吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年04月

【Disc Review】“João Bosco 40 nos Depois” (1996) João Bosco

“João Bosco 40 nos Depois” (1996) João Bosco
Joao Bosco (voice, guitar)
Nelson Faria, Ricardo Silveira (guitar) Jorge Helder, Joao Baptista (bass) Kiko Freitas (drums) Armando Marsal (percussion)
Guest : Cristovao Bastos, Chico Buarque, Joao Donato, Milton Nascimento, Roberta Sa, Toninho Horta, Trio Medeira Brazil
 
40 Anos Depois
Joao Bosco
Imports
2013-04-30
ジョアン ボスコ

 ブラジルの大御所シンガーソングライターJoao Bosco、豪華ゲストを迎えての活動40周年記念作品。
 素朴でアコースティックなボサノバ~サンバ~MPBではなく、AOR(死語?)的、フュージョン的な洗練された音。
 冒頭からMilton Nascimentoが歌声とToninho Hortaのエレキギター。
 これは名前だけでも楽園ミュージックですが、想像されるまんまの音。
 過剰に作りこまれた感じではなく、あくまでナチュラルで上品な洗練。
 そこそこジャジーな感じですが、アメリカンな感じはなくて、柔らかくて浮遊感の強い現代的ブラジリアンな音。
 要所でエレキギターを奏でるToninho Horta, Nelson Faria, Ricardo Silveiraがとてもいい感じ。
三人ともクリーントーンで、洗練された系の現代的ブラジリアンフュージョンのカッコよさ全開。
 さらにはTrio Medeira Brazilとのトラディショナルサンバやら、その界隈の姫Roberta Saとのデュエット、ギター弾き語りのボサノバ、ブラジリアンバラードなどなど・・・
切れ目なく素晴らしい演奏が続きます。
 オリジナル曲を中心として、ジャズなアレンジのJobimナンバー”Fotografia”など、どれも素晴らしい楽曲、完璧なアレンジ、素晴らしい演奏揃い。
 ゲストは豪華なのですが、音の作りは全体的に薄めで、シンプルなようで複雑な個々の楽器の動きがよく見通せ、さらに中心となるボイスとの絡み方が絶妙。
 さり気ない歌い方がカッコいいボーカリストJoao Boscoも最高です。
 締めは大御所Chico Buarque自らによるクールなボッサ・・・
 大御所メンバー寄せ集めた過去楽曲集と侮ること勿れ、全曲、名曲、名演の大名作。
 ベストテイクはToninho Horta入り、強烈な浮遊感、郷愁感の二曲かな?これは単に私の好みでしょう・・・
  “Ao Vivo 100ª Apresentação” (1983) が代表作なのでしょうが、そちらは凄みが全面に出た作品。
 こちらは聞きやすさと洗練が前面に出ているともに、古今東西?のさまざまなブラジリアンミュージックのカッコよさがギュッと詰まった作品。
 ボッサに限ることのない、ブラジリアンミュージック入門編になる、かな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Ao Vivo 100ª Apresentação” (1983) João Bosco

“Ao Vivo 100ª Apresentação” (1983) João Bosco
Joao Bosco (voice, guitar)
 
Ao Vivo: 100 Apresentacao
JOAO BOSCO
Universal Brazil
1983-01-01
ジョアン ボスコ

 ブラジルの大御所シンガーソングライターJoao Bosco、ギター弾き語りでのソロライブアルバム。
 ギターの弾き語りといえば神様Joao Gilbertのしっとり、まったりとしたイメージが強いのかもしれませんが、この人は元気いっぱい。
 ギターをジャカジャカかき鳴らし、ボイスもウイスパーではなく、ソウルフル。
 優雅で上品というよりも、エネルギッシュ。
 Elis Reginaへ楽曲提供して人気に、なんてことですが、確かにそんなムード。
 ボサノバは静かでエレガントなJoao Gilbertのスタイルがスタンダードなのでしょうが、広くブラジル音楽、サンバあるいはMPBでとらえれば、こちらのスタイルの方がオーソドックスなのでしょう。
 根底に高速なビートが流れていながらも変幻自在のギター。
 ジャズ系とは違うブラジリアングルーヴ、突っ走っているようでピタッと尺の中に収まる心地よさ。
 ボーカルもまた然り。
 あっちこっちに跳んで行っているようで収まるところに納まります。
 天才のみがなせる技、ってな感じ。
 冒頭すぐの「ブラジルの水彩画」を除けばすべてオリジナル曲。
 ボッサ、サンバその他含めて、名曲、代表曲のオンパレードなのでしょうが、いい意味で曲が何とか・・・が気にならない圧倒的な演奏力。
 ギター一本の弾き語りながら退屈さゼロ、CD一枚スルッと聞けてしまいます。
 最後はElis Reginaの人気曲「酔っ払いと綱渡り芸人」。
 あざとい締めといえばそうなんだけど、カッコいいので仕方ありませんね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Traces” (2015) Camila Meza

