吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年10月

【Disc Review】“Our Secret World” (Sep.2009) Kurt Rosenwinkel

“Our Secret World” (2009) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Abe Rabade (Piano) Carlos Azevedo (Piano) Demian Cabaud (Bass) Marcos Cavaleiro (Drums) and horns

Our Secret World
Kurt Rosenwinkel
Imports
2015-01-06
カート ローゼンウィンケル




 前掲のJonathan Kreisbergで思い出して久々に。
 いまや大御所Kurt Rosenwinkelのビッグバンドアルバム。
 ゴージャス&ドラマチック。
 気合入ってます系のコンテンポラリージャズ。
 前掲のJonathan Kreisbergの作品も近いといえばそうなのですが、これと比べると抑制気味、こちらは情け容赦一切なし。
 聞いていて汗が吹き出してくるような、サウナの中で全力疾走しているような?、そんな音。
 リズム隊、ホーン共に強烈ですが、ピアノ、ホーン陣などメンバーのソロはほとんどなく、あくまでアンサンブル。
 その分厚い音、強烈なグルーブの上でギターを文字通り弾きまくり、全編長尺なインプロビゼーション。
その全てがドラマチック。
 次から次へと新しいフレーズ、展開がこれでもかこれでもかと、あるいは汲めども尽きぬ泉のように続く、そんな演奏ばかり。
 全編、緊張感、昂揚感の塊。
 こりゃ凄まじい。
 ここまで続くとマンネリになってしまいそうな感もあるのですが、決してそんなことはありません。
 ピークに向けての展開が明確というか、極めて自然というか。
 構成は複雑なのだけども、リズムと個々のフレーズが明快なのと、徐々に自然に盛り上がりながら音量が上がり、突っ走っていくといった起承転結が見える流れだからかなあ。
 手に汗握るような展開が延々と続き、終わるとホッとするようなそんな展開。
 全てのインプロビゼーションがそうなのだから凄い音楽です。
 ギターの音、このアルバムではディストーションを掛けたファットな音が中心。
 ディストーションはあまり好きではないのですが、この人はなぜかOK。
 触れるとはじけてしまいそうな張り詰めた音。
 一音一音がキレイ。
 不思議系のフレージングとピッタリなのでしょう。
 この人のギターはロック的なのかジャズ的なのか?
 うーん?よくわからん。
 いずれにしても、若手ジャズ系の人の中でもカッコよさ、緊張感はピカイチ、ロック好きとして聞いてもこれだけカッコいいのは少ないのでは。
 曲は不思議系、複雑系。
 愛想は無いし、リラックスできる感じも無いのですが、逆に男臭い緊張感、切迫感がカッコいい。
 ギター、楽曲等々極めて今風ではありますが、アルバム全体ではあくまでジャズの雰囲気。
 強烈なリズムとホーン。
 複雑な構成の中、思い出したように出てくるシンプルな4ビートが気持ちいい。
 コンボでのライブ盤”The Remedy”(2006)も凄まじいアルバムでしたが、勝るとも劣らず。
 エキサイティング系、昂揚感系ジャズ、体育会系ジャズ、筆頭の一つ。

(※本投稿は、2015/9/3投稿分から転載しました。)


posted by H.A.

【Disc Review】“Reflections” (Jun.2009) Kurt Rosenwinkel Standards Trio

“Reflections” (Jun.2009) Kurt Rosenwinkel Standards Trio
Kurt Rosenwinkel (guitar) Eric Revis (bass) Eric Harland (drums)

