吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年11月

【Disc Review】“Spain Forever”(2016)Michel Camilo,Tomatito

“Spain Forever” (2016) Michel Camilo,Tomatito 
Michel Camilo (Piano)Tomatito (Guitar)
 
SPAIN FOREVER
MICHEL & TOM CAMILO
EMARR
2016-10-07
ミッシェル・カミロ
トマティート


 ラテンジャズピアニストMichel Camiloと現代スパニッシュギタリストの第一人者TomatitoのDuo作品、“Spain”(2000)、“Spain Again” (2006)に次ぐ第三弾。
 Duoで三作目にもなればマンネリにも陥りそうですが、本作は「なんだこれは?!」の凄い選曲。
 Egberto Gismonti ”水とワイン”から始まり、Chelie Haden “Our Spanish Love Song”、Astor Paizzolla “Oblivion”、 Erik Satie ”Gnossiennes No.1”、“Cinema Paradiso”・・・
 まるで私の好みを知っているような・・・わけはないので、哀愁、郷愁感、寂寥感、さらにエキゾチシズムが溢れる古今東西の名曲を選ぶとこうなる、といった見本のようメロディが並びます。
 終盤に収められたMichel Camiloの短いオリジナル曲も寂寥感の塊のようなメロディ。
 いつも通りにエキゾチシズムの塊のようで、その実、洗練された都会的な音作り。
 二人揃って瑞々しく、この上もなく美しい音もここまでと同様です。
 冒頭から哀愁の塊のようなメロディと流麗なピアノ。
 これでもかこれでもかと続く名バラードの連続。
 これだけ並ぶと、楽曲自体のメロディが強すぎて、一歩間違うと歌の無い歌謡曲にもなりそうですが、端々で急加速するスパニッシュなギターがそうはさせません。
 ピアノも同様にタメと疾走が交錯する音使い。
 躍動感は全二作よりは抑え気味かもしれません。
 その分落ち着いたムード。
 強いビートが出るのは最後のChick Corea ”Armando's Rhumba”のみ。
 ガンガンゴンゴン行く曲が2,3曲あっても・・・、あるいは一曲全編ルバートで・・・とか思ったりもしますが、贅沢はいえません。
 さてこのシリーズの三作、一番カッコいいのはどれか?
 楽曲だけなら本作、演奏含めると一番柔らかな感じがする“Spain Again” (2006)が私的な好みかな?
 いずれも名作だと思います。



 
 posted by H.A.

【Disc Review】“Spain”(2000)Michel Camilo,Tomatito

“Spain”(2000)Michel Camilo,Tomatito 
Michel Camilo(Piano)Tomatito(Guitar)
 
Spain
Michel Camilo
Polygram Records
ミッシェル・カミロ
トマティート


 ドミニカ出身のラテンジャズピアニストMichel Camiloと本場の現代フラメンコギタリストTomatitoのDuo作品、第一弾。
 美しい音と抜群のテクニックのピアニストと現代スパニッシュギターの第一人者が、お互いの得意なラテン風味の曲を持ち寄って演奏するのだから悪いわけがありません。
 どちらも激しい情熱的な演奏が身上ですが、ラテン特有の泥臭さや汗臭さを感じさせない、美しい音、洗練された音使いも共通点。
 本作も何の奇をてらうことのない、二人のキャラクター直球そのままの演奏ですが、洗練されたいかにも現代的なスパニッシュ〜ラテンな音作り。
 Duoゆえに伸び縮みし、揺れ動くビート感。
 インタープレーもバッチリで、スローでは揃ってタメを効かせた漂うような音、アップテンポでは強烈な加速、疾走感での並走。
 それでいて透明度の高い、瑞々しく美しい音。
 冒頭の“Aranjuez”〜”Spain”からそんな演奏が並びます。
 さすがにこの曲は聞き飽きましたが、さすがの哀愁の塊、スリルの塊のような演奏。
 続くもベタベタのラテン曲”Bésame Mucho”もごちそうさまな曲ですが、全編ルバートでのスローバラードとして処理していて、一味違うカッコよさ。
 その他、Michel Camiloのバラードや、Tomatitoの現代フラメンコ曲など、名メロディ、名演奏が並びます。
 ここまでうまくて美しい音が出せるのならば、フリーや混沌を織り交ぜてもカッコよくなりそうですが、激しい音を出してもそうはならないのがこの二人のスタイルなのでしょう。
 また、これにドラムやベースが入るとさらにエキサイティングになるのでしょうが、この美しい世界は壊れてしまうのかもしれません。
 そんな絶妙なバランス。
 バイオリン、あるいはバンドネオンが入ると、もっと凄まじい哀愁と強烈な浮遊感の世界になりそうですが・・・
 終盤に収められたTomatito作の現代フラメンコ曲“La Vacilona”〜 タンゴ曲”Aire de Tango”の哀愁と疾走感のカッコいいこと。
 “Paseo de los Castanos” (2007) Tomatitoに、相方にGeorge Bensonを迎えたバージョンがありますが、そちらも凄まじい疾走感の演奏、さらにバイオリン入りの哀愁の塊のような演奏です。
 さておき、本作、全編通じて名曲、名演揃いの名作でしょう。
 同じく名作の第二弾“Spain Again” (2006)、最新作第三弾“Spain Forever”(2016)へと続きます。




 posted by H.A.

