吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年11月

【Disc Review】“Spain Forever”(2016)Michel Camilo,Tomatito

“Spain Forever” (2016) Michel Camilo,Tomatito 
Michel Camilo (Piano)Tomatito (Guitar)
 
SPAIN FOREVER
MICHEL & TOM CAMILO
EMARR
2016-10-07
ミッシェル・カミロ
トマティート


 ラテンジャズピアニストMichel Camiloと現代スパニッシュギタリストの第一人者TomatitoのDuo作品、“Spain”(2000)、“Spain Again” (2006)に次ぐ第三弾。
 Duoで三作目にもなればマンネリにも陥りそうですが、本作は「なんだこれは?!」の凄い選曲。
 Egberto Gismonti ”水とワイン”から始まり、Chelie Haden “Our Spanish Love Song”、Astor Paizzolla “Oblivion”、 Erik Satie ”Gnossiennes No.1”、“Cinema Paradiso”・・・
 まるで私の好みを知っているような・・・わけはないので、哀愁、郷愁感、寂寥感、さらにエキゾチシズムが溢れる古今東西の名曲を選ぶとこうなる、といった見本のようメロディが並びます。
 終盤に収められたMichel Camiloの短いオリジナル曲も寂寥感の塊のようなメロディ。
 いつも通りにエキゾチシズムの塊のようで、その実、洗練された都会的な音作り。
 二人揃って瑞々しく、この上もなく美しい音もここまでと同様です。
 冒頭から哀愁の塊のようなメロディと流麗なピアノ。
 これでもかこれでもかと続く名バラードの連続。
 これだけ並ぶと、楽曲自体のメロディが強すぎて、一歩間違うと歌の無い歌謡曲にもなりそうですが、端々で急加速するスパニッシュなギターがそうはさせません。
 ピアノも同様にタメと疾走が交錯する音使い。
 躍動感は全二作よりは抑え気味かもしれません。
 その分落ち着いたムード。
 強いビートが出るのは最後のChick Corea ”Armando's Rhumba”のみ。
 ガンガンゴンゴン行く曲が2,3曲あっても・・・、あるいは一曲全編ルバートで・・・とか思ったりもしますが、贅沢はいえません。
 さてこのシリーズの三作、一番カッコいいのはどれか?
 楽曲だけなら本作、演奏含めると一番柔らかな感じがする“Spain Again” (2006)が私的な好みかな?
 いずれも名作だと思います。



 
 posted by H.A.

【Disc Review】“Spain”(2000)Michel Camilo,Tomatito

“Spain”(2000)Michel Camilo,Tomatito 
Michel Camilo(Piano)Tomatito(Guitar)
 
Spain
Michel Camilo
Polygram Records
ミッシェル・カミロ
トマティート


 ドミニカ出身のラテンジャズピアニストMichel Camiloと本場の現代フラメンコギタリストTomatitoのDuo作品、第一弾。
 美しい音と抜群のテクニックのピアニストと現代スパニッシュギターの第一人者が、お互いの得意なラテン風味の曲を持ち寄って演奏するのだから悪いわけがありません。
 どちらも激しい情熱的な演奏が身上ですが、ラテン特有の泥臭さや汗臭さを感じさせない、美しい音、洗練された音使いも共通点。
 本作も何の奇をてらうことのない、二人のキャラクター直球そのままの演奏ですが、洗練されたいかにも現代的なスパニッシュ〜ラテンな音作り。
 Duoゆえに伸び縮みし、揺れ動くビート感。
 インタープレーもバッチリで、スローでは揃ってタメを効かせた漂うような音、アップテンポでは強烈な加速、疾走感での並走。
 それでいて透明度の高い、瑞々しく美しい音。
 冒頭の“Aranjuez”〜”Spain”からそんな演奏が並びます。
 さすがにこの曲は聞き飽きましたが、さすがの哀愁の塊、スリルの塊のような演奏。
 続くもベタベタのラテン曲”Bésame Mucho”もごちそうさまな曲ですが、全編ルバートでのスローバラードとして処理していて、一味違うカッコよさ。
 その他、Michel Camiloのバラードや、Tomatitoの現代フラメンコ曲など、名メロディ、名演奏が並びます。
 ここまでうまくて美しい音が出せるのならば、フリーや混沌を織り交ぜてもカッコよくなりそうですが、激しい音を出してもそうはならないのがこの二人のスタイルなのでしょう。
 また、これにドラムやベースが入るとさらにエキサイティングになるのでしょうが、この美しい世界は壊れてしまうのかもしれません。
 そんな絶妙なバランス。
 バイオリン、あるいはバンドネオンが入ると、もっと凄まじい哀愁と強烈な浮遊感の世界になりそうですが・・・
 終盤に収められたTomatito作の現代フラメンコ曲“La Vacilona”〜 タンゴ曲”Aire de Tango”の哀愁と疾走感のカッコいいこと。
 “Paseo de los Castanos” (2007) Tomatitoに、相方にGeorge Bensonを迎えたバージョンがありますが、そちらも凄まじい疾走感の演奏、さらにバイオリン入りの哀愁の塊のような演奏です。
 さておき、本作、全編通じて名曲、名演揃いの名作でしょう。
 同じく名作の第二弾“Spain Again” (2006)、最新作第三弾“Spain Forever”(2016)へと続きます。




