吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2017年02月

【Disc Review】“Rebentação” (2016) Daniel Dias

“Rebentação” (2016) Daniel Dias
Daniel Dias (guitar, voice)
Toninho Horta (guitar) Walmir Gil (trumpet)
 
Daniel Dias ダニエル ディアス
Imports
2016-11-04

 ブラジルのギタリスト&ボーカリストDaniel Dias、デビュー作なのでしょう。
 Toninho Horta _Guitarra (エレキギター)のクレジットに惹かれて入手した一作。
 基本的には弾き語りのボサノバ。
 Toninho Hortaは三曲に参加し、数曲にトランペットが加わります。
 予想通りのとても柔らかい音。
 Jobim, Luis Bonfa, Caetano Veloso, Dorival Caymmi, Ary Barroso、さらに Miles Davisを含めてジャズスタンダードを数曲。
 どこにでもありそうな音になりそうで、確かにそうなのですが、なんだか不思議にとても心地よいバランス。
 Joao GilbertoRosa Passosのように沈んだ感じではないのですが、妙に落ち着いていて、アメリカ系にはない特別な音。
 柔らかなビート、美しく瑞々しい音のギターと、ウイスパーではないけど優し気なボイス。
 現代的で上品なJoao Boscoってな感じでしょうか?
 それに丸っこいクリーントーンのToninho Hortaのエレキギターが乗ってくると・・・
 フワフワとしているようで、シャキッとしているようで、何とも言えないいい感じの浮遊感。
 春っぽいなあ・・・
 春眠暁をなんとか・・・もちろん誉め言葉です。
 
 


【Disc Review】“Amigos” (1976) Santana

“Amigos” (1976) Santana
Carlos Santana (guitars, background vocals, percussion, congas, juror)
Tom Coster (acoustic piano, Rhodes electric piano, Hammond organ, Moog synthesizer, ARP Pro Soloist, ARP Odyssey, ARP String Ensemble, Honner Clavinet D6, background vocals) David Brown (bass) Leon "Ndugu" Chancler (drums, timbales, Remo roto-tams, percussion, congas, background vocals) Armando Peraza (congas, bongos, background vocals) Greg Walker (vocals)
Ivory Stone, Julia Tillman Waters, Maxine Willard Waters (background vocals)
 
Amigos
Santana
Sbme Special Mkts.
サンタナ


 Santanaのジャジーなラテンロックシリーズ最終作・・・かどうかはわかりませんが、このあたりまでがジャズに慣れた耳でも普通に心地よい作品でしょうか。
 あるいはTom Costerとのコンビネーションが確立、ポップチャートも視野に入ってきた、といった感じ?
 ”哀愁のヨーロッパ”が入っているゆえに、そのイメージが強いのですが、全体的には洗練されたラテンフュージョン。
 洗練され過ぎて妖しげなムードが薄くなってきた感じもしますが、“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの時代は、既に今は昔。
 “Head Hunters” (Sep.1973) Herbie Hancockも3年前。
 ポップも混ざったフュージョン全盛期、Weather Report も”Black Market” (1976) ~“Heavy Weather” (1977)の時代。
 冒頭からノリノリのラテンロック。
 唸るギターに明るくキャッチーなメロディは、それはそれでいいのだけども、4:30過ぎてから、マイナーコードに変わってテンポアップした数分続くアウトロがカッコいい。
 哀愁漂うメロディ、激しいパーカッションとスリリングスシンセサイザーを背景にしたギター、シンセサイザーソロ。
 最高にドラマチック。
 さらにはオルガンの響きがカッコいいラテンフュージョンに、“Head Hunters”的ファンクフュージョンにソウルのボーカルを乗せたようなキャッチーなノリ。
 LPレコードB面に移るとフラメンコ~キューバンな感じに、洗練されたAOR風なボーカル曲を経て、やっと登場、”哀愁のヨーロッパ”。
 ま、これはね・・・アルバムの中では浮いているような気もするなあ・・・
 最後は“Head Hunters”的ファンクフュージョンに処理した、ソウル曲でハッピーに締め。
 この時代になるとHerbie Hancockの影響力が絶大だったのかなあ・・・?
 ポップで洗練されたラテンフュージョンのSantana作品。
 もう40年前の作品だけども古くなっていないと思います。私は。
 この先のアルバムもよかったと思うのだけども・・・




posted by H.A.  



