吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年12月

【Disc Review】“Free” (Mar.Apl.1972) Airto

“Free” (Mar.Apl.1972) Airto

Airto Moreira (Percussion, Vocals, Wood Flute)
Chick Corea, Keith Jarrett, Nelson Ayres (Piano, Electric Piano) George Bensonm, Jay Berliner (Guitar)
Ron Carter (Bass) Stanley Clarke (Electric Bass)
Barnett Brown, Garnett Brown, Wayne Andre, Joe Wallace (Trombone) Mel Davis, Alan Rubin (Flugelhorn, Trumpe) Joe Farrell (Flute, Bass Flute, Piccolo, Burt Collins, Alto, Soprano Sax, Reeds) Hubert Laws (Flute)
Flora Purim (Vocals)
 
フリー
アイアート
キングレコード
2016-09-07


 Airto Moreira の豪華なメンバーでのフュージョン作品、レーベルはCTI。
 Flora Purim “Butterfly Dreams” (Dec.1973)などと並行して動く、ポストMilesバンドのメンバーの諸作の一作。 
 もう一枚の“Return to Forever” (Feb.1972)、というか、その1-2か月後、タイトル曲は同じメンバーでアレンジもほぼ同じ。
 Chick Corea, Keith Jarrettそれぞれ二曲ずつゲスト参加。
 わずか二分半ですが、George BensonとKeith Jarrettなんてレアな共演もあります。
 Keith Jarrett、Airto MoreiraともにちょうどMilesのバンドから脱退したところでしょう。
 全編ベースがStanley Clarkeだったらあの “Return to Forever” のグルーヴが出ていたかもしれませんが、一曲のみで、柔らかなビートのRon Carter中心です。
 楽曲もさまざま、Flora Purim を含めたオリジナルを中心に、Chic CoreaにKeith Jarrett、ブラジリアントラディショナル。
 CTIっぽい柔らかなホーンアンサンブルとKeith Jarrettのキレのあるソロが映える柔らかな演奏から、ビリンボウとネイティブな奇声が響くブラジリアンネイティブな音、Chic Coreaのピアノがカッコいいブラジリアンフュージョン、などなど幅のある音作り。
 “Return to Forever”が浮いている気がしないでもないですが・・・
 またKeith Jarrettの曲がカッコいい演奏になりそうなのに、さらにGeorge Bensonもいるのに短く終わるのが残念だなあ・・・
 などなど、“Return to Forever”というよりも、アメリカとブラジル、ジャズとブラジリアン音楽の間を行ったり来たりする、ファンクフュージョン。
 過渡期の一作。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Seeds on the Ground” (1971) Airto

“Seeds on the Ground” (1971) Airto 

Airto Moreira (Percussion Drums Vocals Berimbau)

Hermeto Pascoal (Keyboards, Piano Flute Bass Japanese Sapho) Severino De Oliveira (Organ) Sivuca (Accordion) Ron Carter (Bass, Cello)

Dom Um Romao (Percussion)

Severino De Oliveira (Viola) Flora Purim (Vocals)
 

Seeds on the Ground
Airto
One Way Records Inc
アイアート


 ブラジリアンパーカッションAirto Moreiraのなんとも不思議なブラジリアンフュージョン~MPB作品。

 ”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davis あたりでMilesバンドを抜け、“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Corea、“Butterfly Dreams” (Dec.1973) Flora Purim に先行するアルバム。

 いかにもこの人の作品らしくいろんな色合いが混在していますが、”Live Evil”の一部にも参加していたHermeto Pascoalを中心として、Ron Carter、Airto Moreiraのピアノトリオ+ゲストといった印象が強い感じでしょうか。

 “Butterfly Dreams”でもカバーされる“Moon Dreams”などは、エレピの美しい音、柔らかなベースとドラムが出す穏やかながら疾走感の強いグルーヴ、Flora Purimの幻想的な歌~叫び声・・・などなど、さながら管楽器抜きの初期Return to Forever。