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【Disc Review】"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro

"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro
André Mehmari (Piano, synth, electric piano, bass flute, guitar, charango, bandolim, accordion, voice) Antonio Loureiro (Drums, vibraphone, voice)
 
アンドレ・メマ





 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの最新作は、ビブラフォンを中心としたマルチ楽器奏者とのDuo。
 二人ですが、例によってオーバーダビングも含めてコンボ作品に近い音作り。
 近作ではクラシックの色合いが強い作品が続いている印象がありましたが、本作もその色合いながら、ビート感も効いた曲が多く、ジャズ、ポピュラーミュージックの色合いが戻ってきた感じでしょうか。
 Antonio LoureiroはAndré Mehmariよりも一回り若い若手。
 ミナス出身のようで、なるほど、オリジナル曲の展開やそれに乗ってくるvoiceが”Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny的です。(Pat Methenyが影響を受けた側でしょうから、そんな形容は妙なのですが・・・)
 ふわふわとしたビブラフォンもそんな感じの浮遊感の強い音使い。
 楽曲は二人のオリジナル、共同名義のインプロビゼーション?が概ね三分の一ずつ。
 どれも淡い色合いのセンチメンタルなメロディ揃い。

 冒頭から哀愁が漂うメロディを土台に、柔らかく空から舞い落ちてくるようなピアノの音と、その周囲を漂うようなビブラフォン。
 さらには、さりげないハミングに、これまたさりげないクリーントーンのエレキギター。
 続くはミナス的な幻想感とドラマチックな交錯する漂うような楽曲。
 これはたまりませんねえ。
 以降クラシック的な演奏も入り混じりながら、美しい演奏が続きます。
 同時期?に発表された似たテイストのアルゼンチン人アーティストAndrés Beeuwsaertの “Andrés Beeuwsaert” (2015)と比べると、瑞々しさは同様ながら、そちらがせせらぎのような穏やかで緩やかな音だとすれば、こちらは流れの緩急の変化が強い渓流のような音。
 穏やかなようで性急なようで、突っ走ったり緩んだり。
 これ見よがしな派手な展開はありませんが、とても繊細で上品な音。
 ジャズでもクラシックでもポップスでもフォルクローレでもブラジル伝統音楽でもない、それらが混ざり合ったAndré Mehmariならではの音。
 終盤に集められたピアノとドラムによるインプロビゼーション集?はさまざまな表情。
 メロディアスなバラード風から、少々強面なフリージャズ風の演奏まで。
 二、三分の長くはない演奏を繋ぎつつ、何らかのドラマを描いているのでしょう。
 あの圧倒的なジャズピアノが出てこないかあ・・・と想わせながら、ピアノの強打で幕を閉じます・・・
 わかりやすさ、取っつきやすさなら“Lachrimae” (2003) André Mehmari、あるいは似た色合いの別アーティストの近作ではAndrés Beeuwsaert の“Andrés Beeuwsaert” (2015)もそう。
 が、格調高さなら本作。
 どの作品もとても優雅です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Andrés Beeuwsaert” (2015) Andrés Beeuwsaert