【Disc Review】“Borboletta” (1974) Santana

“Borboletta” (1974) Santana
Carlos Santana (guitar, percussion, vocals)
Tom Coster (piano, organ, electric piano, Moog synthesizer) Stanley Clarke, David Brown (bass) Michael Shrieve, Leon "Ndugu" Chancler (drums)
Leon Patillo (vocals, piano, electric piano, organ) Flora Purim (vocals) Jules Broussard (soprano, tenor sax) Airto Moreira (drums, percussion, vocals) Armando Peraza (percussion, soprano sax) José Areas (timbales, congas) Michael Carpenter (echoplex)
 
Borboletta
Santana
Sbme Special Mkts.
サンタナ


 Santanaのジャジーなロックシリーズ、スタジオ録音での第三弾。
 ポップで洗練された前作“Welcome” (Jun.1973)のムードを引き継ぎつつも、シリアスで妖し気なムードも強く、"Caravanserai" (Feb-May.1972)を洗練し、聞きやすくした感じでしょうか。
 Tom Costerのエレピが映えるフュージョン的なサウンド。
 ドラムにLeon "Ndugu" Chanclerが初参加。
 Miles Davisバンドには“The 1971 Berlin Concert”(Nov.6.1971)周辺のライブ、後のWeather Reportにも“Tale Spinnin'” (1975)で客演した人。
 Airto Moreira、Stanley Clarkeも客演していていて、エレクトリックMiles派閥のサポートが入ったサウンド。
 ファンク色の濃いジャズというか、ジャズ色の濃いファンクというか、軽快でファンキーなビートがメインで、エレピとオルガンが作る背景含めて、ロック、ポップな色合いは強くないようにも思います。
 ジャズ系の同時期、同時期だと“Butterfly Dreams” (Dec.1973) Flora Purim、“Mysterious Traveller” (1974) Weather Reportから決して遠くない雰囲気かもしれません。
 半数を占めるボーカル曲はソウル~ポップなレアグルーヴな感じですが、インスト曲は"Caravanserai" (Feb-May.1972)から続く強烈な疾走感とグルーヴのカッコいいラテンフュージョン。
 アルバム終盤、ブラジル曲、Dorival Caymmiの"Promise of a Fisherman"を中心としたメドレーが白眉でしょうかね。
 Weather Reportに匹敵するようなファンクフュージョン、ラテン度強。
 最後はAirtoの妖しげなバーカッションと、誰かわからないエスニックでこれまた妖しげなボイスで締め。
 このあたりのアルバムは、どれもラテンロックの範疇にとどめておくのはとてももったいない名作揃い。
 とてもカッコいいジャズフュージョンアルバム。

 


posted by H.A.  

【Disc Review】“Lotus” (Jul.1973) Santana

“Lotus” (Jul.1973) Santana
Carlos Santana (guitar, percussion)
Tom Coster, Richard Kermode (organ, electric piano, Latin percussion)
Doug Rauch (bass) Michael Shrieve (drums)
Leon Thomas (vocals, maracas, percussion) Armando Peraza (congas, bongos, percussion) José "Chepito" Areas (timbales, congas, Latin percussion)
 
