吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年10月

【Disc Review】“Lyrics” (2001) Henryk Miskiewicz & Simple Acoustic Trio

“Lyrics” (2001) Henryk Miskiewicz & Simple Acoustic Trio
Henryk Miskiewicz (Alto Saxophone, Soprano Saxophone, Bass Clarinet)
Marcin Wasilewski (piano) Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)



 ポーランドのベテランサックス奏者Henryk Miskiewicz、同じくポーランドの当時の若手ピアノトリオSimple Acoustic Trioとの共演作。
 哀愁の漂うワンホーンジャズカルテット。
 ポーランド系、どうもKomeda、Tomasz Stankoのイメージが強くて、沈痛な感じがあるのですが、本作は明るくて上品な感じ。
 哀愁系の楽曲揃いですが、カラッとしていてアメリカンな感じすらあります。
 サックスは少々歪んだ音ながらスムースな音使い、少々の激情系。 オーソドックスながら表現力は抜群でエキサイティングな演奏。
 “Upojenie” (2002) Anna Maria Jopek, Pat Methenyにも参加していて、ポーランドではファーストコールな管楽器奏者なのでしょう。
 音使いからするとフュージョン系の人かもしれません。
 Simple Acoustic Trioも本作ではオーソドックスなジャズピアノトリオに徹しています。
 フィーチャーされるスペースも大きいのですが、楽曲との関係もあるのでしょうが、なぜかオーソドックスな演奏。
 それでも単なる伴奏者ではなく、只者ではない感が漂っています。
 終始とても落ち着いた演奏。
 おそらくリーダーとは親子ほどの年齢差があるのでしょうが、一番やんちゃに聞こえるのはリーダー。
 楽曲はリーダーの作品中心、他にMaria Schneider、ソプラノサックスとピアノのDuoでの”Thema From Spartakus”などはシンプルながら絶品。
 ジャンピーなナンバーから切なげなバラードまで、わかりやすい哀愁のメロディの連続。
 ヨーロピアンコンテンポラリージャズ的、あるいはECM的な妖しさはありません。
 Simple Acoustic Trioな音楽ではなく、Henryk Miskiewiczのオーソドックスなコンテンポラリー系ジャズ作品、哀愁系として楽しむのが吉。




posted by H.A.

【Disc Review】“Habanera” (2000) Simple Acoustic Trio

“Habanera” (2000) Simple Acoustic Trio
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

Habanera (digipack)
Simple Acoustic Trio
Not Two
マルチン・ボシレフスキ


 ポーランドのピアニストMarcin WasilewskiのSimple Acoustic Trio、とても素敵なジャケット、演奏で日本でも人気の作品なのでしょう。
 華やかな演奏が目立つ作品。
 “Lullabay for Rosemary” (1995)とも、後のECMでの作品“Trio” (2004)とも違うテイスト。
 試しに本作と“Trio” (2004)の両方に収録されている親分Tomasz Stankoの”Green Sky”を聞き比べてみると、どちらも漂うようなルバートでのバラードながら、一音一音が明確でシャープな本作に対して、終始淡くて曖昧でフワフワした“Trio” (2004)での演奏。
 この後の変化は何なのか?
 単に録音の妙なのか?本人の変化か?誰かの指示、影響か?・・・
 興味は尽きないのですが・・・
 さておき、本作は華やかで哀愁溢れる素晴らしいピアノトリオ。
 単に派手に飛び回るわけでなくて、なぜかしっとりとした印象のピアノ。
 テンションが上がってきても、ガンガンゴンゴン行くばかりではなくて、何かしら抑制が効いた印象。
 クラシックを徹底的にやったうえで、Herbie Hancock好きになりました・・・そんなイメージでしょうか? 
 あるいは、ピタリと地面に張り付いたまま疾走する?とか、航空機の滑走~離陸とかのイメージ。
 上手い表現が見つかりませんが、結果としては華やかながらスムースで落ち着いた印象。
 要所に入るスムースなロングフレーズの印象が強いのでしょう。  
 時折の高速な高音中心のオブリガードや微妙なタメもいい感じ。
 ベースは落ち着いていながら強力なグルーヴ、ドラムのフレキシブルな反応もカッコいい。
 普通の高速な4ビートもエキサイティングで特別なものに聞こえてきます。
 楽曲はしっとりしたメロディからジャンピーな曲、その他諸々。
 激甘だったり強烈に印象に残るメロディがあったりはしませんが、オーソドックスなコンテンポラリージャズ風のいい曲揃い。
 ありがちなちょっとうまいヨーロピアンピノトリオからは一歩抜けた何かがあるように思います。
 その要因は、おそらく派手に弾いているようでも、一歩引いたように聞こえてしまう、しっとりした質感のピアノなのだと思うのですが・・・さて?
 このままいくのかと思いきや、”Soul of Things” (2002) Tomasz Stanko、“Lyrics” (2001) Henryk Miskiewiczなどのサポートを経て、淡い色合いの“Trio” (2004)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Lullabay for Rosemary” (1995) Simple Acoustic Trio