“Andrés Beeuwsaert” (2015) Andrés Beeuwsaert
Andrés Beeuwsaert (Piano, Voice)
Juan Pablo Di Leone (Flutes, Harmonica, Voice)
Tatiana Parra (Voice) Vardan Ovsepian (Piano)
 
Andres Beeuwsaert
Andres Beeuwsaert
NRT
2016-10-15
アンドレス・ベエウサエルト

 アルゼンチン、現代フォルクローレ~ジャズのピアニストAndrés Beeuwsaert、東京でのライブ録音。
 前半五曲ほどがソロでのピアノとボイス、三曲がハーモニカ、フルートとのDuo、最後の二曲にTatiana ParraVardan Ovsepianが加わります。
 Juan Pablo Di Leone は現代フォルクローレの中心人物の一人Carlos Aguirreとつながる人。
 Tatiana Parra は名作“Aqui” (2010)での名コンビ、Vardan OvsepianはそのTatiana ParraとのDuo作品“Lighthouse” (2014), “Hand In Hand” (2016) などを作っている間柄。
 といったところで、現代フォルクローレ、南米音楽の旬なところを集めた豪華なライブ。
 さらに楽曲は、Aca Seca Trioのナンバー、“Dos ríos” (2008)、“Cruces” (2012)といった名作ソロ作品からのチョイスに加えて、Hugo Fattoruso、Mário LaginhaMono FontanaCarlos AguirreAndré MehmariSérgio Santosなど、この筋が好きな人からすれば、なるほどねえ・・・な名前、メロディが並んでいます。
 哀愁、郷愁が漂うメロディアスな楽曲が並びます。

 穏やかで柔らかなピアノとハミングでスタート。
 “Cruces” (2012)などのコンボ作品とはまた違った質感。
 元々上品な音の人ですが、さらに余分なもの削ぎ落としたような上品さ柔らかさの優しい音。
 穏やかなせせらぎか、緩やかな風のような空気感。
 これはソロ、少人数でなければ出せないムードでしょう。
 微妙なタメと要所での疾走感が交錯する、とても優雅ピアノはいつも通り。
 それら含めてブラジルのAndré Mehmariと似た音使いも目立ちますが、そちらよりも線が細くて、かつ柔らかい音、穏やかな表情。
 さらに、よりジャズっぽい音。
 とても美しいピアノミュージックですが、Keith Jarrett の“The Köln Concert” (Jan.1975)などのような激甘なメロディや、激情や狂気のようなものはなく、あくまで淡い色合い。
 刺激的ではありませんが、それが今の時代には合っているようにも思います。
 数曲のハミング~呟くようなボーカルも寂寥感を醸し出していい感じ。
 ハーモニカ、フルートが加わってもその穏やかで優雅な表情は変わりません。
 終盤、ようやく強い音、速い音が前面に出る演奏。
 さらにTatiana Parraが合流するとテンションとスピードが上がりますが、やはり優雅、優美です。
 これは、いや、これもここまでのリーダー作同様に名作です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Streams” (2015) Jakob Bro

“Streams” (2015) Jakob Bro
Jakob Bro (guitar) 
Thomas Morgan (double-bass) Joey Baron (drums)
 