“Traces” (2015) Camila Meza

Camila Meza (voice, electric & acoustic guitar)

Shai Maestro (piano, rhodes, wurlitzer, mellotron, pump organ, ampli-celeste) Matt Penman (bass) Kendrick Scott (drums) 

Bashiri Johnson (percussion) Jody Redhage (cello) Sachal Vasandani (voice)
 

Traces
Camila Meza
Sunnyside
2016-02-26


 チリのボーカル&ギタリストのジャジーポップス?、コンテンポラリージャズボーカル?。

 おそらくジャズ畑の人だと思うのですが、このアルバムはSSW(シンガー・ソング・ライター)なんて呼び方が今風でピッタリとくるのかもしれません。

 ガットギターで弾き語る女性はたくさんいるのでしょうが、この人の主力はエレキギター。

 それもクリーントーンのジャジーなギター。

 さらに柔らかいビート感と浮遊感のあるサウンドは、典型的なカッコいいブラジリアンフュージョンな音。

 ま、南米フュージョンの方が適当な形容なのでしょう。

 基本的にはピアノトリオとギターのカルテットに自身のボーカルが乗ってくる形なのですが、このピアノトリオが凄い。

 今をときめくニューヨークコンテンポラリージャズのファーストコールの面々。

 さりげなく軽やかなビートのようで、縦横無尽にスネアがパシパシ入るKendrick Scottのドラム、ちょっとした音がタダモノではない感十分のShai Maestroのピアノ。

 穏やかで上品、柔らかなグルーヴ。

 そんな音を背景にしたボーカルは透明度が高い可憐系。

 ジャズボーカルというよりもポップス然としてはいますが、ナチュラルな感じは多くの人に受けるタイプでしょう。

 ボーカルvsギターの配分は7:3ってところでしょうか。

 そんなバランスで忘れたころに登場する?エレキギターがカッコいい。

 艶のあるクリーントーンですが、Pat MethenyでもToninho Hortaでもなく、もっとジャズ寄り。

 が、ブルージー成分は少なくて、考え抜かれたと思われるメロディアスなフレージング。

 巧拙が気にならない個性的なギター。

 さらに、あのGeorge Benson風スキャットが並走します。

 これはカッコいい。

 楽曲はオリジナルに加えて、チリのスタンダード?にDjavanなどなど。

 これもポップス然としていますが、コンテンポラリージャズな感じがするのはバンドの演奏力ゆえでしょう。

 柔らかくて爽やかでノリがよくてポップなうえに、ハイレベルにジャジー。

 とにもかくにも気持ちいい音。

 今の季節にピッタリ。





 posted by H.A.

【Disc Review】“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiro

“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiro
Ricardo Herz (violin) Antonio Loureiro (vibraphone)
 