LOTUS
SANTANA
COLUM
サンタナ


 “Welcome” (Jun.1973)録音直後の来日、大阪公演でのライブ録音。
 "Caravanserai" (Feb-May.1972)からはキーボードのGregg Rolie、ギターのNeal Schon、ウッドベースのTom Rutleyが抜け、“Welcome”のコアメンバーでの演奏。
 近作"Caravanserai"、“Welcome”からそれぞれ二、三曲づつ、キャッチーな人気曲が揃う”Abraxas” (1970)からの選曲が多くなっていますが、さらに新曲が三分の一ぐらい。
 新旧織り交ぜバランスが取れたベストアルバム的な選曲。
 ジャジーな"Caravanserai"よりもラテンロック~ラテンフュージョンの色合いが強いのですが、“Dark Magus”(Mar.1974) Miles Davis的なエレクトリックMilesを想わせる場面もしばしば。
 元はJimi HendrixかSlyなのかもしれませんが、同じようなところをみていたのでしょう。
 ホントの瞑想から、瞑想的なオルガンが響く"Going Home"でイントロダクションが終わると、エレクトリックMiles的なファンクナンバーから、"Caravanserai" (Feb-May.1972)のハイライト、長尺でハイテンションなラテンフュージョン"Every Step of the Way"。
 さらにはラテンロックな人気曲"Black Magic Woman"、"Oye Como Va"、まだ発表されていないであろう“Welcome”からベストチューンと思われる"Yours Is The Light"、などなど、普通に考えて奇をてらわない、あるいは実験的な要素は少ない、ここまでのショーケースのような構成。
 後半は少し沈んだ瞑想的なムードのファンクでスタート。
 徐々に激情に遷移~ドラムソロなどを経て、ピークは”Abraxas” (1970)からハイテンションな"Incident at Neshabur"~人気曲の"Samba Pa Ti"あたりでしょうか。
 最後は高速サンバ〜キューバンな感じのラテンロックで陶酔感を誘いつつドカーンと盛り上がって締め。
 エンターテイメントとしてもオーソドックスにうまく構成されたステージ。
 ファンは大満足の構成でしょうが、このライブこの選曲が彼のベストなイメージだとすれば、"Caravanserai" (Feb-May.1972)のジャジーで沈んだイメージは本筋ではなく、それまでのラテンロック、ファンキーなロックの路線、インプロビゼーション色を強めてラテンファンクフュージョンぐらいまでが本筋なのでしょう。
 であれば、“Welcome”以降の明るい路線も納得、"Caravanserai"が特別なアルバムだったと考えるのが妥当なのでしょうね。
 ウッドベースを使っていたのはあのアルバムだけ?だもんね。
 全体通じてロック色はそこそこ強く、人気曲はキャッチーでポップ。
 ジャズの香りはほとんどないのですが、ファンキーでカッコいい一味も二味も違うラテンロック~ラテンフュージョンであることは間違いありません。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Welcome” (Jun.1973) Santana

“Welcome” (Jun.1973) Santana
Carlos Santana (electric, acoustic guitar, bass, kalimba, percussion, vocals)
Tom Coster (organ, electric piano, acoustic piano, marimba, percussion) Richard Kermode (organ, mellotron, electric piano, acoustic piano, marimba, shekere, percussion) Douglas Rauch (bass) Michael Shrieve (drums) José "Chepito" Areas, Armando Peraza (percussion) Leon Thomas (vocals, whistling) 
Wendy Haas, Flora Purim (vocals)
John McLaughlin, Douglas Rodriguez (guitar) Joe Farrell, Bob Yance, Mel Martin (flute) Tony Smith (drums) Jules Broussard (soprano sax)
 
Welcome
Santana
Sbme Special Mkts.
サンタナ


 Santana、"Caravanserai" (Feb-May.1972)に続くジャズ的フュージョン的アルバム。
 が、前作"Caravanserai" (Feb-May.1972)と比べるとかなりムードが異なります。
 キーボードのGregg Rolie が抜けて、Tom Coster中心になったことも大きいのでしょう。
 タイトルはJohn Coltraneの曲。
 カバーもしていて、冒頭はAlice Coltraneのアレンジによる重厚なオルガン、荘厳で宗教的なムードからスタート。
 これは濃いかな?と思いきや、全体的にはかなりポップで洗練されたムード。
 続くギターとエレピの絡み合うイントロはジャジーですが、キャッチーなボーカル曲。
 タイトルは同時期の激しいギターアルバム“Love Devotion Surrender” (Nov.1972) Carlos Santana / Mahavishnu John McLaughlinと同じですが、その印象とは違うあの時代っぽい柔らかなメロディ。
 少々サイケな香りも残しつつ、ボーカル曲もロックというよりもソフトなソウルな感じ。
 さらには、明るくて軽やかなフュージョン曲、AORっぽいボーカル曲へと続きます。
 ボーカル曲はヒットチャート上位に入ってもおかしくないようなキャッチーさ。
 いわゆるレアグルーヴ揃い。
 LPレコードA面最後、Flora Purimのスキャットが映える "Yours Is The Light"などはドラマチックでカッコいいジャズファンクフュージョン、ラテン混ざり。
 Weather ReportやFlora Purimのリーダー作よりもカッコいいんじゃない・・・かどうかはわかりませんが、そんな演奏よさ。
 LPレコードB面に移るとインストバンドが全面に出ます。
 前半のサックスはカッコいいし、終盤はJohn McLaughlin も加わって"Caravanserai"のような強烈な疾走感とハイテンションなジャズフュージョン、ラテン入り。
 最後のJohn Coltraneナンバー“Welcome”は、オリジナルと同様にルバートでのスローバラード。
 二台のピアノとギターが織りなすドラマチックで前向きなエンディング。
 Coltrane云々はさておいて、明るくて柔らかなラテンフュージョンアルバムとして最高だと思うのだけども、前後周辺の凄いアルバムに紛れてしまうのかな?
 ロックファンからすると激しさやギターソロが少なめで、物足らないのかな?
 全然マニアックではない、ラテンジャズフュージョン、一部ボーカル入りの名アルバム。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Love Devotion Surrender” (Oct.1972,Mar.1973) Carlos Santana/John McLaughlin