“Lullabay for Rosemary” (1995) Simple Acoustic Trio
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

Lullaby for Rosemary
Simple Acoustic Trio
Not Two Records
マルチン・ボシレフスキ


 ポーランドのピアニストMarcin Wasilewski、Simple Acoustic Trio、初期の作品。
 デビュー作なのかもしれません。
 ポーランドでの原盤?のタイトルは”Komeda”。 ポーランドの国民的な作曲家Krzysztof Komedaの楽曲集。
 いきなりのルバートでのスローバラード。
 ECMに所属するのは先ですが、いかにもそれらしいスタート。
 後の“Habanera” (2000)では華やか、ECMに入ってからは淡くて柔らかい印象ですが、ここではシャープ。
 録音の具合もあってか、少々固めの音。
 また、微妙なタメもこの時期からあるのですが、リズムへのノリ方が少々微妙で、初々しい感じがします。
 少々のフリーインプロビゼーション的な演奏も同様。
 それでも時折唐突に現れる高音の短いフレーズ、アップテンポでの疾走感など、フレーズの端々に只者ではない感が漂っています。
 どことなく明るいムードは近年と同様。
 Komedaの寂寥感の強いメロディをサラリと演奏して、いいバランス。
 暗からず、明るくなり過ぎず。
 ゴリゴリ系のベースとビシバシ系のドラム、それでも決してうるさくならない音もこの時期から。
 全体を眺めれば、全編に楽曲ゆえの寂寥感が漂うものの、オーソドックスなコンテンポラリー系ピアノトリオジャズ。
 それにしても、近年のあの柔らかなムードは、ここからECMに録音する”Soul of Things” (2002) Tomasz Stankoくらいまでに完成したのでしょうか?
 それとも、1970年代のよりシャープに冷たくなるECMマジックとは全く正反対の、柔らかくフワフワとなる2000年代ECMマジックだったりして・・・





posted by H.A.

【Disc Review】“Lyoba Revisited” (2009) Thierry Lang

“Lyoba Revisited” (2009) Thierry Lang
Thierry Lang (Piano)
Heiri Känzig (Percussion, Contrabass) Matthieu Michel (Bugle, Trumpet) Ambrosius Huber, Andy Plattner, Daniel Pezzotti, Daniel Schaerer (Cello)

Lyoba Revisited
Thierry Lang
Ais
ティエリー・ラング


 スイスのピアニストThierry Lang、チェロのカルテットを加えて、スイスの作曲家Joseph Bovetの作品を中心とした演奏集。
 とても優雅で穏やかな音。
 全編、淡い哀愁、郷愁の流れる演奏揃い。
 ワルツの優雅なビートからスタート。
 タメが効いて少し遅れ気味に入ってくるピアノと寂寥感あふれるトランペット。
 とても優しい旋律を奏でるチェロのアンサンブル。
 全編バラード。
 ビートが変わっても優雅さは消えません。
 クラシックの香りが強いチェロとジャズの香りの強いベース、トランペット。
 Thierry Langがその中間、といった印象。 いつもの美しい音と優雅なフレージング。
 穏やかで静的なテーマ提示から、インプロビゼーションになると躍動感が出て、また穏やかな表情に戻る、その繰り返し。
 Thierry Langからすれば完全なはまり役・・・というか聞いて育った音楽、体に染みついた音を形にしたのでしょう。
 全編哀感が流れる音ですが、暗さはなく、何かを慈しむようなイメージ。
 スイスはきっとこんな空気のところなのでしょう。
 本作で取り上げられているスイスの伝統な楽曲と、彼が書くオリジナル曲のムードは同じ。
 これまでの彼の諸作に流れていた空気感も同じ。
 それがあまたいるBill Evans系ピアニストとは一線を画すところ。
 美しいだけではなく、優しく穏やかな質感の根源なのかもしません。
 ドラムレス、チェロが入ることでトリオの諸作よりもさらに上品で優雅、優し気。
 美しさはそのままに、上品さ、優雅さ、優しさが増長されたイメージ。
 Thierry Langの音楽の色合いが強調されたといった意味では、代表作といえるかもしれません。
 なお、別レーベルに“Lyoba” (2007), “Lyoba2” (2008)があり、編成、メンバー、楽曲も同様。
 アレンジは微妙に異なりますが、大きくは変わりません。
 本作は先の二作から楽曲を抜粋し、スッキリしている印象。
 また、楽曲の並び、インプロビゼーションの展開などから、ジャズ的な印象、Thierry Lang諸作とも直接つながる感じかもしれません。
 先の二作はクラシックの印象が強くてより優雅です。
 いずれにしても、とても上品で優し気、最高に優雅な一作。
 いや、三作。