 もし、Ron CarterがReturn to Foreverに参加していたらこんな音だったのでしょう・・と想わせるような柔らかな音。

 “Return to Forever” (Feb.1972) Chick Coreaはこの作品の一部が元ネタなのかも?と想わせる音。

 そんな曲が何曲か。

 それが多ければ、ジャズ、フュージョン系の人気作になっていたのかもしれませんが、半数以上はフォーク、ロック、ブラジリアンテイストが入り混じるブラジリアンポップス。

 Rio系の人ではないので、洗練されたボッサ、サンバテイストではなく、ビリンボウが響く素朴な色合い。

 ま、こちらがこの期のAirto Moreiraの音楽の色合いなのでしょう。

 Hermeto Pascoalは何でもできてしまう人のようで、もしMiles Davisバンドでの演奏が続いていたら、あるいはこのアルバムのバンドが続いていたら、それが初期Return to Forever的なバンドになっていたのかも・・・

 あるいは、後の“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoalを聞くと、Weather Reportにもなったかも・・・

 ・・・というのは妄想に過ぎませんが、凄いクリエーターであるのは間違いありません。

 このままこのバンドを続けてもよかったようにも思うのですが、Airto夫妻は“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Coreaへ、さらにCTIと契約し“Free” (Mar.Apl.1972)へと続いていきます。

 Hermeto PascoalとAirto夫妻のコラボレーションも続き、私が知る限りでは、“Encounter” (1976、1977) Flora Purimで最良の形で結実したように思います。

 



posted by H.A.  


【Disc Review】“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoal

“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoal

Hermeto Pascoal (piano, keyboards, clavinet, melodica, soprano sax, flutes, guitar, vocals)
Ron Carter (acoustic bass) Alphonso Johnson (electric bass) Airto Moreira (drums, percussion, vocals) Chester Thompson (drums)
Raul de Souza (trombone, vocals) David Amaro (guitars) Flora Purim (vocals) Hugo Fattoruso, Laudir de Oliveira (vocals)

スレイヴス・マス+3 (BOM1120)
エルメート・パスコアル
ボンバ・レコード
2014-07-19


 ブラジルのピアニスト、マルチ楽器奏者~クリエーターHermeto Pascoalのブラジリアンフュージョン。
 元々、Airto Moreira が渡米しMilesバンド加入する直前まで同じバンドで活動していたようで、本作のプロデュースもAirto Moreira、Flora Purim夫妻。
 ジャズマニアから見ればあのごっついアルバム”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davisに数曲だけ参加して、場違いとも思える穏やかで柔らか、不思議なテイストを醸し出していた人。
 Miles Davisからすれば、Chick Coreaに変わってKeith Jarrettとツインキーボードができて曲が書けるヤツを連れてこい、とAirtoに頼んだのでしょうかね?
 あるいは、Flora Purim “Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、“Encounter” (1976、1977)の音作りの中心人物のひとり、といったイメージでしょうか。
 それらのアルバムでは、ハードなGeorge Duke主体と思われる曲に対して、柔らかな音楽、特にアルバム全体がHermeto Pascoal が音作りの中心と思われる“Encounter” (1976、1977)は隠れた大名作。
 本作もFlora Purim諸作と同時期、同じようなジャズ系、Weather Report系のメンバー、ブラジル人メンバーを集めたブラジリアンフュージョン。
 ブラジル東北部の人のようで、ボッサ、サンバっぽさはありませんが、ブラジリアン特有の柔らかさの漂う音。
 少々の毒気、サイケっぽさは感じないでもないですが、とてもしなやかなブラジアリアンフュージョン。
 エレピが主導する柔らかで最高に心地よいブラジリアングルーヴと柔らかなメロディを中心に、ブラジルの山奥っぽい音、フォークロックっぽい曲、Weather Report的、あるいは“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis的ジャズファンクから混沌~激烈なインプロビゼーション、さらにはEgberto Gismontiっぽい曲、ピアノソロ、などなど、1970年代のブラジルてんこ盛り。
 いろいろ混ざっていることもあり、ちょっと聞きでは違和感があるかもしれませんが、構成に慣れてしまえば、いろんなところから素敵な演奏が飛び出してくる面白い作品。
 LPレコードでは最後の曲、”Cherry Jam”などWeather Report、あるいは初期Return to Foreverの香りが漂う最高にカッコいい演奏。
 さらにそれに続く、CDのボーナステイクの長尺の演奏がちょっとびっくり、強烈な疾走感と柔らかなグルーヴが合体した最高の演奏。
 ファンキーかつ疾走感のあるグルーヴと哀愁が漂うメロディと強烈なインプロビゼーションの連続。
 Weather Reportに匹敵するようなカッコよさ。
 超絶なリズム隊なゆえになせる業なのでしょう。
 心地よさ最高。
 とても怖いジャケットですが、中身、特に終盤は最高です。