Herz & Loureiro
Ricardo Herz
CD Baby
2014-05-26


 ブラジリアンコンビによるDuo作品。
 ギターもピアノもパーカションもフルートもなし、バイオリンとヴィブラフォンの珍しい編成でのインスツルメンタルミュージック。
 Antonio LoureiroはAndré Mehmariと "MehmariLoureiro duo" (2016)を制作、本作のプロデューサーにもAndré Mehmariがクレジットされています。
 諸々鑑みるとしっとり系、あるいはクラシック色が強いことを想像してしまいますが、そんな感じではなく、元気いっぱいの音。
 冒頭のアップテンポ曲から強いビート感。
 Antonio Loureiroはミナス出身、上掲のAndré Mehmari作ではそんな感じの浮遊感の強い音でしたが、ここでは力強さが勝ります。
 バイオリンは上下に激しく動くジェットコースター型。
 二人合わせてあっちに行ったりこっちに行ったり、忙しい音の流れ。
 スローバラードの前奏から始まる二曲目も、いきなりテンポを上げての複雑なユニゾンへ。
 ベースはミナスサウンドというよりも、Egberto Gismonti的な音なのでしょうかね。
 そんなハイテンションな演奏が続きます。
 それでも少人数ゆえ、なんだかんだでフワフワとしたヴィブラフォンの音、浮いたり沈んだり、突っ走ったりタメまくったり、表現力豊かなバイオリンゆえ、うるさかったりキツかったりはしません。
 楽曲は各人のオリジナルに、Egberto Gismontiナンバーなど。
 サンバ、ボッサ、ミナスっぽさはありません。
 南米系特有の郷愁感も強くなく、ちょっと元気がよすぎて陰影、哀愁に欠けるのかな?
 かといってアメリカっぽさはないし、所々に見え隠れするクラシックの香りを含めて新感覚の音であるのは確か。 
 期待していた音とは違うのですが、この雰囲気が新世代のブラジリアンミュージックなのかな?
 ジャケットのデザイン通りの空気感といえばそうかもしれないですね。




 posted by H.A.

【Disc Review】“Saudações Egberto” (2011) Delia Fischer

“Saudações Egberto” (2011) Delia Fischer
Delia Fischer (piano, vocals, Fender Rhodes)
Pedro Mibielli (guitar, violin, cello, mandolin) Pedro Guedes (bass, acoustic & electric guitars) Naife Simões (drums, percussion, flugelhorn)
Sacha Amback (piano) Egberto Gismonti (guitar) Paulinho Moska (vocals)
 
 ブラジルのピアニスト&ボーカリストDelia FischerのEgberto Gismonti曲集。
 Egberto Gismontiの弟子にあたるのでしょう、まさに女Gismonti ってな音。
 実娘のBianca Gismontiにも近い感じですが、もっとポップな感じでしょうか。
 現代的、女性的で柔らかいGismontiサウンド。
 “Em Família” (1981) Egberto Gismontiなどの優しくてわかりやすい系を、さらに緩やかに穏やかにした感じ。
 ピアノトリオに弦楽器を加えた編成にさらにゲストが加わる形、Egberto Gismontiも一曲に参加。
 バイオリンやチェロを交えつつ、ポップスと室内楽・クラシックとジャズが入り混じった、いわゆるオーガニックなサウンドが特徴的な人、バンドでしょうか。
 ビートは硬軟を織り交ぜて、穏やかだったり激しかったり、変幻自在。
 乾いた音のドラムとエレキベースが作る、いかにも現代の若者っぽいビート。
 ハイテンションなはずの”Lolo”が肩の力が抜けた穏やかさ、元々優し気な”Palhaço”は弦が入ってさらに優雅、かつ、のどかな感じ。
 が、激しい”Fravo”はもっと激しくドラマチックな構成。
 などなど、諸々の色合いを織り交ぜながらも、ポップスを経過した現代の若者らしくわかりやすい系。
 ギターだけでは無くて、バイオリン、マンドリンが使われる場面が多いことが、ちょっと変わった感を出しています。
 ボイスは浮いたり沈んだり、これまた変幻自在ですが、基本的には可憐系。
 ピアノはいかにもEgberto Gismontiのお弟子さんぽくあちこちに飛び回り、エキサイティングに突っ走る場面もしばしば。
 が、なんだかんだで女性的な柔らかなタッチ、優しさが前面出ます。
 おまけにポップ。
 オーガニックな Gismontiサウンド。 
 ECMのGismontiの毒気が苦手な人は、こんな感じの方がいいのかな?




 posted by H.A.