“Love Devotion Surrender” (Oct.1972,Mar.1973) Carlos Santana/John McLaughlin
Mahavishnu John McLaughlin (guitar, piano) Carlos Santana (guitar)
Mahalakshmi Eve McLaughlin (piano)
Larry Young (piano, organ) Jan Hammer (Hammond organ, drums, percussion)
Doug Rauch (bass) Billy Cobham, Don Alias, Mike Shrieve (drums, percussion) Mingo Lewis (percussion) Armando Peraza (congas, percussion, vocals)
 
Love Devotion Surrender
Carlos Santana & John Mclaughlin
Mobile Fidelity
サンタナ ジョン・マクラフリン


 Santana、ジャジーな作品が続く中でのJohn McLaughlinとの双頭リーダー作、John Conltraneトリビュート。
 もしJohn Coltraneが長生きしていたらこの二人との共演はあったのだろうし、エレクトリックMilesバンドにSantanaが入ったら、とか想像してしまう作品、メンバーですが、そんな音とはちょっと違うように思います。
 素直にMahavishnu Orchestraとこの期のSantanaを合わせたような音。
 John Coltraneのカバー二曲に他三曲。
 ギターはロックな感じのハードな演奏中心ですが、オルガンの響き、激しいドラム、ファンクなベースを含めてジャジーなムード。
 後に“Afro Blue” (Jun.1993) The Lonnie Smith Trio、John Abercrombieといったアルバムがあり、同様に激しいのですが、そちらよりは落ち着いたムードかもしれません。そうでもないか・・・?
 それにしても凄まじい二人のギター。
 ファットな音で泣きのフレーズ、やたらに長い音、フィードバックも多用するSantanaに対して、カミソリのように鋭く神経質、サディスティックなJohn McLaughlin。
 ジャケットの二人は穏やかに寄り添っていますが、ギターソロはお互いにこれでもかこれでもかの激しい演奏の連続。
 ルバートでのバラードなど、瞑想的な雰囲気はあるのですが、激しく饒舌なギターの音を聞いているとそんな気分にはなりません・・・よね?。
 LPレコードB面に移って激しいパーカッション、強烈な疾走感の長尺ラテンフュージョンから、最後はギターとピアノの穏やかな”Meditation”で締め。
 いやはやなんとも凄いギターアルバムです。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“Carlos Santana & Buddy Miles! Live!” (Jun.1972) Carlos Santana & Buddy Miles

“Carlos Santana & Buddy Miles! Live!” (Jun.1972) Carlos Santana & Buddy Miles
Buddy Miles (vocals, drums, percussion, congas) Carlos Santana (guitar, vocals)
Neal Schon (guitar) Bob Hogins (organ, electric piano) Ron Johnson (bass) Greg Errico (drums)
Richard Clark, Coke Escovedo (drums, percussion) Mike Carabello, Mingo Lewis, Victor Pantoja (percussion) 
Hadley Caliman (flute, saxophone) Luis Gasca (trumpet)
 