 

posted by H.A.  


【Disc Review】“A Música Livre de Hermeto Pascoal” (1973) Hermeto Pascoal

“A Música Livre de Hermeto Pascoal” (1973) Hermeto Pascoal

Hermeto Pascoal (electric piano, flute, soprano sax, voice, sapho, percussion, etc.)
Mazinho (alto, tenor sax) Hamleto, Bola (flute, tenor sax)
Nenê (drums, piano) Alberto (bass) Anunciação (percussion, drums)
and Strings, Orchestra, others

ア・ムジカ・リーヴリ・ジ・エルメート・パスコアール
エルメート・パスコアール
ユニバーサル ミュージック
2015-06-10


 ブラジルのピアニスト、マルチ楽器奏者~クリエーターHermeto Pascoalのブラジリアンフュージョン、フラジリアンジャズ、あるいは、インスツルメンタルMPB。
 ビジュアルからは想像できない、とても優しいメロディ。
 Egberto Gismontiの音楽から気難しさを取り除いたといったムードでしょうか。
 ”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davisでも激烈なライブの間に挟まれる、場違いなほど優し気で幻想的な楽曲、演奏を提供していましたが、そんなサウンド。
 ブラジル北東部の出身、サンバ、ボッサの色合いは薄くて、Forroあたりの色合いが一番強いのでしょうかね?
 諸々の要素が入り混じっている感じですが、ブラジル独特の郷愁感が流れるメロディ群。
 Egberto Gismonti的な名曲”Bebe”からスタート。
 ピアノ、フルートとストリングスの柔らかな音が絡み合う優しいアンサンブル。
 とても優雅なメロディとアンサンブルが続きます。
 サックス、フルートを中心としたインプロビゼーションもなかなかカッコいいよくて、とても素敵なブラジリアンジャズの場面もしばしば。
 時にはクラシカルなほど優雅な音、が、突然グシャグシャと崩れ、また何事もなかったような優雅な音に戻るような不思議なアレンジ。
 あるいは端正なジャズビッグバンドかと思っていると、動物の鳴き声が錯綜するわ、とても上手とは言えないボーカルがのってくるわ、囁きやざわめきが・・・
 アバンギャルド、あるいはサイケと言えばそうかもしれませんが、感情むき出しで激烈に、とかいった感じは全くなく、あくまでクール。
 それらの微妙なバランス、アンバランスがこの人の真骨頂であり、人気の秘訣なのでしょうかね。


 

posted by H.A.  


【Disc Review】“Everyday Everynight” (1978) Flora Purim

“Everyday Everynight” (1978) Flora Purim

Flora Purim (Vocals)
Michel Colombier (Electric Piano, Piano, Synthesizer) George Duke (Electric Piano, Vocals) Herbie Hancock (Piano, Electric Piano) David Foster (Piano) Michael Boddicker (Synthesizer)
Al Ciner, George Sopuch, Jay Graydon, Lee Ritenour (Guitar) Oscar Neves (Acoustic Guitar)
Alphonso Johnson, Byron Miller, Jaco Pastorius (Bass) 
Chester Thompson, Harvey Mason (Drums) Airto Moreira (Drums, Percussion) Laudir de Oliveira (Percussion)
David Sanborn, Michael Brecker (Saxophone) Raul De Souza (Trombone) Randy Brecker (Trumpet) 