【Disc Review】“Guide Me Home” (1999) Thierry Lang

“Guide Me Home” (1999) Thierry Lang
Thierry Lang (piano)

Guide Me Home
Thierry Lang
EMI Import
ティエリー・ラング


 スイスのピアニストThierry Langのソロ作品。
 満を持したソロアルバム。
 ここまでいかにもピアノソロに似合いそうな耽美的、内省的な演奏でしたので、雑味を排した音がどこまで美しくなるのか・・・
 これが意外にもオーソドックスな音。
 美しさは全開。
 あの独特のタメの効いた節回しもいつも通り。
 でも想像していた音とは少々印象が異なります。
 レーベルがBlue Noteだから?
 録音、ミキシングの具合?
 ドラムとベースがいないので自身でビートを作っているから?
 感情移入を抑えて淡い感じを出そうとしたから?・・・
 おそらくその全て。
 オリジナルとスタンダードが半々。
 ソロゆえのビート感の伸び縮みはありますが、そこそこ定常。
 強い浮遊感・・・といった感じではありません。
 ビートを崩す場面、強い感情を出す場面、強烈に疾走する場面もありません。
 あくまで淡々と流れていく美しいピアノの音。
 だから落ち着いて聞けるのでしょう。
 気持ちが穏やかに平坦になっていくような音。
 夜な感じではなく、静かな昼下がりに合う音。
 とても穏やかで美しい作品です。
 なお、CD二枚組。
 一枚はあのQueenのFreddie Mercuryのドキュメンタリー映像"Freddie Mercury - An Untold Story"のサウンドトラック、Freddie Mercuryの作品集です。
 “Bohemian Rhapsody”かあ・・・
 これもとても穏やかです。




posted by H.A.

【Disc Review】“Nan” (1998) Thierry Lang

“Nan” (1998) Thierry Lang
Thierry Lang (paino)
Heiri Kanzig (bass) Marcel Papaux (drums) Hugo Read (alto, soprano sax) Daniel Pezzotti (cello)

Nan
Thierry Lang
Blue Note
ティエリー・ラング

 スイスのピアニストThierry Lang、Blue Noteに移籍して何作目かの作品。
 “Private Garden” (1993)など、地元?のレーベルでの音とは少し違った印象。
 何かカチッとしたというか、揺らぎが小さくなったというか・・・
 メンバーもほぼレギュラーだし、元々アグレッシブでも奇をてらうタイプでもなかったし、ピアノの美しさ、フレージングはそのままなので、何がどう変わったのかいまだにわかりません。
 ビートがきれいに整いすぎてるのかもしれれないし、微妙な音場の調整なのかもしれません。
 さておき、相変わらずの美しいピアノ。
 いつものトリオにサックスとチェロを加えた上品で手堅いアンサンブル。
 タイトル曲を含めた愛奏のオリジナル曲にスタンダードにポップス。
 チェロが入ってもクラシック臭は強くなく、あくまでジャズな演奏。
 優雅なワルツから始まり、いつもと同じくバラードが印象に残る演奏。
 が、何曲かのアップテンポの曲も素晴らしい。
 ハイテンションに吹きまくるHugo Readのサックス、それにつられてかThierry LangのピアノもKeith Jarrett的なエキサイティングな演奏。
 アップテンポになってもあの微妙なタメが生きていて、なんとも言えない上品で心地よい疾走感。
 一音一音が明瞭な美しいピアノ。
 音符が見えてきそうな音、ってな表現が当たっているかどうかわかりませんが、そんな音。
 などなど、さすがにBlueNote配給だけあってか、バリエーションに富んでいて、かつ、バランスが取れた演奏集。
 あの”The long and winding road”のジャズバージョンとかなかなか聞けないしね。
 なお録音はECMのホームグランドRainbow Studio, Oslo。
 音の感じは違うのですがね・・・
 もし、ECMでプロデューサーがManfred Eicherだったらどうなっていたんでしょうね・・・





posted by H.A.