Reflections-Standards Trio
Kurt Rosenwinkel
Imports
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、激烈なライブ“The Remedy” (2006)に次いでは、トリオでのジャズバラードアルバム。
 びっくりするような平和なモダンジャズ。
 あれれ・・・ってなぐらいの変わりようですが、“Intuit” (1998)といったアルバムもありましたので、これがルーツ、好きな世界なのでしょう。
 聞く方は気持ちを切り替えないと面食らってしまいますが・・・
 全曲ジャズスタンダード。
 Thelonious Monk、Wayne Shorterから二曲ずつというのがいかにも不思議系の彼らしいチョイス。
 フレージングはいつも通りなのかもしれませんが、トリオゆえのコードワークを挟みつつの演奏が、いつもの激烈突っ走りのイメージを抑えているのかもしれません。
 ギターは強いディストーションは使っていないものの、いつもファットな音。
 純クリーントーンではなく、ナチュラルなオーバードライブが掛かった感じ。
 もちろんほとんどすべての場面でギターが前面に出るのですが、まろやかなトーンも手伝って、穏やかな印象。
 スローテンポだとちょっとねっとりとした感じでしょうかね?
 少しビートが上がってシングルトーンのソロが始まるとワクワクするような疾走感。
 やはりこの人ならではの個性的な音使い。
 デビュー作“East Coast Love Affair” (Jul.1996)のタイトル曲の再演がありますが、あまり変わった感じはしません。
 革新的クリエーターな印象、確かに全体のサウンドは革新的で常に変わってきていますが、ギター演奏の骨格自体はデビュー時から変わっていないのでしょうね。
 なんだかんだで穏やかながらも不思議系。
 なお、デビュー作から続くギターとユニゾンのボイスがなぜか本作では入っていません。
 “Intuit” (1998)でも入っていなかったと思うので、スタンダード演奏ではやらないことにしたのかな?
 カッコいいのにね。
 ・・・などなど、一休みするのはつかの間、次は本作の三か月後のセッション、またまた激烈な“Our Secret World” (Sep.2009)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Remedy: Live at the Village Vanguard“ (2006) Kurt Rosenwinkel

“The Remedy: Live at the Village Vanguard" (2006) Kurt Rosenwinkel 
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Mark Turner (Tenor Saxophone) Aaron Goldberg (Piano) Joe Martin (Bass) Eric Harland (Drums)

レメディ~ライブ・アット・ヴィレッジ・バンガード
カート・ローゼンウィンケル
SONG X JAZZ Inc,.
2013-02-27


 2014年現在、現代のトップジャズギタリストなのでしょう、Kurt Rosenwinkelの集大成ともいえるライブ盤。
 とにかく凄まじい。
 音圧、グルーブ感、スピード感、その他諸々。
 各人のインプロビゼーションも凄いが、バンドとしてのノリが凄まじい。
 複雑な構成の曲、激しいビートに乗せて、ディストーションを掛けたギターが唸りまくり。
 さらにMark Turnerのサックスもいつものクールさだけではなく、バンドの音に引っ張られるように激しいインプロビゼーション、ピアノもガンガンゴンゴン。
 特に凄まじいのはEric Harlandのドラム。
 全般煽りまくり、ここまでバコバコ叩く人だったとは。
 疾走しまくり、超音速の戦闘機か何かで何処か遠い所に連れて行かれているような感覚。
 音圧も凄いのですが、ロックっぽいかと言えばそうではなく、バンドは明らかにジャズのノリ。
 ギターのフレーズも変態チックなのだけどもジャズっぽい。
 必ずしも愛想があるとは言えない楽曲や、4ビートとは明らかに違う質感は、モダンジャズファンからは敬遠されるのかもしれませんが、新しいタイプのジャズの完成形の一つなのだと思います。
 Pat MethenyのUnity Bandってこれに影響されていたりして、と思うのは私だけ?
 ヘビー級の現代ジャズ。

(※本投稿は、2014/07/25投稿分から転載しました。)

※メンバーは違いますが。

posted by H.A.