エヴリデイ、エヴリナイト
フローラ・プリン
ビクターエンタテインメント



 Flora Purim、アメリカンソウルフュージョン~AORの色合いが強いアルバム。
 人気曲”Samba Michel”、Jaco Pastoriusの参加含めて、一番の人気アルバムなのだと思います。
 哀愁が漂うポップス然としたキャッチーなメロディに、キッチリとしたビート感と音作り。
 多くの楽曲を提供したMichel Colombierの色合いが強いのでしょう。
 徹底的洗練されているのですが、Flora Purimの作品としては違和感があるというか、何というか。
 捨て曲なしのキャッチーなメロディ。
 ファンキーながら洗練された完璧なアレンジ、スキのない演奏。
 時折のスキャットは相変わらずアバンギャルドだし、ブラジル風味も少々・・・
 でも、スキャットにしてもサンバにしても、アメリカンな音の流れに飲み込まれてしまって・・・気が付けばメローなソウル~AOR風コーラス。
 締めは泣きのバラードにDavid Sanbornの泣きのサックス・・・
 オシャレです。
 洗練の極みです。
 でもこのサウンドだと歌のアクの強さが前面に出てしまって・・・
 そう感じるのは、“Return to Forever” (Feb.1972)含めて、かつてのマニアックなジャズ、ジャジーMPBのFlora Purimファンゆえの悲しさなのでしょうか?
 うーん?
 アメリカンソウルフュージョン~AORとして名作であることは間違いありません。
 ジャケットもいかにもAORっぽくてとても素敵です。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“Nothing Will Be as It Was... Tomorrow” (1977) Flora Purim

“Nothing Will Be as It Was... Tomorrow” (1977) Flora Purim

Flora Purim (Vocals)
Larry Nash, Patrice Rushen, Hugo Fattoruso, Wagner Tiso, Dawili Gonga:George Duke (Keyboards)
Reggie Lucas, Jay Graydon, Al McKay, Toninho Horta (Guitar)
Byron Miller (Electric Bass) Ringo Thielmann (Bass)
George Fattoruso (Drums) Leon Ndugu Chancler (Drums, Tom Tom, Congas, Bongos, Bells) Dennis Moody, Eric McClinton, Greg Walker (Handclaps) Airto (Percussion)
Dorothy Ashby (Harp) Raul De Souza (Trombone) Ernie Watts, Fred Jackson (Reeds) George Bohanon, Oscar Brashear (Brass)
Ivory Stone, Julia Tillman Waters, Maxine Willard Waters, OPA, Josie James (Vocals)
 
ナッシング・ウィル・ビー・アズ・イット・ワズ...トゥモロウ+2
フローラ・プリン
ビクターエンタテインメント



 Flora Purim、AOR色が強い人気作“Everyday Everynight” (1978)の前のアルバム、本作もAORな音。
 George Dukeは引き続き参加していますが、長年サポートに入っていたAlphonso Johnson, Ron Carterが抜け、ブラジル系の人がサポート、加えてReggie Lucas, Jay Graydon, Al McKay, Toninho Horta, Ernie Watts, Fred Jacksonなどのちょっとレアな感じのメンバー。
 キャッチーなメロディに、シンセサイザーストリングスとファンキーなビート、コーラスとシンセサイザーが彩りを加える、いかにもこの時代のAOR、ソウル系。
 プロデューサーは一時Miles Davisハンド、Weather Report、SantanaのドラマーのLeon ChanclerとFlora夫妻。
 Milton Nasimentoナンバーなどブラジル曲も取り上げていますが、ここまでくると完全にアメリカンAORでしょう。
 Soft&Mellowというほどではないにせよ、そんな感じに近づいてきました。
 所々にかつての柔らかなブラジリアンフュージョン、強烈なファンクフュージョンの色合いがあったり、Floraさんもサイケに叫んだりはしていますが、洗練されたアメリカンフュージョン〜AORの色合いが勝ります。
 一曲にゲスト参加するToninho Hortaもブラジルっぽくは弾いていません。
 Wether ReportっぽさもReturn to Foreverっぽさも今は昔、この人の作品でよくあった何だこりゃ?の部分はなくなり、ポップな音のオンパレード。
 アメリカンに、オシャレになったFloraさんの一作。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“That's What She Said” (1976) Flora Purim