Streams [12 inch Analog]
Jakob Bro
Imports
2016-12-02
ヤコブ・ブロ

 デンマークのギタリストJakob Bro、“Gefion” (2013)に続くECMレコード第二弾。
 ドラマーが交代していますが、前作と同様、フワフワと漂うような不思議な音空間。
 全てスローテンポ、寂寥感の強い漂うような音。
 どれもが淡い郷愁を湛えたような、暖かで心地よい音の流れ。
 これで抽象度が高かったり、キツめの音だったり、怖いメロディだったりすると、取っ付きにくそうだけども、そうはならないのがこの人ならではの絶妙なバランス。
 たっぷりのリバーブが効いたクリーントーンのギターはシャープなようで、線が細いようで、まろやかなクリーントーン中心。
 ベースは本作もスローテンポで絶妙なグルーヴを出す、深くて上品な音のThomas Morgan。
 Anders JorminMarc Johnsonなどのベテラン陣に変わる次の世代のECMのハウスベーシストはこの人なんだろうなあ、と勝手に思っています。
 フォーキーな感じ、芯があるようで、抽象的なようで、悲し気なようで、懐かし気なような、淡くてふわふわとしたメロディ。
 淡いメロディがふわふわゆらゆらとシャボン玉のように次々と現れては消えていくような空間。
 テーマとインプロビゼーションの境目が曖昧、ギターとベースのどちらが前面に出ているのか、ドラムがどんなビートを出しているのかさえ曖昧な不思議な音の流れ。 
 ジャズでもロックでもない不思議な音が次々と湧き出しては消えていきます。
 中盤からはディストーションも使ってビート感も強くなりますが、漂うような質感、哀感は変わりません。 
 淡くて美しくて、不思議で、暖かなギターの一作。
 プロデューサーはもちろん総帥Manfred Eicher。
 オーソドックスなトリオ編成での作品が二作続きましたので、おそらく次作は違う編成。
 トランぺッターTomasz Stanko とは“Dark Eyes”(2009)、サックスLee Konitz とは"December Song” (2012)などで共演済。
 ECM内ならば、Tomasz Stankoとガッツリやってほしいところですが、同じく淡い色合いのピアニストGiovanni Guidiあたりと組んでスローなルバート大会をやると面白いんだろうなあ。
 さてどうなりますやら・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Brasil” (2011) Yotam

“Brasil” (2011) Yotam

Yotam Silberstein (guitar, bandolim, vocals)

David Feldman (Piano) John Lee (Acoustic Bass) Vanderlei Pereira (Drums, Percussion)

Sharel Cassity (alto flute, clarinet) Roy Hargrove, Claudio Roditi (flugelhorn) Paquito D'Rivera (clarinet) Toninho Horta (acoustic guitar)
 

Brasil
Yotam
Jazz Legacy Prod
2011-08-09
ヨタム・シルバースタイン



 イスラエル出身のジャズギタリストYotam Silbersteinのブラジル音楽集。

 このアルバムを初めて聞き、どこかでアルゼンチンのピアニストAndras Beeuwsaertと共演していたことを知っていたので、てっきりブラジルかアルゼンチンの人だと思っていました。

 それにしてはずいぶんジャズっぽい人だなあ、と。

 とても美しい艶やかなクリーントーンのエレキギターで、ピアノトリオをサポートにアコースティックなブラジリアンジャズ。

 ビッグネームなホーン陣のサポートが数曲で入りますが、あくまでアンサンブルと自己主張の強くない穏やかなインプロビゼーション。

 二曲で参加するToninho Hortaもアコースティックギターで慎ましやかなサポート。

 楽曲はJobim、Edu Lobo, Carlos Lyra, Dorival Caymmi などなど・・・

 と書いてしまうとどこにでもありそうなブラジリアンジャズ、ブラジリアンフュージョンっぽく聞こえてしまいそうですが、一味違います。

 ちょっとビックリの美しい音作りの完璧な演奏に加えて、洗練され過ぎず、素朴になり過ぎず絶妙のバランス感覚。

 フレージングも新しからず、古からず、それでも似た人を思い出せない特別な音使い。

 洗練されたジャズムードはGeorge Bensonあたりかなあ、と思いながらも何か違う新しい感じがします。

 ジャズやボッサだけでなく、ロック、フォーク、フォルクローレを通過してきた新世代ゆえの何かがあるのでしょうね?

 イスラエルエキゾチシズムも隠し味であるのかな?

 当り前のことを当たり前にやって、洗練されただけではない、不思議なカッコよさ。

 とにもかくにも極上の爽やかで瑞々しいサウンド。

 朝の起き抜けにはピッタリの音。

 たくさんありそうで、あまりない極上のブラジリアンジャズ。

 ちょっと聞きでは普通に聞こえてしまうのが唯一の難点。

 爽やかで素敵な一作です。





posted by H.A.