【Disc Review】"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro

"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro
André Mehmari (Piano, synth, electric piano, bass flute, guitar, charango, bandolim, accordion, voice) Antonio Loureiro (Drums, vibraphone, voice)
 
アンドレ・メーマリ

 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの最新作は、同胞のビブラフォンを中心としたマルチ楽器奏者とのDuo。
 二人ですが、例によってオーバーダビングも含めてコンボ作品に近い音作り。
 近作ではクラシックの色合いが強い作品が続いている印象がありましたが、本作もその色合いながら、ビート感も効いた曲が多く、ジャズ、ポピュラーミュージックの色合いが戻ってきた感じでしょうか。
 Antonio LoureiroはAndré Mehmariよりも一回り若い若手。
 ミナス出身のようで、なるほど、オリジナル曲の展開やそれに乗ってくるvoiceが”Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny的です。(Pat Methenyが影響を受けた側でしょうから、そんな形容は妙なのですが・・・)
 ふわふわとしたビブラフォンもそんな感じの浮遊感の強い音使い。
 楽曲は二人のオリジナル、共同名義のインプロビゼーション?が概ね三分の一ずつ。
 どれも淡い色合いのセンチメンタルなメロディ揃い。

 冒頭から哀愁が漂うメロディを土台に、柔らかく空から舞い落ちてくるようなピアノの音と、その周囲を漂うようなビブラフォン。
 さらには、さりげないハミングに、これまたさりげないクリーントーンのエレキギター。
 続くはミナス的な幻想感とドラマチックな交錯する漂うような楽曲。
 これはたまりませんねえ。
 以降クラシック的な演奏も入り混じりながら、美しい演奏が続きます。
 同時期?に発表された似たテイストのアルゼンチン人アーティストAndrés Beeuwsaertの “Andrés Beeuwsaert” (2015)と比べると、瑞々しさは同様ながら、そちらがせせらぎのような穏やかで緩やかな音だとすれば、こちらは流れの緩急の変化が強い渓流のような音。
 穏やかなようで性急なようで、突っ走ったり緩んだり。
 これ見よがしな派手な展開はありませんが、とても繊細で上品な音。
 ジャズでもクラシックでもポップスでもフォルクローレでもブラジル伝統音楽でもない、それらが混ざり合ったAndré Mehmariならではの音。
 終盤に集められたピアノとドラムによるインプロビゼーション集?はさまざまな表情。
 メロディアスなバラード風から、少々強面なフリージャズ風の演奏まで。
 二、三分の長くはない演奏を繋ぎつつ、何らかのドラマを描いているのでしょう。
 あの圧倒的なジャズピアノが出てこないかあ・・・と想わせながら、ピアノの強打で幕を閉じます・・・
 わかりやすさ、取っつきやすさなら“Lachrimae” (2003) André Mehmari、あるいは似た色合いの別アーティストの近作ではAndrés Beeuwsaert の“Andrés Beeuwsaert” (2015)もそう。
 が、格調高さなら本作。
 どの作品もとても優雅です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Andrés Beeuwsaert” (2015) Andrés Beeuwsaert

“Andrés Beeuwsaert” (2015) Andrés Beeuwsaert
Andrés Beeuwsaert (Piano, Voice)
Juan Pablo Di Leone (Flutes, Harmonica, Voice)
Tatiana Parra (Voice) Vardan Ovsepian (Piano)
 
Andres Beeuwsaert
Andres Beeuwsaert
NRT
2016-10-15
アンドレス・ベエウサエルト

 アルゼンチン、現代フォルクローレ~ジャズのピアニストAndrés Beeuwsaert、東京でのライブ録音。
 前半五曲ほどがソロでのピアノとボイス、三曲がハーモニカ、フルートとのDuo、最後の二曲にTatiana Parra、Vardan Ovsepianが加わります。
 Juan Pablo Di Leone は現代フォルクローレの中心人物の一人Carlos Aguirreとつながる人。
 Tatiana Parra は名作“Aqui” (2010)での名コンビ、Vardan OvsepianはそのTatiana ParraとのDuo作品“Lighthouse” (2014), “Hand In Hand” (2016) などを作っている間柄。
 といったところで、現代フォルクローレ、南米音楽の旬なところを集めた豪華なライブ。
 さらに楽曲は、“Dos ríos” (2008)、“Cruces” (2012)といった名作からのチョイスに加えて、Hugo Fattoruso、Mário Laginha、Mono FontanaCarlos AguirreAndré Mehmari、Sérgio Santosなど、この筋が好きな人からすれば、なるほどねえ・・・な名前、メロディが並んでいます。
 哀愁、郷愁が漂うメロディアスな楽曲が並びます。