 Santana、ハワイでのライブ録音。
 スタジオで取り直した再現ライブといった情報もあります。
 確かに拍手、歓声が不自然に入っていますが、まあ演奏がカッコいいのでよしとしましょう。
 Buddy MilesはJimi Hendrix “Band of Gypsys” (1970)のドラマーで、Miles Davisがバンドに誘っていたとの話もある人。
 元はジャズドラマー?純粋ファンク?いずれにしてもヘビーではなく軽快なビート。
 オルガンとパーカッションが唸るラテンロックフュージョン~ソウル。
 直前に録音された"Caravanserai" (Feb-May.1972)ほどジャズ的ではなく、ロック、ソウルのイメージが強い演奏。
 "Caravanserai"以前のSantana的でもあるし、“Band of Gypsys”的でもあるし、Sly & Family Stone的でもあるし、”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)、”Dark Magus”(Mar.1974) Miles Davis的でもあるし、そんな音。
 8ビート、16ビートが入り混じる“On The Corner” (Jun.1972) Miles Davis的な場面もあります。
 結局このあたりが1960年代からのロック、ソウル、ポップスが寄せ集まった当時のフュージョンミュージックで、そのジャズサイドからの旗手がMiles Davis、ロックサイドからはJimi Hendrix、ブラックミュージックサイドからはSly Stone。
 Santanaはそれらを取り込みつつ、ラテンな色合いを前面に出したというか、それら含めて相互に影響し合っていた、といったところなのでしょう。
 LPレコードA面は激烈なギターバトルからスタート。
 Santanaバンドではソロは取らせてもらえなかった、後の人気バンドJourneyのNeal SchonがスッキリしたJimi Hendrix風のカッコいいソロ。
 ポップでソウルなボーカル曲をはさみながら、ハイテンションな演奏の連続。
 B面は長尺な一曲、インプロビゼーションを中心としたラテン・ジャズ・ロック・ソウル・フュージョン。
 妙な仕掛けなしの凄まじい演奏。
 もしここにMiles Davisが入っていたら超名盤として・・・
 この期のSantanaの作品を聞くたびにそう思ってしまう私は、きっとジャズの人なのでしょう。
 もちろんMilesがいなくても名作です。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】"Caravanserai" (Feb-May.1972) Santana

"Caravanserai" (Feb-May.1972) Santana
Carlos Santana (lead guitar, guitar, vocals, percussion)
Gregg Rolie (organ, piano) Tom Coster (electric piano) Neal Schon (guitar) Tom Rutley (acoustic bass) Douglas Rauch (bass) Michael Shrieve (drums) Jose "Chepito" Areas (congas, timbales, bongos) Rico Reyes (vocals)
Douglas Rodrigues (guitar) Wendy Haas (piano) James Mingo Lewis (percussion, congas, bongos, vocals, acoustic piano) Armando Peraza (percussion, bongos) Hadley Caliman (saxophone , flute) Lenny White (castanets)
 
Caravanserai
Santana
Sony
サンタナ


 John Mclaughlinはよくわからないのでこの人が最後、かな?
 John Coltraneもさることながら、エレクトリックMilesと近いような、そうでもないような、微妙な位置関係にあるSantana。
 エレクトリックMiles、Weather Reportとメンバーが重なっていたり、John McLaughlinが近かったり、“On The Corner”(Jun.1972)の後のMiles Davisの作品、“Dark Magus”(Mar.1974)や“Get Up with It”にはSantanaからMilesへの影響もあるようにも聞こえます。
 ジャズファンからどう見えているのかはさておき、ちょっと普通のロックバンドとは違う空気感、特に本作を中心とした数作は、ジャズに慣れてしまった耳にも特別なカッコよさがあるように思います。
 