【Disc Review】“Resonance” (2010) Yotam

“Resonance” (2010) Yotam

Yotam Silberstein (Guitar, Voice, Oud)

Aaron Goldberg (Piano) Christian McBride (Bass) Gregory Hutchinson (Drums)

Roy Hargrove (Trumpet)
 

Resonance
Yotam
Jazz Legacy Prod
2010-05-11
ヨタム・シルバースタイン




 イスラエル出身のギタリストYotam Silbersteinの現代モダンジャズ作品。

 この手の新録音のモダンジャズは聞かなくなって久しいのですが、これはカッコいい。

 “Brasil” (2011)を最初に聞いてしまったがゆえに南米の人だと思っていましたが、こちらはなるほどの現代ジャズ。

 コンテンポラリージャズと書いてしまうと、変拍子やらメカニカルで複雑なメロディやら、いかにも先進的な感じもしてしまうので、あえて現代モダンジャズと書いておきます。

 そんな感じの、なんだか新しいんだけども、落ち着いたイメージ、オーソドックスなサウンド。

 有名どころの手練れをサポートにアコースティックな4ビート

 Roy Hargroveの参加は二曲のみで、他はシンプルにクリーントーンのエレキギターを中心としたカルテット。

“Two Bass Hitt” や”Daahoud”のジャズスタンダードが収録され、多くを占めるオリジナル曲も現代のジャズ風な楽曲。

 それでこのメンバーだと容易に想像できる普通のジャズになってしまいそうですが、何か違います。

 もちろん全員新世代の人たちなので、古めかしいモダンジャズにはならないし、演奏力は一線を越えた人たちなのですが、何が違うのと問われれば・・・?

 ロックやらファンクやらの色合い、あるいはイスラエル独特の色合いがどこかに混ざっているんでしょうかね?

 そうは聞こえないJust Jazzなんだけどなあ・・・

 バンド全体が突っ走る結構ゴリゴリ系の演奏ですが、とても瑞々しい美しい音、スムースなジャズギター。

 オーソドックスなようで、さりげないフレーズの加速感とか、完璧にビートに乗っているようで強烈な推進力が出ている音符の置き方とか、ちょっと他の人にはないカッコよさ。

 音の美しさも完璧。

 これは気持ちいいや。

 ドラムもベースも何だか久しぶりに聞くけど、昔のまま、切れ味抜群。

 隠れた現代モダンジャズギターの名作だと思います。





posted by H.A.

【Disc Review】“Back on the Corner” (2006) David Liebman

“Back on the Corner” (2006) David Liebman
David Liebman (Soprano, Tenor Sax, Flute, Piano, Synthesizer)
Mike Stern, Vic Juris (Guitars) Anthony Jackson, Tony Marino (acoustic, electric,  stick bass) Marko Marcinko (Drums, Keyboard Programming, Percussion)
 