【Disc Review】 “Birdwatching” (2015) Anat Fort

“Birdwatching” (2015) Anat Fort
Anat Fort (piano)
Gary Wang (bass) Roland Schneider (drums)
Gianluigi Trovesi (bass clarinette)
 
Birdwatching
Anat Fort Trio & Gia
Ecm
2016-02-19
アナト フォート

 イスラエル出身のピアニストAnat Fort、ECM第三弾。
 前作“And If” (2010)のトリオにイタリア人クラリネット奏者が加わる編成。
 編成もさることながら、前作とは少々異質なムード。 
 Gianluigi Trovesi、ジャズの人だと思うのですが、”Vaghissimo Ritratto”(2007)などのECM参加諸作を聞く限り、穏やかで上品なアバンギャルダー、あるいはクラシック~現代音楽寄りの音の人(?)だと思いますので、そんな色合いの作品にしようと思ったのかもしれません。
 結果としては、ここまでの彼女の作風と、ECMのレーベルカラーがとてもいい感じでバランスした、素晴らしいアルバム。
 ここまでの諸作に比べて沈んだ感じ、妖しさ、深刻さが増幅。
 全曲リーダーのオリジナル曲、淡くて優しいメロディは相変わらずなのですが、哀感が強くなるとともに、抽象的な音の流れ、フリージャズな時間が増えているように思います。
 特に前半はそんな感じ。
 が、中盤以降はとてもメロディアスでドラマチック。
 ここまでの作品にはあった軽さが薄くなり、陰影、そしてドラマチックさが強くなってきました。
 いい感じで変わったなあと思います。
 冒頭のソロピアノ”First Rays”は美しくて沈んだ感じがとてもECMな感じだし、中盤の組曲風“Song of the Phoenix”は胸が締め付けられるように悲しくドラマチック。
 続く得意?のワルツの”Murmuration”なども、“Peel” (1998,1999)の冒頭曲とは異質な深みと陰影を感じます。
 全編通じてそこはかとなく漂う郷愁感、寂寥感・・・
 などなど、この人の穏やかさ優しさとECM的な妖しさ、深刻さのバランスが取れた名曲、名演が並びます。
 そんな素晴らしいバランス、陰影と深みのある空気感なので、ピアノの弾き方がどうとかは些末な話で気にならなくなります。
 これなら1970年代からのECM好き、あるいはマニアな人も満足するんじゃないかな?どうだろ?
 “Birdwatching”ってな平和でのどかなタイトルは少々ミスマッチ。
 ジャケットのポートレートの雰囲気がピッタリくる音。
 もし、この人の薄味さ、普通っぽさゆえに避けていた人(私?)がいるならば、先入観は捨てて聞いてみましょう。
 知る人ぞ知る大名作になる予感。
 こういったのがあるから、なかなかECMから抜けられないなあ・・・
 
 


posted by H.A.

【Disc Review】“And If” (2010) Anat Fort

“And If” (2010) Anat Fort
Anat Fort (piano)
Gary Wang (bass) Roland Schneider (drums)

And If
Anat Trio Fort
Ecm Records
2010-09-14
アナト フォート

 イスラエル出身のピアニストAnat Fort、ピアノトリオ作品。
 Paul Motianの逝去と、制作、発表のタイミングの関係はわかりませんが、彼へのオマージュでもあるのでしょう。
 冒頭と最後の曲名は”Paul Motian”。
 いかにもPaul Motian、いかにもECMな、スローでのフリービート、ルバートでのスローバラード、2バージョン。
 とても悲し気でハードボイルド。
 いかにも・・・
 二曲目かからビートが入るといつものAnat Fort。
 というか、前作“A Long Story” (2007)よりも明るい“Peel” (1998,1999)に近い感じでしょうか。
 少し遅れ気味に音を置く感じは薄くなったままながら、穏やかにどこまでも続いていく感じ、その中で明後日の方向に動いていく感じが戻ってきました。
 ECM的な少し沈んだ空気感、悲しげな表情、妖しさ、緊張感が強い場面はありますが、あくまで明るく穏やかで優し気。
 いかにも女性的な空気感。
 興奮や妖しさを求める向きには物足らないのかもしれませんが、穏やかに流れていく音はとてもいい感じ。
 一聴、平和なようでなんだか複雑で、少しだけひねくれている感じがあるのも奥が深そうでいい感じ。
 それがこの人の個性、Eicherさんが買っているところなのでしょうかね。
 本作の録音は前作とは違って、ECMのホームグランド、オスロのRainbow Studio、プロデューサーはManfred Eicherのみ。
 が、逆に、明るく穏やかでわかりやすい質感は、ECMのイメージとは異質な感じ。
 この人なりのポジションが確立しましたかね。
 近年のECMの新しい色合いのひとつ、かもしれません。
 ・・・と思っていたら、次作“Birdwatching” (2015)、また色合いが違う素晴らしい作品へと続きます。




posted by H.A.