【Disc Review】“Deep Song” (2005) Kurt Rosenwinkel

“Deep Song” (2005) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Joshua Redman (Tenor Saxophone) Brad Mehldau (Piano) Larry Grenadier (Bass) Jeff Ballard, Ali Jackson (drums)

Deep Song
Kurt Rosenwinkel
Verve
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、“Heartcore” (2001-2003)に次ぐアルバム。
 “The Enemies of Energy” (Nov.1996)以来のメンバーを大幅変更。
 Brad Mehldauトリオ、あるいはJoshua Redmanカルテットとの共演作。
 ドラマーのJeff Ballardが三者のバンドの準レギュラーメンバー。
 個性派のビッグネームが揃っていますが、もちろんKurt Rosenwinkelの世界。
 “Heartcore” (2001-2003)ではなくて、“The Next Step” (2001)のイメージ。
 不思議感、妖しさはたっぷりですが、メンバーの色合いも含めて、それよりもマイルドかもしれません。
 ジャズの色合いも戻ってきたように思います。
 結果的にはモダンジャズ作品を除けば、最も取っつきやすいかも? どうだろ?
 もちろんオリジナル曲中心。
 いつもの複雑なビートに愛想のないメカニカルなメロディライン。
 ギターのエフェクティングは前作よりも薄め。
 キレイなディストーションが掛かった音。
 これでもかこれでもかと続く激烈なインプロビゼーションはいつも通り。
 Brad Mehldauのピアノも端正なジャズの場面もあれば、リーダーの変わった音使いにつきあってみたり、変幻自在。
 Joshua RedmanはCo-producerにもクレジットがありますが、強烈な登場場面は少なめ。
 全体的にスッキリした感じがするのが彼の色合いなのかもしれません。
 くどいくらいに激しいギターに対して、熱くなっても上品なサックス。
 そんな対比でバランスが取れているのかもしれません。
 珍しくハイテンションでもオーソドックスな4ビートの演奏や、静謐なピアノに導かれる穏やかな演奏もあります。
 Joshua Redmanに入ってもらって、普通な感じのジャズに引き戻そうとする試みだったとすれば、さてその成否は・・・?
 などなど、諸々の色合いの演奏が収められていますが、なんだかんだでやはり怒涛のような凄まじい演奏のKurt Rosenwinkelワールド。
 21世紀型ニューヨーク系コンテンポラリージャズの典型、少しだけマイルド系に戻ったKurt Rosenwinkel。




posted by H.A.

【Disc Review】“Heartcore” (2001-2003)Kurt Rosenwinkel

“Heartcore” (2001-2003)Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar, Keyboards, Drums, Programming)
Mark Turner (Tenor Sax, Bass Clarinet) Ben Street (Bass) Jeff Ballard (Drums) Ethan Iverson (Piano, Keyboard) Andrew D'Angelo (Bass clarinet) Mariano Gil (Flute)

Heartcore
Kurt Rosenwinkel
Verve
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、前作“The Next Step” (2001)に続く、同じメンバー+αでの作品。
 前作でスタイルが出来たのかと思いきや、間髪入れずに次の展開。
 ジャズのムードがなくなり、フログレシッブロック的というか、フュージョン的というか・・・
 なんとも形容しがたい質感。
 これまでにも増して不思議系、そして激烈系です。
 ここまでと比べるとシンプルで少々重めのビート。
 デジタル臭、アバンギャルド臭、さらには民族音楽臭も少々。
 この前後の作品よりも、後の“Star of Jupiter” (2012)にムードは似ているのかもしれませんが、もっと変わっています。
 複雑に上下を繰り返すメカニカルなメロディ。
 淡い感じもあったメロディラインの輪郭がハッキリしていて、これまでにもあった、ある種のしつこさが強くなっているかもしれません。
 ドラマチックといった方が適当なのかもしれません。
 そんな音を背景にしてキレイなディストーションが強めに掛かった攻撃的なギター。
 主力のギターをここで変えたのかもしれません。
 その他のエフェクティングもたっぷり。
 こちらも複雑に上下を繰り返す、どこまでも続いていくようなインプロビゼーション。
 スムースというか、ねっとりとまとわりつくようなというか、なんというか・・・
 激しさ全開、凄まじいギターソロが続きます。
 しつこいと言われればそうかもしれないなあ・・・
 そんなインプロビゼーションが映えるように作曲、編曲しているのかもしれません・・・
 かどうかは分かりませんが、サックスのソロを含めてそう思わせるような不思議な一体感。
 ここまで来ると普通のジャズからはかなり距離が出来てしまった感もありますが、だから新しいのでしょう。
 次作“Deep Song” (2005)では“The Next Step” (2001)に近い感じに戻った感もありますが、傑作ライブ“The Remedy (2006)では本作を含めた三作を突っ込んだような感じ。
 ファットでキレイなディストーションのギターの音色は本作で決まったのでしょうし、諸々含めて少しずつ進化しているのでしょう。
 本作も突然変異ではなく、その流れの中の一作ととらえれば自然かな?
 それにしても変わってるなあ・・・
 これも凄い作品、クリエイティブな人です。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Next Step” (2001) Kurt Rosenwinkel

