにマニアックに、アンダーグラウンドに潜っていくのも、この人のカッコよさ。
 まずはスーパープロデューサーのスーパーアーティストとしてのカッコいいデビュー作。
 とても妖しくて危なくて、クールです。




 posted by H.A.

【Disc Review】“Statements” (2003, 2004) Batagraf

“Statements” (2003, 2004) Batagraf
Jon Balke (Keyboards, Percussion, Vocals)
Frode Nymo (Alto Saxophone) Kenneth Ekornes, Harald Skullerud, Helge Andreas Norbakken, Ingar Zach (Percussion) Arve Henriksen (Trumpet) Sidsel Endresen, Miki N'Doye (Recitation) Solveig Slettahjell, Jocelyn Sete Camara Silva, Jennifer Mykja Balke (Voice)



 ノルウェーのピアニストJon BalkeのバンドBatagrafの何とも不思議なアルバム。
 “Clouds In My Head” (1975) Arild AndersenなどからECMに参画している大ベテラン。
 ヨーロピアンらしいクラシックの香りと美しい音、さらに強烈な疾走感がカッコいいピアニスト。
 近年では同じく北欧の若手アーティストのサポート、“The Door” (2007)、“Midwest” (2014) Mathias Eickなどでもよく見かけます。
 バンドでの表現が好きなようで、以下のようないろんなバンドに参加、あるいは自ら作っています。
  Masqualero、“Bande a Part” (1986)  etc.
  Oslo 13、“Nonsentration” (1990)  etc.
  Magnetic North Orchestra、“Further” (1993), “Kyanos” (2001)  etc.  
 それらは十分にジャズな音だったのですが、本作はジャズからはみ出した不思議なバンド。
 詞の朗読なども絡めつつ、ナイジェリア?の「バタ」なる楽器?音楽?を中心とした音なのだと思います。
 メンバーはノルウェーの人が中心のようなのですが、音は完全に無国籍、ノンジャンル。
 アフリカ的なパーカションとフワフワしたエレクトリックピアノ、電子音、声、そしてジャジーながら狂気を秘めたサックスが交錯する不思議な世界。
 ムードとしてはフューチャージャズな感じもあるし、アコースティックなパーカッションがプリミティブな民族音楽的でもあるし。
 ジャズとか何とかのジャンル云々はもとより、一体ここはどこなのか、ヨーロッパなのかアフリカなのか、今なのか過去なのか未来なのか、さっぱりわからない空間。
 さらに、声とか口笛とかが醸し出す、現実なのか非現実なのかすら曖昧なムード。
 でも、あくまで静かで穏やか。
 そんな背景の中に、唐突にコラージュされる乾いた女性のボイス、泳ぐような乾いたサックスの響きがとてもクール。
 ときおり現れる電子音、穏やかで淡い感じは環境音楽的な感じなのだと思いますが、無機質な感じではなくて、あくまでアコースティックな響きが中心。
 ちょっと聞きではなんだこりゃ?
 が、マニアックなようで、エスニックなようで、慣れてしまえばわかりやすくて心地いい音。
 意味不明でも難解でもない、全編通じてとてもカッコいい静かなグルーヴ。
 サックスの動きがジャズっぽいのも、とても心地いいバランス。
 ボイスには、Nils Petter Molværの作品に参加するSidsel Endresenがクレジットされているし、音量を上げ、ハードさ、深刻さを加えると、彼の音にも近い場面が多いのは、ノルウェーの空気感ゆえなのでしょうか?
 全編を漂う哀感、さらにちょっとしたところにオシャレな感じもあり、全く違う音なのですが、Kip Hanrahan を想起します、ってなのは飛躍しすぎなのでしょうかね?
 そちらはニューヨーク&キューバですが、こちらは北欧&アフリカ。 
 さながら静かでエスニックな環境音楽、現実と非現実が交錯するトリップミュージック。
 残念なのは、あの素晴らしいアコースティックピアノが聞けないこと。
 が、さすがに何をやってもタダモノではないクリエイティブなオヤジ。
 とてもカッコいい音、名作だと思います。



 
 posted by H.A.