 そのジャズ的、ファンク的、フュージョン的ロック、大傑作アルバム。
 前作“Santana III” (1971) Santanaからの流れにあるのですが、雰囲気は異なります。
 ジャズ的というと違和感があるのかもしれませんが、普通のロックとは違うジャジーなムード。
 おそらくコンテンポラリージャズが好きで歪んだギターが許容な人にはフィットする音。
 終始響くオルガンとうるさくないドラム、パーカッション群が作るヒタヒタと迫ってくる系のグルーヴ。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの影響があるのかどうかはわかりませんが、言葉で書いてしまうとそんな音。
 ジャジーなウッドベースとファンキーなエレキベースが交錯しするジャズファンクフュージョン、パーカッションの強烈なラテン風味。
 エレクトリックMiles閥のメンバーの合流はまだありませんが、ジャジーでファンキーでカッコいいビート揃いの演奏。
 ロックな場面は半分以下でしょう。
 あの”哀愁のヨーロッパ”のTom Costerが参画したことでの洗練、元からの中核メンバーGregg Rolieのアーシーなムードが混ざり合っていい感じでバランスがとれているようにも思います。
 抹香臭い・・・なんて意見もあるのかもしれませんが、それがしっとりとしたいい感じに繋がっているのでしょう。
 ギター小僧大喜びのエレキギターのカッコいいソロの連続。
 間々に挟まれる数曲ボーカル曲もキャッチーな楽曲揃い。
 さらに全編を通じたしっとりとしながらもシリアスなムード、緊張感含めて最高にカッコいい音作り。

 冒頭、妖しいウッドベースとエレピ、歪まないギターが絡み合う幻想的なムード数分から、凄まじいベースラインとハードなギター、激しいパーカッション陣の絡み合いからいきなり最高潮。
 決して長くはない演奏の中にこのアルバムの凄みが凝縮されているような演奏ですが、まだまだ序の口。
 続くファンクロックもボーカル曲も名演の連続。
 中盤の"Song of the Wind"なんて、穏やかなサンバビートを背景にして、最高のギターソロが延々と続く素晴らしい演奏。

 LPレコードB面は、”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のぶっ飛んだ冒頭曲”Milky Way”を思わせる妖しげなエレピのコードチェンジからスタート。
 さらに激しいラテンパーカッションが絡む妖しくもカッコいい音。
 ウッドベースとオルガンが鳴り出し、ビートが入る瞬間のカッコいいこと。
 さらにはJobimナンバーのロックな演奏、クラーベ、パーカッションが鳴り響くラテンフュージョンときて、最後はオルガンと激しいギターが先導する、激烈な"Every Step of the Way"。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis的なような、Mahavishnu Orchestraなようなイントロダクションから、凄まじいパーカッション群が繰り広げるリズムの饗宴、強烈な疾走感、グルーヴ、叫びのような息継ぎを伴う凄まじいフルートから、締めはオーケストラを背景にした、ギターのソロ・・・

 最初から最後まで、全曲名曲、名演。
 これを聞いたMiles Davisもビックリ・・・したかどうかは知りませんが、“Get Up with It”に収められた"Calypso Frelimo"<Sep.1973>に通じそうな感じもあります。
 ジャズに慣れた耳で聞き直しても、やはり世紀の大名アルバムだと思います。
 次作はColtrane ナンバーを冠した“Welcome” (Jun.1973)。
 Coltrane的で重々しい・・・とは全く逆。
 ソフトで洗練された作品群、名作群へと続いていきます。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“Miniatures. Music for piano and percussion” (2013) Glauco Venier

“Miniatures. Music for piano and percussion” (2013) Glauco Venier
Glauco Venier (piano, bells, gong)
 