Back on the Corner
Dave Liebman
Tone Center
2007-01-30
デイブ・リーブマン

 Miles Davisシリーズ番外編。
 Dave Liebman、レギュラーメンバーにMike Sternを迎えた“On The Corner” (Jun.1.6,Jul.7.1972) Miles Davisへのオマージュ作品。
 自身も参加した“On The Corner”にどこまで本気取り組もうとしていたのか、あるいはリバイバルに合わせてやらされたのか、実相はわかりませんが、“Ife”,”Black Satin”をカバーし、“J.B. Meets Sly”なんてオリジナル曲からするとそこそこ本気だったのでしょう。
 が、パーカッションが入らないと、あるいはツインドラムにしないと、“On The Corner”の世界にはなかなか・・・
 といったとことで、“On The Corner”的ではなく、あくまで2006年時点の彼のレギュラーバンドの音でのコンテンポラリージャズ~フュージョンミュージック with Mike Stern。
 と割り切ってしまえば結構いい作品です。
 冒頭からちょっと妖し気なムード。
 ファンクなベースとサックス、ギターが絡み合うミディアムテンポチューン。
 相変わらずの饒舌なサックスと、とてもスムースなロックなようなジャズのようなあのMike Sternのギター。
 さすがの表現力、演奏力。
 続くMilesチューン“Ife”あるいは”Black Satin”もオリジナルのイメージとは違ったあくまで2006年型 Dave Liebmanバンド型の音。
 ポリリズミックではなく、素直にバウンドする、あるいは突っ走るファンクナンバー。
 ”Black Satin”にしても「あの」ビートではなく、Al Foster的な揃った突っ走りドラムに加えてさまざまなビート展開、ジャンピーな高速ファンクナンバーにアレンジ。
 その上でのMike Sternの高速ギターと高速ソプラノサックス。
 これはこれで悪くないかな。
 その他諸々、各楽器のソロでの短いインタールドをはさみながら、スペーシーなナンバーやら、グルーヴィーな素直なフュージョン、妖し気なファンクなどなど。
 と思っていら、最後に収められた“J.B. Meets Sly”が新しい感じのファンクビートがカッコいい、Milesがやっていてもおかしくないようなハイテンションなナンバー。
 “On The Corner”的ではなく、Miles復帰後、“You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985) Miles Davisっぽい感じではありますが、そのタイトル曲のようななかなか希少なカッコいい演奏。
 考えてみれば、自身が参加した“On the Corner/New York Girl/Thinking of One Thing and Doing Another”をカバーしないのも面白いなあ。
 John McLaughlinの代わりをMike Sternがやるとなると興味津々なのですがね・・・
 ま、“On The Corner”のことは気にせずに、リズム隊もカッコいいし、素直にDave Liebman、Mike Stern、Vic Juris、名人芸のインプロビゼーションを楽しむのが吉。
 この手のエレクトリックMilesオマージュ的作品、たくさん出ていて、最近では“Everything's Beautiful” (2015) Miles Davis & Robert Glasperなどありますが、私の知る限りのベストは“Animation - Imagination” (1999) Tim Hagansかなあ。
 

※音源が無いのでMilesバンドでの雄姿を。


posted by H.A.

【Disc Review】“Live Around the World” (1988–1991) Miles Davis

“Live Around the World” (1988–1991) Miles Davis
Miles Davis (trumpet)
Foley (lead bass) Deron Johnson, Kei Akagi, John Beasley, Joey DeFrancesco, Adam Holzman, Robert Irving III (keyboards)
Benny Rietveld, Richard Patterson (bass)
Marilyn Mazur, Munyungo Jackson (percussion) Erin Davis (electronic percussion)
Ricky Wellman (drums)
Rick Margitza (tenor sax) Kenny Garrett (alto sax, flute)
 
Live Around the World
Miles Davis
Imports
マイルス・デイビス


 Miles Davis、“You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985)以降の楽曲のライブ音源のオムニバスアルバム。
 “In a Silent Way”に導かれて始まるハイテンションなファンクフュージョン。
 決して好調な演奏ばかりではないし、サポートメンバーだけでの時間も長いのだけども、”Mr. Pastorius”~”Amandla”と続くバラードなど、素晴らしい演奏がいくつも。
 その他含めて凡百のフュージョンバンドとは一味も二味も違うステージ。
 最後の録音と言われる“Hannibal”もさることながら、出色は“Time after Time”。
 “You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985)の短いバージョンでは収められなかった、ファンならずとも涙なしでは聞けない素晴らしいインプロビゼーションを聞くことができます。
 この曲を選択した必然性がわかる素晴らしい演奏。

 オープンホーンでの静かなインプロビゼーションによるイントロ。
 これだけでも名曲が出来てしまいそうなフレージング。
 ミュートに変えて卵の殻の上を云々ごとくのテーマメロディの提示から、探るように紡がれるとても美しいメロディの数々。
 少なくない空白の時間も素晴らしい余韻。
 さらにオープンホーンでの激情とともに音量を上げるバンド。
 それもわずかな時間、再びミュートでの寂寥感の塊のようなフレージングと、ギターとの静かなインタープレー。
 締めは最後の力を振り絞るような短いアウトロで幕・・・・
 これは凄い演奏。
 ポップなMilesなんて・・・、フュージョンのMilesなんて・・・、あまり吹けていないMilesなんて・・・とお思いの方は一度聞いてみてください。
 ベストパフォーマンスのひとつ、と強弁するつもりはないけども、これは他の誰であってもダメ。
 Miles Davisしかできない演奏だと思います。
 たとえ十分に力を入れて吹き切ることができなくなっていたとしても、幾つものミストーンがあったとしても、稀代の天才インプロバイザーが最後期に紡ぐ誰にもマネのできない美しいメロディ。
 とても優しくて、しかもハードボイルド。
 40年以上も最前線を走り続けた戦士の滋味もあふれる素晴らしい幕。
 ・・・「滋味」なんて言葉は似合わないので、最後までクールだった、に置き換えときましょう・・・