【Disc Review】“Between A Smile And Tears” (1991)、“Private Garden” (1993) Thierry Lang

“Between A Smile And Tears” (1991)、“Private Garden” (1993) Thierry Lang
Thierry Lang (Piano)
Ivor Malherbe (Double Bass) Marcel Papaux (Drums)


Private Garden
Thierry Lang Trio
Elephant
ティエリー・ラング


 スイスのピアニストThierry Lang、とても美しいピアノトリオ。
 デビューから第二作、三作に当たるのだと思います。
 もう20年以上も前の作品のようですが、今聞いても全く古くないし、その後にこれ以上美しいピアノトリオがあったかなあ・・・と考えてもなかなか思いつきません。
 また、ソロ、ホーン入り、チェロ入りなど、いろんな編成の作品がありますが、この人には本作のようなオーソドックスなピアノトリオが一番似合うと思います。
 印象としてはソロの方がよさそうですが、不思議です。
 ビート作りを他の人に任せて、インプロビゼーションに集中できるからでしょうか?
 後ろ髪を引かれるようなタメや美しいタッチ、美しいメロディのインプロは、トリオでの演奏で一番出てきているように感じられますし、一番映えるようにも思います。
 本二作はそんな感じの美しいピアノトリオの知る人ぞ知る名作。
 ピアノの音そのものが美しいし、楽曲が美しくて、インプロビゼーションが美しくて、バンドも上品で美しい。
 いわゆるBill Evans系の一人なのでしょう。
 耽美的、内省的、抒情的・・・その他それらしい形容詞すべてがあてはまるような音。
 当時流行った音でしょう。
 それでも何か一歩抜け出した美しい演奏。
 タッチが特別なのか、録音の妙なのか、音の組み立て方に何か特別なものがあるのか、その他諸々、その要因はよくわかりません。
 おそらくその全て。
 後の“Lyoba Revisited” (2009)などを聞くと、スイスの人だから、その育った環境の空気感なのかなあ、とか思ったりします。
 スローはもちろん、速いフレーズの一音一音にも微妙なタメがあり、ビートが伸びたり縮んだり。
 また、一瞬の空白の中から立ち上がってくる音使いがカッコいい。
 それが絶妙な優雅さ、美しさに繋がっているのかもしれません。
 静かな空間の中に加速しながら走る澄み切った高音にはゾクリときます。
 そんな場面が多々。

 両作とも名曲名演揃い。
 “Between A Smile And Tears” (1991)の冒頭からしっかりタメの効いた美しさ、抒情感全開の音。
 オーソドックスながらとてつもなく美しいスタンダード演奏に、これまた美しいメロディのオリジナル曲。
 ECM的な毒気こそありませんが、少々のクラシックの香りが漂う、ヨーロピアンピアノトリオの典型、教科書のような音。
 “Private Garden” (1993)では、後に何度も再演される冒頭のスローテンポの名曲“A Star to My Father”からこれまた美しさ全開。
 続く少しテンポを上げた“Nunzi”も同等の美しさ。
 全編ルバートの“Private Garden”を経て、最後の定番曲“Nane"まで、これでもかこれでもかと美しい演奏が続きます。
 モダンジャズ的な躍動感が足らないとか、美しすぎて毒が無くて・・・とかいった向きもあるのやもしれませんが、ここは素直に美しい音、ヨーロピアンジャズな音を楽しむべきでしょう。

 さてこの文章の中に「美しい」はいったい何回出てきたのでしょう。
 アルバム二枚、最初から最後まで、そんな「美しい」アルバムです。



【Disc Review】“Ida Lupino” (2016) Giovanni Guidi, Gianluca Petrella

“Ida Lupino” (2016) Giovanni Guidi, Gianluca Petrella
Giovanni Guidi (piano) Gianluca Petrella (trombone)
Louis Sclavis (clarinet, bass clarinet) Gerald Cleaver (drums)
 