【Disc Review】“Up and Coming” (2016) John Abercrombie

“Up and Coming” (2016) John Abercrombie
John Abercrombie (guitar)
Marc Copland (piano) Drew Gress (bass) Joey Baron (drums)

Up and Coming
John Abercrombie
Ecm Records
2017-01-13


 John Abercrombie、オーソドックスな編成でのギターカルテット作品。
 “39 Steps” (2013)と同じメンバー、同じくオーソドックスな色合いの強いジャズ作品ではありますが、さらに幽玄な感じが増した感じでしょう。
 シャキッとしたジャズバンドに、どこか遠い所から聞こえてくるような、空間に漂い、気がつけば消え入りそうになるようなギター。
 1970年代からのグニョグニョウネウネした過激な演奏は“The Third Quartet”(Jun.2006)あたりが最後でしょうか?
 以降、フリーな演奏は多々あれど、枯れた味わいも含めて穏やかなムード。
 過激なMark Feldmanとの最後の共演作“Wait Till You See Her”(2008)も過激さが薄らぎ、淡くて穏やかな音。
 さらに近作はオーソドックスな雰囲気のジャズ中心、本作もそんな一作。
 ソリッドギター?の固めで細めの音、エフェクティングもほとんど使っていない感じでしょう。
 1970-80年代もジャズスタンダードを演奏することはありましたが、音作り、フレージング含めて殺気立った雰囲気がありましたが、この期はとても静かで穏やか。
 Marc Coplandと楽曲を分け合い、淡々としたジャズが続きます。
 他の人とちょっと違うのが、ギターが前面に出る場面の沈んだ空気感。
 奇をてらったところがあるわけではないのに、なんだか不思議です。
 ギターが引いてピアノトリオになると、急に空気が軽く明るくなるのも不思議なバランス。
 ピリピリしていたかつての殺気が別の何かに変わったものの、あの緊張感は残っている、ってな感じでしょうか。
 冒頭のルバートでのスローバラードを含めて、“39 Steps” (2013)に比べると、漂うような音の流れの場面が多く、現在のとても静かなJohn Abercrombieの音が映える演奏が続きます。
 終盤に納められたあの“Nardis”も、幽玄で枯れたムードの不思議な味わい。
 ここでのギターも沈んでいます。
 かつての音とは全く印象は異なりますが、やはり御歳おいくつになっても不思議感たっぷり、普通には収まらない御大の特別な音、でしょう。





(Mar, 1974) “Timeless”  
(Mar, 1975) “Gateway” 
(Mar, 1975) “Cloud Dance” Collin Walcott 
(Jun, 1975) “The Pilgrim and the Stars” Enrico Rava 
(Feb, 1976) “Untitled” “Pictures” Jack DeJohnette 
(May, 1976) “Sargasso Sea” with Ralph Towner 
(Aug, 1976) ”The Plot” Enrico Rava 
(Feb, 1977) “Grazing Dreams” Collin Walcott 
(May, 1977) “New Rags” Jack DeJohnette 
(July, 1977) “Gateway 2” 
(July, 1977) “Deer Wan”  
(Nov, 1977) “Characters”  
(Jun, 1978) “New Directions” Jack DeJohnette 
(Dec, 1978) “Arcade” 
(Jun, 1979) “New Directions in Europe” Jack DeJohnette 
(Nov, 1979) “John Abercrombie Quartet” 
(Nov, 1980) “M” 
(Dec, 1980) “Eventyr” Jan Garbarek 
(1981)    “Five Years Later” with Ralph Towner
     :
(1984)    “Night” 
(1985)    “Current Events” 
(1987)    “Getting There” 
(1988)    “John Abercrombie / Marc Johnson / Peter Erskine
(1989)    “Animato” 
     :
(1990)   “Music For Large & Small Ensembles” Kenny Wheeler" 
(Feb.1990) “The Widow In The Window” Kenny Wheeler
     :
(Jun.1992) “While We're Young” 
(Nov.1992) “November” 
(Apl.1993) “Farewell” 
(Jun.1993) “Afro Blue” The Lonnie Smith Trio 
(Jul.1993)  “Speak of the Devil” 
(Mar.1994) ”Purple Haze”、”Foxy Lady” The Lonnie Smith Trio
(Dec.1994) “Homecoming” Gateway 
(Dec.1995) “In The Moment” Gateway 
(1996)   “Tactics” 
(Sep.1998) “Open Land” 
(May.1998) “Voice in the Night” Charles Lloyd 
(Oct.1998) “The Hudson Project” John Abercrombie/ Peter Erskine/ Bob Mintzer/ John Patitucci ‎
(Dec.1999) “The Water is Wide”, “Hyperion With Higgins” Charles Lloyd 
(Dec.2000) “Cat 'N' Mouse” 
(2002)   “Lift Every Voice” Charles Lloyd 
(2003)   “Class Trip” 
(Mar.2006) “Structures” 
(Jun.2006) “The Third Quartet” 
(Sep.2007) “Brewster's Rooster” John Surman 
(2008)   “Wait Till You See Her” 
(2011)   “Within a Song” 
(2013)   “39 Steps
(2016)   “Up and Coming”  