 


 復帰~ポップファンクのMilesを好んで聞いている人がどのくらい多いのかはわかりませんが、モダンジャズ、4ビートにこだわりさえしなければ、いいアルバム、いい演奏がたくさんあります。
 “The Man with the Horn”然り、“We Want Miles”然り。
 “Decoy”以降はすっかりポップになってしまいますが、これもまた一興。
 “You're Under Arrest”のタイトル曲、“Live Around the World”の“Time after Time”などは、大大大名演だと思います。

◆モダンジャズ、ハードバップ
(1959)      "Kind of Blue"
(Mar.1961)    "Someday My Prince Will Come"
(Apl.1961)    "In Person Friday and Saturday Nights at the Blackhawk"
(May.1961)    "Miles Davis at Carnegie Hall"
(1962)      “Quiet Nights”  
(Apl.May.1963)   “Seven Steps to Heaven” 

◆モーダル新主流派ジャズ
(Jul.1963)     “Miles Davis in Europe” 
(Feb.1964)     “Four & More”、“My Funny Valentine” 
(Jul.1964)     “Miles in Tokyo” 
(Sep.1964)     “Miles in Berlin” 
(Jan.1965)     “E.S.P.” 
(Jul.1965)     “(Highlights From) Plugged Nickel” 
(Oct.1966)     “Miles Smiles
(May.1967,1962)  “Sorcerer
(Jun.Jul.1967)   “Nefertiti” 
(Oct,Nov.1967)  “Live in Europe 1967: Best of the Bootleg, Vol. 1"

◆電化ジャズ、ファンクジャズ
(Jan.May.1968)    “Miles in the Sky” 
(Jun.Sep.1968)    “Filles de Kilimanjaro” 
(Jun.1967,Nov.1968)  “Water Babies” 

◆電化ジャズ、ファンクジャズ、フリージャズ
(Feb.1969)      “In a Silent Way” 
(Jul.5,1969)      ”Bitches Brew Live” /一部 
(Jul.25,1969)     ”1969Miles - Festiva De Juan Pins
(Jul.26,1969)    “at Festival Mondial du Jazz d’Antibes
(Aug.19-21,1969)  “Bitches Brew
(Oct.27,Nov.4,1969) “Live in Copenhagen & Rome 1969” <DVD>
           “Live at the Tivoli Konsertsal” <DVD>
(Nov.5,1969)    “at Folkets Hus, Stockholm"
(Nov.7,1969)    “Berliner Jazztage in the Berlin Philharmonie" <DVD>
(Mar.1970)     “Live At The Fillmore East - It's About That Time
(Feb.18,Apl.7,1970)  “Jack Johnson"

(Apl.10.1970)    “Black Beauty / Miles Davis At Fillmore West

(Apl.11.1970)    “Miles At Fillmore(完全版)”/一部
(Feb.Jun.1970)   “Live Evil” /一部
(Jun.1970)     “Miles Davis At Fillmore
(Aug.18,1970)    “Live at the Berkshire Music Center, Tanglewood, MA
(Aug.29,1970)    ”Bitches Brew Live /一部” (at the Isle of Wight Festival)
(Dec.16-19,1970)   “Live Evil”、“The Cellar Door Sessions1970” 
(Nov.6.1971)     “The 1971 Berlin Concert” <DVD>
 
◆ボリリズミックファンク
(Jun.1972)      “On The Corner” 
(Sep.1972)      “In Concert” 