“That's What She Said” (1976) Flora Purim

Flora Purim (Vocals)
George Duke (Electric Piano) Hugo Fatuoroso, George Duke (Synthesizer)
Jay Graydon, David T. Walker (Guitar)
Alphonso Johnson, Byron Miller (Electric Bass)
Leon Ndugu Chancler (Drums) Airto (Percussion, Bongos, Congas)
Ernie Watts (Flute) Joe Henderson (Tenor Saxophone) George Bohanon (Trombone) Oscar Brashear (Trumpet)
 
THAT'S WHAT SHE SAID
FLORA PURIM
フローラ・プリム




 Flora Purim、強烈なファンクの“Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、ジャジーな“Encounter” (1976、1977)と同時期の録音。
 強烈なベースが目立つファンキーな作品。
 リリースは後の人気作“Everyday Everynight” (1978)と同時期のようです。
 制作、リリースの経緯についてはわかりませんが、同時期、参加メンバーも近い“Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、さらに“Encounter” (1976、1977)と合わせて三部作と捉えるのが適当なのかもしれません。
 強烈なファンクの“Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、
 ファンキーな本作“That's What She Said” (1976)、
 ジャジーな“Encounter” (1976、1977)、
といったところ。
 全編ノリのいいファンクですが、“Open Your Eyes You Can Fly” (1976)のように終始ド派手に押し寄せてくる感じではなく、粘って跳ねるファンキーな音中心、少々軽快な感じ。
 ギターのカッティングと、タメと疾走が交錯するベースの絡み、数曲のホーンアンサンブルも含めてファンキーなソウルっぽさが濃厚。
 一方でパーカッションの薄さも含めて、ブラジル~ラテンの色は薄いかもしれません。
 楽曲はGeorge Duke中心、ブラジル系の楽曲はAirtoの一曲のみ。
 もちろんこの人のバンドならではの強烈なグルーヴ、疾走感は健在。
 ファンキーながらエキサイティングな演奏が並びます。
 激しいビートとホーン、スキャットボイスが絡みつつ、強烈な疾走感でドカーンと押し寄せてくる演奏も何曲か。
 それにしても、本作も凄いベースラインの連続。
 Wether Reportよりももっともっともっと激しいAlphonso Johnsonが聞ける作品。
 いつもサポートに入っているByron Millerも凄いベーシストだなあ。


 

posted by H.A.  


【Disc Review】“Encounter” (1976、1977) Flora Purim

“Encounter” (1976、1977) Flora Purim

Flora Purim (Vocals)
George Duke (Piano, Electric Piano, Synthesizer) Hermeto Pascoal (Electric Piano, Clavinet, Vocals) McCoy Tyner (Piano) Hugo Fattoruso (Synthesizer)
Alphonso Johnson, Byron Miller (Electric Bass) Ron Carter (Acoustic Bass)
Airto (Drums, Congas, Percussion) Leon Ndugu Chancler (Drums)
Joe Henderson (Tenor Saxophone) Raul De Souza (Trombone)
 
Encounter
Flora Purim
フローラ・プリム



 Flora Purim、どれだけ有名な作品なのかはわかりませんが、私的大名作。
 Chick CoreaもStaley Clarkも参加していませんが、“Return to Forever” (Feb.1972)、 “Light as a Feather” (Oct.1972)に続くReturn to Foreverの作品はこれ、ってな感じが似合うサウンド。
 それらに並ぶような・・・は少々大げさなのかもしれませんが、そんな大名作だと思います。