【Disc Review】“A Long Story” (2007) Anat Fort

“A Long Story” (2007) Anat Fort
Anat Fort (piano)
Ed Schuller (bass) Paul Motian (drums)
Perry Robinson (clarinet, ocarina)
アナト フォート





 イスラエル出身のピアニストAnat FortのECMでの第一弾。
 前作?“Peel” (1998,1999)からはかなり時間が開いています。
 オーソドックスなトリオ編成を中心として、要所に管が彩を加える構成。
 ドラムがPaul Motianですが、フリー、ルバート系の演奏はごく一部で、基本的にはビートの定まった静音系ジャズ。
 Paul Motianはフリーに叩きたそうで、実際にそんな場面もあるのですが、他のメンバーがそうはさせてくれない?、あるいはついてこない?ってな感じでしょうか。
 リーダーのオリジナル曲中心、少し悲し気で柔らかなメロディの楽曲、演奏が続きます。
 が、“Peel” (1998,1999)と少し空気感は異なります。
 沈んだムード、少々の深刻さ、数曲フリージャズ的な展開はECMの色合いとしても、ピアノの音の流れがかなり違うように感じます。
 女性らしい柔らかな感じはそのままですが、“Peel” (1998,1999)での遅れ気味の音の置き方、どこまでも続いていきそうな感じ、それでいて予想外の方向に動いていく不思議感は薄くなり、オーソドックスな感じが強くなったイメージでしょう。
 ゆるゆると続いていく感じがなくなり、パラパラとふりそそぐ感じ。
 その分切なさ、哀感が強くなっているのでしょうし、確かにECMっぽい感じ。
 時間が経過したゆえの変化なのか、Manfred Eicher、Paul Motianあたりの指導の結果なのか?そのあたりの実相はわかりません。
 結果的にはECMサウンドではありますが、そのぶっ飛んでいない系、少々おとなしめ。
 わかりやすくて穏やかな空気感は、ニューヨークでの録音、プロデューサーにはManfred Eicher に加えてAnat Fort本人も加わっている故でしょうかね?
 マニアックに難解になり過ぎず、わかりやすく世俗的になり過ぎず、ほどよいバランスの一作、かな?

 


posted by H.A.


【Disc Review】“Peel” (1998,1999) Anat Fort

“Peel” (1998,1999) Anat Fort
Anat Fort (piano)
Andreas Henze (Bass) Heinrich Köbberling (Drums, Percussion)
Dan Nadel (Guitar) Aaron Stewart (Tenor Sax)
 
Peel
Anat Fort
CD Baby
2003-12-30
アナト フォート

 イスラエル出身、アメリカ在住?のピアニストAnat Fortのデビューアルバム。
 現在はECMで制作していますが、本作はアメリカのレーベルから。
 トリオを中心に何曲かでサックス、ギターのサポートが入る構成。
 とても優しいピアノの音。
 全体的なムードはオーソドックスなコンテンポラリージャズ。
 いかにも女性らしい柔らかな音で、イスラエル的なエキゾチシズムも無いのですが、普通なようでなんだか変わっています。
 ちょっと遅れ気味に置かれる音、どこまでも続いていきそうな音の流れ。
 それでいて一直線では無くて、意外な方向に動いていく不思議感もたっぷり。
 ウネウネってなニュアンスではないし、フワフワ、ユルユルってな感じとも違う不思議な質感。
 ゆったりとしたテンポではKeith Jarrettを思いっきり丸くして毒気を抜いた感じもしますが、ビートが強くなるとタイム感がジャストになり、また違った感じです。
 ワルツから始まり、サックスがフィーチャーされるラテン、クラシック風、その他諸々、さまざまな色合いの楽曲、演奏。
 ハイテンションでエキサイティング系のジャズ曲、8ビートを中心とした長尺なフォークロック的組曲などもありますが、淡い色合いの穏やかなメロディ、演奏が印象に残ります。
 日本の女性ピアニスト諸作にも通じる雰囲気、強い刺激のない穏やかで柔らかな空気感は、オーガニックなんたら、ってな感じでしょうかね。
 爽やかで美しく、かつ複雑な川の流れのような音の流れ。
 特にビートに縛られていないソロ演奏の場面にそれを強く感じます。
 いわゆるECM的ではないのですが、その分リラックスして聞ける音。
 それでいて予想できない少しズレていくような不思議感、現代の若手らしく、サラっとしているようで複雑に組み立てられているような感じが新感覚。
 そのあたりがEicherさんの耳に留まったのでしょうかね?
 この時期、本作は、ECMの諸作とは少し雰囲気は違いますが、さて?