“The Next Step” (2001) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (guitar, piano)
Mark Turner (sax) Ben Street (bass) Jeff Ballard (drums)

Next Step
Kurt Rosenwinkel
Polygram Records
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、“The Enemies of Energy” (Nov.1996)からピアニストが抜けたカルテット。
 これがこの時点でのKurt Rosenwinkelサウンドの完成形なのでしょう。
 ピアノが抜けた分さらにシャープになった音。
 変拍子に、一風変わったメカニカルなメロディラインに、どこまでも続いていきそうなハードなハイテンションサウンド。
 サックス以外のメンバーは変わっていきますが、傑作ライブ“The Remedy” (2006)にそのままつながっていくようなサウンド。
 相変わらず変わっていて愛想も乏しいのですが、全体の整理がついてスッキリしたようにも感じます。
 圧倒的なギターソロ。
 これでもかこれでもかと続く怒涛のような音の流れ。
 その高揚に合わせて音量を上げ、煽りまくるドラム。
 さらにそれに続くこれまたどこまでも続いていきそうなサックスソロ。
 どこに向かって飛んで行っているのかわからないような不思議感、ハイテンションで汗が飛び散るようなサウンドながら、どことなくクールな質感。
 そんな演奏が最初から最後まで。
 次から次へと目まぐるしく変わっていく展開。
 ちょっとねっとりしている感もあり、爽やかなサウンドではありませんが、痛快です。
 これで楽曲に少しでも愛想があれば・・・と思ってしまいますが、そうするとクールさ新しさ、妖しさがなくなるのでしょうかね。
 こわもて、といったほどではないし、フリージャズとかのムードも一切ないのですが、終始漂う不思議感。
 それでも痛快なまでの高揚感。
 “The Enemies of Energy” (Nov.1996)で概ねの形ができた今に至る21世紀型ニューヨーク系コンテンポラリージャズの完成形、その一つ・・・だと思います。




posted by H.A.

【Disc Review】“Intuit” (1998) Kurt Rosenwinkel

“Intuit” (1998) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (guitar)
Michael Kanan (piano) Joe Martin (bass) Tim Pleasant (drums)