 posted by H.A.

【Disc Review】“My Foolish Heart” (2016) Ralph Towner

“My Foolish Heart” (2016) Ralph Towner
Ralph Towner (guitar)

My Foolish Heart
Ralph Towner
Ecm Records
2017-02-03


 Ralph Towner、久々のソロギターアルバム。
 もはや説明無用。
 部屋の湿度が下がる音。
 この季節の必須アイテム。


 ってな感じで十分なのかもしれませんが・・・
 近年では”Chiaroscuro”(Oct.2008) with Paolo Fresu、”Travel Guide” (2013) with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryanと共演作が続いていて、ソロでは”Time Line” (Sep.2005)以来、十年振りでしょうか?
 時間は経ちましたが、それらと同じ質感の穏やかで柔らかいガットギターの音の流れ。
 “Solstice” (Dec.1974)、”Batik” (1978)あたりから聞いた第一印象は、キッつい音の人。
 1970年代ECM独特の音質、ハイテンションな空気感も手伝って、氷のような低い温度感、触ると切れてしましそうな人、ってな感じ。
 後にその前の”Diary” (Apl.1973) などを聞くと、元々はそんな音の人ではなくて、キッつい音は1970年代のECMマジックだったのね・・・と思い直した次第。
 先入観を捨てて聞くと、同時期の人気作”Sargasso Sea” (May.1976) with John Abercrombieなども穏やかに聞こえてくるのが不思議なものです。
 1980年代以降の諸作は柔らかい音の流れ。
 瑞々しさはそのままに、丸く穏やかになった音。
 特に近作は遠い所を眺めるような、あるいは、静かに動く走馬灯のような音の流れ。
 タイトル曲からイメージされるようにBill Evansがアイドルのようで、1970年代の作品から所縁の楽曲をコンスタントに取り上げています。
 本作もそんな上品で理知的、さらに穏やかで優しい音。
 この人のギターが流れると、部屋の湿度が下がって少し涼しくなるように感じます。
 内省的、耽美的なようで、その実、キリッとしていて湿っぽくなく、スッキリした音。
 極めて明瞭な音なのに、現実とはちょっと乖離しているような、どこか懐かしい遠い所から流れてきているような音。
 特に近年のソロギター作”Ana” (Mar.1996)、”Anthem”(Feb.2000)、”Time Line” (Sep.2005)その傾向が顕著でしょう。
 本作もそんな音、タイトル曲を除いて全てオリジナル曲、淡くて懐かし気なメロディ。
 タイトル曲もさることながら、とてもさりげないのだけども、とてもとてもセンチメンタルなオリジナル曲”I'll Sing to You”なんて最高。
 全編を支配する穏やかなセンチメンタリズム。
 漂うような音の流れと、アップテンポが交錯しつつ、前者が相対的に多い分、近作の中では本作が一番淡くて穏やかな色合いかもしれません。
 ま、どれも金太郎飴のような作品群なのですが。
 ジャケットのポートレートは明るい印象のカラー写真。
 闇と光が交錯するようなミッドナイトブルーと、明るく透明なエメラルドグリーンが対象的な水面。
 そんな音でしょう。
 上部が1970年代の諸作、下部が1980年代以降~現代、ってなのは考えすぎでしょうね、きっと。