◆疾走ファンク
(Oct.27,1973)    “Live in Stockholm 1973” <DVD>
(Nov.3,1973)     “Stadthalle, Vienna 1973” <DVD>
(Mar.1974)      “Dark Magus” 
(May.1970-Oct.1974) “Get Up with It” (未発表録音+新録。ボリリズミックファンク寄り。) 
(Feb.1.1975)     “Agharta”、“Pangaea

◆未発表録音集
(Nov.1969-Jun.1972) “Big Fun”  (ファンクジャズ+ボリリズミックファンク。) 
(Oct.27.1995-Jan.27.1970) “Circle in the Round”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)
(1960-1970)     “Directions”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)

◆復帰~ポップファンク
(Jun.1980–May.1981) “The Man with the Horn
(Jun.Jul.Oct.1981)   “We Want Miles” 
(Sep.1982–Jan.1983) “Star People” 
(Jun.1983–Sep.1983) “Decoy” 
(Jan.1984–Jan.1985) “You're Under Arrest” 
(Jan.Feb.1985)    “Aura” 
(Jan.–Mar.1986)    “Tutu” 
(Jan.–Feb.1987)    “Music from Siesta” 
(Dec.1988–1989)   “Amandla” 
(Mar.1990)       “Dingo” 
(Jan.–Feb.1991)    “Doo-Bop” 
(Jul.1991)       “Miles & Quincy Live at Montreux” 
(1998-Aug.25,1991)  “Live Around the World
 

posted by H.A.  

【Disc Review】“Miles & Quincy Live at Montreux” (Jul.1991) Miles Davis

“Miles & Quincy Live at Montreux” (Jul.1991) Miles Davis
Miles Davis (trumpet)
Quincy Jones (conductor, producer)
Kenny Garrett (alto saxophone) Wallace Roney, Ack Van Royen (trumpet, flugelhorn) Lew Soloff, Miles Evans sic (trumpet) Tom Malone (trombone) Alex Foster (alto, soprano sax, flute) George Adams (tenor sax, flute)
Gil Goldstein, Delmar Brown (keyboards) Kenwood Dennard (drums, percussion)
Marvin Stamm, John D’Earth, Jack Walrath (trumpet, flugelhorn) John Clark, Tom Varner (French horn) Dave Bargeron, Earl McIntyre (euphonium, trombone) Dave Taylor (bass trombone) Howard Johnson (tuba, baritone sax) Sal Giorgianni (alto sax) Bob Malach (tenor sax, flute, clarinet) Larry Schneider (tenor sax, oboe, flute, clarinet) 
Jerry Bergonzi (tenor sax) George Gruntz (piano) Mike Richmond (double bass) John Riley (drums, percussion)
Manfred Schoof, Ack van Royen (trumpet, flugelhorn) Alex Brofsky, Claudio Pontiggia (French horn) Roland Dahinden (trombone) Anne O’Brien, Julian Cawdry, Hanspeter Frehner (flute) Michel Weber (clarinet) Christian Gavillet (bass clarinet, baritone sax)
Tilman Zahn (oboe) Dave Seghezzo, Xavier Duss, Judith Wenziker (oboe) Christian Raabe, Reiner Erb (bassoon) Xenia Schindler (harp) Conrad Herwig (trombone) Roger Rosenberg (bass clarinet, baritone sax)
Benny Bailey (trumpet, flugelhorn) Carles Benavent (double bass, E-Bass) Grady Tate (drums)
 
Miles &amp; Quincy Live at Montreux
Miles Davis
Rhino/Wea UK
マイルス・デイビス


 Miles Davis、Quincy JonesとのコラボレーションによるビッグバンドによるGil Evansとのコラボレーションの再現ライブ。
 一度限りのジャズフェスティバル対応とはいえ、過去のサウンドには戻ろうとはしなかったMiles Davisとしては極めて異色な作品。
 確かにアレンジは再現を中心にしているようにも思えるし、Miles自体も好調な感じではありません。
 それでもこの優雅な感じは他では聞けない心地よさ。
 トランペットもなんだかんだで他の人にはこの雰囲気は出せないでしょう。
 懐古趣味も結構なのではないかと、私的には思います。
 さて、ライブの映像も見て、オリジナル作品引っ張り出して聞いてみますかね。


 

posted by H.A. 
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