Intuit
Kurt Rosenwinkel
Criss Cross
カート・ローゼンウィンケル


 現代のカリスマギタリストKurt Rosenwinkelのオーソドックスジャズ。
 激しく新しいスタイルの“The Enemies of Energy” (1996)の後の録音とは気づいていませんでした。
 お世話になったモダンジャズなCriss Crossレーベルからのリクエストなのか、実はモダンジャズが好きなのか・・・
 後の作品“Reflections” (2009)などを聞くと両方なのでしょうね。
 ビックリするぐらい平和なモダンジャズ。
 “East Coast Love Affair” (Jul.1996)は少々変わったジャズスタンダードでしたが、こちらはジャストなジャズ。
 オーソドックスなピアノトリオと全曲ジャズスタンダード。
 もちろんギターのフレーズはちょっと普通とは違うKurt Rosenwinkel節ですが、ここまで背景がオーソドックスだと何だか平和に聞こえてしまいます。
 バース交換まであるもんなあ・・・
 どこまでも続いていくような感覚のフレージングはここでも健在。
 ピアノが入っているので、コードワークを挟まずに、素直なシングルトーンで流麗なフレージング。
 いや素直ではないか・・・
 誰に似ているのかもいまだによくわからない彼独特の節回し。
 ちょっと聞きでは彼の作品とはとても思えないのですが、よく聞くと彼以外にはありそうにないモダンジャズ。
 リラックスして聞けるスーパージャズギタリストKurt Rosenwinkelの一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Enemies of Energy” (Nov.1996) Kurt Rosenwinkel

“The Enemies of Energy” (Nov.1996) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Electric, Acoustic Guitar)
Mark Turner (Tenor Saxophone) Scott Kinsey (Piano, Keyboards) Ben Street (Bass) Jeff Ballard (Drums)

Enemies of Energy
Kurt Rosenwinkel
Polygram Records
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkelの初期の作品。
 発表は前後するようですが、リーダーでの録音としては第二作目になるのでしょう。
 後のスタイルが確立したようなアルバム。
 変拍子にメカニカルなメロディライン、圧倒的な演奏力。
 いかにもニューヨーク系コンテンポラリージャズな音。
 ギタートリオ+サックスの流行りの編成もこのアルバムあたりが端緒なのでしょう。
 もう20年が経つようですが、今の耳で聞いても新しいサウンド。
 ジャズに加えてロックも混ざり、フュージョンを通過し、諸々の要素を吸収し、試行錯誤しながらできてのであろう独特の音。
 結果としての音は、複雑で不思議系。
 ロックっぽくもあるし、なんだかんだでジャズっぽくもあるし。
 すべてオリジナル曲、すべて不思議系、メカニカル系なメロディ。
 複雑なようでスルッと入ってきてしまう不思議な音。
 ビートの作り方の影響が大きいのだと思うのだけども、独特の浮遊感。
 そんな音を背景にして、ナチュラルなディストーションギターのソロが始まると止まりません。
 どこまで続くのかわからないような凄まじいソロ。
 ピアノもサックスも同じ。
 このどこまでも続いていく感じは、演奏力もさることながら、背景のサウンドとの関係も大きいのでしょう。
 その意味でも新しいサウンドが出来た、と思うアルバム。
 確かに聞き慣れないし、先も読みづらいし、寛げる音ではないのでしょう。
 が、決して難しくも気色悪くもないし、何がどうなっているのか考えてしまう頭の体操になりそうな音でもあります。
 ここからさらにたたき上げたのが、よりシンプルで音の洪水のような “The Remedy” (2006) あたりなのでしょう。
 同時期、Pat Methenyは“We Live Here” (1995)、“Quartet” (1996)あたり。
 まだまだ普通のジャズ、フュージョンをやっている時期。
 それらとは全く違う流れ、21世紀型コンテンポラリージャズのその典型の一つ。
 その端緒のような作品。




posted by H.A.

【Disc Review】“East Coast Love Affair” (Jul.1996) Kurt Rosenwinkel

“East Coast Love Affair” (Jul.1996) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Avishai Cohen (Bass) Jorge Rossy (Drums)