(1972)     ”Trios / Solos” Ralph Towner / Glen Moore 
(Apl.1973)    ”Diary” 
(Jul.1974)    ”Matchbook” with Gary Burton 
(Dec.1974)   ”Solstice” 
(May.1976)   ”Sargasso Sea” with John Abercrombie 
(Dec.1976)   ”Dis” Jan Garbarek 
(Feb.1977)   ”Solstice/Sound and Shadows” 
(Jul.1977)    “Deer Wan” Kenny Wheeler 
(Nov.1977)    ”Sol Do Meio Dia” Egberto Gismonti 
(Jan.1978)    ”Batik” 
(Jul.1979)    “Old Friends, New Friends” 
(Oct.1979)    ”Solo Concert” 
(1980)     “Départ”  Azimuth 
(Mar.1981)    ”Five Years Later” with John Abercrombie 
(Dec.1982)    ”Blue Sun” 
(May.1985)    ”Slide Show” with Gary Burton 
(Jan-Dec.1988) ”City of Eyes” 
(1991,1992)   ”Open Letter” 
(1988,1991,1992) “If You Look Far Enough”  Arild Andersen
(May.1993)   ”Oracle” with Gary Peacock 
(May.1995)   ”Lost and Found” 
(Oct.Nov.1995) "Fabula" Maria João 
(Dec.1995)   ”A Closer View” with Gary Peacock 
(Mar.1996)   ”Ana” 
(1997)     “If Summer Had Its Ghosts” with Bill Bruford & Eddie Gomez
(Feb.2000)   ”Anthem” 
(Sep.2005)   ”Time Line” 
(2008)     “From a Dream” with Slava Grigoryan and Wolfgang Muthspiel 
(Oct.2008)   ”Chiaroscuro” with Paolo Fresu 
(2013)     ”Travel Guide” with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan
(2016)     “My Foolish Heart” 


posted by H.A.

【Disc Review】“Dawn Dance” (1981) Steve Eliovson, Collin Walcott

“Dawn Dance” (1981) Steve Eliovson, Collin Walcott
Steve Eliovson (Acoustic Guitar)
Collin Walcott (Percussion)

Dawn Dance
Universal Music International Ltda.
2008-11-18


 南アフリカ?のギタリストSteve Eliovson、唯一のECM作品、Collin WalcottとのDuo。
 名作。
 アコースティックギターをオーバーダビングし、パーカッションがサポートする構成。
 ベースもドラムもいませんが、ほどよい音の厚みとビート感。
 どことなく爽やかで、バッキングだけを聞いているとフォーキーでPat Methenyっぽくもあるし、シングルトーンでのソロはスパニッシュ風だったり、さまざまな表情が入り混じります。
 ジャンルにはこだわらない、誰の色合いでもない、穏やかな流れと強烈な疾走が交錯する素晴らしいギター。
 アコースティックギター一本を中心とした音作りはRalph Towner的ではあるのですが、この期の彼の諸作よりも柔らかな感じ、あるいはBill ConorsのECM諸作よりも明るく丸い感じでしょうか。
 基本的には明るく爽やかな空気感。
 エコーたっぷりな瑞々しく美しい音を含めて、いかにもECMっぽい空気感も漂っています。
 Collin Walcottのサポートは穏やかな色付け。
 強いエスニックテイストはありませんが、アコースティックギター一色の音の流れの中で、いい感じのアクセント。
 全曲オリジナル曲、どの曲も淡い色の穏やかなメロディ、少々の寂寥感。
 静かなだけでなく、ヒタヒタと迫ってくる、あるいはジワジワと盛り上がってくる流れの構成が印象的で、ほどよい興奮と陶酔感もあります。 
 抜群の演奏力、独特の空気感を含めて、Eicherさんも期待していたんじゃないかな?
 が、一作のみ。
 何が起こったのか、起こらなかったのかはわかりません。
 そんな謎な感じはしない、わかりやすい音。
 こちらは少し謎めいた感じの素晴らしいジャケットのポートレートを眺めつつ、穏やかで爽やかなギターの音を楽しむのが吉。




posted by H.A.