posted by H.A.


【Disc Review】“The Gentle Side Of John Coltrane” (1962-1965) John Coltrane

“The Gentle Side Of John Coltrane” (1962-1965) John Coltrane 
John Coltrane (Tenor Saxophone)
McCoy Tyner, Duke Ellington (Piano) Jimmy Garrison, Aaron Bell (Bass) Elvin Jones, Sam Woodyard, Roy Haynes (Drums)
Johnny Hartman (Vocals)
 
Gentle Side of John Coltrane by John Coltrane (2012-06-20)
John Coltrane
Universal Japan
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、Impulse時代のバラード集。
 春の清々しい時期にこの人のアルバムシリーズはミスマッチでしたが、これならいけるか? 
 ほとんどの人が納得しそうなベストな選曲。
 オムニバスは印象がバラけるので好んでは聞かないけども、これはいけます。
 全部テナーサックスなのもいいなあ。
 この人のバラード、「優しい系」、「ハードボイルド系」、「妖しい系」の三種でしょうか。
 「優しい系」の代表は“Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)。
 「ハードボイルド系」は“Crescent” (Apl.Jun.1964)。
 「妖しい系」は激しい系のアルバムの中にさり気なく置かれています。
 “A Love Supreme” (Dec.1964)の”Part 4: Psalm"や、本作では“Welcome”など。
 Sonny Rollinsあたりのバラードはマッチョな感じであくまで男性的ですが、対してColtraneの「優しい系」は女性的。
 高めの音を中心にスッと軽く吹くからでしょう。
 Johnny Hartmanとの競演なんてテナーではなく、まさにテノール(男性の声ですが・・・)の方が言葉としてはピッタリくるクルーナー同士の双子の兄弟のよう。
 トレードマークのシーツオブサウンドもバラードではなし。
 ビブラートもサブトーンもあまり使わず、あくまでスッキリした音。
 これがなんとも上品でカッコいいんだろうなあ。
 と思っていると、“Crescent”あたりになると「ハードボイルド系」。
 悲壮なムードも強くなり、音数も増えてくる感じ。
 それが力強さにもつながり、ダンディズムの極めつけのようなカッコよさ。
 さらにフリー期が近づくと、全編ルバートの「妖しい系」がちらほらと出てきます。
 ドラムとベースはフリー、ピアノがなんとかビートをキープしつつ、崩れそうで崩れないColtraneバンドにしかできないような全編ルバートのスローバラード。
 強烈な浮遊感、なんとも言い難い哀感の強い音。
 鬼気迫るような、胸に迫るような、とてつもなく素晴らしい音。
 全編ルバートのスローバラードの元祖はColtraneで、これがECM諸作で最近の作品までよく聞かれる音に繋がっている、って思っているのは少数派でしょうか?
 私の好みは「妖しい系」、“Welcome”。
 本アルバム「優しい系」が多めでその方が一般的な人気はあるんだろうけど、どうせなら「優しい系」を少々減らして、「ハードボイルド系」「妖しい系」を増やしてほしかったなあ。
 “The John Coltrane Quartet Plays” (Feb.May.1965)からこれまた全編ルバートの”Song of Praise”なんていいんですがね。冒頭のベースソロが長すぎますか・・・
 あるいは最終作“Expression” (Feb.Mar.1967)のタイトル曲とか、“Jupiter Variation” (Feb.2.1966)収録の” Peace on Earth”とか・・・ 
 さておき、Coltraneのバラード集、何種かあったように思いますが、「優しい系」「ハードボイルド系」「妖しい系」がバランスよく揃ったこのアルバムがベストな選曲でしょうね。