East Coast Love Affair
Kurt Rosenwinkel
New Talent Spain
カート・ローゼンウィンケル


 現代のカリスマギタリストなのでしょう、Kurt Rosenwinkelのファーストアルバムになるのだと思います。
 オリジナル曲は少々で他はジャズスタンダード。
 ちょっと聞いただけでは普通のジャズギタートリオに聞こえますが、なんだか変わっています。
 ギターはちょっとディストーションが掛かり気味ではあるものの、ナチュラルな範疇。
 ビートも4ビート中心だし、ゆったりとした演奏揃い。
 それでもアクセントの置き方が普通じゃない感じがするし、フレージングもあまり聞いたことがないスタイル。
 コードの中で収まっているのかはみ出しているのかよくわからない、不思議感のあるフレージング。
 あっちに行ったりこっちに行ったりしながら、バラバラととっちらかっているようで、なぜか終わり際にはまとまってくる不思議な起承転結感。
 アップテンポでは強烈な加速感と、どこまでも続いていくようなフレージング。
 第一印象はなんだかぶっきらぼう、そんな感じ。
 その感じは今に至るまでの彼のスタイル。
 ベースはこれまた今を時めくAvishai Cohen。
 この人も圧倒的な演奏力ながら、なんだか変わっています。
 とても変わったモダンジャズと呼ぶか、とてもクリエイティブなモダンジャズと呼ぶか。
 おそらく伝統的なスタイル大好きなのに、その枠組みの中に素直に納まりきらない人たちの登場。




posted by H.A.
 

【Disc Review】“Without a Net” (2010) Wayne Shorter

“Without a Net” (2010) Wayne Shorter
Wayne Shorter (Soprano, Tenor Sax) Danilo Pérez (Piano) John Patitucci (Bass) Brian Blade (Drums) Mariam Adam (Clarinet) Valerie Coleman (Flute) Monica Ellis (Bassoon) Jeff Scott (French Horn) Toyin Spellman-Diaz (Oboe)

Without a Net
Wayne Shorter
Blue Note Records
ウェイン・ショーター


 Wayne Shorter、現時点での最新作。
 “Footprints Live!” (2001)以来のカルテットでのライブ録音を中心としたアルバム。
 間に”Alegría” (2003)、”Beyond the Sound Barrier” (2005)の二作。
 ホーン陣の参加は一曲のみ。
 そちらは20分を超える不思議なメロディ、不思議な展開、変幻自在な組曲風。
 このバンドの自在な展開を譜面にしてみました、ってな感じでしょうか。
 他はカルテットでの演奏。
 “Footprints Live!”ではぶっ飛び気味でアバンギャルドだったサウンドが、少々オーソドックス寄りとは言わないけども、まとまってきた印象。
 複雑なビート感、展開はそのまま、違和感やトゲのようなものが薄くなり、スッキリした印象。
 おそらくバンドのスタイル自体は同じで、基本的に自由なんだけども、お互いの手の内が見えて慣れてきて、落ち着くところに落ち着くようになった・・・のでしょうか?
 それでも不思議系、変幻自在であることは変わりません。
 サックスはまだまだ吹けています。 というか吹きまくっています。
 “Footprints Live!”では感じられた少々の枯れがなくなり、艶やかな音で迷いのないフレージング。
 ピアノトリオも各人の反応がピッタリと合ってきた感じ。
 突っ走ると気持ちいいんだろうなあ、といったところで突っ走って、落ち着くところではそれなりに納まる感じ。
 メロディアスだったり、コード進行が見えたりする場面が増えているようにも思います。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) の“Sanctuary” を想い起こさせる、ルバートでのバラード”Starry Night”などは絶品です。
 聞いているこちらが慣れただけなのかもしれませんが・・・
 ある程度の骨子だけ決めて、後は自由自在にビートも和音も成り行きで音楽を作っていく、フリーになったらなったでそれでいいし、メンバーの波長が合えば定型な音に収斂されてもよし、そんな試みだったのでしょう。
 ある程度先が読めるようになった感じもありますが、やっぱり何だか現代の不思議系。
 クリエイティブ系の若手もビックリのクリイティブな演奏。
 御歳おいくつかかわかりませんが、まだまだ元気、やっぱり普通ではないWayne Shorterミュージック。




posted by H.A.
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