Ida Lupino
Universal Music LLC
2016-09-02
ジョヴァンニ グイディ

 イタリアンピアニストGiovanni Guidi、”City of Broken Dreams”(2013)、“This Is the Day” (2014)に次ぐECM第三作。
 前二作はオーソドックスなトリオ編成、ルバートでのバラードてんこ盛りの前作“This Is the Day” (2014)は私的大名作でしたが、本作はベースレスの変則のコンボ。
 Giovanni Guidiの作品としてみると作風は少し変った印象。
 Giovanni Guidi とGianluca Petrellaの共作クレジットの曲が多く、二人がリーダー、そのDuoにドラムがサポート、Louis Sclavisは客演で彩りを付ける役割といったイメージなのでしょう。
 Gianluca Petrellaは元Enrico Ravaバンドの人で “Tribe” (2011) で共演、おそらくイタリアン。
 Gerald Cleaverは “Wislawa” (2012) Tomasz Stankoなどに参加のアメリカン。
 Louis SclavisはECMにも諸作あるフリージャズ中心のフレンチ。 
 ベースレスの強い自由度、浮遊感は好みなのですが、ここまでの作品に参加してきた素晴らしいベーシストThomas Morganが参加していないのは残念なところ。
 冒頭からこの人の色合い、強い浮遊感、淡いメロディ。
 が、ビートは複雑ながら明確。
 淡いピアノと柔らかなトロンボーンのインタープレーが続きます。
 二曲目、Louis Sclavisが加わると少しムードが変わります。
 フリーインプロビゼーションではありませんが、穏やかなフリージャズのムードが濃厚。
 穏やかながら聞き慣れない音階を多用したような不思議感の強い演奏が数曲続きます。
 が、中盤、タイトル曲Carla Bleyの“Ida Lupino”からは少しムードが変わってメロディアスな演奏が並びます。
 とてもドラマチックなイタリア曲“Per i morti di Reggio Emilia”、オリジナル曲“Gato!”、“La Terra”と素晴らしい演奏。
 哀愁漂うメロディとほのかに明るいムード。
 定まるような定まらないような漂うビートの淡い演奏。
 ピアノとトロンボーンの柔らかな音の絡み合い。
 ところどころの思索的なフレーズの繰り返しなど、柔らかなKeith Jarrettといった面持ちもあります。
 これは桃源郷。
 哀愁と柔らかなムードはこの人ならではの色合い、根底には哀愁と明るさが入り混じるイタリアンなムードが流れているのでしょう。
 が、8曲目以降は再び深刻なムードも漂う静かなフリージャズ色が強い演奏が再び始まります。
 最終曲で再びメロディアスな漂うなバラード。
 これが出てくるとホッとするというかとても優しい心持ちなる、そんな演奏。
 とても素晴らしいエピローグ。
 アルバム一枚で何かしらのメッセージがあるのかもしれません。
 が、これを冒頭にもってきて、曲順を変えるとアルバムの印象はガラッと変わるんだろうなあ。
 冒頭から聞いてあれれ?と思った人、フリーが苦手な人は、4~7曲目を中心に聞いてみましょう。
 それらのような演奏、あるいは“This Is the Day” (2014)の穏やかでメロディアスなルバートでのバラード路線を増やして欲しかったような気もしますが、それはやりたいことの一コマでしかないのでしょうね。
 その前後のフリー路線も怖かったり不快な感じだったりではないので、しばらく聞いていると慣れる、あるいは何か新しいモノが見えてくるのかな?
 さて?

 


 posted by H.A.

【Disc Review】“City of Broken Dreams” (2012) Giovanni Guidi Trio

“City of Broken Dreams” (2012) Giovanni Guidi Trio
Giovanni Guidi (piano)
Thomas Morgan (double bass) João Lobo (drums)