【Disc Review】“Swimming with a Hole in My Body” (1979) Bill Connors

“Swimming with a Hole in My Body” (1979) Bill Connors
Bill Connors (guitar)

水と感傷
ビル・コナーズ
ユニバーサル ミュージック
2016-10-26


 Bill Connors、“Theme to the Gaurdian” (1974)に続くアコースティックギターソロ作品。
 その間にコンボでの名作 “Of Mist and Melting” (1977)があります。
 基本的には先のソロ作品“Theme to the Gaurdian” (1974)と同じ、淡くて穏やかな空気感。
 ヒタヒタと迫ってくるようなビート感は三作共通ですが、前作“Of Mist and Melting” (1977)のように激しくも冷たくもありません。
 少し悲し気、寂し気な楽曲と、フォーキーな香りとスパニッシュな香りが交錯するメロディアスなシングルトーン。
 ハードフュージョンを演奏していたとはとても思えないような静謐さ。
 “Theme to the Gaurdian” (1974)と比べると、いくぶんテンポアップして、バッキングも厚めの演奏が増えているような感もありますが、1970年代Ralph Towner諸作のようにグサグサくる感じではなく、あくまで線が細めで繊細な音。
 少し温度感低めの音作り、清涼感の塊のようなアコースティックギターの音と柔らかなメロディは“Theme to the Gaurdian”と同様。
 何となく涼し気でこれからの季節にピッタリの音。
 おっと、タイトルもジャケットもそんな感じでしたね。
 趣のあるタイトルのように感傷的な音ですが、ジャケットのポートレートのようにどんよりした感じではなく、とても静かながら、爽やかで湿度感は低め。
 平和で穏やか。
 そんな音です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Theme to the Gaurdian” (1974) Bill Connors

“Theme to the Gaurdian” (1974) Bill Connors
Bill Connors (guitar)

Theme To The Gaurdian
Universal Music International Ltda.
2000-11-16


 Bill Connorsのアコースティックギター、ソロ作品。
 ECMの縁も深いReturn to Foreverの“Hymn of the Seventh Galaxy” (1973)に参加し、脱退した後のECM作品。
 なんだか複雑な流れですが、ECMでも“Love, Love” (1973) Julian Priester Pepo Mtotoあたりでやっていたハードフュージョンな演奏とは全く違う静謐な世界。
 バッキングをオーバーダビングした形ですが、アコースティックギター一色。
 ECMのアコースティックギターといえばRalph Towner
 確かに音自体はいかにもECMの録音で似た感じですが、空気感は異なります。
 1970年代のRalph Townerが激しさ、厳しさと優しさが交錯するイメージだとすれば、本作は静謐でピリピリした感じ、線が細くてより繊細な感じ。
 さらに終始穏やか。
 もちろんECM特有の低めの温度感ですが、Ralph Townerほどの冷たさ、鋭さはありません。
 激しい場面は少なく、むしろ少し寂し気な空気感ですが、後の名作“Of Mist and Melting” (1977)の雰囲気、ヒタヒタと迫ってくるようなビート感が本作にもあります。
 あのビートは、それに参加していたJack Dejohnetteの真骨頂なだけでなく、Bill Connorsの色合いなのでしょうね。
 スパニッシュな感じの音の流れもあわせて、ヒタヒタ、ジワジワと迫ってくる緊張感。
 本人のオリジナル曲は哀感漂うメロディ揃い。
 シングルトーンを中心としたインプロビゼーションもとてもメロディアスで切なげなフレージングが映える音の流れ。
 それでもさすがにアメリカン、哀感はあっても、どこかフォーキーでカラッとしています。
 それらあわせて、ほどほど穏やかな淡い感じの緊張感。
 次の名作“Of Mist and Melting” (1977)は、参加メンバーの色合いも加わり、寒風吹きすさぶような激しさが印象に残りますが、本作はあくまで穏やか。
 柔らかな空気感の中、微かな寂寥感。
 ちょうどジャケットのポートレートのような音です。
 これはジワジワとくる隠れた名作でしょう。




posted by H.A.


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