 この期のファンクな音は抑えられ、いかにもブラジリアンなとても柔らかでしなやかなビート、幻想的なムードとほどほどの洗練が絡み合うブラジリアンコンテンポラリージャズってな面持ち。 
 同時期のド強烈なファンクアルバム“Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、“That's What She Said” (1976)がGeorge Duke+Alphonso Johnsonの色合いだとすれば、こちらはHermeto Pascoal+Ron Carter。
 穏やかで柔らか。
 ジャズ、ファンク、ポップスのバランスの取れた前々作“Stories to Tell” (1974)よりもさらに穏やかなイメージ。
 ここまでの作品、質感に大きな幅はあれど、MPBにカテゴライズすると落ち着きそうな内容でしたが、本作は「コンテンポラリージャズ」の色合い。
 全編しっとりとしたイメージに加えて、4ビートの場面もしばしば、少しながら初期Return to Foreverのムードもあり、ジャジーなFlora Purimが戻ってきています。
 多くの楽曲を提供したブラジリアンHermeto Pascoal、さらにRon Carterの柔らかなベースの色合いが強いのでしょう。
 ファンクナンバー、サイケな色もありますが、それらもマイルドな質感。

 冒頭のChic Coreaの”Windows”から、柔らかなビート、サックスが醸し出すジャジーなムード。
 続くは、優しいHermeto Pascoalのブラジリアンメロディ、スキャットが交錯する幻想的なバラード。 
 さらに美しいエレピに導かれる漂うようなバラードから、高速な4ビートでのインプロビゼーション。
 Hermeto Pascoalのエレピのフワフワとした感じと、自身のいかにもブラジリアンな柔らかで切ないメロディの組み合わせは最高。
 さらにRon Carterはジャズっぽさ、柔らかさに加えて、Miles Davis黄金のクインテット時を想い起こさせる伸び縮みするビートもしばしば。 
 これだけ穏やかな音だと、さすがのFloraさんもあまり頻繁に奇声を上げることが出来なくて・・・
 それでも常時感じられる強烈なグルーヴは、ブラジリアンフュージョン最高のリズム隊ならでは、と言っておきましょう。
 4ビートかと思っていると思うとサンバになったり、その他諸々カッコいいビートの曲が並びます。
 
 LPレコードB面に移ると重厚なMcCoy Tynerのピアノとスキャットとの幻想的な絡み合い等々、素晴らしい演奏が続きます。
 時折の4ビート、さらにエレクトリックマイルス的な激しさと狂気が入り混じるような音。
 最後も漂うような定まりそうで定まらないルバート的な展開から、強烈なJoe Hendersonのサックスと幻想的なスキャットとの絡みで締め。

 Flora Purim の私的ベストを上げるとすれば、本作か、“Stories to Tell” (1974)。
 ジャズの人は本作、ファンクが好きな人は“Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、諸々のバランスが取れていて洗練されているのは“Stories to Tell” (1974)、洗練されたAORがよければ“Everyday Everynight” (1978)、といったところでしょうか。
 いずれにしても作品の色合いの幅が広い人ですが、柔らかな音、ジャズ寄りならば、本作で決まりでしょう。


 

posted by H.A.  


【Disc Review】“Open Your Eyes You Can Fly” (1976) Flora Purim

“Open Your Eyes You Can Fly” (1976) Flora Purim

Flora Purim (Vocals)
George Duke (Electric Piano, Synthesizer) Hermeto Pascoal (Electric Piano, Flute)
David Amaro (Acoustic, Electric Guitar) Egberto Gismonti (Acoustic Guitar)
Alphonso Johnson, Ron Carter (Bass) 
Leon Ndugu Chancler, Roberto Silva (Drums)
Airto Moreira, Roberto Silva (Percussion) Roberto Silva (Berimbau) Laudir de Oliveira (Congas)