MINIATURES-MUSIC FOR
GLAUCO VENIER
ECM
2016-06-10
グラウコ ヴェニエール

 イタリア人ピアニストGlauco Venierの美しいソロ作品。
 近年Norma Winstoneと行動を共にしていて、 “Distances” (2007)、 “Stories Yet To Tell” (2009)、"Dance Without Answer” (2012)でとてもしっとりとした美しいピアノを弾いていた人。
 2016年の発表ですが、録音は少し前の2013年。
 ECMではありがちなのだと思いますが、しばらくお蔵に入っていた理由はわからない、素晴らしい演奏集。
 クラシック作品のようなタイトル、確かにそんな感じです。
 長くはない楽曲、パーカッションでのインタールード的な演奏も含めて全15曲、ほぼ全曲スローテンポ。
 静かな空気感の中、現代音楽的な抽象的な演奏と、センチメンタルな演奏が交錯します。
 Norma Winstone諸作での演奏と比べるとグルーヴは抑えられ、思索的な展開が多いのですが、その分静謐、合間々に現れる美しいメロディの楽曲が際立つ構成。
 冒頭から妖しげなパーションの響きと不思議感の強いコード、静かで穏やか、が、抽象的な音の流れ。
 今にも止まりそうなスローテンポの二曲目から美しく悲し気な表情のメロディが見え隠れし始めます。
 さらに中盤の“Serenity”あたりからは少しビートが効いてきて、美しく切ないジャズ。
 が、再び抽象的で敬虔なムード音の流れ・・・、それを繰り返し、締めはとてもセンチメンタルな美しいメロディ。
 少し沈んだ敬虔な空気感、静かな空間にリバーブがたっぷり効いた美しい音が漂う、いかにも近年のECMのソロピアノ作品の色合い。
 ビートが乗ると上品で心地よいグルーヴ、疾走感が出る人だと思うので、静かな演奏ばかりなのは少々もったいない感じもするのですが、本作では穏やかな美しさが勝ります。
 Keith Jarrettソロピアノ諸作のように派手でもキャッチーでも激しくもないし、強烈なインプロビゼーションもありません。
 さらに半数の楽曲では抽象度も高いのだけども、難解だったり意味不明だったり頭でっかちだったりしない音。
 刺激が少ない分、とても穏やかな気持ちになれる優しい音。
 抽象と具体、敬虔、高尚と俗のバランスが絶妙なのでしょう。
 全編通じた美しいピアノの音とあわせて、気持ちが洗われるような穏やかで美しい空間。
 近年では出色、とても美しいピアノミュージック。
 ありそうでない、最高のバランスの名作だと思います。

 


posted by H.A.

【Disc Review】“Distances” (2007) Norma Winstone

“Distances” (2007) Norma Winstone
Norma Winstone (vocal) 
Glauco Venier (piano) Klaus Gesing (soprano sax, bass clarinet)
 
Distances (Ocrd)
Norma Winstone
Ecm Records
2008-05-27
ノーマ ウインストン

 Norma Winstone、新バンドでのECM復帰第一作。
 同じメンバー、別レーベルで”Chamber Music” (2002)といったアルバムもあるようです。
 “Stories Yet To Tell” (2009)、”Dance Without Answer” (2012)と名作が続く端緒。
 編成は、管楽器は違えど、名作“Azimuth” (Mar.1977)、“Somewhere Called Home”と同じピアノを中心としたトリオ。
 ピアノは長年の相方John Taylorではなく、イタリアのGlauco Venier
 鋭利なイメージのJohn Taylorに対して丸みを帯びた音。
 妖しさはあまり感じない、美しい音。
 零れ落ちるような繊細な音から、しっとりとした音、グルーヴに乗った演奏まで、何でもできそうなタイプ。
 ドイツのリード奏者Klaus Gesingも同じように、妖しさはほどほど、これまた何でもできてしまいそうなタイプ。
美しいピアノが作る背景と彩を加えるリード。
 静かな空間を駆け巡るようなソプラノサックスもさることながら、バスクラリネットが鳴ると、変わった音を使うわけではないのに別世界に連れていかれそうな妖しいムード。
 そんな音を背景にして、いつもながらの少し沈んだしっとりとしたボイス。
 “Azimuth” (Mar.1977)の頃と比べても変わらないようにも思えるし、さらにしっとりした感じもするし、何よりも優しくなったように感じます。
 ピアノが作る空気感の違いも大きいのかもしれません。
 楽曲はオリジナルのバラード中心にスタンダードを少々。
 何を演奏しようが歌おうが空気感は変わりません。
 ヨーロピアン・クールネスと不思議な温かみが混ざり合い漂う空気。
 この人ぐらい冬の終わりに合う音は少ないのではないでしょうか。
 ひんやりとしていて静的なのだけども、なぜか暖かな空気。
 かつての名作“Azimuth” (Mar.1977)、“Somewhere Called Home” (1986)も、そして本作も今の季節にピッタリの音。
 同質の名作“Stories Yet To Tell” (2009)、”Dance Without Answer” (2012)へと続きます。




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