City of Broken Dreams
Giovanni Guidi
Ecm Records
ジョヴァンニ グイディ


 イタリアのピアニストGiovanni Guidi、ECMでの第一弾。
 イタリアの大御所Enrico Rava バンドでStefano Bollaniの後釜、“Tribe” (2011) で素晴らしいピアノを弾いていた人。
 Ravaさんの推薦かどうかは分かりませんが、Eicherさんのお眼鏡にもかなったのでしょう。
 冒頭のタイトル曲、いきなりもの悲しいルバートでのバラードからスタート。
 柔らかなタッチ、微妙なタメが入りながら、伸びたり縮んだりフワフワと漂う音。
 まさにタイトルのような音。
 それでも悲壮感が漂うのではなくてあくまで淡い寂寥感。
 あくまで柔らかな音。
 そんな演奏がたくさんあるといいのだけど、本作では三曲ほど。
 その他、淡いメロディのジャズ、不思議なワルツ、Ornette Coleman的フリーインプロビゼーション的な演奏、その他諸々。
 全体的にはメロディが曖昧で抽象度の高い音作り。
 予測できない展開、聞き慣れない音階の使用も含めて不思議感たっぷり。
 それでも決して暗くはならないのが、さすがにイタリアの人。
 さらにフリーな部分を含めて、全編通じてピアノ、音楽ともに柔らかで淡い色合い。
 それがこの人の特徴なのかもしれません。
 なおベーシストのアメリカ人Thomas Morganは近年のECM諸作でよく見かける人。
 “Wait Till You See Her” (2008) John Abercrombie, ”Wislawa” (2012) Tomasz Stanko New York Quartet, “Gefion” (2015) Jakob Broなどなど。
 スウェーデンの名手Anders Jorminを想わせる素晴らしいベースを弾く人。
 決して派手な音は使わず、沈み込みながら穏やかなグルーブが出せる稀有な人と見ました。
 本作ではまだ手探りな感じがありますが、近い将来化けるかも。
 次作も同じメンバーでのトリオ。
 私的超お気に入りの名作、淡くて美しいメロディ、ルバートでのバラードてんこ盛りの“This Is the Day” (2014)へと続きます。




【Disc Review】“Star of Jupiter” (2012) Kurt Rosenwinkel

“Star of Jupiter” (2012) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitars)
Aaron Parks (Piano) Eric Revis (Bass) Justin Faulkner (Drums)

Star of Jupiter
Kurt Rosenwinkel
Imports
カート・ローゼンウィンケル


 コンテンポラリージャズギターのドン?Kurt Rosenwinkel、2016年の時点ではまだこれが最新作なのでしょう。
 ビッグバンドとの共演“Our Secret World” (2009)以来のアルバム。たぶん。
 本作はピアノトリオを従えたギターカルテット編成での二枚組、コンテンポラリージャズ作品。
 編成は普通ですが、やはり普通のギターカルテットとは違う音、ロック寄りの質感でしょう。
 ここまでと異なるのが、スッキリと整った音作りになっていること。
 それでも整ったジャズ、ロック、フュージョンではなく、新しい質感の音。
 いつもながらに複雑だけども、スッキリした印象のビート。
 少々重めのビート、軽快で突っ走るビートをメリハリをつけて使い分けている感じもあります。
 メロディも不思議系が薄らいで、素直な感じ、しかもドラマチックな構成。
 シンプルではなくて十分に複雑ですが、ある種のルーズさがなくなりタイトな印象。
 結果として、ジャズのムードも薄くなっているようにも思います。
 もちろん一線を越えた圧倒的な演奏力。
 強烈な加速感と疾走感、ノリは凄いしインプロビゼーションはキレまくり。
 ギターはいつものディストーションが掛かったファットな音、さらにはエフェクティングも多用して変幻自在。
 ギターシンセサイザー的な音作りも何曲かあります。
 いつものこれでもかこれでもか、うねうねねちょねちょ、グリグリゴリゴリ、どこまでも続いていくような怒涛のギター。
 フレージング含めて、スムースなディストーションサウンド。
 これはいつも通りかもしれませんが、ここまでくるとジャズギターのイメージはなくて、かといってロックとも距離がある彼独特の音。
 サポートメンバーも個々はジャズな演奏なんだけども、全体の音はジャズジャズしていません。
 たまに挿入されるジャズの流儀のバース交換がなんだか微笑ましい。
 名手Aaron Parksも強烈に弾く場面は少なく、他のメンバーも含めてリーダーが暴れる背景作りに徹している印象。
 宇宙がテーマ、確かに宇宙船に乗って突っ走る、そんなイメージの音でしょう。
 ドラマチックでもあります。
 ここまでくるとジャズではないんだろうなあ・・・少なくとも普通のジャズではありません。
 であればいつもそうか・・・
 本作も激烈、痛快です。
 おなか一杯、ごちそうさまでした。




posted by H.A.
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