Open Your Eyes You Can Fly
Flora Purim
フローラ・プリム


 Flora Purim、完成度の高い“Stories to Tell” (1974)から続くアルバム。
 激烈ファンク・・・と書いてしまうと違和感もあるのですが、そんな感じの音。
 ベースはWeather ReportのAlphonso Johnson中心。
 Weather Reportの時よりも激しい動き・・・というか、ここまでやらなくてもいいんじゃないの・・・というような凄まじい演奏。
 さらにドラムにSantana、Weather ReportのLeon Ndugu Chancler。
 名作“Tale Spinnin'” (1975) Weather Reportと同じコンビ。
 さらに、ぶ厚いパーカッションが鳴り響く、強烈なビート、ド派手なブラジリアンファンクフュージョン。
 楽曲はChic Coreaが三曲にHermeto Pascoal、オリジナル曲。
 “Return to Forever” (Feb.1972)から名曲”Sometime Ago”がカバーされています。
 それを含めて強烈なファンクモード。
 初期Return to Foreverの清廉なムード、ジャズの香りはすっかり無くなりました。
 中期Return to ForeverとWeather Reportが合体した音、とも言えなくもない、そんな質感。
 冒頭から激しいファンクビートとChick Coreaの書いたキャッチーでロックなメロディ、歪ませたキーボード。
 二曲目は優雅に始まりますが、ビートが入ると強烈な疾走感を伴う激しい音。
 そんな演奏が続きます。
 強力なパーカッションの響き、ラテン~ブラジルテイストが混ざる強烈なグルーヴと疾走感、強烈なインタープレー。
 混沌はありませんが、ベースが動きまくり、打楽器と多重録音されたスキャットボイス、その他が塊となって押し寄せ来るようなド迫力。
 ここまで激烈なジャズ系のボーカルアルバムってあったかなあ?
 それでいてロック系にはない、しなやかなグルーヴ感。
 それにしても変わった、というか、激しいなあ・・・
 Return to Foreverっぽい清廉なジャケットに騙されないで、いや騙されて聞いてみてください。
 私はぶっ飛びました。
 なお、同時期の録音として、ちょっと本作とは違った色合いのファンク“That's What She Said” (1976)、しっとりとジャジーな“Encounter” (1976、1977)があり、比べると面白かったりします。




posted by H.A.  


【Disc Review】“500 Miles High” (Jul,1974) Flora Purim

“500 Miles High” (Jul,1974) Flora Purim

Flora Purim (Vocals, Percussion)
David Amaro (Electric, Acoustic Guitar) Pat Rebillot, Wagner Tiso (Electric Piano, Organ) 
Ron Carter (Bass) Roberto Silva (Drums, Percussion, Berimbau) Airto (Drums, Percussion, Berimbau, Vocals)
Milton Nascimento (Guitar, Vocals)
 
500 Miles High
Universal Music LLC
フローラ プリム


 Flora Purim、Montreuxでのライブ録音。
 “Butterfly Dreams" (Dec.1973)からピアノとベースが変わり、管楽器もなし、少し雰囲気が異なります。
 George Dukeはお休みですが、若手?でしっかりカバー、ベースがゴリゴリのStanley Clarkeから柔らかなRon Carterに交代。
 タイトル曲こそChic Coreaですが、他はDori Caymmi、Milton Nascimento、Hermeto Pascoalなどのブラジル曲が並び、ボーカル入りブラジリアンファンクMPBといったテイスト。Milton Nascimento本人もゲストに加わります。
 穏やかで幻想的なDori Caymmiナンバーから始まりますが、以降は元気いっぱい、フェスティバルモード。
 強いファンク色こそありませんが、バンドはダイナミックに動きまくり、Flora Purimのボーカルもかなり過激。
 元気いっぱい、叫び声、アバンギャルドな場面もちらほら。
 さらに何曲かでは歪んだギターが入り混じりながらのサイケな響き。
 全体を眺めてみれば、4ビートから、ロックから、ブラアジリアンポップス、ブラジリアンネイティブな音まで多種多彩。
 最後はサンバなファンクでドカーンと盛り上がって締め。
 あまり繋がるようにイメージできないけども、なんだかんだでカリスマElis Reginaあたりの影響も強いのでしょうね。
 やはりブラジリアン、1970年代です。
 当時のブラジルの音をギュッと詰め込んだようなステージ。
 次作、洗練された“Stories to Tell” (1974)へと続きます。




posted by H.A.  
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