 穏やかで柔らかなピアノとハミングでスタート。
 “Cruces” (2012)などのコンボ作品とはまた違った質感。
 元々上品な音の人ですが、さらに余分なもの削ぎ落としたような上品さ柔らかさの優しい音。
 穏やかなせせらぎか、緩やかな風のような空気感。
 これはソロ、少人数でなければ出せないムードでしょう。
 微妙なタメと要所での疾走感が交錯する、とても優雅ピアノはいつも通り。
 それら含めてブラジルのAndré Mehmariと似た音使いも目立ちますが、そちらよりも線が細くて、かつ柔らかい音、穏やかな表情。
 さらに、よりジャズっぽい音。
 とても美しいピアノミュージックですが、Keith Jarrett の“The Köln Concert” (Jan.1975)などのような激甘なメロディや、激情や狂気のようなものはなく、あくまで淡い色合い。
 刺激的ではありませんが、それが今の時代には合っているようにも思います。
 数曲のハミング~呟くようなボーカルも寂寥感を醸し出していい感じ。
 ハーモニカ、フルートが加わってもその穏やかで優雅な表情は変わりません。
 終盤、ようやく強い音、速い音が前面に出る演奏。
 さらにTatiana Parraが合流するとテンションとスピードが上がりますが、やはり優雅、優美です。
 これは、いや、これもここまでのリーダー作同様に名作です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Streams” (2015) Jakob Bro

“Streams” (2015) Jakob Bro
Jakob Bro (guitar) 
Thomas Morgan (double-bass) Joey Baron (drums)
 
Streams [12 inch Analog]
Jakob Bro
Imports
2016-12-02
ヤコブ・ブロ

 デンマークのギタリストJakob Bro、“Gefion” (2013)に続くECMレコード第二弾。
 ドラマーが交代していますが、前作と同様、フワフワと漂うような不思議な音空間。
 全てスローテンポ、寂寥感の強い漂うような音。
 どれもが淡い郷愁を湛えたような、暖かで心地よい音の流れ。
 これで抽象度が高かったり、キツめの音だったり、怖いメロディだったりすると、取っ付きにくそうだけども、そうはならないのがこの人ならではの絶妙なバランス。
 美しいクリーントーンのギターとそれに寄り添うようなリズム隊。
 美しく淡いメロディがふわふわゆらゆらとシャボン玉のように次々と現れては消えていくような空間。
 全曲オリジナル曲。
 フォーキーな感じ、芯があるようで、抽象的なようで、悲し気なようで、懐かし気なような、淡くてふわふわとしたメロディ。
 テーマとインプロビゼーションの境目が曖昧な柔らかい時間。
 ギターとベースのどちらが前面に出ているのか、ドラムがどんなビートを出しているのかさえ曖昧な不思議な音の流れ。 
 ジャズでもロックでもない不思議な音が次々と湧き出してくるように続きます。
 ギターはシャープなようで、線が細いようで、まろやかなクリーントーン中心。
 ベースは本作もスローテンポで絶妙なグルーヴを出す、深くて上品な音のThomas Morgan。
 Anders JorminMarc Johnsonなどのベテラン陣に変わる次の世代のECMのハウスベーシストはこの人なんだろうなあ、と勝手に思っています。
 中盤からはディストーションも使ってビート感も強くなりますが、漂うような質感、哀感は変わりません。 
 淡くて美しくて、不思議で、暖かなギターの一作。
 プロデューサーはもちろん総帥Manfred Eicher。
 近年のECM、近い印象の作品がいくつもありますが、この色合いが2010年代型ECMの典型的な音、キツめでハイテンションで冷たい質感の1970年代から、変化、進化を繰り返しながらたどり着いた音なのかもしれません。
 気のせいかもしれませんが、時間をかけて、グラデーションが付きながら淡くなってきているようにも感じます。
 オーソドックスなトリオ編成での作品が二作続きましたので、おそらく次作は違う編成。
 トランぺッターTomasz Stanko とは“Dark Eyes”(2009)、サックスLee Konitz とは"December Song” (2012)などで共演済。
 ECM内ならば、Tomasz Stankoとガッツリやってほしいところですが、同じく淡い色合いのピアニストGiovanni Guidiあたりと組んでスローなルバート大会をやると面白いんだろうなあ。
 さてどうなりますやら・・・




posted by H.A.


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