 “Soul Eyes”・・・ “Coltrane” (Apl.Jun.1962)
 “What's New”・・・ “Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)
 “Welcome”・・・ “Kulu Sé Mama” (Jun.Oct.1965)
 “Nancy”・・・ “Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)
 “My Little Brown Book” ・・・ “Duke Ellington & John Coltrane” (Sep.1962)
 “Wise One” ・・・ “Crescent” (Apl.Jun.1964)
 “Lush Life” ・・・ “John Coltrane and Johnny Hartman” (Mar.1963)
 “Alabama” ・・・ “Live at Birdland” (Oct.Nov.1963)
 “My One And Only Love” ・・・ “John Coltrane and Johnny Hartman” (Mar.1963)
 “After The Rain” ・・・ “Impressions” (Nov.1961,Sep.1962,Apl.1963)
 “In A Sentimental Mood” ・・・ “Duke Ellington & John Coltrane” (Sep.1962)
 “Dear Lord” ・・・ “Transition” (May.Jun.1965)
 “I Want To Talk About You” ・・・ “Live at Birdland” (Oct.Nov.1963)





 John Coltrane On Impulse+α。
 モードジャズと激烈フリージャズの二期に分かれそうです。
 好みはさておき、前者のピークはやはり“Live at Birdland” (Oct.Nov.1963)、“Crescent” (Apl.Jun.1964)、“A Love Supreme” (Dec.1964)の三作でしょうか。
 公式盤では“Ascension” (Jun.28.1965)以降が激烈フリー。
 が、その後にもお蔵入りしていた普通の激しいジャズの素晴らしい録音がいくつもあります。
 試行錯誤もあったのでしょうが、Pharoah Sandersの影響が大きかったのかなあ・・・が個人的な見解。 
 “Interstellar Space” (Feb.22.1967)あたりだといい感じで聞けるんだけど・・・ 
 Pharoah入り激烈フリー期を楽しんで聞けるようになればいいんだけども、まだ修行が足りません。
 私は。


※Coltrane逝去前に発表された公式アルバム。<>発表年。

●モードジャズ
※“Africa/Brass Vol.1,Vol.2” (May.Jun.1961)
※“Olé Coltrane” (May.1961)
※“Live! at the Village Vanguard” (Nov.1961)
※“Impressions” (Nov.1961,Sep.1962,Apl.1963)
※“Coltrane” (Apl.Jun.1962)

●バラード
※“Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)
※“Duke Ellington & John Coltrane” (Sep.1962)
※“John Coltrane and Johnny Hartman” (Mar.1963) 

●激しいモードジャズ
 “Newport '63” (Nov.1961,Jul.1963) <1993>
※“Live at Birdland” (Oct.Nov.1963)
※“Crescent” (Apl.Jun.1964)
※“A Love Supreme” (Dec.1964)
※“Live at the Half Note: One Down, One Up” (Mar.26.May.7.1965)
※“The John Coltrane Quartet Plays” (Feb.17-18, (Mar.28.),May.17.1965)
 “Transition” (May26.Jun.10.1965) <1970>
 “Living Space” (Jun.10,16.1965) <1998>
※“Ascension” (Jun.28.1965)
※“New Thing at Newport” (Jul.2,1965)
 “Sun Ship” (Aug.1965) <1971>
 “First Meditations” (Sep.2.1965) <1977>

●激烈フリー
 “Live in Seattle” (Sep.30.1965) <1971>
 “Om” (Oct.1.1965) <1968>
※“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965)
 “Selflessness: Featuring My Favorite Things” (Jul.1963,Oct.14.1965) <1969>
※“Meditations” (Nov.1965)
※“Live at the Village Vanguard Again!” (May.1966)
 “Live in Japan” (Jul.1966) <1973>
 “Offering: Live at Temple University” (Nov.1966) <2014>
 “Stellar Regions” (Feb.15.1967) <1995>
 “Jupiter Variation” (Feb.2.1966, Feb.22.1967, Mar.7.1967) <1978>
 “Interstellar Space” (Feb.22.1967) <1974>
 “Expression” (Feb.15,Mar.7.1967) <1967>
 “The Olatunji Concert: The Last Live Recording” (Apl.23.1967) <2001>

 
posted by H.A.


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